(その一)
~建業城内~
「こうやって語らいながらメンマを肴に酒を飲む
これはまさしく至高の時だな」
「メンマは嫌いじゃないけど、そこまではね~」
「儂は肴なんぞなくても良いがの」
星、雪蓮、祭の三人はまだ日が高いにも拘らず酒を酌み交わしていた
「メンマの味が分からぬのか?
まあ良い これからじっくりと教えてやろう 時間はいくらでもあるのだからな
お互いに真名を預け合った仲でもあるしな」
そう、過日の毒矢の一件の後雪蓮達は一刀達に真名を預け、また預けられた
「お主達が真名を預けるまではこうして酒も酌み交わせなかった
我等に真名を預けてくれて、また我等の真名を預かってくれて本当に嬉しく思うぞ」
「そりゃね~、命の恩人なんだからいつまでも意固地になってられないわよ
母様の件にしても本人が満足して逝ったんだし・・・」
「まあ、戦の中でのことを恨みに思うのは無粋な事じゃ」
雪蓮も祭も気持ちの整理がついたことを告げる
「ところで星、教えて欲しい事が有るんだけど」
「うん?」
「一刀の正妻って誰がなるの?
鞘華が本命っぽいんだけど、こっちに来てから見てると静里も譲らない様だし・・・
凪も狙ってるわよね 巴も間違いないけど、あの娘って一刀の妹よね?」
「いや、天の国では妹でも妻になれると巴殿が言っていたぞ」
巴はそんな大嘘を密かに広めていた
一刀や鞘華が聞けば即座に否定されるが噂は広まれば消す事は困難 それを計算した上での行動である
「ふ~ん ま、それは良いとして
で、だれが一刀の本命なの?」
「それが一刀様はその手の事には全く触れないのだ
まあ、言ったら言ったで揉めそうではあるがな」
雪蓮は星の答えを聞くとニヤリとして
「それなら私も名乗りを挙げようかな」
「策殿?」
「ほう、雪蓮 本気か?」
「ええ、鞘華も静里も凪も強敵ではあるけどね
でもあの三人より私は有利なこの胸が有るわ
蓮華も一刀を狙ってるから蓮華の巨尻が最大の障壁ね」
喜々として語る雪蓮だがその背後から
「仕事をしないで男を狙う算段とは
とても見過ごせないわよね~」
「だれが巨尻ですか!」
「三人とも仕事をせずに酒盛りとは良い度胸だな」
鞘華、蓮華、冥琳が現れた
「出たー!」
三人の絶叫が響き渡り、売られて行く子牛のような目をして三人は引きずられて行った そして
「禁酒10日なんて殺生な~!」
と嘆く三人の姿が目撃された
(その二)
雪蓮は疲弊していた
冥琳に絞られたからでは無い 禁酒10日の所為でも無い
「そんなの無いって言ってるでしょ」
「何故隠すんですか!?」
「仲間にも言えない事なんですか!?」
雪蓮に詰め寄っているのは巴と氷雨である
雪蓮は連日の様にこの二人の詰問を受けている
「孫家に伝わる巨乳の秘伝を!」
「我等貧乳の希望となるべき秘伝を!」
「「是非、教えて下さい!」」
「そう言われてもね~
無い者は無いとしか・・・」
「いいえ、そんな事は有り得ません!」
「そうです あれだけ巨乳が陣営に揃うなんて!」
二人は引き下がらない
「思春や亜莎、それに妹のシャオだって巨乳じゃ無いわよ
蓮華も小さくは無いけど巨乳よりの普通でしょ」
「思春は隠密としての仕事が有るので巨乳が邪魔なのでしょう」
「亜莎はまだ仕官して間もないと聞きます」
「シャオは・・・秘伝を受け継いでも稀に出る例外とか」
「蓮華さんは巨尻の秘伝を継承しているのでしょう」
雪蓮の説得を二人は完全に跳ね除ける
「なになに、シャオがどうしたの~?」
その場にシャオが現れた
「ああ、実は・・・」
巴と氷雨が説明すると
「雪蓮お姉様!
そんなのシャオは聞いてないよ!
シャオにも教えてよ!」
雪蓮に詰問する人物が三人に増え
「勘弁して~」
雪蓮の嘆きが場内に響き渡った
(その三)
~一刀視点~
「ねえ~、鞘姉
私にもやらせてよ~」
俺の部屋で巴が鞘姉に訴えている
「自分で作れるようになってから言いなさい」
鞘姉は譲らない 何を? それは俺に食事を食べさせる役目である
左慈達を追い払う為一時回復の鍼を打ってもらった
だがその反動で3日経った今でも俺は箸を持つのも億劫な状態が続いている
で、食事は食べさせてもらうしか無い訳で・・・
因みに朝は鞘姉、昼は城内勤務が多い静里、夜は昼間の警邏で買い出しが出来る凪が担当してくれている
まあ、三人が譲らなかったので折衷案として採用したのだが
何故巴が加わらなかったのか?それは巴がとてつもなく料理下手だからである
「北郷家の女たるもの料理は出来て当然!」
この家風の元、母さんと婆ちゃんは巴に料理を教えようとした だがその出来栄えは及川曰く
「人類最凶の産業廃棄物」(巴は肉じゃがを作ろうとしたらしい)
「食材から作った化学兵器」(巴はカレーを作ろうとしたらしい)
「兵器転用したなら神も悪魔も屈服させる、食材の錬金術」(・・・)
と、とんでもない物なので母さんも婆ちゃんも諦めてしまった
そして我が家で巴は調理禁止となっている
因みに巴が作った「人類最凶の産業廃棄物」等は厳重に封印して地面に埋めてある
鍋を腐食させ、庭を死の荒野にさせないかが北郷家の懸念だ
「う~、私も一兄に”あ~ん”って食べさせてあげたい!」
嬉しいけど照れくさい兄の心情を察しなさい
「まってよ・・・
此処は家じゃないから『調理禁止令』は無効よね」
まさか!
「それにやって見なければ上達もないし・・・」
よせ!
「待ってって!直ぐに上達して見せるから!」
そう云って巴は飛び出して行った
俺は起き上がるのもやっとなので巴を止められなかった
そしてその日の厨房は阿鼻叫喚の坩堝であった
~あとがき~
孫家が加わって初の拠点です
だから一と二は孫家がらみの話です
三は巴の新たなスキル(?)です
これで主要三国に料理下手が居ることになりました
(蜀の愛紗、魏の春蘭、北郷家の巴)
だれが最”凶”なのか・・・
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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日常の出来事⑤