No.792257

岐賽神-boundary-

D_knellさん

「ねぇ、主・・・こ ん な 姿 で も 俺 の こ と 愛 し て く れ る ?」

下らない連想から生まれた大和守安定(時々加州清光)視点の名状し難き物語
シリアスなのかギャグなのかどっちつかずな上、審神者描写・オカルト・メタ発言・電波・超展開・異形化(爬虫類)表現有り。本来伏せ字にすべき部分もそのまま書き起こしてる為、閲覧注意。
あと、一部キャラの口調おかしい

続きを表示

2015-07-27 01:47:43 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1361   閲覧ユーザー数:1361

巻頭歌

 

正だけでは人は成り立たぬ

正と邪、全て受け入れ引っ括るめて初めて己と成す

 

完全なる光は存在せず

完全なる闇も存在せず

どちらかが一方に傾けば

全て虚無に回帰する

──────────────名も無き気狂の狂詩より

 

──────────

 

ゴポゴポ・・・

ゴポゴポ・・・

 

気が付けば俺は暗い水の底にいた

俺は・・・確か・・・池田屋に・・・

 

「・・・い・・・で」

 

!!・・・誰・・・?

 

「おい・・・で・・・」

 

ゴポゴポ・・・

ゴポゴポ・・・

 

暗・・・い・・・

水・・・冷た・・・い・・・

そ・・・・・・みん・・・な・・・何・・・処・・・

 

冷たいか?暗いか?寂しいか?

 

おいで、河原の子よ、我らが同胞よ・・・

 

ゴポゴポ・・・

ゴポゴポ・・・

ゴポゴポ・・・

 

──────────

久々(ざっと数百年振り)に再会した加州清光〈あいつ〉の様子がおかしい

 

ここの審神者曰く、「この本丸の最古参で、敵との戦いから内番までそつなくこなし、新人へのフォローも欠かさないナイスガイ」だそうだが

 

「・・・それなんだけどさー、暇な時は殆ど離れの部屋で一人でいることが多いし、しかも余程の事で無い限り『入らないで』って言うし、それだけでなく『風呂は一番最後にして』って言うし・・・見せたくない傷でもあるのかなぁ?

安定、心当たりある?二人共、沖田総司の刀だから・・・さ・・・」

「と、言われても・・・

・・・かつて池田屋で修理出来なくなるくらいにまで酷使されたから、人の姿になった今でも全身傷だらけだったりして。

加州清光、 非人の生まれだから相当身形気にしてるし」

「それ、流石に言い過ぎだろ」

微笑みながら言う僕に、加州清光に次ぐ古参の愛染国俊が窘める

「まっ、オレも加州が色々怪しいのは同意。

この前、粟田口兄弟と蛍と一緒にテレビでハムスター特集やってた時に、通りがかった加州が

 

『美味しそう』

 

って一言呟いて一同ドン引きしてたな・・・

後で『ま、饅頭みたいだからつい・・・』って誤魔化してたけど、食い扶持に困った時に普通に食ってそうだな・・・生まれが生まれだけに」

「はむすたー?」

「ネズミの仲間でね・・・んーと、こういうの」

審神者はタブレットPCを取り出し、すぐさま検索をしだす

そこには丸っこい小動物の画像がズラッと並んだ

「可愛いね」

こりゃあいつも饅頭みたいと言うのも肯ける。

美味しそうかどうかは別として

 

「そういえば加州清光の奴、あまり食べないよな・・・その上、御飯あまり噛まずに飲み込むし」

「それでよく苦しくならないよなー。不思議過ぎるぜ!」

愛染国俊もあいつの食事中の挙動が気になってたようだ

 

「たまたまなんだろうけど・・・清光、今の所必ず雨が降ったり止んだりするタイミング言い当ててるよねー。雨だけでなく何時晴れるかも正確に当てているし」

さっきまでタブレットPCを操作していた審神者が声を出す

 

