No.782562

Dear My Friends! ルカの受難 第5話 電脳街の魔導大戦

enarinさん

☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第5話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

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2015-06-09 15:25:07 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:659   閲覧ユーザー数:656

(アキバ 大通り)

 

 フォーリナーの刺客3人と、ルカ姫側の3人は、とりあえずお互いの敵の様子を伺っていましたが、正確にはこの6人の中で一人だけ我慢の限界に達していた人物がいました。

 

 トニオ

 

 です。

 

トニオ「ひょ~! おい! プリマ! もう俺は限界だぜ! さっさと切り刻みてーんだよぉ!」

プリマ「(ん~、やはりこいつは人選ミスだったか。まぁ切り込み隊長として使えれば御の字か)…いいだろう、こっちは礫とガトリングで後方支援に回る。お前は“高速移動”の能力で、向こう陣営に切り込んでくれ」

トニオ「ひゃっほぉー! じゃあ、遠慮なく行ってくるぜ!」

 

 バシュ!

 

 トニオは羽を獲た鳥の様に、両手に装備したカギ爪である“アイアンネイル”を構えて、アペンド達のパーティに突っ込んで行きました。

 

トニオ「くたばっちまえよ~!!!!!」

 

 アペンド達も無策ではありませんでした。相手の能力を知っていたわけではないですが、トニオの“高速移動の能力とカギ爪”は見て解る範疇でした。

 

アペンド「素早い動きで切り刻み、相手を翻弄するタイプだな」

レン「残り二人が来ないということは、他は後方支援だね」

学歩「では、拙者がこいつの相手をするでござるから、残りは頼むでござるよ」

アペンド「了解。では私とレンで、後ろの二人を片付ける。出来るだけそっちに弾が行かないようにするが、気を付けてください」

学歩「了解でござる」

アペンド「では、散開!」

 

 ザッ!

 

 アペンド達も、決めた配置に各自が移動するため、パーティを散開しました。

(トニオvs学歩)

 

 トニオは散開したうち、移動線上の一番近くにいた“学歩”をロックオンし、突っ込んで行きました!

 

トニオ「まずは、侍ヤローから切り刻む!」

学歩「やれるモノならやってみるでござる!」

 

 シャキン!

 

 トニオのカギ爪は両手とも、学歩の居合い抜きの如き速さで抜刀された“刀”の移動線上で弾かれ、残念ながら1回も当たりませんでした。トニオは速さが仇になったため、学歩の10歩後方でようやっと動きを止める事ができました。

 

トニオ「後方支援はアレじゃあ無理だわな。まぁいいや、次の一撃で斬り裂く!」

学歩「…動かない方がいいと思うでござるが?」

トニオ「はぁぁぁ?」

 

 パキン! ゴトン

 

トニオ「なっ!」

 

 学歩の刀はカギ爪の攻撃を“弾いた”のではなかったのでした。刀は爪を“斬っていた”のでした。トニオが動いた振動で、斬った軌跡の通りに分断され、大事な爪先ごと、地面に落下したのでした。

 

トニオ「へ…へ…、や、やるじゃねーか! なら奥の手を使うまでよ!」

 

 ジャキン!

 

 トニオは今まで隠していた“第3のカギ爪”…、というか“歯全体が牙”になる『噛みきり牙』を出現させたのでした。

 

トニオ「ひっひゃひゃ! これと俺様の高速移動で、お前を噛みきってやるぅぅぅ!!!!」

学歩「…来い」

トニオ「言われなくても行ってやるぜぇ!!!!」

 

 バシュ!!!

 

トニオは口を大きく開けて、顔を前にせり出しながら、高速移動の能力を使って学歩へ突っ込んで行きました! 学歩は刀を何故かさやに収めて、刀の鞘を押さえて構え、しゃがみ込み、目を閉じてしまいました!

 

トニオ「死ねぇぇ!!!」

 

 トニオは学歩の目の前まで素早く到達し、通りざまに学歩を噛みきろうとした瞬間、学歩が動いたのでした!

 

学歩「ぬんっ!」

 

 シャキン!

 

トニオ「なっ!」

 

 学歩が居合い抜きで斬り裂いたのは、頭部の口ではなく、“両足の腱(ケン)“でした。それも最低限の出血で、歩けなくなる必要分だけ斬っていたのでした。

 

学歩「とぅ!」

 

 更に学歩は鞘の先をトニオの頭部の顎を上向きに突き、トニオが腹から地面に滑り込むような軌道に変えたのでした。トニオは腱を斬られて痛いというより、走れなくなった“拘束”の効果を真っ先に感じ、何も出来ずに地面につっぷしてしまいました。

 

トニオ「な…何なんだ…」

学歩「これでお前は“行動不能”だ。アペンドがアイツラを片付けた後、元の世界に帰って貰うぞ」

 

 この勝負、学歩の勝ち!

