No.808683

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第八十一話


 お待たせしました!

 于吉が生みだした巨人を倒す事に成功した

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2015-10-18 09:20:39 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3832   閲覧ユーザー数:2926

 

「ばあちゃん…本当にばあちゃんなの?」

 

 俺は眼の前にいる女性の言った事にとてつもなく驚きを隠せないまま、改めて質問を

 

 していた。

 

「はい。正確に言うと、貴方のお祖母さんの魂と記憶の一部を以て形成された存在とい

 

 うのが正しいのですけどね。ちなみにこの姿は難升米…天刀さんと出会った頃の姿を

 

 再現した物です。一応言っておきますけど『再現した物』とはいっても私はちゃんと

 

 自我と実体を持った存在ですので安心してくださいね」

 

 ばあちゃん…というには眼の前の女性は若すぎるので、此処は壱与さんと呼ぶ事にす

 

 るが…壱与さんはそう言うとくるっと一回転して巫女の衣装を俺に披露する。

 

「はぁ…それは分かりました。ところで、壱与さんは何故此処に?そもそも此処は始皇

 

 帝が張った結界があって入れないんじゃ…?」

 

「ふふん、そこはそれ、私は所謂『チート』的な存在にクラスチェンジしてますから」

 

 …壱与さんは超ドヤ顔でそう言っていたが、此処はツッコむ所か?それともスルーし

 

 ておくべき所か?

 

「むむ…一刀もしばらく会わない内に冷たくなりましたね。小さい頃は何時も『おばあ

 

 ちゃん、大好き』って私にじゃれついていたというのに…これが孫の自立という物な

 

 のですね…よよよ」

 

 俺が返答に迷っていると、壱与さんはそう言いながらその場に倒れながら泣く真似を

 

 する…嘘泣きなのはバレバレである。

 

 少々面倒くさくなったので、とりあえず自分で復活するまでこのまま放置しておく事

 

 にしよう。

 

 

 

 しばらくして(おそらく数分程度だろうとは思うが)。

 

「一刀…まさかあなたに放置プレーの趣味があるとは思いませんでした。おばあちゃん

 

 は悲しいです」

 

 壱与さんはそう言いながらジト眼で俺を睨む。

 

「もうちょっとちゃんと俺の質問に答えてくれたら普通に接していたと思いますけどね」

 

「だからちゃんと答えたじゃないですか」

 

「もっと具体的に」

 

「はいはい…ああ、本当に一刀ってばノリが悪いんだから。そういう所は天刀さんそっ

 

 くり『そういうのは良いですから』…はいはい、分かりました」

 

 壱与さんはそう言って大きく息を吐く。

 

「少々真面目な話をすると、私は一度死んだ後で管理者となったのです」

 

「管理者?それじゃ貂蝉達と同じ存在に?」

 

「あの方達とは少し違って、私は外史を回りそれぞれの世界の中にある霊気や悪しき気

 

 が充満している場所の監視をする役割をしているのです。もしそこに溜まっている力

 

 が暴走して外史の破滅を招くようならばそれを鎮める為にね」

 

「それじゃ壱与さんは肯定派とかいう方なのですか?」

 

「勘違いしないで欲しいのですが、管理者の大半は肯定派です。左慈や于吉みたいなの

 

 は管理者の役目を放棄した裏切り者・異端者ともいうべき存在なのです」

 

 左慈達が異端…それはそれは。あいつらも意外に寂しい身の上なのだな。

 

「そして、私はこの外史において最も多くの霊力が集まる場所であるこの泰山の様子を

 

 見に来たのです。ちなみに此処の結界も始皇帝が封禅の儀式を行った時に同行してい

 

 たその当時の監視者と共に作り上げた物なので、その監視者から役目を引き継いだ私

 

 は中に入る方法を知っていたという事なのです」

 

 

 

「それじゃ、今此処にいるのはたまたまという事ですか?」

 

「そういう事です。中の様子を確認して帰ろうと思ったら左慈やら于吉やらが中に入ろ

 

 うと何かし始めようとしたので成功しないように中から防いでいたら、一刀がやって

 

 くるわ変な巨人が出て来るわで…色々大変だったのですよ、私」

 

 壱与さんは心底疲れたような顔でそう言っていた。

 

「ならば壱与さんのおかげで于吉が此処に入れなかったという事ですね。ありがとうご

 

 ざいました」

 

「礼には及びません、私は私なりに管理者としての任を全うしたに過ぎないのですから」

 

 一応口ではそう謙虚に答えていたが、壱与さんの顔は完全にドヤ顔をしていたりする。

 

