No.78241

無限銀河魔天王 第2話「誇り高き戦士の戦い」

スーサンさん

第2話です。
相変わらず、内容にひねりはありません。

2009-06-10 08:45:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:521   閲覧ユーザー数:509

 深い暗闇の中に、ひっそりと息をする老人がいた。

 全身、黒いローブに身を包み、不規則に歪んだ杖を片手に持ったその姿は童話に出てくる悪い魔法使いのようにも見えた。

 老人は目の前の岩山に置いた水晶から見える白き巨神の姿にしたたかな笑みを浮かべた。

「今、復活せり、人を守りし大いなる巨神……これ、滅するべし!」

 老人は腕を広げ叫んだ。

「現れよ、四天王!」

 一閃の雷鳴が轟き、四つの影が暗闇の空から老人の目の前に現れた。

「剣聖のマルス……ここに!」

 腰の刀を携え男は優雅な物腰で老人に頭を下げた。

「遊聖のレミー……ここに!」

 妖艶な笑みを漏らしながら、少女は老人を空の上から見下ろした。

「壊聖のシード……ここに!」

 全身を鉄の鎧に身を包んだ男は背中に背負った大剣で大地を粉砕した。

「知聖のリュー……ここに!」

 全身を包帯で巻いた透明人間のような男は、糸の切れたマリオネットのような不器用な動きで老人にお辞儀をした。

「よく来てくれた、破滅の四天王よ!」

「いやでも、来させるくせに……」

「口を慎め、レミー!」

 遊聖のレミーの言葉に剣聖のマルスは腰の刀に手を沿え、レミーを睨んだ。

「まぁ……良いではないか、真実であろう?」

 壊聖のシードは剣に手を添えるマルスを宥め、鎧の下のあごを撫でた。

「……ケケッ」

 それとは対照的に知聖のリューは場の状況を壊すように不気味な笑みを浮かべた。

「喧しい! ワシの話を聞かんか!」

「も、申し訳ありません……」

 老人はマルス以外、頭を下げないことに腹を立てた。

 しかし、ここで取り乱しても四天王を付け上がらせるだけだと判断したのか、老人は皆に背を向け、吐き捨てるように言った。

「人を守りし大いなる巨神、蘇りし……誰か、殲滅に参れ!」

「ニッ♪」

 レミーは嬉しそうに口の端を吊り上げた。

「私が行かせてもらうわね……なんだか、面白そうだし!」

「面白いだと……」

 老人はギロッと目を吊り上げた。

「お前は、この話を何だと思ってる?」

「私はマルスと違って、あなたを尊敬してないの! あなた如きに私は動かせないし、動くきも無い……」

 老人に背を向け、レミーは手をひらひらさせ、歩き出した。

「私を動かすことが出来るのは、私が動くだけにふさわしい戦いだけ……」

 闇に溶け込みながら、レミーは愉快そうに笑い出した。

 まるで全てをバカにするように高々と……

 

 