「それに関しては前に直接聞いたけど、焦った顔して『ほら、俺、河原の子だからさー』って適当過ぎる理由付けて誤魔化された」

確かにあいつの天気を読む力には何度か助けられたけど、不可解なのは確か。

 

「河原者ってそういうの出来るの?すごいじゃん!」

「いやいやそれはねーだろ!」

愛染国俊の冴えたツッコミが刺さる

 

ふと部屋の隅に目を向けると、戸の隙間から黒く細長いものが入ってきた

「・・・?!」

「うわっ?!・・・また蛇が本丸に入ってきたっ!!」

「今月入って何回目なんだろう・・・」

人に気付かれたのを察した蛇はすぐに外へ逃げ出した。

 

──────────

「ふぃー、危なー・・・って、今度は・・・」

まさか・・・偶然であってくれ・・・

もし、「秘密」に気付かれた時はどうしよっか・・・

──────────

本丸周辺ではよく蛇を見かける。

ただ、ここの蛇は皆一様に血のような赤い眼をしている・・・

 

まるであいつみたいな・・・

「また赤い眼をした蛇だったねぇ。赤眼の黒蛇とか日本にいない筈なんだけど・・・」

「うっかり誰かが逃がしてさ、そのまま野生化したんじゃねーの?」

 

スパーーーーーーーーン!!!

「大変だ!」

山姥切国広が叫びながら勢い良く戸を開けた

「おや、珍しいねぇ、切国が大声上げるなんて・・・で、どうしたんだい?」

「兄弟が・・・山伏国広が、黒い蛇を食べようとして捕らえたら・・・目の前で、一本の髪の毛に変わった。

その瞬間、俺も堀川国広も和泉守兼定も見たから錯覚ではない・・・」

 

「「「ふぁっ?」」」

僕達は有り得ない出来事を聞き、素っ頓狂な声を上げた

 

「えっ?えっ?」

「どういうことだぁ?」

僕も頭が追い付かない・・・

 

「・・・ところで、三人揃って何の話をしてたんだ?」

「あ、実はね・・・」

 

かくかくしかじか

 

「・・・ふん、確かに加州は色々気になるとこがあるな。以前、堀川国広が『兼さんが、この前清光さんが蛇と話してるのを見たって!「ぱーせるなんとか」って実在したんだ!』って」

「ぱーせる・・・なんとか・・・?」

聞き慣れない単語に僕は首を傾げる

「パーセルタング、昔の子供向け小説に出てくる蛇の言葉を解する能力のことだよ。

そういや堀国も和泉の兼さんも、その本お気に入りで何度も読み返してるみたいだね・・・なかなか返って来ないし」

「よく読めるよなー・・・あんなもん。途中から眠くなるし」

「よし、愛染くんには一時間座学の刑」

「えー?!」

(話、脱線してないか?)

 

僕と山姥切国広はただ苦笑いをする

 

「山姥切国広、他に気になる情報はあるかい・・・?」

「深夜の見回りをしていた長谷部が『池で黒髪の人魚のようなもの』を見たとか」

「人魚?」

「顔は人の形であったが、体が黒い鱗で覆われてた」

「えっ?人魚?それ詳しく聞かせて?!」

審神者が食い付いてきた

「俺も詳しくは知らないとしか」

「がくんっ」

すぐにうなだれた。

 

「でもさー、調べるに越したことはねぇんじゃねーの?夜中に池の周辺徹底的に見回るとかさー」

と、愛染国俊が言い出す。

 

「この際、ついでに清光の部屋に潜入、最悪強行突破する?」

「何時やるんだ?」

「今日の深夜」

「早いって」

「ちょっと夜の予定ない子達に声かけて夕飯後に作戦会議のあと実行で」

「加州清光はどうしとく?」

「んー・・・部屋に待機命令出しておくー」

 

──────────

「・・・」

これ、絶対絶命の大ピンチって奴ー?

