No.793707

艦隊 真・恋姫無双 71話目

いたさん

また……続いた。 だけど、今度こそ終わりに!

2015-08-02 14:56:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1455   閲覧ユーザー数:1242

【 三つ巴 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 大広場 にて 〗

 

華琳は、一刀の言葉を聞いて驚いた。 

 

─────燃え盛る炎に包まれる城壁。 

 

鉄板で頑丈に施されている門の扉は、内側から閂(かんぬき)をかけて、簡単には外れないようにしてある。 本来は楊奉たちを逃さないために鍵をかけたのだが……逆の効果を生み出してしまった。

 

まさか、自分たちの退路を失う事になろうとは……考えていなかった結果だ。

 

一応……楊奉たちの使った抜け道を利用するのも手だが、あの揚奉が抜け道をそのままにしておく筈がない。 伏兵や罠とかを準備してあるのだろう。 

 

それに、抜け道の行き先も全然分からない、この人数で全員助かるのかも不明。 あまりに危険な賭けで、一刀としても華琳としても、真っ先に排除した場所である。 そうなると──生を求めるなら、答えは一つ!

 

────『壁を破壊し、脱出路を作り出す事!』

 

しかし、易々『破壊する』と宣う一刀には、唖然とするしかない!

 

石壁は幅一丈(約2㍍)以上ある。 幾ら、城内の壁とはいえ、漢王朝最後の城になるため、堅牢さは大陸随一を誇るといえよう。 

 

自分の居城の防壁を壊すとなれば、どれくらいの人数、道具、費用が掛かるか瞬時に判断。 費用はともかくとしても……数人で、近寄る事もできない城壁を刻を掛けずに破壊する! 

 

幾ら一部だろうと、簡単にできる筈がない!

 

ーー

 

華琳「あ、貴方……気は確かなの? この壁の厚さは一丈以上あるのよ! それをどうやって───!?」

 

一刀「それが、天の御遣いの役目さ! 曹孟徳殿、皆に出来る限り後ろに下がらしてくれ! それと遮蔽物で身を守る事を忘れないように!」

 

ーー

 

そう言って、一刀は仲間の所へ出向き指示をする。

 

ーー

 

華琳「………私たちには、手の出せない事をするようね。 ならば、その一部始終を見届け証人となりましょう。 天の御遣いが偉業を成し遂げた者を知る者として!」

 

ーー

 

華琳は踵を返し、諸侯たちが待ち望む場所へと向かう!

 

『今から起こる出来事を刮目して見よ!』と伝える為に────!

 

★☆☆

 

一刀は、狙い場所を定めるため……西側の城門へ近付こうとする。

 

華琳に対して、豪語したものの決定的な策が浮かばない。 

 

策は幾つか準備を命じた。 しかし……あの炎の正体を見極めないと決めれない。 もしかすると……策の選択により被害が広がる可能性があるからだ。 

 

燃える筈がない城壁を包み込む……不思議な炎。 

 

石の壁が……あれほど燃える訳がない。 始めは油を仕込んでいたと思ったのだが……炎の持続時間がやけに長く感じる。 一刀は腕に付けている時計で確認すれば……少なくとも三十分以上も燃え続けている計算!

 

ーー

 

一刀『油だけじゃない? 揮発性が早い物なら既に鎮火しているのに。 じゃあ……油ではない……別の何かか?』

 

一刀『……通常の艦娘の艤装ならば、このくらいの城壁を吹き飛ばす事は簡単だ。 しかし、肝心な砲弾に問題がある。 空砲用の砲弾、花火の玉とイマイチ威力が曖昧なモノが多い。 しかし、やり方次第で有効だろう』 

 

一刀『───艦載機に依る爆撃! いや、危険過ぎる! 炎の上昇気流や熱気で操作ミス、艦載機の誘爆の可能性が出てくるし、妖精さん達にも可哀想だ。 あの炎を鎮火させれば、何とか出来るのかも知れないけど………!』

 

燃え広がった城壁へ足を向けて、確認のために進もうとするが……

 

長門「提督、御自分の身を守る事を……忘れているぞ?」

 

一刀「あっ……そうだった。 どうしようかな……何か遮蔽物を捜して熱気を遮断しないと……」

 

一刀が長門より指摘され、改めて自分の服装を省みる。 

 

夏の軍服といえども、あの高熱の側に近付くには準備不足だ。 この場合、熱を遮断して肌に当たらないようにするのが正解。 何か適当な物で、熱を防がなくては……。 

 

そんな思いを察して、長門が顔を少し赤らめて───言い放つ!