「ひゃっほ~~~……気持ちいい♪」

 光は満面の笑みを漏らしながら、大空を円盤型バイクで駆け抜けていた。

 空中で宙返りしたり、山並みに動いたり、まるで子供が始めて自転車に乗れたような滅茶苦茶な乗り方である。

「……」

 その様子に烈は呆れたように頭を押さえていた。

「まぁ……バカと煙は高い所が好きって言うが、まさにその通りだな?」

「いいな~~……私も乗りたい……」

「もう一人、バカがいたか……」

 巫女の羨望の眼差しに烈は腰に手を当て、大声を出した。

「おい! いい加減、降りて来い! 学校に遅刻するぞ!」

 一瞬、光は嫌そうな顔をした。

「仕方ないよな……」

 ふぅ~~とため息を吐き、光は円盤型バイクのハンドルを捻った。

「時間には逆らえないし……」

 しゅぅぅと静かなエンジン音を漂わせながら地面に着地すると、光は残念そうに円盤型バイクから降りた。

「さて……早く、学校に行こうか?」

「時間があれば、私も乗りたかった……」

「はいはい……いつかな」

「ぶぅ~~……日本人のいつかは永久じゃない!」

「それにしても、すごいオーバーテクノロジーだな、その円盤型バイク?」

 烈は円盤型バイクを見ながら、感心したように口をポカンッと開けた。

「空を飛ぶだけでもすごいのに……こんな小型にしてるんだ? ラジコンだって、空を飛ばすのにかなり精密な設計が必要なのに……」

「そう……なのか?」

「そうなんだよ!」

 光の言葉に烈はますます呆れたように腰に手を置いた。

「……」

「ん? どうした、巫女……?」

 急にふらふらしだす、巫女に光は心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。

「くぅ~~……」

「おわっ!?」

 いきなり、倒れだす巫女の身体を支え、光は訳がわからず目を白黒させた。

「こいつ、なんでいきなり眠りだすんだ?」

「元々、寝つきのいい奴だったが、最近、訳も無く寝だすことが多いよな?」

「……まったく!」

 巫女の身体をやさしく抱きかかえると、光は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「寝てる子をおぶりながら、学校に登校するのは初めてだ……」

「たぶん、寝ながら学校行く奴も初めてだろうな?」

 ニシシと笑いながら烈は巫女の顔を覗き込んだ。

「でも……本当に良く寝てるな? どんな、夢見てるんだ?」

 ペシッと頬を軽く叩く烈に、光は呆れたように呟いた。

「さぁな……ただ、こいつ、寝てるくせに俺の行動をよく把握してることが多いんだよ?」

「おっ♪ 愛のテレパシーか……歌のタイトルみたいだ♪」

「時代が古いぞ……」

「うるせいよ……」

 烈はおかしそうに苦笑した。

 

 

「……」

 野外食堂のテーブルの前で、光は不機嫌そうに頬杖をついていた。

 その背中には未だに眠りから覚めない巫女の姿があった。

 くぅ~くぅ~と気持ち良さそうに寝息を立てる巫女に光は顔を真っ青にして拳を振るわせた。

「こいつ……殴り起こしたろうか?」

「ま、まぁ……気を落ち着かせて……」

 宥めるように笑顔を浮かべる牡丹に光はギロッと目を吊り上げた。

「俺は落ち着いてるよ……」

 バンッとテーブルを叩きながら、光はカップのコーヒーを飲み始めた。

「落ち着いてなければ、今頃、この女をどつき倒してるところだよ!」

 今朝のことを思い出したのか、光は口の端をヒクヒクさせ、目を瞑った。

「朝、こいつを連れて学校に行けば、不純異性交遊で指導されるし……終われば終わるで、全然起きないから、こいつを連れて俺まで、廊下に立たされるし……挙句には人の背中が気に入ったのか未だに背中にしがみついてるし!」

「そ、それだけ好かれてる事じゃない? 男として誇ることだよ!」

 牡丹のフォローに光は納得の行かない顔でまたコーヒーを飲み始めた。

「それに女の子おぶれるってかなり役得じゃない? 巫女ちゃん、かわいいんだから?」

「そ、それはそうだけど……」

 牡丹の言葉に顔を光は顔を赤らめた。

「うぅん……」

 そんな二人の会話を遮るように今まで気持ち良さそうに寝息を立てていた巫女の目がうっすらと開いた。

「ああ、光くん、おんぶしてくれてたんだ?」

 目をゴシゴシと擦りながら、巫女は女の子に似合わない大きなあくびをした。

「その言葉は、降りてから言え……」

「もうちょっと、寝かせて……それから、大切な話するから?」

「こら、腕に力を込めるな! それに、大切な話って何だ!」

「くぅ~~……」

「このっ!」

「お、落ち着いて、光くん!」

 暴れだす光を抑えながら、牡丹は必死に叫んだ。

(いったい、烈はどこで何してるの!?)

 

 その頃、烈は……

 

「あ~~……お日様が気持ちいい♪」

 太陽の光をまんべんに浴びながら、烈は食後の昼寝を屋上で楽しんでいた。

 

 

「……なに、あの茶番?」

 背中にしがみつく巫女を必死に引き離そうと暴れだす光を空から眺めながら、遊聖のレミーは呆れように顔をしかめていた。

「あれが、人を守りし大いなる巨神を操る者? 少し、イメージが違うわね……まぁ、いいか?」

 レミーは一回、ため息をつくと、スーと地面に降りていった。

 

 