──────────

時は子の刻真っ只中

池の周りには複数の刀剣男士達が見張っている

表向きは「人魚捜索部隊」と称しているが・・・

 

「実際は『加州清光の化けの皮剥がし隊』だよね。」

「間違ってはねぇな。」

僕と愛染国俊と審神者は、別働隊として離れにある加州清光の部屋へ向かっていた。

「で、主、何その『突撃!離れの加州清光!』と書かれた大きな杓文字は?」

「武器あれば便利かと思って。後は雰囲気」

「明らかに雰囲気ぶち壊しているような気がする」

 

と、色々話してる内にあいつの部屋の前まで来た。

 

「オレ達、その・・・『何か』に囲まれてねぇか?」

「その『何か』に睨まれてる感覚がひしひしと伝わってくるね・・・」

「取り敢えず部屋の戸を・・・うわっ?!」

部屋の戸に手を掛けた瞬間、不思議な力で押し出される感覚がした

「安定?!大丈夫?!!」

「あぁ、大丈夫だ・・・」

「これは・・・結界・・・?」

「ひっ?!な、何だこいつらは!」

愛染国俊の叫び声が聞こえた方向へ振り向くと、僕達は蛇に包囲されていた。

 

「僕が結界を解くから、安定と愛染くんは蛇を片付けて!」

「「おう!!」」

 

僕達は迫ってくる蛇を切り裂いた

 

が、蛇は瞬く間に別の物へと変わっていった

 

糸、髪の毛、草、石、鉄屑・・・

 

「「どういうことだ・・・?」」

あまりにも不可解な出来事に困惑しながらも、ただひたすら刀を振り回した。

 

「あ、やっと結界解けたよっ!突撃ィ!!」

 

スパーーーーーーーーーーーーン!!

審神者は勢い良く戸を開けた

 

「御用改めである!」

「まさかの時のスペイン宗教裁判!」

「奇蹟のカーニバル開幕だ!」

 

 

 

「あーあ・・・あれほど『入らないでね』って言ったのにね・・・」

 

僕達が見たものは・・・

 

一部が蛇と化し、僕達に向かって威嚇する髪

先端が二つに割れた舌

首に襟巻のように巻き付く赤い蛇

黒い鱗に覆われた両腕

足はなく、代わりに黒蛇そのものと化した下半身

そして・・・怒りに震える加州清光の姿があった

 

「あんった達っ、本っ当最低!!」

 

怒号と共にけたたましい落雷と激しい雨の音が鳴り響いた

──────────

「なんだなんだ?急に天気が荒れ始めたぞ?」

「皆屋内に避難しろ!!」

──────────

 

「・・・」

僕はただ押し黙る

「こんな醜い姿、皆・・・特に主と安定には見られたくなかった・・・」

 

「おいおい、何かのドッキリかよ?!」

愛染国俊が狼狽する

「残念ながら、ドッキリとかじゃないんだよねー・・・愛染」

 

「・・・清光・・・どうしたの、その姿・・・い、一体何が・・・?まさか・・・呪いか何かっ?」

審神者も狼狽する

「呪いかぁ・・・ある意味そうかもねー。

残念ながらどう足掻いてもこれは解けないから無ー駄っ。池田屋に行ったあの日から・・・」

 

「?!・・・お前・・・池田屋の時に何がっ・・・?!

