No.80927

恋姫無双 袁術ルート 第十四話 神楽

こんばんわ、ファンネルです。

あれ、これって袁術ルートだよね?

この話はずっと劉協のターンです。

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2009-06-25 19:07:47 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:27455   閲覧ユーザー数:20267

十四話 神楽

 

 

 

「え、ええええええええええ!!お、おお女の子!?」

 

そんは筈は無かったはずだ。本来、皇族は男しかなれないはず。なのになんで?一刀は混乱していた。いや、混乱する前に言わなくちゃならないことがある。何せ、顔を赤くして涙を浮かばせながら怯えているのだから。

 

一刀はとっさに我に帰った。

 

「ご、ごめん!馬に乗せようと思ってした事なんだけど………本当にごめん!」

 

まさか女の子だとは知らなかった。だが知らないこととはいえ、皇族にわいせつな行為を働いた一刀は間違いなく打ち首ものである。一刀は恐怖に怯えてしまっていた。だが、劉協は、

 

「ち、違うぞ!よ、余は女なのでは無い!よ、余は男だ!」

 

明らかに動揺しながら言い訳をかました。一刀の混乱はますます強くなるばかり。

 

「………え?な、何を……」

 

一刀が疑問に思うのも無理はないだろう。間違いなく彼(?)は胸を掴まれて体を請わばせた。それによく見るとこの子には喉仏がなかった。間違いなく男の子では無いはずである。

 

「さ、さっきそなたを平に打ってしまったのはだな…………そ、そう!あれだ!いきなりむ、胸を掴まれて、誘拐された時を思い出してだな………」

 

劉協は必死に言い訳を言っていたが、一刀の耳には届かなかった。ビンタされた事よりも、なぜ劉協が女の子なのだという疑問の方がはるかに大きかったからだ。劉協も自分の言い訳が一刀に通じていないことを悟り、口ごもってしまった。

 

………………

 

「…………劉協様。あ、あの……」

 

一刀は劉協に話しかけようとしたが、

 

「………るな。」

「え?」

「そんな目で余を見るな!」

 

あまりの迫力に一刀は驚き声を出す事が出来なかった。しばらく沈黙が続き、劉協は涙をポロポロと流していた。

 

「…………ひっ………ひぐ…………ぐす………えぐ……」

 

ものすごく気まずかったが、しばらくして劉協が口を開いた。

 

「た、頼む。……ひぐ……だ、誰にも……言わないでくれ。」

 

それは懇願だった。皇族ともあろう御人が知らない人間に懇願する。普通はあり得ないことであった。

 

「よ、余が女だとばれてしまったら………余は……」

 

一刀は、理由を知らない。でも涙を流すほど困っているのだ。本物の善人である一刀がこの小さな少女の頼みを無下にするわけがなかった。

 

「大丈夫です。誰にも言いませんから。」

 

ただ一言、劉協に言った。今はそれだけで十分だった。真摯に受け止めてくれた一刀を見て劉協は安心したようだったが、安心した反動かまた涙を流してしまった。

一刀は持っているハンカチで劉協の涙を拭いてあげた。

 

「行きましょう。仲間たちの所に。」

 

一刀は先に馬に乗り、手を引いて劉協を馬に乗せてあげた。落ちないように抱きかかえながら。

 

 

一刀と劉協は馬に乗せながら街道を引き返していた。だいぶ恋達から離れてしまったようだったから急ぎたかったのだけど、二人乗りをしたまま馬を走らせる自信はなかった。だからゆっくりと歩いていた。

 

「理由を問わないのか?お前は。」

 

しばらく黙っていた劉協は涙を拭き、落ち着いた様子で一刀に訪ねた。

 

一刀は劉協の言っている『理由』とは一体何なのか理解していた。そもそも、女の身では皇族の資格たる『劉』の文字を名前につけることは許されない。皇族以外であるならば問題はないらしいが、彼女は前皇帝の実子だ。これは漢王朝四百年、変わることのない歴史である。それを無視し、女の身であるこの劉協に名前を与えたと知れたら、それは大陸に住むすべての民たちを騙しているに他ならない。間違いなく後取り問題などで大騒ぎになるはずだ。でも、

 

「はい。あなた様が困っているのであるならば理由を問う事はありません。」

 

正直、これは皇族の問題である。一刀はこれ以上深入りしないようにと慎重になっていた。万が一何かのきっかけで命を狙われるようになってもおかしくない状況だったからだ。

 

「すまない。」

 

また沈黙が続いた。あまりにも空気が重く、気まずかった。その時、劉協が沈黙を破ってくれた。

 

「そう言えば、お前の名前を聞いていなかったな?名は何と言うのだ?」

 

空気が少し柔らかくなったのを感じた一刀は安心して劉協の問いに答えた。

 

「俺の名前は、北郷一刀と言います。今は華南の袁術の側近をやっています。」

 

一刀は簡単な自己紹介を済ませると、劉協は驚いたような表情で一刀の顔を覗き込んだ。

 

「北郷……なんと、北郷一刀だと!それではそなたがあの黄巾党を鎮めた『天の御遣い』だと言うのか!」

 

(しまった!)