「この、いい加減に降りろ!」

「……来る!」

 カッと目を見開き、巫女は光の背中から降りた。

「ようやく、降りたか……肩が凝ったぞ!」

「あはは……年なんじゃない? それよりも、敵が来るよ?」

「敵……?」

「お初にお目にかかるわね……巨神・魔天王の操者、飛鳥光、泉巫女……?」

「えっ!?」

 何も無い空からゆっくりと地面に向かって降りてくる少女の姿に光と牡丹は目を疑った。

 羽があるわけでもない……

 ましてや釣り糸で吊るされてるわけでもない。

 まるで重力を無視した少女の存在に光は一瞬、頭の中で今の状況を否定した。

 だが、少女は確かに空に浮かんでいた。

 空に浮かび、自分達を見下ろしていた。

 そんな非現実的な状況に光と牡丹は信じきれず首を横に振った。

「初めまして! 私は破滅の四天王の一人、遊聖のレミー……以後、お見知りおきを!」

 地面に着地し、遊聖のレミーと名乗る少女は優雅なお辞儀をした。

「破滅の四天王?」

「この前の恐竜を送り込んだ連中の幹部だよ」

 ふわぁ~~とあくびをかみ殺しながら、巫女は今の緊迫した状況を壊すように伸びをした。

「あなた、結構、肝が据わってるわね? 普通、人が空から降りてくれば、驚くものよ?」

「だって、夢に出てきたもん……君」

「なに?」

 余裕の笑みを浮かべていたレミーの表情に初めて、動揺の色が見えた。

(この娘……私を知っていた?)

「お前は夢に出てきた程度で全て知った気でいるのか?」

 ポカッと頭を叩く光に巫女は痛そうに頭を押さえた。

「違うよ! だって、本当に夢に出て来るんだもん!」

 光の胸ポケットからフロッピーディスクを取り出すと、巫女はクスッと笑った。

「次に何をすればいいのかもね……」

 その言葉を合図に巫女の横を高速で円盤型バイクが通り過ぎ、止まった。

「お、おい……魔天王を呼ぶ気か?」

「うぅん……」

 首を横に振り、巫女はそっとフロッピーディスクを円盤型バイクの差込口に差した。

「場所を変えるだけ……」

 ピッとハンドルの横の赤いスイッチを押した。

 その瞬間、巫女達を包んでいた世界が一瞬で暗黒の闇に包まれ、世界が変わった。

「ここって……」

 いきなりの出来事に、牡丹は訳がわからず辺りを伺った。

「へぇ~~……空間転移の術を使えるなんて、知らなかったわ?」

 愉快そうにレミーは笑い出した。

「空間転移?」

「あら……その娘よりも、あなたのほうが少しは可愛げがあるわね?」

 まるで、無垢な子供を見るような笑みを浮かべるレミーに光はドキッと胸を押さえた。

「ムッ……」

 巫女はギロッと目を吊り上げ光の右足を思いっきり踏みつけた。

「いってぇぇっ!」

 モロに踏まれた足を押さえながら、光は痛みを堪えながら、蛙のように何度も地面をぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 未だに続いている茶番劇にレミーは呆れを通り越し、楽しさすら感じて呟いた。

「それよりも、説明いいかしら?」

「は、はい……」

 踏まれた足を持ち上げながら、光は涙目で頷いた。

「空間転移の術は、書いて字の如くよ……巨大戦じゃ、周りの建物が邪魔でしょ? まぁ、あの老いぼれなら、建物を盾にするような卑怯な戦い方をするでしょうけど……」

(老いぼれ……)

 首を傾げる光にレミーはふと口を隠した。

「こっちの話よ……」

 ピッと懐から一枚のカードを取り出し、レミーは叫んだ。

「古代超竜……トリケラトプス召喚!」

 レミーの足元から巨大な魔方陣が浮かび上がり、その中から古生代の恐竜を連想させる、恐竜の姿が召還された。

 召還されたトリケラトプスは悲鳴に近い雄叫びを上げ光達を睨んだ。

「この前の恐竜……しかも、今度はトリケラトプス?」

「牡丹ちゃんは下がってて……光くん、魔天王を呼ぶよ!」

「任せろ!」

 力強く頷き、光はスカイバイクに乗り込んだ。

「天空聖邪光臨! 無限銀河魔天王!」

 ピッとハンドルの横の赤いスイッチを押した。

 その瞬間、天空に凄まじい雷鳴が響きわたり、一体の巨神が降り下った。

 地響きを上げながら大地に膝を突いていた白き巨神は勇ましい咆哮を上げ、立ち上がった。

「いくぞ、巫女!」

「うん、光くん!」

 二人の身体が淡い光に包まれ、魔天王の中へと吸収されていった。

 