 

長門「わ、私が提督の楯となろう! うむ、それがいい!」

 

一刀「………はっ?」

 

長門「長門型の装甲(装甲 75)は伊達ではないぞ? それに、あの光と熱に耐えきった実績もある。 提督を守る事ぐらい訳はない! だから、私と共に行き、提督は私の後ろへ隠れながら………」

 

一刀「いやいやいやっ! 誰が婦女子を楯にするなんて言った!? あそこの重装歩兵の鎧と楯を借りてくるからいいよ!」

 

一刀が顔を勢い良く左右に振った。 

 

すると……後ろから別の艦娘の声が聞こえる。 

 

霧島「さすがは司令ですね、良い考えです。 では、二着借りてきますので、些かお待ち下さい。 それまで、私のマイクをチェックして頂ければ、直ぐに時が過ぎますので………」

 

……にこやかに微笑む霧島が、後ろに佇んでいた。

 

長門「霧島よ……確かに鎧と楯が必要なのは分かる。 しかし、何故二着も必要になるのだ? まさか───」

 

霧島「当然、司令官を補佐する人物が、お傍に居なくてはなりません。 それに、司令官を散々侮ってくれた者が、再度命を狙いに来るかもしれません。 そうなると……他の艦娘の中では、僭越ながら私のみかと………」

 

長門「しかしだなぁ───ッ!?」

 

長門は、霧島の発言に驚き……発言者の顔を見つめた! 

 

ーーー

ーー

 

長門『私の正当な理由を足掛かりとし、更に搦め手で提督に接近しようとは───ッ!?』

 

霧島『チャンスの神様の頭髪は、前髪だけ長くて、後ろが全く無いそうです! 既成事実の積み上げだけが、提督の心を射止める術。 つまり、チャンスがあれば……何時でもモノにする。 これが金剛型の戦いですよ!』

 

ーー

ーーー

 

どこかのバトル漫画のように、相手の顔を見て意識を読む攻防戦が始まる。

 

だが……新たな挑戦者が参入する。

 

何進「いや! 私の方が装甲(装甲 190)が硬い。 私に任せおくがいい!」

 

長門「ど、どういう事だ? 貴艦の役目は皇女さま方を守護する事だろう! 提督を守る護衛の務めは──私こそ最適だ! 貴艦は、皇女さま方の護衛にと赴くがいい! 提督の護衛は、この長門に任せておけば心配ない!!」

 

何進「フッ……甘いぞ、長門よ! 漢王朝内での一刀の比重は、その地位より遥かに重い! だからこそ……私が直接守らなければならないのだ!」

 

霧島「艦娘が二人も居れば……大概の敵から守れます! 何進大将軍が居なくても平気ですよ!」

 

何進「私が傍に居れば、更に一刀の護りは完璧だ。 そう思わないのか?」

 

三人で『あーだこーだ』と言い合ったが、結局進展がないまま。 

 

一刀は、 余儀無く……三人の意見を採用して、付近まで一緒に行ったそうだ。

 

 

◆◇◆

 

【 龍田の告白 の件 】

 

〖 都城内 大広場 曹操軍陣営 にて 〗

 

華琳「………説明は済ましたわ。 だけど……まさか、貴女たちも此処に来るなんて思わなかったけど。 ………天龍サマ?」

 

天龍「へぇ~、あの時に名前を覚えてくれたのか。 まあ、あんな際立った戦い振りをみせたからな! さっすが、オレだぜ! でも……やっぱ、世界水準軽く超えてると覚えが良くなるのも当然ってもんか!? はっはっはっ!!」

 

龍田「~♪」

 

華琳「確かに……武力は桁外れ。 だけど、策に掛かりやすい猪突猛進型のようね。 他の御遣いサマから……そう言われない?」

 

天龍「───んだとぉ?」

 

華琳「ふふっ……まだ、気が付いていないの? 本当……カワイイわねぇ……」

 

