No.801459

リリカルST 第5話

桐生キラさん

Tサイド
サブタイトル:初めての教導

2015-09-10 16:10:15 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1960   閲覧ユーザー数:1859

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ティアナさん、凄いです…」

 

「ふふ…エリオも、歳の割には随分と逞しいわね」

 

私とエリオの額には汗が浮かび、頬は紅く上気する。朝っぱらから思っていた以上に盛り上がり、際限なしに激しくヤリ過ぎてしまった。なんとはしたない。

 

「うっ……僕…もう……」

 

「あら?もう限界?まだイケるわよね?若いんだもの」

 

体と体が絡み合い、エリオと私の吐息が混じり合う。時折エリオから漏れる悩ましい声が、エリオに限界が近いんだと思わせる。それでも頑張って我慢するエリオがとても可愛いから、私もついつい虐めたくなってしまう。

 

「ギ…ギブギブ!ティアナさん!ギブです!もうこれ以上は落ちます!」

 

首を絞められていたエリオが突然バタバタし始めた。どうやらもう潮時らしい。

 

「はい残念。お姉さんの勝ちね」

 

「ケホッケホッ!……うー…まさかサブミッションを極められるなんて…」

 

離してやると、大きく深呼吸したのち咳き込むエリオ。そんなエリオは涙目でこちらに悔し気な眼差しを向けてきた

 

「こればっかりは歳の差だと思いなさい。こっちはエリオよりも6年は歳食ってるんだから、その分鍛えた時間も違うのよ」

 

そう、エリオの武術のセンスは間違いなく私より上の筈だ。これが例えば同い年だったとして、同じくらいのトレーニングを積んでいたとしたら、恐らくエリオが勝っていたに違いない。

 

「なら、僕が16歳になればティアナさんに勝てますかね?」

 

「さぁ、それはどうかしら?6年、私も同じく訓練は欠かさないから、差が埋まるかどうかはエリオ次第なんじゃない?」

 

とは言ったものの、恐らく私は負けるだろう。センスが違うんだ。私のような凡人では限界がある。でも、だからと言って簡単に抜かれる気は無いけどね。

 

 

 

 

 

「ティアー!おっはよー!」

 

「おはようございますぅ…」

 

エリオとの組手を終え、しばらく休憩していると、スバルが大手を振って駆け寄ってきた。その後ろには、少し眠そうなキャロの姿もある。どうやら、なのはさんの教導の時間が近いようだ。

 

「おはよう、スバル、キャロ。スバルは相変わらず、朝からうるさいわね」

 

「えー!心外だなぁ!あたしだってその気になればお淑やかに振る舞えるんだよ!」

 

「ハッ!あんたがお淑やか?笑わせるわね!」

 

「あらティアナさん?そんな男子の様な言葉遣い、淑女がするものではなくってよ」

 

「キモいわ!」

 

「酷い!」

 

などという一連のコントは、私とスバルの間ではもはや当たり前なのだ。こいつのノリの良さはハンパ無い。だから私もついつい乗ってしまう。

 

「仲が良いんですね」

 

「キマシ?」

 

そんな私達のコントを、エリオは純粋に面白そうに見て、キャロは若干邪推してるように見ていた。キャロには後でお仕置きね。

 

「身の危険を感じました。今日は帰っていいですか?」

 

「ダメよ~キャロちゃ~ん。訓練もお仕事の内なんだから」

 

「クッ…働きたく無いでござる!」

 

なんだかキャロって変わった子よね。なんの影響なのかしら?