 

 魔天王の中に入ると、巫女は目の前のキーボードを連打し叫んだ。

「コスモインフィニティー出力正常!」

「よしっ……」

 光は目の前の光り輝く二つの球体に手を合わせ叫んだ。

「銀河に轟く、一閃の流星! その名は……」

 拳を突き立て、魔天王は叫んだ。

「魔天王……正義を貫くため、ここに推参!」

 魔天王の雄雄しい姿に気を良くしたレミーはトリケラトプスに頭の上に乗り、静かに呟いた。

「その前に、ギャラリーには退場してもらうわよ……危ないか」

 手の平に光を集め、レミーは自分達を見つめる牡丹に向かって光を撃ち放った。

「きゃっ!?」

 光に包まれた牡丹は一瞬、短い悲鳴を上げ、消えていった。

「牡丹……? 貴様、何をした!」

「大丈夫よ……さっきの場所に返しただけ。 あの娘がいると、戦い辛いでしょう?」

「……」

「それに……」

 レミーは顔をニヤッと緩ませた。

「これから、本当の古代超竜の本領発揮よ!」

 パチンッと指を鳴らし、トリケラトプスの身体が淡い光に包まれた。

 その瞬間、上空から銀色の鎧が恐竜の身体に纏われ、咆哮を上げた。

「機竜一体、搭乗形態!」

 レミーは巨大な鎧の中に乗り込むと、目の前のレバーに手をかけ力いっぱい引いた。

「いくわよ、無限銀河魔天王!」

「いくぞ!」

 魔天王はトリケラトプスに向かって駆け出し、大空にジャンプした。

 大空にジャンプした魔天王はトリケラトプスの位置を確認し、その頭部に流星のような鋭い蹴りを浴びせた。

 ドゴンッとトリケラトプスの顔が歪み、魔天王は拳を握り締め叫んだ。

「やったか……!?」

「まだまだ!」

「なにっ!?」

 トリケラトプスは身体を回転させ、尻尾の部分で魔天王の腹部を殴り飛ばした。

「ッ……!?」

 バシンッと大地に身体を何度も叩きつけられ、魔天王は苦しそうに地面に倒れこんだ。

「クッ……」

 よろよろと立ち上がる魔天王にトリケラトプスの中にいたレミーは愉快そうに笑った。

「結構、頑丈ね? まだ楽しめそう……」

 そういい、トリケラトプスは腰を屈め魔天王に向かって突進してきた。

「クッ……」

 ドゴンッとトリケラトプスの頭部の三つの角が魔天王の腹部を貫き、轟音を轟かせた。

「グァッ……」

 魔天王の中にいた光は苦しそうに血を吐き、トリケラトプスを睨んだ。

「おい、このままじゃ負ける! 何か、方法は無いのか!?」

「くぅ~~……」

「寝るな~~~~~~!」

 何とか大地に立ち上がり、魔天王は拳を前に突き立てるように構えた。

(悔しいけど、前回の恐竜とは比べ物にならないくらい強い……)

 その時、魔天王の身体に異変が起きたように足がよろめきだした。

「ど、どうしたんだ!?」

 いきなり、よろめきだす魔天王の足をふんばりながら、光は苦々しそうに叫んだ。

「出力が上がらない!」

 必死に目の前の球体に力を込めるが、魔天王の状態は戻らなかった。

 大地に土煙が辺りに巻き起こしながら倒れこむ魔天王に光は目の前の球体を叩いて、唸った。

「こいつが寝ちまったせいで魔天王が制御不能になっちまった!」

「……茶番の次は情けないか?」

 大地に足を踏みしめ、トリケラトプスは助走の準備を始めた。

「もう少し、楽しみたかったけど……勝負に情けは無用!」

 バッと、駆け出しレミーは叫んだ。

「悪く思わないでね!」

(やられる!)