天龍「ああん~? どう言う意味だぁ、コラァ!!」

 

ーーー

 

春蘭「貴様ぁ! 華琳さまに対して無礼───」

 

秋蘭「姉者、大丈夫だ。 華琳さまを信用して様子を見よう!」

 

春蘭「秋蘭が……そう言うのなら……」

 

ーーー

 

華琳「貴女、今の服装……もう一度よく見たら? 私は目の保養になって嬉しいし、他の兵士たちにも混乱が起きなくて、非常に助かるけどぉ?」

 

天龍「何を……!? ヤ、ヤバ──ッ! 服装が水着のままじゃねぇかぁぁぁ!!! み、見るなッ!! 見るんじゃねぇ!!」ダッ!

 

龍田「もぅ……天龍ちゃんたらぁ~♪」

 

華琳「貴女は……いつもの傍に常時居る……龍田サマ……」

 

龍田「そんな取って付けたような敬称なんてぇ~いらないわ。 普通に呼んで貰えば充分。 提督も天龍ちゃん、皆も畏まられるのは好きじゃないもの。 普通に~敬語とか使わず、会話して貰えば~嬉しいんだけど~?」

 

華琳「じゃあ……『龍田』と呼ばせて貰うわ。 だけど……私も『華琳』の真名を貴女に預ける。 そのまま敬称なしで呼んで欲しい!」

 

龍田「あらあら……いいの? 本当に? 私もね……真名の重要性は教えて貰ったから分かるわ。 とても大事なモノだって──」 

 

華琳「だからこそ──意味があるのよ! 御遣いから真名を呼ばれ、対等に付き合っている。 この事実を流布すれば……日和見を決めている豪族たちを味方に引き入れる事が出来るし、民の支持も上がるわ!」

 

龍田「まぁ……怖ぁ~い。 だけど……私たちと一蓮托生する気? もしかすると、何皇后の方が正義かも知れないわよ?」

 

ーーー

 

春蘭「馬鹿な事を抜かすなぁ! あの北郷が……いつもヘラヘラ笑っていた男が! 武人の面差しが宿る表情で、何皇后たちに対峙していたんだぞ? それを見抜けぬ夏侯元譲では無い! 義は北郷、お前たちの方に有りだ!!」

 

秋蘭「話の途中より意見を述べる事、どうか……お許しを。 私も姉者の意見に賛同します。 何皇后は兎に角、執金吾『揚奉』は、陳留付近の村を襲った賊たちより裏付けが出来ています。 白波賊の大頭目だと………」

 

ーーー

 

華琳「………御覧のように、私たちには有力な情報が入っているの。 私の領地へ、ふざけた真似を仕出かした執金吾に、義なんかあるわけないじゃない。 それに……あの男は信用できる。 あの揺らぎ無い信念を持つ男を!」

 

龍田「…………うふふっ、喜んじゃて良いかしら? こうも……提督が信頼されているのが分かると~嬉しいような悲しいような……妙な気分だわ」

 

華琳「でも……龍田たちの提督『北郷一刀』は、どうして……あれ程まで、命を尊重するの? 孫子九変篇に曰わく『愛民は煩わさるべきなり』……いつか、その想いで……龍田や他の仲間を失う事になる可能性もあるわよ?」

 

龍田「兵法に詳しい貴女……いえ、華琳にしては……まだまだのようね? それとも……女としての経験は無いのかな~?」

 

華琳「それが……何の関係があるの!」

 

龍田「提督はね? 私たちを再度……人殺しの道具に使いたくないのよ。 私たちの手は……既に多くの血で染められているのに……。 国の為と言う大義名分の下で何百、何千を。 本当に……馬鹿な一刀提督なのよ……」

 

華琳「………よく分からない答えね。 一人の将が、敵兵を何百、何千を討ち取った? 凄い武勲じゃない! そんな将を戦に出さず、大事に本陣に鎮座させる。 確かに馬鹿な男のする事ね!」 

 

龍田「………そう、馬鹿な提督よ。 だからこそ……私は天龍ちゃんと共に誓ったの! 一刀提督と共に生き、共に死す! 敵がどんなに強敵であれ、提督と共に前に進むと! ……本人の前じゃ~恥ずかしいから言えないけど~」