確かお前は・・・」

「・・・あぁ、あの日・・・身体中が砕けた感覚がした瞬間、水の中・・・何故か刺さる位冷たくて冥い闇い水の中・・・にいたんだ。」

「水の中?」

「そう、そこにはね・・・名前を忘れてしまった川の神様が沢山いてさ・・・

多分俺、川の下の子だから川の神様に魅入られたんだ・・・きっと」

「まさか・・・」

「めでたく川の神様の仲間入り。ってね。

こんな姿になってしまったのもそのせい。差はあるけど川の神様皆こんなもんさ。

そこから枝分かれした神様もね。

川で生まれた命、川で死んだ命・・・『生みの親』も『兄弟』もみーんな名前も記憶も殆ど無くして川の神様になっちゃったけど、俺は何故か刀だった頃の名前も記憶も覚えててね・・・

主に呼ばれるまで『神様』として人間にちょっかいかけながら過ごしてた。

・・・愛されたかったからね。でもそこには俺の望む形の愛なんてなかった。」

「・・・」

「こんな見た目じゃ、愛される訳ないじゃん。

かといって仮初めの姿は長くは持たないから」

あいつは髪紐を解くと、瞬く間に解いた髪紐が蛇へと変化した。

「こうやって分霊を作ってさ、敵の偵察から日常の困り事の解決したり、更に天候の予知したり・・・主達が喜ぶのなら良かれと思って・・・」

「清光・・・僕達の為にそこまでしてたの・・・」

審神者が俯きながら口を開く

 

「でもさ・・・実際は皆、俺のこと不気味に思ったでしょー。

やけに察しが良過ぎるとか、天気の流れを百発百中で当ててるとか、皆と風呂に入りたがらないとか、少食で丸飲みをよくするとか・・・」

「おいっ!ぜ、全部聞いてたのかよ!!」

「勿論。俺の分霊はこの本丸には数え切れないくらい居るんだから当然一体見れば周りに十体は当然かな」

昼間の僕達の話、全部聞いてただと?!

・・・小さい蛇が死角にいるなら気付かないのも無理はない

 

「・・・長話はもうそれくらいにしよっか、見られてしまったからにはもう『かえらなきゃ』」

「かえる・・・って何処に?」

「『川』以外何処にある?」

「お前、勝手に何を言ってるんだ?!もしお前がいなくなったら他の皆が悲しむだろ!!」

僕はあいつに怒鳴りつける

「ったく、うざいよ・・・」

「んだとごるぁ!」

「二人共やめなさい!!愛染くん協力して!」

審神者と愛染国俊が取っ組み合いをし始めた僕達を引き離す

「「・・・ぐぬぬ」」

「大和守、今の加州相手じゃ体格差で負けるっつーの」

愛染国俊が僕を抑えながら言う

 

「 ・・・ねぇ、主」

「どうしたの?清光」

「こ ん な 姿 で も 俺 の こ と 愛 し て く れ る ?」

「勿論。蛇の姿見た時は驚いたけど、蛇の姿でも可愛いのは変わらないから自分から醜いとか言わないで」

 

「嘘吐き」

 

再びけたたましい落雷と、さっきより激しさを増した雨と吹き荒れる風の音が鳴り響いた

「えっ・・・」

「口では何とでも言えるけどさぁ・・・

じゃあ、どうして怖がってるの?!

どうして声も体も震えてるの?!

どうして身体中強張ってるの?!

どうして鼓動が何時もと違うの?!

どうして・・・どうして・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「ちょっと?!清光!!・・・熱っ!・・・酷い熱・・・本体も熱くなってる?!」

突如審神者の携帯が鳴り響く

 

「(獅子王からだ・・・)もしもし、一体どうしたの」

『てぇへんだ!さっきの雷が近くの山に落ちて火事になっちまってる!どうすればいいか指示頼む!!』

「わかった!今すぐ行く!」

 

「一体どうしたんだ?」

「一体・・・何があったんだい?」

「一・・・体・・・何・・・」

「近くの山で火事が起きたって!

愛染くんは冷却水と、僕の部屋の引き出しに入っている防水カバーをこの部屋まで運んで!

安定は清光の看病を!

清光は黙って休んでて!」

 

「「わかった!」」

「・・・」

 

審神者と愛染国俊は部屋を出た

部屋に残されたのは僕と病人(?)だけ

僕は布団を敷き、あいつを寝かせた。こんなに重かったか・・・?