「ところで…何故俺を此処に入れたのですか?あの爆発から守る為…という風にも見え

 

 ないのですが」

 

「ああ、そうでした。でも、それを説明するにはもう一人登場願わなければなりません

 

 ので…ほら、早く来なさい」

 

 壱与さんがそう言って何時の間にか持っていた縄を引っ張ると…何とそこには縛り上

 

 げられた左慈が転がっていたりする。しかも何故か亀甲縛りの上、口にはご丁寧にも

 

 ハーネスまでかませた状態でだ。

 

「何故左慈が此処に?しかも何故そんな縛られた状態になっているのです?」

 

「縛ったのは私の趣味です♪」

 

 壱与さんはそう言うなり縛られた左慈の背中を踏んで足でグリグリしていたりするの

 

 だが…ばあちゃんにそんな趣味あったっけ?じいちゃんがこんな事をされていたなん

 

 て話は聞いた事も見た事も無いのだけど。

 

 

 

「ああ、この趣味に目覚めたのは管理者になってからですのでご心配なく」

 

 壱与さんはそう言ってビシッと親指を立てていたが…管理者になってからって、管理

 

 者とかいうのは皆何処かおかしくなるように出来ているのだろうか?

 

「ほのおりぇを、ふぉかのるぇんちゅうひょ、ひっしょにするぬぁ!!」

 

 そして何やら左慈が喚いているが、残念ながらハーネスがはまった状態では何を言っ

 

 ているのかさっぱり分からない。

 

「は~い、良い子だから左慈君は少しおとなしくしていましょうねぇ~」

 

「ぬぐぁぁぁぁぁ!!」

 

 そこに壱与さんがさらに踏んでいる足で背中をグリグリするものだから、左慈は悲鳴

 

 のような声をあげていた…もしかして少し悦んでいたりとかしてないよな、こいつ?

 

「ところで、何故左慈は壱与さんに捕まっているのです?確か、于吉が生みだした巨人

 

 がこの外史を破壊するのを見届けるって何処かに消えたって聞きましたけど?」

 

「それはですね~、話せば長くなるのですけど…」

 

 …これはそんなに長くないパターンのような気がする。

 

「何処かへ逃げようとした彼をサクッと捕まえようとしたらこれまたサクッと成功しち

 

 ゃったというお話です。そしてあまりにも暴れようとするので軽く縛り上げてみたの

 

 です」

 

 やはりあっさり話が終わったようです。そしてあまりにもの左慈の不憫さには何だか

 

 泣けてくるような気がするのはもはや気のせいではあるまい…初めて登場してきた時

 

 にはまさかこんな扱いになろうとは思いもよらなかったのだが。

 

 

 

「うりゅすぁい!でぁむぁるぇ!!」

 

「ねえ、壱与さん。この人さっきから何か喚いているんだけど、何をしゃべっているか

 

 さっぱり分からないからハーネスを外してもらっても良いですか?」

 

「仕方ありませんね」

 

 壱与さんはそう言って渋々ながらハーネスを外す。

 

「ぷはぁっ!!…くそっ、何故俺がこのような目に!?」

 

「正体の知れたモブキャラの末路とかいうやつじゃないのか?」

 

「誰がモブキャラだ!!」

 

 左慈は俺の言葉に激昂していたが…何処からどう見ても立派なモブキャラにしか見え

 

 ない程度の扱いと化していると思うのは俺だけだろうか?

 

「そもそも于吉の企みは既に破ったわけだし、このままいなくなってくれれば俺として

 

 は万々歳なんだけど…どうでしょう、左慈君?」

 

「確かに于吉の最期の術が消えたが…ただそれだけだ!!この俺がいる限りまだ終わり

 

 では無…『は~い、聞き分けの無い左慈君にはもう少しおしおきが必要のようね』…

 

 があああああーーーーーっ!!」

 

 この期に及んでまだ強がりを言う左慈を見た壱与さんは左慈の背中をさらに強くグリ

 

 グリする。

 

「いい加減にしろ!この俺にこのような仕打ちをしてタダで済むと…『どうやら、まだ

 

 まだ元気なようなのでもっと強いおしおきをしようと思いま~す♪』…ぎゃああああ

 

 あああーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………しばらくお待ちください by一刀……………… 

 

 

「頼む、や、やめてくれ…もう二度と北郷一刀の邪魔はしないと誓うから…」

 

「あらあら、まだ言葉がなっていませんね~」

 

「待て…待ってくr…ください!」

 

 

 ………………再びもうしばらくお待ちください(哀) by一刀………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい、もう二度と北郷一刀様の邪魔も外史の破壊もしないと誓います!