(ミリアムvsレン)

 

 学歩がトニオとエンカウントする前、散開したレンはミリアムと対峙してました。

 

ミリアム「ブロードソードにバックラー(丸い小型の盾)装備の剣士か。私のマシンガンの敵ではないな。まぁトニオの後方支援は出来なくなったが…」

レン「来なよ」

ミリアム「言われなくても、私の子供達が、貴方の周りに集まっているの、気づかなかったの?」

 

 確かにレンとミリアムが対峙していたとき、無線誘導のガトリングガン数基が、レンの周り5m範囲で浮遊して待機していたのでした。

 

レン「…これでいい」

ミリアム「はぁ? これでいいのは私よ。次の瞬間、あんた“蜂の巣”よ?」

レン「“集めてくれて”、助かりました。では行きます」

ミリアム「何!?」

 

 レンは何を思ったのか、ブロードソードを上から振りかぶって地面に突き刺し、呪文を唱えたのでした。

 

レン「ソードラッシュ!!!」

 

 すると、ミリアムが動揺してガトリングガンの発射を躊躇している間に、レンの周り、ちょうどガトリングガンの真上にガトリングガンの基数分、ブロードソードの形をした青白い“エネルギー刃”が出現し、高速で落下していき、ガトリングガンを粉々に粉砕したあと、空中で分散して、消えてしまったのでした。

 

ミリアム「あ…あ…、わ…私の子供達が…」

 

レン「はい、終わり」

 

 コツン!

 

ミリアム「あ・・・・・・・・」

 

 バタン!

 

 レンはミリアムの脳天の急所に軽くブロードソードの峰打ちをして、気絶させてしまいました。

 

レン「僕ね、勇者だから、剣術だけでなく、“魔法”、も使えるんだよね」

 

 戦闘はあっけなく終わってしまいました。

(プリマvsアペンド)

 

 “プリマvsアペンド”の戦闘も、レンvsミリアムの戦闘が始まる頃に同時に始まりました。プリマはこの3人の中でも最も冷静沈着。アペンドもそう思ったのか、プリマの相手を自分にしたのでした。

 

プリマ「やはり、私の相手は貴方なんですね。物腰で腕前がわかりましたよ」

アペンド「“魔法”のね。貴方は“魔法の礫”の使い手らしいですね。当然、魔力を礫に込める事も余裕…っと」

プリマ「あなたも魔法で防御する事くらい、楽勝…。こういうケースの対応戦術は、意外とシンプルなのよ」

 

 ギューーーーン!!!

 

 プリマはゴムパチンコに似た発射機の発射部分に大量の“炎を纏った魔法の礫“を出現させ、発射の構えを取りました。

 

プリマ「一応言って置くけど、この礫、炎属性だから着弾したら黒こげよ。そして発射する方向は広角。貴方だけでなく、貴方の周りのギャラリーにも当てるつもり」

アペンド「冷静だと感じる“あなた“らしくない、卑怯な作戦だと思うけど、その”シンプルな戦術“、私も読めるわ」

プリマ「言ってみなさい」

アペンド「私が出来る行動は1つ。全ての攻撃を“受けて”、ギャラリーに被害が出ないようにする。当然、礫を追う行動になるから、移動の軌跡も固定される。あなたは撃った後、じっくり私をロックオンして、確実にヒットする“必殺の礫”を撃てばいい」

プリマ「Good! その通り。でも解っていても、不可避だから、まぁ、辞世の句でも詠んでなさい」

アペンド「…いーや、「不可避」じゃないわ。でもこれ以降は“企業秘密”よ」

プリマ「…ふん! ならさっさと黒こげにしてあげるわ!!」

 

 ダダダダダダダダダン!!!!!

 

 プリマは予告通り、アペンドを中心にした“扇状”に炎を纏った礫を大量に発射したのでした! 当然、アペンドはそれらを受けるか撃ち落とす事で、ギャラリーを守らないといけない…はずでしたが、アペンドは動かずに杖を前に突きだして、呪文を唱えてました。

 

アペンド「絶対零度!!」

 

 こう叫んだアペンドを中心にし、扇状に発射された炎の礫の方向に、やはり扇状に強烈に冷たい冷気が杖から発射され、炎の礫は全て一瞬で氷の塊に変わって地面に落下してしまいました。

 

 更に冷気はプリマの場所まで到達しました。

 

プリマ「う・・・・うわぁぁあぁぁあああ!!!!」

 

 カキンッ!