 

ーーー

 

春蘭「─────!」

 

桂花「…………そう」

 

ーーー

 

華琳「到底……理解なんてできない! そんな采配……私なら拒否するわ。 敗戦になる要素が多すぎるもの。 それに、そんな覚悟で、国持ちの州牧が戦で勝利を得られると思う? そんなの───有り得ないわよ!! 」

 

龍田「華琳……貴女なら知ってると思うけど、背水の陣を知ってるかしらー?」

 

華琳「………高祖に仕えし韓信率いる漢軍が、井陘の戦いで趙軍を破った戦術。 それがどうかしたの?」

 

龍田「提督はねぇ……私たちの指揮官でもあるけど、良き理解者、憧れの男性。 どの子も、私と同じ考え持っているから……提督を守る為に命を捨てて戦うわ。 『武士道とは死ぬこととみつけたり』………ってね」 

 

華琳「───! 死地を恐れる戦いじゃなく、死守を目指す戦い!? 北郷は、北郷一刀は……どうやって貴女たちを其処まで導いたの?」

 

龍田「提督は、私たちの欲しい物を知っていたってとこかな。 う~ん、だけど……提督がこの覚悟を知ったら絶対に反対するわね。 私たちを先に逃がして……自分を犠牲にしちゃう人だから。 実際……実行までしたのよー!」

 

ーーー

 

春蘭「─────あ、あぁあああ、アイツは!!!」

 

桂花「………………詳しい話を聞かせて!!」

 

ーーー

 

華琳「……私も聞きたいわね。 北郷一刀に──余計興味が出たわ! それに、犠牲をあれほど嫌う貴女たち御遣いが人殺しの道具? 戦を日常茶飯事として、人の死を当然のように受け入れてきた……私たちよりも?」

 

龍田「一刀提督以外……みんなね、それぞれ背負っているのよ。 多くの同胞を迎え、数々の激戦に身を投じ奮戦を繰り返したの。 青い海原に映える、暁の水平線へと勝利を刻み為……様々な最期を遂げた私たちだから………」

 

華琳「───どういう事? まるで……貴女たちは人ではない、何か別のモノだって聞こえるけど。 しかも、遂げたって……貴女たちは、全員生きている。 これは──何を言いたいの?」

 

龍田「ふふっ……いい女に秘密は付き物よ~? 一言だけ言えるのは……『外見だけで判断すると、痛い目を見る』ってことかな~? 私たちは、貴女たちの……何倍も……戦での悲喜劇を経験しているの。 遥かに過酷な事をね~」

 

華琳「…………………」

 

ーーー

 

季衣「お、お姉さん! その話、聞かせて! 聞かせてよ!」

 

流琉「お願いします! お姉さま!!」

 

龍田「お姉さん~? お姉さま? やぁ~ん! そんな風に言われた事なかったから~。 じゃあ……提督の事だけ話を聞かせてあげるわね!」

 

 

◆◇◆

 

【 桂花からの励まし? の件 】

 

〖 都城内 大広場 西門付近 にて 〗

 

燃え盛る炎の壁を、汗を流しながら見る一刀たち!

 

一刀「燃え盛る炎が……相変わらず勢いが衰えないか……!」 

 

霧島「はい……元は石壁。 油なら揮発性が高く、火勢も早々に衰えると思っていました。 しかし、あれは異常です。 幾ら予備の油壺を使い燃やし続けたとしても……かれこれ三十分も燃え盛るなんて明らかに変ですよ?」

 

長門「と……言っても、この時代に私たちの燃料になる重油も無いが?」

 

何進「しかし、大陸の西に行けば……石油が産出される! それを使った可能性が高いぞ?」

 

しかし、一刀が気になる臭気を感じる。 

 

……卵が腐ったような物、硝煙の臭いも混じっている。 相談役で一緒に居るという霧島に伝える。 普通の燃え方とは違うと説明して。

 

一刀「硫黄……だな。 火薬みたいな臭いも………。 石油だけじゃない、別の物も含んでいるみたいだけど」

 

霧島「───司令! もしかしたら、これは『ギリシアの火』かも知れません! そうなれば、水を掛ける放水は悪影響に繋がります!」

 