 光は覚悟したように目を瞑った。

「魔天翼発動!」

 魔天王の身体が急に立ち上がり、バッと大空に向かって飛び上がった。

「これは……!?」

 レミーだけではない、魔天王の中にいた、光すらも驚きで目を見開いた。

「魔天王に翼が……?」

 鷹のように大空に向かって力強く羽ばたく黒い翼に光は不思議そうに呟いた。

「この翼はいったい……」

「魔天翼だよ♪」

「巫女……やっと起きたのか?」

「あはは、おはよう!」

「何がおはようだ! 危うく死ぬところだったんだぞ!」

「ごめんね? でも、ピンチは脱したでしょう?」

「……」

 巫女は魔天王の背中の翼を見て、意気揚々と叫んだ。

「これが、魔天王のもう一つの力……魔天王・飛翔形態!」

「飛翔形態……?」

「夢の中で、誰かが教えてくれたんだ……魔天王は空が飛べるって!」

「……ッ!」

 キッと、目を吊り上げ光は叫んだ。

「一気にたたみ掛けるぞ!」

「うん!」

 巫女は目の前のキーボードを連打し、叫んだ。

「コスモインフィニティー全開! 銀河剣、絶刀!」

 目の前に一本の鞘に包まれた刀が現れ、魔天王は手に握り締めた。

 チャキンッと刀を抜き去り、魔天王はその剣で円を描いた。

「天・雷・地・爆・水・絶!」

 刀の刀身から光が溢れ出し、魔天王は大地にいるトリケラトプスに向かって刀を振り切った。

「銀河英雄奥義……光波空切剣!」

「っ!?」

 光のエネルギーが刃となり、トリケラトプスの身体を真っ二つに裂いていった。

 チャキンッと刀をサヤに戻し、魔天王はトリケラトプスから背を向けた。

「やったっ!」

 大爆発を起こしたトリケラトプスを見て魔天王の中にいた光は拳をギュッと握り締めた。

「中々やるわね? 本気を出してないにしろ、ここまで私をやったのは壊聖のシードいらいよ……」

「ッ!?」

 目の前に浮かび覗くレミーの姿に光は目を見開いた。

(生きていた!?)

 ニコッと笑みを浮かべ、レミーは笑い声を上げた。

「今回は私の負けね……でも、有意義な負けよ!」

 ビシッと指を突きたてた。

「なぜなら、好敵手という敵が出来たのだからね?」

 そういい、レミーの身体は闇の中へと溶けるように消えていった。

「力だけじゃない……度量すらも俺達じゃ、足元にも立てないくらい強い……出来れば、もう戦いたくない相手だな?」

 同意を求めるように、下のコックピットを覗き込むと……

「くぅ~~……」

「今回、お前、寝てばっかじゃねーか!」

 

 

「なるほど……そんな事があったのか? 災難だったな、関西の田舎娘……」

「誰が、田舎娘や!」

 ギロッと睨まれ、烈はニシシと笑い出した。

「そんな事よりも、誰かこいつを起こしてくれ……いい加減、腰が痛くなってきた」

 背中にもたれかかる重みに光は深いため息を吐いた。

「自分の彼女くらい、自分で起こせよ?」

「こんな寝ボスケ、彼女にした覚えは無い!」

「くぅ~~……!」

「ぐ、ぐえぇ……腕に力が……?」

 頚動脈を強く閉められ、光は顔を青ざめさせた。

「ははっ……寝てても悪口は聞こえるらしいな♪」

「あたしも、あんたが寝てるときに襲い掛かりたいわ……」

「夜這いか……俺は攻めるよりも、攻められる方が好きだから、オーケーだぞ?」

「誰が、あんたに夜這いをかけるか!」

「チョーク、チョーク!」

 関節を決められながら、不意に烈は顔をしかめた。

(巫女ちゃんじゃないが……俺も、誰かに戦いに誘われてる気がするんだよな……)

「えぇい……なんつう、柔らかさだ!」

「ははっ……ヘタクソの関節技など、痛くも痒くも無い!」

「言ったな~~~~!」

「ぎょえ~~~~♪」

 完璧に状況を楽しみながら、烈は心の中でため息を吐いた。

(まぁ、気のせいなら、それでいいか……)

 この時、烈は……

 いや、烈と牡丹は気付いていなかった。

 自分達に襲い掛かる運命に……

 


 
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