No.797965

突発!乱の書き逃げ劇場5「デスノート・if END」

さん

(`・ω・)ハッピーエンドスキーの乱には珍しくちょっとダークな話。

2015-08-23 15:29:39 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2108   閲覧ユーザー数:2068

 

「こんにちわ!熊猫宅配便です」

 

一人の男が宅配便の配達をしている。

彼の名は松田桃太、嘗ては日本捜査本部でキラを捕まえる為に活動していた刑事であった。

だが今では、その職もすでに辞していた。

 

 

《昨日、○国の△地区においてテロが起こり、軍とテロ組織の銃撃戦で一般市民に数百人の死傷者が出ました。この事態に○国の首相は…》

 

《□×中学で起きたいじめによる自殺事件ですが、校長はいじめを把握していなかったと…》

 

《逃亡を続けている連続殺人犯の×村□夫の足取りは今だつかめておらず…》

 

 

配達用の車に乗り込もうとした彼の耳に、電気店のTVから色々な事件のニュースが聞こえて来る。

それを聞いた彼は乾いた笑みを浮かべながら一年前の"あの出来事"を思い出す。

 

―◇◆◇―

 

=大黒埠頭YB倉庫=

 

今、此処で一つの歪んだ人生が終わろうとしていた。

キラとして、新世界の神になろうとした男、夜神 月の人生が。

 

作り物の(ろう)の翼で太陽を目指した《イカロス》の様に…

神に成り変ろうとした堕天使《ルシファー》の様に…

 

彼もまた、この場所で全てを失っていた。

 

「リューク!デスノートに奴等の名前を書いてくれ!奴等を殺すんだ!」

 

『……名前か。いいだろう、書いてやる』

 

そう言い、自らのデスノートに文字を書き始めるリューク。

 

「や、止めろーーーっ!!」

 

それを止めさせようと銃を撃ちまくる相沢達だか、その弾丸は死神であるリュークの体には当たる事無く、空しく素通りしていく。

 

『悪いな。俺は死神だからそんな物は通用しない』

「ハハハハハハハッ!ざまあみろ、これが新世界の神に逆らった愚か者共の末路だ!」

「ラ、月君…、君って奴は!!」

 

松田桃太は怒りと悲しみと蔑みとが入り混じった視線で月を睨み付ける。

信頼し、敬愛していた上司の息子で、世紀の殺人鬼「キラ」を逮捕するべく今まで共に闘って来た信頼すべき仲間であった月の信じがたい裏切りに心を痛めながら。

 

「どうだ、リューク。名前は書き終わったのか?」

『ああ、書き終わったぞ。ほら』

 

リュークはそう言い、自分のデスノートを月に見せる。

だが、其処に書かれていた名前は……

 

 

          夜神 月

 

 

「……リューク?…」

『月、もうお前は終わりだ』

「何を言う!コイツ等さえ消せば」

『此処に居る全員が死に、月だけが生き残る。それはつまりお前こそがキラだという動かない証拠になるだろう?もう何処にも逃げ場は無いんだ、いい加減に諦めろ』

 

中学三年だった頃に出会い、長い間共に過ごして来た死神は見た事が無い冷徹な目で月を見据えていた。

 

「そ、そんな、あと少しで…。新世界の誕生はすぐ其処にまで来ていたと言うのに…僕はこんな所で死ぬのか!?い、嫌だ!死にたくない、逝きたくないーーっ!」

『嫌だと言ってもデスノートに名前を書かれた者の死は覆る事は無い。お前が一番よく知っている事だ。そしてもうすぐ40秒、これで終わり。さよらなだ夜神月』

「嫌だ!僕には使命が、神として世界を救うという責任が…」

 

ドクンッ

 

「ぐっ、ぐああぁぁっ!」

 

名前を書かれてから40秒が過ぎ、月の心臓はその鼓動を止める。

 

「う、ううう。ち、ちくしょう…」

 

傷だらけの体で鼓動を止めた心臓を押さえながら月は無念に満ちた瞳を見開いたままその生涯を終えた。

 

 

パチパチパチ

 

ニアや松田達の目の前で二冊のデスノートが炎の中で灰になって行く。

 

「ではリューク、あなたのノートも渡してください」

 

ニアはそう言いながらリュークに手を伸ばすが、リュークはそんなニアを蔑む様に睨み付ける。

 

『はあ?何言ってんだ。渡すわけないだろ、馬鹿かお前』

「「「「なっ!?」」」」

 

その言葉を聞いて驚くSPKと日本捜査本部の面々。

 

『いいか、俺達死神の仕事はデスノートに人間の名前を書いてその寿命を戴く事なんだぞ。当然死神の数だけデスノートは存在するし、その二冊が無くなってもデスノートによる死ぬ人間が居なくなる訳じゃない』

 

リュークのその言葉に全員の表情は驚愕に染まる。

 

『シドウの奴も寿命が付きかけていたからな、ありゃ結構相当数の人間を殺している筈だぞ』

「な、なら我々のした事は……」

『ただの自己満足だ』

 

キラのデスノートによる殺人はもう起こらない。

だが、デスノートによってもたらされる人の死は終わる事は無い。

その事実にその場に居る全員の目は驚愕に染まる。

 

『それにな…』

 

リュークは倒れたままの月に近寄ると開いたままの目を閉じながら言う。

 