 

一刀はかなり後悔した。自らを『天』と名乗るのは帝に喧嘩を売っているのと同義である。劉協は帝の子供。ならば彼女にも喧嘩を売っていることにもなる。

 

「あ、あの劉協様、こ、これは……その…」

「よい!そのような顔をするでない。管路の占いは余も聞いたことがある。そなたが噂の御遣いだったとはな。」

 

劉協は馬の上で体を翻し、一刀と正面を向いた。劉協はその美しい容姿を一刀の眼前に置き、一刀をじっと見つめていた。

 

「お前がな~………確かに不思議な服を着ている。こんな生地は余は見たことがないぞ。」

 

劉協は物珍しい目で一刀を見ていた。一刀はこんな美少女にジロジロ見られて何か恥ずかしがっていた。とにかく、何か話をすり替えなくては恥ずかしくてやってられない。

 

「り、劉協様、そんな風に後ろ乗りで馬にまたがっては危ないですよ。」

 

話を変えようとしたが、劉協は一刀を見つめるのをやめてくれない。

 

「よいではないか。それにしてもお前が、黄巾党を鎮めたとは……」

 

劉協は信じられないような思いだったが、一刀の神々しい服に、どことなく自分たちとは違う雰囲気を持っているために何処となく信じられるようだった。

 

一刀は恥ずかしがりながら、劉協の顔を除いていた。真っ正面に顔を向けられるためにどうしても目が顔の方に行ってしまうのだ。その時、劉協は突然悲しそうな顔をしていた。ほんの一瞬であったが、一刀の方を向いていたために一刀はこの表情の変化を見逃さなかった。

 

「あ、あの劉協様、どうかしたのですか?」

 

 

劉協は、本当に悲しそうな表情をしていた。劉協は一人、思いに耽っていたが一刀の言葉に我に帰った。

 

「あ、いや、我が官軍たちが総動員しても倒せなかった黄巾党をお前は武力も使わずに制圧してしまった。一体、余たちは何をしていたのだろうな、と思ってしまったのだ。」

 

劉協は何か呆れるような言い草だった。

 

「劉協様……」

 

一刀は何も言えなかった。民たちを脅かす黄巾党を早く鎮めたかったのだが、いかんせん、やりすぎてしまっていた。一刀たちの行動は間違いなく民たちの安全に繋がっていたはずだ。だが、それと同時に、官軍たちの無能さも世に広めてしまってもいたのだ。何せ、官軍たちは制圧はおろか、彼らの暴走を食い止めることも出来なかったのだから。民たちの心は朝廷などでは無く、一刀のような人間に向かってしまっていた。当然と言えば当然だろう。朝廷に出来なかった事を一刀はやり遂げてしまったのだから。

 

「天は、何ゆえそなたをこの地に遣わしたのだろうな?」

 

劉協の顔は悔しさでいっぱいだった。一刀は何も言う事が出来ない。

 

「おそらく天は、我らを必要としていないのだろう。だからそなたのようなものを遣わしたのだ。」

 

劉協は、今にも崩れそうなガラスのような存在になっていた。一刀はウジウジしている劉協を見てどうにかして元気になってほしいと願った。

 

「劉協様、それは違いますよ。」

「え?」

 

一刀はこの今にも崩れそうな少女を助けたかった。どうにかしてあのカリスマに満ちた劉協に戻したかった。

 

「天なんて関係ありません。俺は、みんなが幸せになればいいと思い、行動しただけです。これは天の意志などでは無く、俺自身の意志です!」

 

一刀は劉協の肩を掴んで熱論した。当然だ。自分たちが努力し、ようやく成し遂げた事を天の意思なんて言葉で片付けられたくなかったからだ。劉協も最初は驚いたものの、一刀の真剣な表情につい見入ってしまっていた。

 

「それに、帝が不要なんて言ってはいけません!帝は民たちの大切な心の支え、この国の象徴なのですから。」

「だ、だが………」

 

劉協は何か反論しようとしたが一刀はそれを許さずにすばやく言葉を結んだ。

 

「それにこうは考えられませんか?仮に天が俺を遣わしたとして、その理由は帝の代わりとしてではなく、帝を支える存在として俺を呼んだんじゃないかと?」

「帝を支える………存在として?」

「はい、もし天に意思があるのだとしたら、きっと困っているあなたたちのために俺をここに呼んだんですよ。」

 

一刀の言葉に劉協は少し笑顔になった。どうやら立ち直ったようだ。

 

「そうか、ではそなたには余と兄を支える存在になってもらわなければな。」

「はい。」

 

劉協は崩れそうだった存在から脱した。美羽と年が同じくらいだと言うのにとても聡明で、賢くて、心が強いと一刀は心から感心した。

 

(全く……うちのお姫様とは大違いだ。)

 

 