 

 

「ティアナの言う通りだよ、キャロ。今日からしっかりしようね」

 

 

突如、上空からとんでもないプレッシャーと、存在感のある女性の声が聞こえた。その声のする方へ向けば、眩い太陽の光を背に受けた白い女性がゆっくりと降りてきた。

 

高町なのは一等空尉…

 

管理局が誇るエースオブエース

 

なるほど、確かに凄いわね。昨日見た分には普通に優しそうな女性なのに、バリアジャケットを纏っただけでこうも変わるものなのね。まさに百戦錬磨の猛者と呼ぶに相応しい空気だ。優し気な笑みを浮かべている筈なのに、身震いしてしまいそうだ。

 

「ふふっ、みんな揃ってるみたいだね」

 

なのはさんが大地に立つと同時に、私達四人は整列し、姿勢を正した。

 

今日からこの人の教導が始まるのだ。気を引き締めていかなければならない。と言うのも…

 

「うん!流石だね。もしここで整列しなかったら問答無用でバスターだったよ」

 

この方、生粋のスパルタ教導官なのだ。

 

高町なのはの噂は良く聞いていた。

 

曰く、限界を越えて扱きあげ、砲撃を撃てばそこは焦土と化し、お話をするのかと思えば砲撃を撃ち、敵には警告すらせず砲撃をぶち込む。その力はどんなロストロギアよりも強力で、砕けぬものは何一つないと言われる程である。そんな危険極まりない砲撃を撃つのが大好きで、彼女が通った道には文字通り何も残らないらしい。その事から、付いた異名が「砲撃魔」やら「管理局の白い悪魔」だとか。

 

所詮は噂だと思いたいところなのだが、陸士訓練校時代に知り合った子が実際になのはさんの教導を受け、虚ろな目をして帰って来た事は未だに忘れられない。夢の中ですら「ピンクの光が……イヤ!イヤァァァ!!!」と叫ばせるなんて、どんだけトラウマを埋め込むのかしら?

 

それでも、彼女の教導を受けた者は皆現場で活躍し、出世していると聞く。その知り合いも別の現場で小隊長になったらしく、話を聞いてみたら「あぁ、なのはさんの教導に比べれば、犯罪者の魔力弾なんてオモチャの弾丸と一緒よ」と語っていた。ちなみにそう語る彼女は悟り切っていた。

 

「改めまして、今日からフォワード、スターズ分隊の隊長、並びに皆さんの教導を務める事になりました、高町なのは一等空尉です。よろしくね」

 

『よろしくお願いします!』

 

声を揃え、元気良く答える。別に打ち合わせをした訳でも、念話でタイミングを合わせた訳でもないのに揃った辺り、息はぴったりなのかもしれない。

 

「うん!新人は若さが売りで良いよね!私もビシバシ行くから、みんなも最後まで付いてきてね!よーし、まずはランニングから行こうか。軽く10㎞行ってみようか。タイムは……初日だし、20分もあれば行けるよね?」

 

「え…?」

 

その提案に難色を示した声を漏らしたのはキャロだった。私やスバル、それにエリオならイケるだろうけど、恐らくキャロの身体能力は並なのだろう。10kmを20分で走る場合、単純計算で時速30kmの速度で走らないといけない。一般的な十代女子の速度が大体時速20kmくらいだから、かなり頑張らないと無理だろう。

 

ちなみに、私やスバルは10km程度なら15分もあれば行ける。全力で走れば10分切る事だって出来る。その場合は氣や魔力を全開にしないといけないけどね。

 

「ちなみに20分越えたらバスターだから。その時は覚悟してね♪その代わり、しっかり自分の足で地面を走れば、どんな手を使っても構わないからね?」

 

おっと、ここで救済措置が入ったわね。かの砲撃魔殿と言えど、普通は無理だという事はわかっていたようね。良かったわ、まだマトモな思考が残ってい……

 

「それじゃあ、準備はいいかな?ちなみに10分経ったら魔力弾を撃って行くから、躱すなり防ぐなり、気を付けていってね♪」

 

……訂正。これはマトモなのかしら?

 

「じゃあ行くよー!よーい、スタート!」

 

ちなみにスタートの合図も砲撃なのだけれど、これはもうツッコンではいけないのかしら?