 

 アペンドは最初から礫の処理とか、戦術を駆使した戦闘を行う気はなかったのでした。

 

「プリマの自由を奪う」

 

 ただそれだけしか考えてなかったのです。冷気はプリマを包み込み、カチンコチンに凍らせてしまい、そしてアペンドの追加呪文で冷気はプリマの場所で止まりました。

 

アペンド「さて、ここの警備隊の増援も来るだろうから、さっさと送り返しましょうかね。学歩、レン、そっちのも持ってきて! こっちに魔法陣作るから!」

 アペンドは、レンの戦闘も、学歩の戦闘もそろそろ終わる頃だろうと思っていたので、倒した相手をアペンドの近くに持ってきて貰うことにしました。

 

 未完成の魔法陣は、杖の先に組み込まれていたので、それを地面に投影して、魔法陣を作る事が出来ました。

 

 ズズ・・・ズズ・・・

 

レン「ふぅ~、このヒト、機械とか装備しすぎだよ…、思いのなんのって…」

学歩「こっちは高速移動だけあって、軽かったな」

 

アペンド「さて、意識があるのは、トニオだけのようね」

 

 トニオは足の腱を斬られていたので歩けなかったが、3人の中で唯一、喋る事ができたのでした。

トニオ「畜生!! だがなぁ~、俺達が帰っても、増援がわんさかこっちに来るぜぇ。ざまーみろ!」

アペンド「あ、その件だけど、あんたの方からアフスやフォーリナーの幹部に言って置いてよ。コッチに来た姫は、私たちの手で救出して、クリプトン王国に戻すから、ルカ姫の反応をもう一度チェックしなさいって。だから、コッチに来ても、なんも獲るモノはないから」

トニオ「何!!!!」

 

アペンド「それとアフスの連中には、追加で、「絶対ルカさんを助け出すから、首を洗って待っていろ!」ってのも言って置いてよ」

 

 トニオはがっくりうなだれて、諦めたのでした。

 

トニオ「さっさとやれ…」

アペンド「はい、さっさとやります。あ、残りのお二方も死んではいないから、助けてやってね。では」

 

 アペンドは魔法陣から離れた所で呪文を唱えました。すると魔法陣が回転して輝き、空中に光の粒子が飛び散り、“転送”、状態になりました。

 

 ギューーーーーーーーン!!!!

 

アペンド「この3人をやって来た元の場所に転送して下さい!」

 

 バシュ! バシュ! バシュ!

 

 3人は空中に浮かんでは飛ばされを繰り返し、その場から消えてなくなりました。

 そして“未完成魔法陣”の約束通り、こっちの世界の対応する人物、“プリマさん”、“トニオさん”、“ミリアムさん”が、魔法陣の上に光の粒子として戻ってきて、実体化しました。

 

プリマ「え・・・・あれ?」

トニオ「あれ・・・・・戻って来れたのか?」

ミリアム「た・・・・・助かった・・・・・」

 

 アペンドは3人の所に近づき、優しい顔つきで、挨拶しました。

 

アペンド「すみません、怖い思いをさせてしまって。あなた達は無事、アキバに戻って来れましたから、これからは普段通りの生活をしていただけると助かります。それと、」

 

 パァァァ!

 

 アペンドは杖から青白い色のオーラを3人にかけました。

 

プリマ「あれ、私達、ここでなにやっているのよ?」

トニオ「???」

ミリアム「あれ? あ! 友達待たせてるんだった!」

 

 3人は、今までの事を全く知らないような状態で、ちりぢりに元の所に帰っていきました。

 

レン「アペンド、部分的に記憶を消したね」

アペンド「それが、あの人達のタメだと思ったから。異世界の体験話なんて、不幸を呼ぶだけだからね」

学歩「さて、我々も帰って、さっきの通り、ルカ姫を元に戻さないといけないでござるな」

アペンド「そうです。あいつらにも言って置いたけど、向こうの世界でルカ姫の反応が現れれば、あいつらも諦めるでしょうからね」

 

 こうして、アキバの魔導大戦は、結構あっさりと終わり、ギャラリーや警官が沢山集まってこないうちに、片付けて、路地を伝って身を隠して、ミクのアパートに戻ってきたのでした。

 

ギャラリー「なんだったんだ? あれ?」

ギャラリー「最近のコスプレショーは、派手なんだなぁ~」

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

インタネ共和国の神威学歩:神威がくぽ

 

フォーリナー軍政国家のトニオ&アキバのトニオ:Tonio

フォーリナー軍政国家のプリマ&アキバのプリマ:Prima

フォーリナー軍政国家のミリアム&アキバのミリアム:Miliam

 

ギャラリー、その他:エキストラの皆さん


 
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