美羽side

 

「ぶえっくしょい!」

「どうしたんですか?お嬢様。」

「うう~………何か悪寒がしての~」

「きっと、誰かがお嬢さまの事を褒め称えているのですよ♪」

「うーん……そうじゃな!きっとそうじゃ!うはははははは!!」

「はい、だからさっさと一刀さんの事を見つけないといけませんね。」

 

 

「一刀。余はな、物心ついた頃から母に男として育てられたのだ。」

 

一刀は劉協の過去を聞かせてもらっていた。一刀は遠慮したのだが、劉協は一刀に聞いてほしいらしく、一刀はこれに頷いた。

 

「母は王美人と言って、とても綺麗な方だった。だが同時にとても嫉妬深く、何進の妹の何太后が兄、劉弁を生んだ時はとても悔しがったらしい。余が生まれたときは喜んでくれたようだったが、余が女であると知った時はすごく落胆したんだ。」

 

劉協は、実の母親にそのような行為を受けていたらしく、とても悲しく言う。

 

「母は、肉屋の娘の子供に帝の位を与えるのに我慢できなかったらしい。だから、余の存在を隠し、男として正式に発表したのだ。」

 

一刀は驚いた。そんなことが普通にあり得るはずがないからだ。

 

「ははは、さすがに驚いているようだな。しかし、事実だ。」

 

劉協は一刀の心情を読み取ったようだ。

 

「でも、どうしてばれなかったんですか?」

 

当然の疑問だった。劉協はこの秘密を知っているのは母と、数人の文官たちだけだったらしい。

 

「簡単だ。帝の子は隔離されながら育てられるのだ。それに父に関しても同じだった。実子といえども帝にはそう簡単に会えない。それに父は子供の事には何の関心もなかった。父はおそらく最後まで余が女である事に気が付かなかっただろうな。」

 

ものすごい皮肉を口にする。平気そうな顔をしているがこの子ぐらいの年齢で、実の父親に何の関心も持たれないのはとても悲しい事なのではないだろうか?

 

「母は余にありとあらゆる学を教え込ませた。兄に負けないような存在にするために。だが結局、帝に選ばれたのは兄、劉弁だった。母は激怒し、何太后に何かしらの因縁をつけようとしたのだろう。それが災いしたのか、母は謎の死を遂げた。」

 

一刀は口を開く事が出来なかった。あまりにも壮絶すぎる人生だったからだ。

 

「だが、余には分かっている。母は殺されたのだ。何進に妹の何太后に。だが、何進も何太后も十常侍の乱心の巻きぞいを喰らって死んだ。十常侍たちは混乱していたのか、余と兄をさらい、逃げだした。そしてお前に助けてもらったと言うわけだ。」

 

劉協は自分の身持ち話を話し終ると、ため息の一つをついて、たそがれていた。

 

一刀はとても悲しかった。まるで自分の事のように。一刀はこの世界にきて二年ほど暮らしていた。いろんな悲しみを見てきた。だが、最後はみんなで協力しながら悲しみに立ち向かい、道を切り開いてきた。だがこの少女はどうだろう。誰にも頼ることなく、秘密を守り、努力してきた。だが結局、その努力は意味をなさなかった。あまりにも救われないではないか。一刀はこの小さくて、強くて、そしてとても繊細な少女を抱きしめた。劉協は体をビクつかせたが、抵抗などはしなかった。

 

「お、おい!かか一刀、何をするのだ!?ぶ、無礼であろう!?」

 

劉協は顔を赤く染めながら反論したが一刀は彼女を離さない。

 

「劉協様、あまり強がるのは止めてください。悲しい時は、泣いてもいいんですよ。」

 

一刀は優しく囁いていた。劉協は顔を赤くしながら激怒したが一刀は聞かない。強がっているとすぐに理解できたからだ。

 

「一刀。余は皇族だ。だ、だから簡単に………な、泣いてはいかんのだ!」

 

劉協は強く言っているが言葉が震えていた。

 

「劉協様。俺はもうあなたの泣いている所を見ているんですよ。だから遠慮しないでください。」

 

抱きとめていた手に力を込める一刀。この一言がきっかけになったのか、劉協は一刀の胸に顔を埋めた。

 

「………うぐ…………えぐ………」

 

「大丈夫です。今の俺は何も聞こえませんから。」

 

「…………本当だな?………ぐす……」

 

「はい。」

 

劉協は、一刀の胸の中で泣き出した。そんな劉協を一刀は優しく抱き包んだ。劉協はずっと我慢していたのかしばらく泣き続けた。

 

 

「お兄さんの事が憎い?」

 

一刀は無礼を承知で尋ねた。劉協の母を殺し、この騒動の一角を担っていたのは何太后だ。少なからずその子供の劉弁を憎んでいるのではないかと思った。劉協はすでに泣きやんでおり元気になっていた。人間、時には大泣きするとあとは結構スッキリするものだ。

 