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「清光・・・清光ッ・・・しっかりしろっ!」

「や、す・・・さ・・・だ・・・つ・か・・・れ・・・た・・・」

 

「冷却水と防水カバー持ってきた!」

愛染国俊が戻ってきた

速い。流石機動準最速

 

愛染国俊があいつの本体を防水カバーに入れた後、慌てて冷却水の中に放り込んだ

「愛染国俊、もう少し大事に扱えよ。」

「悪ぃ、あまりにも熱ぃから・・・」

心なしかあいつの表情が少し穏やかになったように見えた

 

僕は持っていた手拭いを冷却水で濡らして絞った後、あいつの額を拭いた。

 

「・・・頼む、二人っきりにさせてくれないか」

 

「わかった。オレ向こうの手伝いに行ってくる」

愛染国俊は山火事の消火に向かって行った・・・

 

「行ったか・・・ほら、お前もここに入ったらどうだ?」

僕は冷却水を指差し、あいつの首に巻き付く赤い蛇にそう言った。

赤い蛇は渋りながらも冷却水の中に入り、襟巻に変わった。

 

「あっ・・・」

 

あいつの首周りは黒く硬い鱗がびっしりと覆ってた。

僕は再び手拭いを冷却水で濡らし、絞った後あいつの首の鱗を隠すように置いた。

「・・・ごめん、僕もまだこの状況飲み込めないんだ。

多分・・・主も愛染国俊も同じ。

突然、何時もと違う姿を見たら・・・誰だってそう感じるよ。

そうすぐには受け入れることは出来ないよ。

 

けど・・・主の清光に対して言った答えは嘘ではないと僕は思う。

 

・・・なぁ、暫く時間くれないか?

今はまだ・・・心の整理が済んでないし

・・・何時か・・・どんな姿であっても、清光は清光であることに変わらないって胸張って言える日まで。」

 

──────────

夢を見た。

 

暗い水の底、あいつが一人泣いている夢

 

僕は泣いているあいつの傍へ寄った

 

「川の神」

「豊饒の神」

「日輪の神」

「雨の神」

「雷の神」

「富の神」

 

「知恵の神」

「病払いの神」

「刀剣の神」

 

「岐の神」

「賽の神」

 

「手向けの神」

 

「天災地変の神」

 

「祟り神」

 

様々な名前で呼ばれ、時に崇められ、時に傷付けられ、それに応え力を振るっても誰も救えない。

 

─あの人でさえも

 

例え救えたとしても、誰も「当然のこと」として礼を言ってくれない。

例え救えたとしても、誰も彼も何時かは必ず泡沫と帰すのだから。

 

何時しか自分達に縋る人々が皆、野卑滑稽としか映らなくなった。

 

もう本体も本来の姿も名前も当の昔に捨て去った筈なのに

「非人が打った、沖田総司の愛刀・加州清光」だった頃の「心」が

「他の加州清光」より強く残ってたが故に

 

─これ以上、心痛む思いはしたくない。

叶うなら・・・再び刀に戻りたい。

 

─遣る瀬ない思いばかりが心の中に溢れていた。

と、あいつは話した。

 

僕はただあいつの話に耳を傾けて頷くことに徹した。

 

あいつは話を続けた

 

 

 

─ある日、不思議な光と共に誰かが「刀としての俺」を呼んでいる声が聞こえた─

 

 

 

最初は聞こえない振りをしようとしたけど

その「光」から発する声に惹かれ光の方へ向かった

 

─この醜い姿で顕現しても拒まれるから・・・

 

そうだ、

 

─かつて俺を愛してくれた「あの人」が叶えられなかった理想と

──魚は沈み、雁は落ち、月は閉じ、花は羞る美貌と

───数多の偽りに固めた姿なら声の主は俺を受け入れてくれるに違いない

 