 

 

 

 

 

ランニングにて、トップを走るのは意外にもキャロだった。その後ろをエリオ、スバル、私の順で追い掛ける形になっている。その差はそんなに開いていないが。

 

「キャロ、意外と走るの速いのね」

 

「ふっふっふ!何でもアリならそこそこ出来るものなんです!」

 

恐らく脚力を魔力でブーストしているのだろう。地面を踏む度に小さな魔法陣が展開されている。

 

「キャロは魔法、特にサポート系の魔法が得意ですからね。本人がやる気を出せば、結構強いんですよ」

 

エリオが付け足す様に説明してくれた。そのエリオも魔力で少しブーストしている様だった。

 

「ま、基本的にやる気なんてありませんけどね。でもバスターは嫌なので、ちょっと本気出します。加速装置!」

 

そう言ったキャロは凄い速さで走り去ってしまった。彼女はサイボーグか何かなのかしら?

 

「ん?なんでキャロ、突然速くなったんだろ?」

 

スバルは疑問を抱いた様だが、私はキャロの真意を恐らく理解し、時間を見て確信した。そうと分かればモタモタしてられない。

 

「悪いわねスバル。私も先に行くわ」

 

「あ、僕も!」

 

「え!?あ、ちょっと!?」

 

私とエリオは共にスピードを上げ、スバルを置いて走り去った。その直後…

 

「え?あれ?なんかピンクの粒子が周りを…キャアアアァァァァ!!?」

 

ピンクの魔砲が横を通り過ぎていく。その軌道は正に、先程までスバルが走っていたコースだった。当のスバルは…

 

「はっ!はっ!はっ!あ、危なかったぁ!あ、当たってたら…」

 

魔砲が貫いた先には、コンクリートの大きな壁があり、その中心にはぽっかりと穴が開いていた。非殺傷とは一体何なのか…

 

「ッ!?またピンクの粒子が!?あれ!?あたし狙われてる!?」

 

スバルもようやく気付いたか。やはり、最後尾を走っている奴が狙われるのね。さっさとペース上げて良かった。後は適当に、スバルに抜かされない程度に、スバルとは同じコースを走らない様に心掛けよう。

 

 

 

 

 

さてさて、ランニングを終えて朝食と言う名の一服を終える。その頃にはランニングでボロボロになったスバルもある程度回復していた。

 

「ランニングでボロボロになるなんて、今まであったかな…」

 

とは、スバルが空を見上げながら漏らした呟きだった。あの元気だけが取り柄のスバルを虚ろにするなんて、流石世に名高い高町教導官ね。

 

「さぁ!朝ご飯も食べて元気一杯になった事だし、本格的に教導いってみようか!」

 

『はい!』

 

そして迎えた教導の時間。私達はバリアジャケットを身に纏い、それぞれデバイスをチェックしていく。デバイス良し、弾丸良し、コンディション良しのオールクリアね。

 

「今回の教導内容は至ってシンプル。私達が戦うべき敵、そのコピーを倒してもらいます」

 

そう言ってなのはさんが用意したのは、長丸いフォルムの怪しい機械だ

 

「私達の目的はレリックの回収。このガジェットはレリックのある場所にならどこにでもいて、必ず邪魔をしてくると言っても過言ではありません。だから、皆にはまず、敵を知ってもらいます」

 

ガジェットが宙に浮き、フワフワと何処かへ飛んで行く。私達はそれを見送ると、それぞれ気を引き締めた。

 

「さぁ、いってみようか。ガジェット討伐訓練、開始!」

 

なのはさんのバスターが天上へと打ち上がる。それがスタートの合図となり、私達は一斉に駆け出した。

 

「スバル、エリオで先行!キャロは私のバックアップに!」

 

「「「了解!」」」

 

スバルとエリオが一気に駆け抜けていく中、私はフィールドの一番高い、見晴らしの良い場所に陣取る。キャロはそんな私に付いて、私に補助魔法を掛けた。

 