「いや、これらの騒動はすべて母たちの問題であり、余と兄には何の関係もない。ただ巻き込まれただけだ。」

 

どうやら、兄に対しては憎しみのようなものを持っていないようだった。

 

「兄は学が無く、言葉もロクにしゃべれない人間だった。だがとても純粋で優しい御方だ。帝になってからも余に対する態度は何も変わらなかった。普段と変わりなく、余を弟として可愛がってくれた。」

 

劉協の顔には笑顔があった。どうやら劉弁とは仲良くやっていたようだった。

 

そんなこんなで、雑談を交わしている内に七乃さんたちに合流することが出来た。みんな怪我はないようで安心した。

 

「一刀さん、大丈夫でしたか?」

「一刀、大丈夫じゃったのか!?」

 

美羽と七乃さんは一刀の心配をしてくれたようだ。

 

 

「……………ご主人様、怪我ない?」

 

恋も一刀の事が心配だったらしくホッとしたような顔をしている。

 

「ふん!しつこいチ●コです!」

 

ねねも憎まれ口を叩いているが安心したように微笑みかけている。本当に可愛い子だと一刀は思った。

 

「一刀さん。ここへ向かう途中、怪しい人たちを捕まえたのですが………」

 

七乃さんは言葉を濁していた。

 

「どうかしたの?」

「はい、捕まえはしたのですが……その……尋問をしようとしたら舌を噛み切って自害を…。」

 

七乃さんは一刀たちを遺体の近くまで連れて行った。

 

「一体、何者なんでしょうね?服装からしてかなりの高官と思われるのですが。」

「こいつ等があの十常侍だ。」

 

七乃さんたちは一刀の連れてきた少年(少女)の存在に気づいた。

 

「一刀、誰じゃ?こ奴は。」

 

美羽はいきなり無礼な口を開いた。

 

「ば、馬鹿!この人は帝の実子、劉協様だぞ!」

 

一刀は美羽を叱りつけたが劉協は何も気にしていなかった。美羽は相手が皇族と知り、体を硬直させたが、七乃さんに頭を掴まれて地面に跪いた。恋もねねも膝を地面につけ跪いていた。

 

「よい。今は緊急の事態ゆえ、余はなにも気にしておらぬ。顔を上げよ。」

 

劉協は、何とも尊大な言葉を言ってくれた。七乃さんたちも緊張を解いた。

 

「十常侍………じゃあ、こいつらが今回の騒動の張本人たち!?」

「ああ、何を考えていたのかは解らんがな。死んでしまっては聞くことも出来ないだろう。それよりも余を洛陽に連れ戻してくれぬか?褒美は必ず取らすぞ。」

 

褒美と言う言葉に美羽はかなり反応したがそんな事はどうでもいい。七乃さんたちと合流したのだからさっさと洛陽に引き上げることにした。

 

 

一刀たちは洛陽に戻ってきた。すでに雪蓮たちは戻っており、何の収穫もなかったことを報告してきた。

 

「ごめんね、一刀。何の手がかりも見つけられなかったわ。」

 

雪蓮は悔しそうに報告してくれた。どうやら真剣に探していたようだ。

 

「そうか、あとは月たちの所だな。無事に見つかるといいけど………」

 

一刀は劉協の兄の心配をしていた。劉協も心配しているのか、その顔は少し暗かった。

 

「ところで北郷。そちらの御方はもしや………」

 

冥琳は劉協の存在に気づいた。うすうす彼女の正体に気づいたのかもしれない。

 

「ああ、劉協様だ。」

 

雪蓮と冥琳と祭さんはすぐさま地面に跪き、劉協に対して謝罪の言葉を言った。

 

「私は江東の孫策と申します。申し訳ございません、劉協様。御兄弟の手がかり一つも持ちかえれなかった事を深くお詫びいたします。罰は如何ほどにも……」

 

雪蓮の真摯な態度に劉協は呆気に取られていたが、すぐに皇族の顔に戻った。

 

「よいのだ。この件は宦官どもが起こした事。そなたらには何の責任もないのだから。」

 

器の大きい劉協に感心しつつ礼を言った雪蓮たち。この場は簡単におさまり、一刀たちは別方向へと向かった月たちの心配をしていた。

 

「大丈夫かな、月たち。」

「大丈夫よ。張遼だっているし、華雄だっている。早々にやられたりはしないわ。」

 

雪蓮は一刀の独り言に耳を傾けていた。そんな雪蓮の優しさに感謝した一刀だった。

 

そんなこんなで、時がたち月たちが戻ってきた。だがその顔はとても暗く悲しそうな顔をしていた。

 

「ただいま戻りました。ご主人様。」

「おかえり。……どうだった?」

 

一刀は核心を聞いてきた。彼女たちの顔はとても暗く吉報と呼べるものではないだろうと直感的に感じた。

 

「それが………その………」

 

月は言葉を濁している。埒があかなそうだったから一刀は詠の方に顔を向けた。詠もなかなか口をあけてくれなかった。

 