★ーー★ーー★

 

《ギリシアの火》

 

ローマ帝国より分割した、ビザンツ帝国の時に編み出した火炎放射器。 この兵器のお陰で、強力な他国の侵略から何度も撃退できたと言われる。 

 

しかし、ビザンツ帝国の秘密兵器だったため、その作り方、材料の製法も帝国崩壊と共に無くなり、断片的な資料した残っていない。

 

推測では、ナフカ、松脂、硫黄、硝石、ゴム樹脂等を含む物で、液体やゲル状の物を、入れ物に入れて投擲、または噴射して火炎放射器として使用。 水をかけても消えず、よけいに燃え広がったと言われる。

 

★ーー★ーー★

 

一刀「……軍事教科に出てきた《ギリシアの火》……か。 しかし、可能性はある。 楊奉は、ローマの重装歩兵を活用してくるんだ。 《ギリシアの火》を知っていたとしても……おかしくはない!! だけど……どうやって!?」

 

火の正体を解り、予想外な事に驚く! 水で火勢を弱める事も案に入れていた為だが、『ギリシアの火』では逆効果! 火元の種類によっては、対応する消火器が違うのと同じ理屈だ。 

 

しかし、火勢の衰えが見えない限り……このままでは危険! 他の手を使うしか無いが……必ず上手くいくか心配になる。 ギリシアの火は、それだけ情報が少ない未知の物だから─── 

 

雷「───司令官! 考えてばかりじゃ駄目よ! 行動を起こさないと、皆が蒸し焼きにされちゃうわ! 」

 

電「一刀さん! 数人が青ざめて倒れたのです! 脱水症状を起こしているから、早く処置しないと!?」

 

雷、電が背中の艤装をガタガタッと音を立てながら、走って近付いて来た!

 

一刀「分かってる! だが……失敗すれば!」

 

??「───文句を言いに来てみればぁ! アンタが陰でウジウジ悩むところ、ちっとも! 全然! まったく変わってないじゃない!」

 

一刀「え~と、君は………?」

 

桂花「……曹孟徳さまに仕える荀文若よ! 先日会ったばかりなのに、もう私の名前を忘れたの? いったい、どういう頭してんのよ? まさか、春蘭みたいに筋肉で出来てるワケないわよね? ほらぁ、何とか言いなさいよ!?」

 

一刀「………し、失礼」

 

桂花「ふ、ふん! 今度は忘れられないように、私の真名『桂花』を預けるわ! 大事な真名を預けるんだから、これで忘れられるワケは無いわよね? その代わり、私も一刀と呼ばせて貰うわ! ───良いわね!?」

 

一刀「あ、あぁ……それは良いけど。 何で荀文『……ギロッ!』……桂花が俺のとこに来る必要が? 」

 

桂花「龍田……んんっ! そぉ、そのぉ……か、一刀がねぇ! あんまり情けない顔して悩んでいるのが見えたから、わざわざ文句を言いに来てあげたのよ! ────か、感謝しなさい!!」

 

一刀「…………すまない」 

 

桂花「……いいこと? アンタの……一刀の取り柄はねぇ、自分を捨てて仲間を思いやる心。 どんな不利な事象が起きようが、仲間を助けようと決して屈しない心よ。 だけど……今の一刀は空回りしているわ!」

 

一刀「────!?」

 

桂花「立場を逆にしてみなさい! 一刀が私たちに助けられたら……後悔するでしょ? 『自分の力が足りないからだ!』とか言って……!」

 

一刀「そ、そんな事……ないよな? ………長門、霧島」

 

長門「うむ! 反論の余地が全くないな!」

 

霧島「見事な観察眼ですね……」

 

一刀「…………………」

 

桂花「───それと同じ事よ! 私たちだって一刀の力になりたい! 力を合わせて苦難を越えたいの! 私たちの被害を心配してくれるのは……い、嫌じゃないわ。 寧ろ……うれ……何よっ! そのぉ! にやけた顔はぁ!?」

 

一刀「い、いや! キツく言われる中、一服の清涼感があって……癒やされるな……と。 す、すまん! 反省してる、反省しているから!!」

 

何進「……………」 

 

