すっきりと目が覚めてしまった。困った。いくら目を瞑っても、なかなかまどろみの中へと落ちることが出来ない。やむを得ず、私は起き上がった。
ベッドの周りはちらかり放題。といっても、何か食べ物を感じさせるようなものはない。空になったミネラルウォーターのペットボトルだけ。
どのくらい、こうしていたんだろう、と思って、私は時計を見る。幸い、まだ日付は変わっていなかった。時間は15時になろうとしている頃。
なんとか起き上がって、まだ中身の入っているペットボトルを探す。どこに置いただろう、と思って、まだぼんやりとした視界で、あたりを物色する。
やがて、他のペットボトルとは感触が違う――具体的には、指で押しても、そのまま素直に転がらないペットボトルを見付けた。残りは、1/3くらい。そのままキャップを開け、少し、水を口の中へと入れた。まだ飲み込まない。
それから、枕元に置いてある茶色の小瓶を手に取る。蓋を回して開ける。中身を適当に手に取る。錠剤。何錠あるのかは、数えなかった。そのまま口の中に放り込み、ペットボトルに残った水を、一気に流し込んだ。小瓶の蓋を閉め、枕元に戻す。空になったペットボトルは、適当にそのあたりへと投げ捨てた。
薬が効いてくるまでに、少し時間がある。ふと、私はベッドの周りを見た。足の踏み場も無いほどに、ペットボトルが散乱している。幸い、清涼飲料水は飲まないが、それでもさすがに不衛生ではないか、と思わないでもない。
仕方がないので、薬が効くまでの暇潰しに、それらを片付けることにした。その前に、今日はまだ、トイレにも行っていないような気がする。いや、それよりも、まだ歯を磨いていない。
私は、それらすべてのタスクを片付けることにした。まずトイレ。ほとんど何も食べてはいないが、飲むものは飲んでいる。つまり出るものは出る。
次に歯磨き。ほとんど何も食べていない以上、口の中が汚れる理由も特にないが、それでも歯磨きだけはしておくべきだと思う。
そして、ペットボトルの始末。空のペットボトルを手当たり次第に拾い、キャップを外し、極めて潰しやすいボトルを適当に潰して、袋へと放り込む。キャップは適当にプラスチックゴミの袋へと放り込む。
こうして、また満杯になった袋が一つ増えた。やれやれ、邪魔なペットボトルだ。今度のゴミの日に捨てたい、と思うが、さて、次のゴミの日はいつだったか。それ以前に、ゴミの日に、私は起きていられるのだろうか。わからない。
だんだんとフラフラしてきた。薬が効き始めたらしい。細かいことを考えるのが面倒になって、私は袋の口を縛り、部屋の隅へと追い遣った。既に満杯になった袋は3つめ。中身は全部ミネラルウォーターが入っていたもの。
眠れそうで眠れない。境界の狭間。寝ているのか、起きているのか、自分でも判別が付かない状態。とても、気持ちが良い。
はっきりと起きているのは、とっても辛い。何でも見え過ぎてしまう。
ぐっすりと眠っているのも、とっても辛い。ただの眠りは、あまりにも空虚。
まどろみの中を、ずっと彷徨っている。それが、楽しい。起きている時ほどはっきりとは周りが見えない。かといって、眠っている時と違って、まったくの暗闇でもない。
まどろみの中を、ずっと彷徨い続ける。それが、楽しい。起きているときには、夢は見られない。眠っているときにも、夢は見られない。自分で意識して夢を見られる。楽しい時間。いつまでだって、楽しみたい。
ぐるぐると回っていく。上へと下へと行く。時間なんて、気にしたことはない。シンデレラじゃないんだから、時間を気にしてはいけない。0時の鐘は永遠に鳴ることはない。ずっとずっと、王子様との舞踏会。
ガラスの靴も、カボチャの馬車もいらない。私には、ただ、このまどろみがあればいい。
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何だか隔月スタイルになりつつあるなぁ。