「兄は、余の兄はどうなったのだ!?」

 

一刀の後ろから劉協は乗り出してきた。服装から皇族だと理解した月をはじめ、彼女たちは跪いた。

 

 

「申し訳ありません、劉協様。」

 

月たちは劉協たちに話した。話は今話すようなものでは無かった。時期がきて少し落ち着いたときに話さなければならないものであったのだ。

 

月たちは馬を走らせ、街道を隈なく探していたところ、豪華に着飾った馬車を発見。そして馬車の停止を命令したのだが、付き添っていた用心棒たちがいきなり切りかかってきたらしい。霞と華雄はこれに応戦した。

 

しかし、思いのほか抵抗が強く、時間をかなり割いてしまった。なんとか撃退したものの馬車はすでに走らされており、馬術の得意な霞がこれを追尾。なんとか追い付いたものの中に入っていた文官たちは捕まるのを恐れたのか馬車から飛び降りた。騎手もまたそれにつられて馬車から飛び降りたのだ。軽くなったことで馬の速度はさらに早くなり暴走してしまったのだ。そのまま止める事叶わず、馬車は荷台ごと大木に激突してしまったらしい。

 

飛び降りた文官たちは自害してしまい、荷台に取り残されていた少年は全身を強く打ちつけ意識がなかった。出血もひどく、必死の手当も空しく、少年はそのまま息を引き取ったのだ。遺体は、馬に乗せて丁重に運んできた。

 

話を聞いた劉協は、遺体を確認した後、ショックのためか呆けていた。

 

「……劉協様。」

 

一刀たちは何も話せなかった。沈黙がこの場を支配し、しばらく時間がかかった。

 

「そなたの名は何と言うのだ?」

 

劉協は、月に対して聞いてきた。その声には悲しみも怒りもなく、ただ普通だった。しかし、その事が逆に恐ろしく感じた。

 

「と、董卓と申します。」

 

月の声は恐怖で震えていた。自分の手違いで帝を死なせてしまったのだから、罰を受けさせられると覚悟した。

 

「劉協様!月は関係ないで!帝を死に追いやってしまったのはうちや!うちが奴らを追い込まなければこんな事にはならなかったんや!」

 

霞は月を庇うように反論したが、詠と華雄によって取り押さえられた。詠も涙を浮かべながら霞を抑えている。

 

「董卓よ。」

 

劉協は月に近づいていった。月は、目を閉じて罰を覚悟した。だが、

 

「礼を言うぞ。」

「え?」

そこには優しい声で頭を下げた劉協の姿があった。

 

 

この行為に月を始め、一刀も雪蓮も驚いていた。皇族が帝を死なせてしまった無能者に頭を下げるなどと絶対にありえないからだ。

 

「り、劉協様、いったい何を……」

 

月はうろたえながら聞いてきた。しばらく頭を下げていた劉協だが、ようやく頭をあげて言葉は発した。

 

「そなたたちは余の兄を、帝を助けてくれたのだ。礼を言うのは当然だろう。」

「え?……え?」

 

月の混乱は増すばかりである。一刀たちも劉協の考えが分からなかった。理由の分からない一刀たちに劉協は教えてくれた。

 

「あのまま連れていかれたら、兄は間違いなく帝としての権力を利用されるだけの存在になってしまっていただろう。他者に利用されるなど皇族の恥だ。だから………せめて、帝として死なせてくれた事に感謝している。」

 

皮肉でも嫌味でもない。劉協は心の底から月たちに感謝していた。その事に月たちはとても動揺していた。一刀もまた動揺していた。馬上で話をしていた時は、あんなにも自分の兄を慕っていたと言うのに。いくら皇族とはいえ、ここまで冷静になれるものなのだろうか?

 

「劉……」

 

一刀は劉協になぜと問いたかったが、雪蓮たちに悟られたのか、言葉を止められてしまった。雪蓮は首を横に振るだけだった。

 

「宮殿に戻ろう。帝が崩御したことを伝えなければならない。」

 

一刀たちは劉協と共に宮殿に戻っていった。

 

宮殿に戻ったのはいいものの、そこはとても悲惨なものであった。宮殿内は豪華な装飾が壊され、宦官たちの遺体がそこら中に転がっており、床は血で染められていた。美羽も月も泣きそうになりながら、七乃さんや詠にしがみついていた。他のみんなもあまりの現状にしかめっ面になっている。

 

そんな中、劉協は怯むことなく、堂々と玉座に着き、使いの者に伝令を言い渡した。

 

「外に駐屯している各諸侯の代表をここに呼び集めろ!これから会談を開く!」

 

劉協はすでに帝の風体を纏っていた。

 

 

一刻ほど経ち、各諸侯の代表が玉座の間に集められた。彼らはみんな名のある諸侯たちであったが、この宮殿の現状を見るとさすがに肝を冷やしていた。

 