桂花「ふ、ふん! 私が言いたいのは、一刀が傷付く様を見ながら、安全な場所に居る臆病者じゃないってこと! 多少の災いぐらい……自分で守るれるわよ! だから、多少危険だろうと自信を持って……やり遂げて見せなさい!」

 

雷「へえぇ……良い事いうじゃないッ!!」

 

電「その通りなのですよ! 一刀さん、私たちも───!!」

 

一刀「……………わかった。 それじゃ、皆にも力を預けて貰う! それで……この困難を打ち破ろう! ありがとう……桂花!」

 

桂花「────礼なんていいわよ。 ただ、これだけは覚えていなさい。 一刀が傷付き死んでしまえば……哀しむ者は大勢いる。 貴方が思っている程にね………」

 

 

◆◇◆

 

【 破壊……そして の件 】

 

〖 都城内 大広場 西門付近 にて 〗

 

雪風『司令ぃ~準備できましたぁ!!』

 

港湾棲姫『カ、一刀……一刀ナノ?』

 

一刀「───港湾棲姫もか! あぁ……大丈夫だ! 身体に怪我なんて受けてないよ。 どうだった……そっちの方は?」

 

港湾棲姫『ウン……朱里チャンノ……考エ通リ……別ノ兵士ガ居タ。 ホッポ……ワタシ……ソレカラ……』

 

文醜『これか? これに喋り掛ければいいのか? おぉーい! 御遣いの兄ちゃん聞いてっかぁぁぁ!? アタイだよ、文醜だぁ! 兄ちゃんとこのさ……えぇぇぇ──っと、あのちびっ子……何って名前だっけかな、斗詩?』

 

顔良『諸葛孔明さんだよ──! 文ちゃん!! ………すいません! 中軍校尉に所属する袁本初配下の顔良です。 孔明さんの予想通り、建物内に入り込もうとする、不審な兵士たちを確認したもので、問い質したら乱闘に……』

 

文醜『アタイの斗詩を傷物にしようなんてするからだ! アタイと斗詩、そこにいる手がカッコイイ姫さん、白いちびっ子の四人で壊滅させたんだぜ!』

 

港湾棲姫『………ワタシノコト……ソウイウ誉メ方スル人……初メテ……』

 

北方棲姫『劉辯、劉協! ブジナラ……返事……シテェ!!』

 

一刀「俺は北郷、北郷一刀だ! ………二人は無事だから安心してくれ!」

 

北方棲姫『………北郷? ヤ、ヤダァ! カエレッッ!!』

 

一刀「……………」

 

港湾棲姫『────ダ、ダメッ!!』

 

北方棲姫『ホッポヨリ……オネエチャン……トッタ……ワルイヤツ!  オネエチャン……ダケジャナク……劉辯、劉協タチモ! ────劉辯、劉協……カエセッ!! ホッポ……頼マレタ! 劉宏カラッ!!』

 

港湾棲姫『ホッポ……ソレハ……』

 

一刀「お姉ちゃんの事はすまない、今は謝るしかない。 だけど、劉辯、劉協皇女様たちを救いたいのは君と同じだ! 頼む、力を貸してくれないか!? この後なら、俺の出来る範囲で何でもする!!」

 

北方棲姫『ウゥゥゥゥゥ…………』

 

港湾棲姫『違ウノ! 悪イノハ……オネエチャン! ワタシガ……悪イノ! ホッポヲ……置キ去リニシタ……ワタシガ! ダカラ……一刀ヲ……恨マナイデ……!! ワタシガ……償ウカラ!!』

 

北方棲姫『……オネエチャン…………?』

 

港湾棲姫『……ホッポ……オネガイ! 一刀ノ頼ミヲ……聞イテアゲテ……!』

 

北方棲姫『………………』

 

港湾棲姫『……ホッポ……!』

 

北方棲姫『…………ワカッタ……』

 

一刀「────!」

 

港湾棲姫『………ホッポ!』

 

北方棲姫『ダケド……終ワッタ後……約束守レ!』

 

一刀「…………わかった! 約束を守る!」

 

北方棲姫『ジャア……ナニヲ……スレバ……イイノ?』

 

一刀「───俺が頼む場所を、集中砲火してほしいんだ!」

 

★☆☆

 