────────────────────────────

そ れ で も 完 全 に 隠 す こ と は 出 来 な か っ た

────────────────────────────

 

かつての疵痕を覆う黒い鱗はどうしても消えなかった。

人の姿をとるのがこんなにも疲れるとは思わなかった。

ボロを出す度に向けられる皆の視線が怖かった。

この醜い姿は誰にも見せたくない。

見せたくなかった・・・

 

「よしよし」

「?!」

僕はあいつの頭を優しく叩いた

 

「これ以上は泣くな。折角の綺麗な顔が台無しだぞ。」

「やす・・・さだ・・・」

「お前がこんな姿でも、僕と同じ沖田くんの刀であることには変わらない。」

「・・・」

「わかるだろ。僕が嘘ついてないの。」

「・・・つぅーよぉーがぁーるぅーなぁーって!まだ、怖がっている癖に」

あいつは僕に緩く巻き付いて尻尾の先端で頬を叩いた

──────────

 

「やーすーさーだっ!起きろっ!」

あいつの声が響く

今の夢、随分生々しい夢だったな・・・あいつが見せたのか?

・・・そんなわけないか

 

「お前、もう大丈夫なのか?」

「一応、熱は引いたけど・・・こんな姿じゃ暫く自由に外出歩けないじゃん・・・

目覚めたら、主は涙ながらに

『昨夜はごめんなさい。そうだよね、清光がこんな姿になって戸惑って迂闊な言葉で却って傷付けてしまうとか審神者失格だよね。清光、僕を許して』って言うし、

安定は安定で俺の隣で寝ながら涙流しているし・・・」

 

先端が二つに割れた舌

黒い鱗に覆われた四肢

同じく黒い鱗に覆われた自身の脚の長さとほぼ同じ位かそれ以上の尻尾

 

髪を結いながら愚痴るあいつの姿は、辛うじて人の姿を取り留めている

「・・・俺、やっぱり愛されているのかな?」

「?」

「ただの独り言」

「ふーん・・・主は今どうしてる?あと、その姿は・・・」

「朝食の準備に台所へ。

これ?昨夜、怒りで力が暴走して嵐起こしちゃったせい。その時に力使い果たして今はこれが精一杯。

足出さない方がもっといいけど、足あった方が場所取らないし・・・」

昨夜の急な嵐・・・あいつが起こした・・・だと・・・

暫く怒らせることは避けよう

 

あいつの携帯が鳴る

「もしもーし?あ、主!・・・えーっと、俺『生贄』食べたい!

えっ・・・用意出来ない?えー・・・俺のこと・・・嫌いになった・・・?」

生贄食べたいって堂々と言う神様がどこに・・・ここにいたか

 

(安定、何考えているかお見通しだから・・・次からは気を付けてね)

こいつ直接脳内に

 

「生贄とかそう簡単に手に入る訳無いだろ・・・」

 

「加州ー、大丈夫かー?」

愛染国俊の声が響く

「熱は下がったけど、暫くは休養する。本丸の仕事、愛染に全部任せた!」

あいつは意地の悪そうな笑顔で言う

「ひでぇ・・・」

「こらっ、小さい子に無茶させるんじゃない!」

「大和守、オレを子供扱いすんなよー!!」

 

 

 

「大丈夫ですか?!清光さんが熱出して倒れたと聞いて・・・兼さんと一緒に見舞いに来ましたー」

「加州ー、熱出したとか大丈夫かー?」

「清ちゃん、普段からあまり食べないからそうなるんだよ。ライチゼリー持って来たから残さず食べてね」

「なんちゃーがやないか?見舞いに来ちゅう。」

 

堀川国広と和泉守兼定と燭台切光忠と陸奥守吉行が加州清光の部屋に入ってきた

 

 

 

 「「「あっ」」」

「「「「?!」」」」

 

まず僕は清光に向かって峰打ちをかまし、陸奥守吉行に向かって真空飛び膝蹴りからの燭台切光忠にオーバーヘッドキック混じりの踵落とし、

愛染国俊は堀川国広に向かってアイルビーバックからの和泉守兼定に延髄斬りをそれぞれ決めた

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「今のことは誰にも言うな・・・

全部忘れろ・・・!