『たしかに月は途中で壊れちまったが、その目的は最後まで人間界を優しい世界にする事だったぜ』

「優しい世界?幾つもの人命を犠牲にしてですか?あなたが何を言おうとも彼が歴史上最悪の殺人者である事に変わりはありませんよ」

『お前にそれが言えるのか?』

「…どう言う意味です?」

『世界でこれからどれだけの人間が死んで行くと思ってる。キラが居なくなった事で再び始まる犯罪や戦争で今までとは比べ物にならない数の人間が死んで行く筈だ。そしてその原因が…』

 

リュークはニアを指差し、冷酷に言い放つ。

 

『ニア、お前だ。結局の所、お前が守ったのは世界でも人間でもない、法律だけだ』

「なっ!」

 

最後に冷たい骸となった月を寂しそうに見つめると徐に立ち上がり、ニア達に背を向けて歩き出す。

死神界に帰るのであろう、その姿は徐々に薄れて行く。

 

『人間界を救う為に殺人を繰り返して来た月、そしてこれから起こる戦争や犯罪で人間が死んで行く原因を作ったニア。はたしてどっちが本当のキラなんだろうな?』

 

凍て付く様な視線でニアを睨み付けながらリュークの姿は消えた。

其処に居る全員に何とも言えない感情を刻み付けて……。

 

 

―◇◆◇―

 

「松田」

 

運転席に乗り込もうとした彼に誰かが声をかけた。

 

「相沢さん、お久しぶりですね」

「ああ、お前も元気そうだな」

 

キラ対策室であった日本捜査本部は現在も存在しており、相沢は現在そこの室長を勤めていた。

 

「忙しそうですね」

「まあな。実はニア…Lから捜査協力を求められてな、彼が追っているマフィアが今夜あの大黒埠頭YB倉庫で麻薬密売の交渉をするらしい」

「そう、ですか」

「松田、お前さえ良ければ戻ってこないか?今は優秀な人材が一人でも多く欲しいんだ」

「…すみません」

 

復職を求める相沢に松田は俯いた頭を振りながらそれを断る。

 

「お前はまだ…」

「あの時リュークが言った様に世界はキラが現れる以前の姿に戻ってしまいました。勿論、月君がやった事を認める訳じゃありませんがそれでも…、戦争が止まったり、凶悪犯罪が激減していた事も事実です。……今の僕は一体何が正義なのか悪なのか、誰が正しいのか間違っているのか…解らないんです。こんな気持ちで警察として活動する自信は無いんです」

「…分かった。無理を言ってすまなかったな。仕事を頑張れよ」

 

相沢は松田の肩を軽く叩くとそのまま去って行き、松田はそんな彼の背中に頭を下げた。

 

 

その頃、三代目Lとして活動しているニアの所では…

 

「L!先日捕らえ、まだ世間には報道されていない犯人が収監先の牢の中で…」

「また心臓麻痺ですか?」

「はい。これで25人目です」

「一体どういう事なんだ!もし、デスノートを持っている人間が現れたとしても此処まで完全に隠蔽している犯人を特定できるハズなど無いのに?」

「L、これは一体?」

「私が気になるのは何も無差別に殺している訳では無いと言う事です。同じ様に隠蔽していても情状酌量の余地がある者や、反省をして自首して来た者、自身や家族を守る為に已む無く殺人を犯してしまった者達は殺されてはいない。この裁き方はまるで初代キラの様です」

「初代キラ…、夜神月ですか」

「夜神月」

 

殺された犯罪者達の書類を見比べながらL…ニアの脳裏にはある答えが浮かんだが、彼は頭を振ってそれを振り払おうとする。

 

(私は何を馬鹿な事を。しかし、もしそれが答えだとしたら。いいや、そんな事がある筈が無い)

 

ニアは必死にそれを否定しようとするが、一度浮かんだそれは消える事無く彼の心を侵食する。

 

(それを認めてしまえば私は……)

 

 

そして死神界……

 

 

ボロ布を頭から被った死神が窓から人間界を見下ろしながらデスノートに名前を書き込んでいた。

 

『おい、ゼルオギー、グック。あの見慣れない死神は誰だ?』

『ん?ああ、リュークか。あの死神とはあそこで窓から人間界を除いている奴か』

『さあな、俺達も気付かない内にあそこに居たからな。この所ずっとデスノートに名前を書き続けているぞ』

『ケケケ、仕事熱心なこった』

『へー』

 

リュークは何故かその死神が気になっていた。

そしてその後ろに立つと妙な違和感…否、既視感(デジャブ)を感じた。

 

(何だこりゃ?妙に懐かしい様な)

 

それは死神がデスノートに書き込んでいる名前を見て更に加速した。

 

(こ、この字の筆跡は…。ま、まさかな)

 

そんな風にリュークが呆然としていると目の前の死神が立ち上がり、被っていたボロ布がずり落ちる。

その姿は死神の様な異形の姿では無く、人間そのものでリュークはその姿を持ち主を知っていた。

 

「やあ」

『ま、まさかお前は?』

「久しぶりだね」

 

 

「リューク」

 

 

『月っ!?』

 

 

~THE END~

(`・ω・)と言うわけでオイラが独自設定で書いたデスノートの最終回っぽい何かです。

連載中はデスノートを使った人間は最後には死神になるんじゃないかと思っていたオイラは考えていたのでこの話はそれを元にしました。

 

 


 
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