劉協は、諸侯の代表たちに現在の現状を伝えた。大将軍、何進とその妹、何太后が十常侍たちに殺された事。その十常侍たちが官軍たちに殺された事。生き残った十常時たちは自分と兄であり帝である劉弁をさらい、その際、劉弁が亡くなったこと。

 

劉協はすべてを語った。聞き終わった後の諸侯たちの反応は様々であった。泣き叫ぶ者、黙祷を捧げている者、怜静に状況を判断している者、現状を全く理解していない者もいた。皆はどういう心境なのかは知らないが、一番重要なことは理解していたようだ。『帝が死んだ』この事が今一番重要なのだ。だが、皆の考えは一緒だった。もう後取りは一人しか残っていないのだから。皆の注目は劉協に向かった。

 

劉協は自らを帝と名乗った。これに対して反論などある筈もなかった。劉協は玉座の前に立ち諸侯の代表者たちに檄を飛ばした。

 

「余が帝となったからには二度とこのような惨事にならぬように奮励努力しよう。そのために皆も余に力を貸してくれ!」

 

もともと持っていたカリスマが帝になったことで完全に開花した。これで新たな帝『献帝』の誕生だ。諸侯の代表者たちはこの命令に雄叫びをあげた。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

彼らはとても興奮していた。美羽や月たちも立派な劉協を見て感動している。だが一刀だけはみんなとは違う思いだった。

 

「袁術に董卓!前に出るがいい!」

 

いきなり名指しで呼ばれた美羽と月。二人とも驚きながら劉協の前に出てきた。

 

「二人には今回の功績を讃え、相国の位をやろう。お前たちはこれから余と共にこの洛陽を変えていくのだ。」

 

相国、それは今の日本で言うと総理大臣のような立場だ。国政はもちろんの事、政治面、軍事面、経済面とありとあらゆる分野のトップになるのだ。この命令に美羽も月も頷いた。反対する材料がないからだ。もちろん美羽は調子に乗りまくっていた。

 

これにて会談は終了し、後日、劉弁の葬儀を行うと皆に伝えた。そうして諸侯の代表者たちは自分たちの陣に戻っていった。

 

「ふふ~ん♪雪蓮、どうじゃ!相国じゃぞ!相国!」

「はいはい、よかったね。」

 

早速自慢している美羽。そんな美羽を適当に受け流している雪蓮であった。

 

「詠ちゃ~ん、どうしよう?相国だって………責任重大だよ~。」

 

あまりの緊張のためか、詠に泣きつく月であった。

 

「大丈夫よ、月。月には僕が付いているんだから!相国の一つや二つこなして見せるわよ!」

 

自信満々に答える詠に月はとても喜んでいた。何ともほのぼのとした光景である。

 

とその時、劉協が一刀たちのグループに近づいていった。

 

「北郷一刀。そなたに話がある。余について参れ。」

 

この言葉に月も雪蓮も体を強張らせた。彼女たちも一刀が『天の御遣い』である事を知っている。本物であると確信しているのだが、自ら『天』と名乗っている人間は帝にとっていいい顔をされるはずがない。もしかしたら何かしらの処罰があるのかもしれないと月たちは心配になっていたのだ。

 

「大丈夫だ。そなたらの考えているような事では無い。」

 

劉協は、本当に聡明な子だった。瞬時に月たちの考えを読み取ったのだから。

 

「で、でも……」

「大丈夫だよ、月。何もないって。」

「へう~………」

 

心配してくれる月に対して一刀は、頭を撫でて返した。そうして一刀は一人劉協についていった。

 

 

二.三分ほど歩いただろうか?一刀は劉協に少し広い部屋に連れてこられた。そこはとても質素な部屋であった。机にベット。そして大量の書物。それだけだった。

 

「劉協様、ここは一体?」

 

一刀が劉協に聞こうとした途端、劉協はいきなり一刀に抱きついてきた。突然の事で一刀の頭はついてこられなかった。

 

「あ、あの……劉協様?……これは一体?」

 

一刀は尋ねようとした。

 

「し、しばらくこうさせてくれ。」

 

劉協の頼みにしばらく体を預ける事にした一刀。そこには先ほど各諸侯を圧倒した威圧感などは無く、ただ一刀に甘えている小さな女の子にしか見えなかった。

 

一刀は何も言えなかった。一刀は気付いていたのかもしれない。本当はとても無理をしていたのではないだろうか?女である事を隠し、誘拐され、殺されかけ、慕っていた兄を殺され、それでも悲しみを抑え月たちに礼を言い、各諸侯の代表者たちに檄を飛ばした。こんな小さな体で無理をしていたらいつかはいろんな感情が溢れ出し、爆発するだろう。だが皇族と言う血筋がそれを許さない。

 

一刀はそんな劉協が哀れでならなかった。劉協は一刀の胸に頭を埋めて涙を流していた。一刀も劉協の思いが計り知れず、ただ胸を貸してやることしかできない。

 

「余は………怖かった。」

 

劉協は泣きながら一刀に告白していた。一刀は知っていた。

 

「余は………帝なんぞになりたくは無かった。」

 