「ティアナさん、ブースト1分300円になります」

 

「残念ねキャロ。私、地球の通貨は持ってないわ。それよりも……早速見つけたわよ!」

 

キャロの冗談を軽く流し、ビルの中にいたガジェットを発見する。距離にして100mもない。ここからなら余裕で狙撃出来る。

 

私はアンカーガンを取り出し、目標に照準を合わせる。魔力を銃先に溜め、意識を集中して…

 

「シュート!」

 

魔力弾が真っ直ぐ目標目掛けて飛んで行く。鋭く、疾い弾丸が一気に目標のモノアイを…

 

「ッ!?消された!?」

 

貫かなかった。

 

弾いたのとはまた違う。何か、目標に当たる直前で減衰して、そのまま掻き消されたかのようだった。

 

ただのガジェットじゃない?何かカラクリがある…対魔力か魔力の無効化か。魔法攻撃に対してだけなのか、それとも…

 

「………」

 

私はもう一つの銃をホルスターから取り出す。咲希さんと共同で作った45口径の銃をモデルにしたオートマチック拳銃。だけど、放たれるのは銃弾ではなく…

 

「これならどう!」

 

氣の弾丸だ。

 

その銃は私から氣を吸い取り、そのまま圧縮し、氣弾を生成してくれるものだ。普通に氣弾を撃つよりもエネルギー効率が良く、一定以上の威力を撃てるので、私のような凡人には正に御誂え向きなのだ。

 

私は銃を再び目標に定め、引き金を引く。弾丸は真っ直ぐと目標向かって飛んでいき、今度は…

 

「Beautiful 」

 

「ありがとキャロ」

 

ガジェットを貫いた。

 

これで分かった事がある。ガジェットは物理に対してはしっかり攻撃が通る。魔法に対しては何らかの工夫がされているみたいだが。でも、その正体に心当たりが無いわけではない。恐らくは…

 

「AMFね」

 

「知っているのか雷電?」

 

誰が雷電だ。

 

Anti Magilink-Field、通称AMF。魔力による干渉を無効化する、魔導師の天敵みたいなAAA級の魔法防御。一種のジャマーの様なもので、フィールド内にいる魔導師の魔力結合を阻害するものだ。

 

「えぇ、魔力無効化フィールド。多分、あのガジェットはそれを常時展開している。並みの射撃魔法じゃ貫けないわね」

 

「えー、なにそのチート。対策とかあるんですか?」

 

「あるわよ。例えば、ヴァリアブルシュートみたいに、弾丸に別のバリアを纏わせておけば、そのバリアが剥がれている間に敵を貫ける。もしくは、AMFで消しきれない程の超高密度の魔力攻撃で攻撃すればいいだけ」

 

ただ、後者に関してはそれなりに実力のある者でないといけない。目安で言えば、AA以上の魔導師ね。

 

「なるほど、先程のティアナさんの攻撃はどっちなんですか?」

 

「ん?あれはまた別ね。近いもので言えば、質量兵器の様なもの。全く別物だけどね」

 

「……氣、ですよね?」

 

わぉ、この子知ってたんだ

 

「正解よ。エリオも使えるわ。あれを活用すれば、機械くらい余裕で砕ける」

 

ちょうどいいところにガジェットが近くを通る。私をそれを見つけるやいなや飛び降り、拳に氣を溜めつつ、重力に従って降りていく。落下地点にはガジェットの頭。そこに…

 

「頭からどーん!」

 

私の拳が突き刺さり、そのまま真っ二つに割れた

 

「どうキャロ?魔法がダメなら体術よ!」

 

「レベルを上げて物理で殴ればいいって訳ですね?わかりやすい程の脳筋です、本当にありがとうございました」

 

こいつらが私達の敵になるなら…うん、大したことないわね。仕事だからちゃんとやるけど、まだ教導に集中してた方がスキルアップに繋がりそうね

 

 

 


 
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