一刀「今より指示を出す。 まず、第一艦隊は空砲の『弾』を準備、狙いを一点に纏める! 場所は後でだ!」

 

金剛「提督の合図で、concentrated fire(集中砲火)を開始シマース! 遅れないで下さいネ!」

 

ーーー

 

一刀「第四艦隊は、水を全部手拭いに湿らせるんだ! 雷と電は一緒に来て、その艤装で狙いを定めてくれ!」

 

暁「大丈夫よ、司令官。 私に任せて!」

 

響「Принято(了解)」

 

雷「分かったわ! 私にドーンと任して!」

 

電「…………はいっ!」

 

ーーー

 

雪風より報告が入る。 

 

驚いたのは雪風のほかに港湾棲姫、北方棲姫、袁本初配下の二人までも救援に駆けつけてくれた事だった。

 

北方棲姫……港湾棲姫の妹分にして、姫系の深海棲艦の一角をなす敵の一隻。 

しかも、姉である港湾棲姫を連れて行った一刀を、かなり恨んでいる様子。

 

だが、ここには北方棲姫の遊び相手である劉辯姉妹、直接の上司になる何進も居る。 北方棲姫の火力が欲しかった一刀は、……何とか説得して協力を得る事に成功した。 

 

要求される物が何なのか解らず、いざという時は……自分の命を差し出す覚悟で行った結果だった! 可能性は無くも無いが……… 

 

雪風に再度、準備の指令を出した後……第四艦隊に命令を出す!

 

一刀が命じた事は……『一枚の長い布に結び直した手拭い』を燃え盛る門の上へ投擲し反対側まで垂らした。 水で濡らしてあるとはいえ、この火勢の中では長く持たないだろう。

 

次に、雪風に命じて……手拭いに水を集中して浴びせかけた。

 

雪風「あの白い布に向かって、お水をたっくさん掛けて下さい! だけど、炎が飛び散る可能性があるそうですよ? 気を付けて作業をお願いします!!」

 

文醜「よーし、任せな!」

 

顔良「あの布に向かって、掛ければいいんですね!」

 

二人は、事前に準備された水桶を掴むと、手拭い目指して放水する!

 

ーーーーーーー!!

 

辺り一面に水蒸気が立ちこもる。 火は水を被るが火勢に陰り無く、轟々と燃え、周りに熱気を送り続けた。 

 

周りには────変化は無い。

 

だが、一刀の指示は『注意しながら水を掛ける事』なので、それでも掛け続けた! 雪風は、手拭いの場所を目を凝らして見続けた。

 

………!

…………!

 

雪風「………あっ!」

 

──ー─!

─ー─ー─!

__ーー__ーー!!

 

雪風「し、司令ぃ! 壁に罅(ヒビ)が入りました!」

 

一刀『分かった! そちらから砲撃を最初に一回放ってくれ! 罅の具合を確かめながら、最終的に破片を全部──そちら側に飛ばすようにするから!』

 

雪風「了解ですぅ! 雪風、砲撃開始します!」

 

ーー

 

一刀「次は雷、電! 頼む!」

 

雷「此方も砲撃開始! ってー!!」

 

電「───なのです!」

 

ーーー

 

交互に砲撃を開始され、分厚い壁が少しずつ崩れていく。 

 

一刀が行ったことは、高熱を発する石壁を急激に冷やす事で、強制的に放射冷却を行い、石の硬度を脆くさせたのだ。 急に熱で体積が増やした石に、水を掛けると体積が縮み、石の構造が付いて行けれず崩壊したのである。

 

ーーー

 

一刀「北方棲姫は、門全体を軽く砲撃して欲しい。 出来れば……門の接合部を破壊してくれ! 門が一枚の板と化して吹き飛ぶように!」

 

北方棲姫「…………ワカッタ!」

 

一刀「北方棲姫の砲撃終了、撤退確認してから命じる! 第一艦隊、空砲を門全体に放ち、完全に吹き飛ばせるように準備してくれ!」

 

金剛「第一艦隊の真の活躍はこれからデース! もっと頑張るから目を離しちゃNo! なんだからネ!」

 

ーーー

 

実は……空砲といえども弾はある。 火薬の爆発からなるため密閉した弾が必要になるからだ。 

 

では、違うところは何か? 