この小さな女の子はただ泣くばかりである。一刀は何も言えない。

 

「余は………怖い。………このままでは……帝と言う重圧に押し潰されそうだ。」

 

一刀もいつの間にか劉協を抱きしめていた。慰めの言葉が見つからない。それが一刀の中で燻っていた。

 

「一刀………そなたは言ったな?………天は帝を支えるためにそなたを遣わせたのだと。……頼む。余を支えてくれ。……そうでなくては余は………」

 

一刀は今にも崩れそうな女の子の願いを聞き届けた。

 

「はい。大丈夫です。あなたは俺が守りますから。だから……大丈夫です。」

 

しばらく時が止まり、一刀と劉協はお互いに黙ってしまった。だが、体だけはちゃんと支え合っていた。

 

半々刻ほど経っただろうか?劉協は落ち着きを見せはじめ一刀の胸から頭を離した。

 

「ふふふ、今日の余は泣いてばかりだな。こんなに泣いたのは今まで初めてだ。」

 

落ち着いたのか、劉協の言葉には安心感と言うものを感じた。一刀もまた、心のわだかまりが取れた気がした。

 

「スッキリしましたか?」

「ああ、泣いている最中は最低な気分だが、泣き終わると不思議に落ち着く。」

 

二人は冗談を言い合えるくらいになっていた。ひとまずは安心というものだ。

 

「一刀、余と二人だけの時はそんな風に頑なに喋らないでくれ。そなたはもう余の大切な友人なのだから。」

 

一刀はこれに頷いた。反対する理由がないからだ。劉協は喜んでくれた。

 

「そ、それからな……一刀……もう一つ頼みがあるのだ。」

 

劉協はなぜか顔を赤くしながらモジモジしていた。一刀はこれが何なのか理解できなかった。

 

「余と二人だけの時は、余の事を……その……神楽と呼んでくれぬか?余の真名だ。」

 

一刀は驚いた。

 

「え!?で、でもそれは……」

 

さすがの一刀もこれには怯んだ。なにせ皇帝の真名を呼ぶなんて一体何人の人間が出来る事なのだろうと。だが、本人がそのように願っている。

 

「分かったよ、神楽。」

 

劉協はとても喜んでいたが、顔を真っ赤にしながら言葉を結んだ。

 

「こ、光栄に思うのだぞ!余の真名を呼んでいいのは……父と母と兄しかいなかったのだから!血族以外では……お前が初めてだ。」

 

自分の言った事が今更恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながら言っていた。それが面白くて、一刀は苦笑していた。

 

「わ、笑うでない!この無礼者!」

「ははは、分かったよ。」

 

そう言って、一刀は神楽の頭を撫でてあげた。神楽もまんざらでは無かったようだ。抵抗など全くしなかった。

 

「これからよろしくな、神楽。」

「ああ。これからも余を支えてくれ。一刀。」

 

二人は熱い握手を交わした。

 

 

今夜はもう遅いので神楽はこのまま寝ると言った。どうやらあそこは彼女の私室だったようだ。一刀もまた美羽たちの元へ戻ろうとした。来た道を引き返そうとしたら、そこに金髪の女の子が立っていた。

 

一刀は思わず身構えてしまった。暗闇でよく見えなかったが彼女の持つ風格は雪蓮と同等、もしくはそれ以上かもしれなかった。

 

「そんなに身構えなくてもいいわ。『天の御遣い』。」

 

女の子は静かに言葉を口にしていく。月明かりに照らされ、その姿がようやく見えた。

 

「私の名前は曹操、字は孟徳。あなたの名前は?」

 

彼女は金髪を両側にまとめ、その美しい素顔を露わにしていた。彼女は自分を曹操と名乗った。一刀は史実を知っている。

 

曹操、三国志を知っている者でこの名前を知らない者はいないだろう英傑だ。『乱世の奸雄』と言われ、天下をもう一歩で手にする筈だった英傑。だが不思議と一刀は驚かなかった。曹操の名前に相応しい風格を彼女は持っていた。

 

「俺の名前は北郷一刀。字ってのは無い。」

「そう……じゃあ、一刀と呼ばせてもらうわ。」

 

おそらく、現時点での場合、曹操より一刀の方が勢力的には強いだろう。それでも彼女は当然かのように対等に喋る。だが、それがあまりにも自然で一刀はそんな事にも気が付かなかった。

 

「俺に何の用だ?」

 

一刀たちはお互いの腹を探り合った。間違いなく曹操は一刀の帰りを待っていたのだから、何かしらの用事があるのかもしれない。睨み合いは一分ほど続いたが不思議と一瞬と感じたし、永遠とも感じた。

 

「………単刀直入にいうわ。一刀、この曹孟徳に仕えなさい。」

 

彼女の言葉はとても魅力的なものに聞こえた。彼女は続ける。

 

「あなたのその風評と、天の知識を私のために使いなさい。袁術のような猿があなたのような英雄を飼っているのは腹ただしいわ。」

 