さもないとこいつの生贄として差し出すぞ!」

 

「ふたりとも・・・やりすぎ・・・あとそんなに・・・いけにえいらない・・・」

床に伏せってる加州清光の声は誰にも聞こえなかった

 

──────────

「きのうすごいあらしでしたねー。」

「あれは多分、誰かがこの本丸で暮らしてる水神様を怒らせた結果だよ」

「すいじんさま?いしきりまる、ほんとうにここにすいじんさまがいるのですか?」

「あぁ、何時も私達を助けてくれる『刀剣男士の姿』を借りた水神様が、ね。」

 

「昨日の山火事、凄かったわねぇ」

「しかし・・・誰が彼・・・水神の逆鱗に触れたのでしょうか?」

「兄貴ではないのは確かね」

「当たり前です、次郎。

・・・加州清光殿は何時までその姿を偽り続ける気なのでしょう?」

「あの子の性格的にずっと。だったりして」

 

後語り

 

何時もならツイッターで後語りしてるのですが、流石に毎回TLジャックはアレなので今回からここに書きます。ハイ

前回に続き、オリジナリティの欠片も無い上に読みにくい誰得小説を見て下さってありがとうございます。

(前回は前半部分が「蜘蛛の糸」の上、設定とかとある小説とか幼子の頃に読んだ漫画(タイトル失念)の要素が入ってたり・・・)

今回も今回で各所からのパクリとしか思えない要素だらけで何時刺されるかわかりませんヒヤヒヤしてます。

 

〖各個解説〗

【タイトル】くなどのさいのかみ。境界の神(荒覇吐とか御社宮司様とか。どちらも蛇に所縁有るし)。塞ではなく賽なのは賽の河原から

【巻頭歌】以前、旅行中即興で書いたけど公開タイミング逃しに逃して今更公開(最低)

【加州清光蛇化理由】加州は河原の子→川の神様は大体蛇か竜と所縁ある→蛇は生命(水とか豊穣とか死と再生とか)だけでなく刀剣とも結び付けられる→加州自体蛇っぽくね?・・・他あらあらかしこ。蛇人間萌えだからではないから!

【川の神様・・・つか水に関する神様全般?】様々な魂が混ざり合った生命のスープ(若しくは液体人間)状態。大小の差あれど皆蛇や魚に近しい姿になっている。名前を忘れてしまうのは様々な名前で呼ばれたりする内に、または段々忘れ去られていく為。記憶を無くすのは混ざり合った状態になる為。

【審神者の性別】前回もだが考えてない。僕と言ってますが・・・ボクっ子もあり得るのです。こんな世の中じゃ

【本丸の古参刀】自分の本丸が元です。同田貫が打刀になった所為で初太刀が鶯丸になりました←

【見るなのタブー】神話や伝承でよくあること。心の枷。もし、最愛の人の決して知られたくない「秘密(病気や障害、犯罪加害・被害、育った環境)」を知っても尚、その人を受け入れますか?

【ハムスターを美味しそうに見る加州】蛇だからね!マジでネズミの丸焼きとか美味しそうに食べてそう(酷い)

【殆ど噛まずに飲み込む】蛇だからね!←

【天候の予知】川とか蛇の神様は豊穣や天候の神様として崇められてることもあるから(いい加減)

【加州の分霊】適当なものに少し力込めるだけで出来ます(体色は元のものと同じだが、必ず赤目の蛇になる)常に身に付けてるアクセサリーは通常より強い分霊になります。分霊は数時間(加州の意志次第で調節可能)で元に戻りますが、分霊が得た情報は加州にも共有されるので偵察にぴったり