 

それは、殺傷や破壊を高める弾頭の有無(硬さも含む)や発射に用意られる火薬量の多さである。 そのため、空砲だからと言って、決して過信してはならない物である。 

 

近距離や中距離なら、速さは普通の実弾並み。 火薬量は実弾より多く、弾頭が木やプラスチックで出来た柔らかい物だが、実弾と比べてだ。 破壊力も馬鹿にならない。

 

ーーー 

 

現に……どっかの海戦で、撃ち尽くした砲弾の代用で『古くて硬いチーズの塊』を砲弾代わりに使用。 大砲に詰め込んで敵側艦隊に撃ち込み『勝利』したという話もある。 

 

ただ、破壊力が凄かったとかじゃなく、驚いて逃げた結果……らしい。

 

ーーー

 

雪風より北方棲姫の砲撃終了と撤退完了の連絡を受け、金剛たちに空砲を撃つように命じる!

 

四隻の戦艦が、先に門の扉を狙い放つ! 一発派手に当たると、堅牢な扉が紙屑のようにひしゃげて、遥か前方に吹き飛んだ! 

 

次にアーチ状になって付近の石壁を砲撃! 

 

最初の弾着で、かなり脆くなっていた事もあり、大きな破片を前方に飛ばしながらも、砂上の楼閣のように……すぐさま崩れた。

 

『ーーーーーーーー!!』

 

後方より固唾を呑んで見守っていた者たちより、歓声があがる!

 

ーーー

 

蓮華「やったわ! 一刀がやってくれたわ!」

 

思春「………あれくらい……当然です!」

 

ーーー

 

華琳「…………」

 

桂花「………やれば出来るじゃない。 心配なんて……させないでよ……」

 

ーーー

 

月「月は……信じていました。 ご主人様が成し遂げる事を………」

 

詠「………ふん」

 

ーーー

 

星「さすが……主だ!」

 

稟「………どうやら、私たちの出番は杞憂のようでしたね?」

 

風「稟ちゃん……本当に……そう思いますー?」

 

稟「……風?」

 

風「嫌な予感がするんですよ……。 これが、更なる争乱の始まりのような気がして……ならないんですー」

 

星「まさか……黄巾? いや、そのような集まりも……各地を回ってみた時には無かったではないか! 天和たちに会えれば、即刻、主に引き渡そうと!」

 

稟「何かしら……変化があったのでは? 一刀殿が……あの将たちと共に降りてきた事により、私たちの関係も変わりました。 仕える国、関係する主要人物、そして──私たちの知っている事象さえも!」

 

星「───天は、何を成す為に我らを愚弄するのだ!? ただ、主と共に過ごしたい───それだけの為に!!」

 

風「天の考えは……風みたいな凡人さんに分かりませ~ん。 ですが、一つ言えるのは……天命に無駄などないんですよー」

 

稟「………一刀殿………」

 

ーーー

 

これにより、一刀たちは脱出可能となり、皆が無事に助かる事ができた。

 

 

 

 

 

───しかし、楊奉の策謀は更なる悪意として

 

───漢王朝に迫る!!

 

 

 

楊奉「洛陽の民共に噂を流せ!」

 

白波賊「───へいっ!」

 

 

 

 

『 劉辯皇女は皇帝の器に非ず! 都城の騒ぎを見よ! 』 

 

『 皇帝継承されると決まれば、天から怒りの使者が舞い降り、雷声が鳴り響く! 災いの炎は宮殿を焼き尽くさんと燃え広がったではないか! 』

 

『 天は漢王朝を赦さず───新しき皇帝を求めている! 蒼天は既に死に絶えた! 新しき黄天の世を迎えんが為に!! 』

 

 

 

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ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

予定より早く出来たのので、この作品を出そうとしたのですが……スマホが熱暴走を起こして、頻繁に電源が落ちまくり。

 

時間が掛かり、ようやく投稿できた次第です。

 

………たった四行で済む話が……8話ぐらい続く話になるとは、全く思っていなかったですね。 えぇ……本当に。

 

一応……あと一話で終わりにします。 

 

まだ、書けれなかったところも、あるものですから……

 

次回もまた……一週間後……かな?

 


 
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