一刀はしばらく黙っていたが、ようやく冷静さを取り戻した。

 

「そんな言葉で、俺が下ると思っているのか?」

「思わないわ。」

 

彼女はキッパリと言う。

 

「だけど、あなたが私に下れば……そうね……あなたに天下を見せてあげるわ。この曹孟徳が治める天下と言うものを。」

 

彼女の言葉は狂言でも何でもない。確固たる信念と自信がある。おそらく彼女は自分の言葉を実現するだろう。だが、今の一刀にそんな言葉は通じなかった。二年近く美羽の傍で生活し、大切な友人たちも出来た。大切な絆が出来た。それを壊してまで曹操に仕える事は出来ない。

 

「遠慮するよ。今の俺は袁術のところで満足だ。」

「そう。」

 

彼女は怒りも何もしない。ただ事実として受け入れただけだ。

 

「ずいぶんと簡単に諦めるんだな。俺ってそんなに魅力はないかな?」

 

さんざん話をリードされていたのだから、一刀は少し腹をすぐるような挑発をしてみた。

 

「別に焦っている訳では無いもの。今じゃなくても問題はないわ。あなたを手に入れる方法なんていくらでもあるのだから。」

 

それは一つの脅しだ。俺が曹操に仕えなかったらこの女の子は間違いなく戦を仕掛ける。そう言っているのだ。一刀もまたその事に気が付いていた。

 

「……正気か?」

 

現在の一刀たちの勢力は留まる事を知らず、大陸最強の勢力に発展している。しかも今は帝ですら一刀たちの味方だ。そんな勢力に戦を仕掛けるなんて愚の骨頂だ。

 

「正気よ。」

 

彼女は本気だ。だが決して、ムキになって言った言葉のあやでは無い。彼女は確固たる自信を持っていた。戦を仕掛けても一刀たちに勝つ自信が。

 

「勘違いしないで頂戴。私は今では無いと言ったわよ。」

 

彼女は言葉を付け足した。どうやら現実を見ない愚か者に思われたくなかったのだろう。

 

「あなた、気が付かなかった?各諸侯たちの眼に。」

「……どういう事だ?」

 

一刀は曹操の言葉が理解できなかった。

 

「そう、気が付かなかったのならいいわ。今日はあいさつ程度にするつもりだったのだけどずいぶんと話し込んでしまったわ。一刀、私に仕える件、考えておきなさい。」

 

そういて曹操は身を翻し、姿を消していった。一刀は彼女の覇気にあてられたのかしばらく動きことが出来なかった。

 

 

一刀は美羽たちの元へ戻って行った。時間はすでに深夜。美羽も月もねねもすでに眠っていた。だが雪蓮たちや詠、七乃さんは起きて一刀の帰りを待っていた。

 

「ごめん、遅くなっちゃった。」

「もう……遅すぎるわよ!……心配しちゃったじゃない。」

 

詠は憎まれ口をたたいたが、一刀の事を心配しての発言だったことはみんなにも理解できるものだった。

 

「ごめんな。さ、今日はもう遅いから美羽たちを運んで俺たちもさっさと寝よう。」

 

一刀の提案にみんなが頷いた。眠いのを我慢して自分を待っていてくれたなんて一刀は心が温かくなるのを感じた。

 

 

数日が経った。

 

劉弁の葬儀が行われ、それと同時に『献帝』の戴冠式が行われた。だが民たちの反応は薄く、他の武官、文官もみんな我関せずな態度だった。神楽は正式に董卓と袁術を相国としての位を授けた。

 

こうして一刀たちは洛陽に籍を置くことになったのだ。美羽は喜び、月は緊張してオロオロしていた。何とも心温まる光景だが、一刀の胸の中には曹操の言った言葉が渦巻いていた。

 

「諸侯たちの眼……か。」

 

一刀はこの時、油断があったのかもしれなかった。帝である神楽が味方について、もう戦を仕掛けるような勢力がなくなったのだと。だから一刀は気が付かなかったのだ。

 

諸侯たちの胸の奥にあり、人間だれしも持っている負の感情、『嫉妬』と言うものに。

 

一刀はこのあと、曹操の言った意味を嫌と言うほど味わされる事になる。

 

 

 

 

 

つづく……

 

 

あとがき

 

こんばんわ、ファンネルです。

 

いかがでしたでしょうか?今回の本編は。

 

自分的には、真面目に書いたつもりなのですが・・・・・・・

 

人物設定です。

 

劉協 真名は神楽(かぐら)

 

強いカリスマを持ち、人を従わせることのできる帝。だが、本人は女であることを隠している。現在、神楽の正体を知っているのは一刀一人だけである。性格は、華琳のような性格だが、実はとても自信が無く、弱気。一刀と二人だけの時は、真名で呼ばせている。

 

本編はすでに中盤を迎えました。次回は本編を進ませながら拠点のような話にしたいと思います。

 

では次回もゆっくりしていってね。

 


 
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