【土方組の読んでた小説】ハリーポッター。堀国が読んでる姿は想像出来るけど・・・和泉の兼さんが読んでる姿は・・・

【長谷部の見た人魚】加州本人。

【杓文字】元ネタの番組はケーブルテレビ加入するまで見れなかった(超ド田舎

【口上】てんでバラバラ。安定は新撰組のアレ、審神者はモンティパイソンのコント、愛染は・・・何でコレにしたんだろ・・・

【川で生まれ・死んだ命】正直、命の部分を「もの」と表記しようか迷った。まぁ、作品は作者の魂が込められてると解釈すれば

【世界一可愛いよ!】例え蛇になっても言えますか?←

【審神者に問い詰める加州】蛇は意外と察しがいい。大きくなると攻撃的になりやすいとされてる種類は、実際は「ねぇねぇどうして俺を怖がるの?どうして昔みたいに可愛がってくれないの?俺のこと嫌いになったの?もう!どうして答えてくれないの?!」ってキレてるとか。蛇を飼う際は大きくなっても怖がらず小さい時と変わらない愛情を注ぎましょう・・・やっぱ加州蛇だ

【突然の高熱】力を使い過ぎた結果。本体も熱くなる

【首の鱗】かつて加州が折れた時の影響。硬いし逆鱗みたいなもの

【様々な呼び名】神と言うのは分離したり習合したりして増えていく

【病払い】かつて沖田さんに実行したものの、上手く行かなかったorダイの大冒険におけるマホイミやらかしたかは御想像に

【人の姿】長時間してると疲れるので部屋に居るときは蛇になってる

【沈魚落雁閉月羞花】当初はそのまま使う予定だった。この上ない美人を意味する諺。由来は中国四大美人

【生贄】加州「ドブネズミ3匹くらいで充分」(安定は引いている)

【お見舞い】審神者、口滑らしたってよ

【加州に峰打ち】安定「再度の暴走を防ぐ為」加州「手入部屋送りにしたいの?」

【蹴技乱舞】二人共刀持ってるので腕使っての技で気絶に持ち込めないと判断した為。愛染のアイルビーバックは鴨居に掴まってやる変形版

【加州の正体に気付きし者達】少なくとも石切丸と太郎次郎とかの神社や寺暮らしは気付いてる、多分。あとジジイとか

【審神者と安定のとある台詞】以前、加州に纏わる諸問題(刀剣乱舞運営や公式絵師とかの)で「貴様等全員減してしまえ(要約)」とツイッターでのたまってました(但し心の中ではFワードとかSワードとか差別的表現のある地元方言言いまくってた)。今も(私的公的問わず)何かしらの制裁受けるべき(特に死を以て償わせる)だと思ってますハイ。それで悲しむ何処かの誰かの心が癒やされるのなら・・・。

「それで何かしらの動きが出て・・・もし突然加州のデザイン変わっても、今までと変わらず加州を愛せるか?」と問えば・・・ツイッターでは「詫びとして覇王加州(加州の渾名。理由は敵をなぎ倒し、経験値を泥棒の如くかっさらう為)プラチナブロンド化はよ」とか(上っ面では)のたまってますけど、本当の答えはまだまだ見つからない、と言うより揺らいでると言うか・・・二人のある台詞は(少し改変してるものの)愚生の中に出て来た「答え」の候補の一つです。上手く表現出来てないが・・・

 

あーでもこれだけは言えますね

『此岸の世、あらゆる希望や縁や興味はただの粗悪な麻薬にしか過ぎぬ、今すぐ断つべし。巡り回って辛く悲しい想いをするのは己自身なのだから。』

これさえ出来れば、愚生みたいに事ある毎に心揺らぎ傷付く駄目人間にはなりません。いやマジで

 

by DEATH KNELL a.k.a. シノマエヤツギ


 
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