 

 ですからこの左慈の、哀れな小僧の願いをどうか聞き届けてください…どうか、どう

 

 かこの通りです…」

 

 一体どれだけの時間が過ぎたのかは分からないが、壱与さんにおしおきをされ続けた

 

 左慈はすっかりただの下僕状態と化していた…正直近くで見ていただけの俺でさえも

 

 凄まじいばかりにドン引きする位に恐ろしいものだったからこうなるのも仕方が無い

 

 といえば仕方が無いのだが、少しだけ左慈に同情の念が湧いたのも事実だったりする。

 

「ふふ、良く出来ました。では…」

 

「よ、ようやく解放してくれるのですね…『そんなわけ無いに決まっているではないで

 

 すか♪』…ええっ!?だって、私はもう…『それとこれとは別ですし』…もう本当に

 

 勘弁してください(泣)!」

 

「嫌です♪(グリグリ)」

 

「いぎゃああああああああーーーーーっ!?あっ、あっ、あっ」

 

 壱与さんはそう言いながら左慈の背中を踏みつける。しかし俺の気のせいで無ければ、

 

 左慈の絶叫の中に悦びが混じっているように聞こえるのだが…まあ、左慈も色々と目

 

 覚めた物があったのだろうという事で。おそらく于吉は今頃、草葉の陰で悔し涙を流

 

 していそうな気もするが。

 

「ところで…結局俺を此処に入れたのは左慈が二度と外史の破壊をしないというのを俺

 

 に見せる為ですか?」

 

 俺がそう質問すると、壱与さんは一瞬『あれっ?』って顔をする。

 

 

 

「壱与さん?」

 

「ごめんなさい、左慈を苛めるのに夢中になっていてすっかり一刀を呼んだ目的を忘れ

 

 ていました」

 

 …おいおい、本当に大丈夫なのかこの人?

 

「無論、私は大丈夫ですから安心してください」

 

 …心の中の声にツッコミを入れないで欲しいのだが。しかも自分で『私は大丈夫』だ

 

 などと言っている人程信用出来ないものも無い。

 

「で?俺は何故此処に呼ばれたのです?」

 

「では改めまして…」

 

 壱与さんはそこまで言うと威儀を正して俺に問いかけてくる。

 

「一刀は元の世界に帰りたいとは思いませんか?」

 

 …えっ!?どういう事だ?壱与さんからの問いの意味を俺は理解しきれずにいた。

 

「ですから、元の世界に帰りたいのかこのまま一生この外史に残るつもりでいるのかと

 

 聞いているのです」

 

「帰るも帰らないもそもそもそんな術が無い以上、選択肢すら無い話なのでは?」

 

「ならば帰る術があれば帰りたいという事で良いのですね?」

 

 壱与さんの言葉の意味がますます理解しがたくなっている。理解しないというよりは

 

 理解する事を拒む自分がいるという表現の方が合っているのかもしれないが。つまり

 

 壱与さんの言葉通りならば…。

 

「はい、私の力を以てすれば一刀一人を元の世界に帰す事位たやすい話ですから」

 

 

 

 

 

 

 壱与さんはそうにっこり笑って答える。

 

 まさか此処でこんな話が出ようとは…あまりにもの展開に俺の頭がついていかない。

 

「さあ、どうします?きっと天刀さんも向こうで待っているはずです。私はもうあの人

 

 と共にいる事は出来ませんが、一刀がそれを望むのならあの人の所へ帰してあげられ

 

 ますよ?」

 

 …元の世界に、じいちゃんがいる家に戻る事が出来る?あの忘れかけていた日常に戻

 

 る事が出来る?俺がそれを望むならば…その気持ちはある。だが…。

 

 俺は答えを出す事が出来ずにいたのであった。

 

 

 

                                     続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 ようやく此処まで書けたのでお送りします。

 

 毎度毎度遅くなっていて申し訳ございません。

 

 しかし…我ながら書いていて左慈の扱いがあまりにも

 

 軽くなってしまったと思いました。左慈ファンの方々

 

 には誠に申し訳ございません。

 

 とりあえず次回はこの続きから…壱与からの問いに一

 

 刀はどう答えるのか?乞うご期待?

 

 

 それでは次回、第八十二話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 次回はちゃんとヒロイン勢の出番はありますので。

 

    そして展開上、あと数話で完結になる予定です。

 

 

 

 

 

 


 
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