No.77390

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(壱四)

minazukiさん

今回は月と詠のことについてのお話です。
一刀と雪蓮が彼女達に出した提案とは!

2009-06-05 17:23:50 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:28898   閲覧ユーザー数:19652

(壱四)

 

 話は少し遡ったある日。

 

「ねぇ冥琳」

 

「お酒はダメよ」

 

 先に釘を刺された雪蓮は頬を膨らませる。

 

「違うわよ!」

 

 山積みになっている書簡などに目を通しながら雪蓮に答える冥琳。

 

 普段は何かと甘くなる冥琳だが仕事をしているときだけは別人のように厳しかった。

 

 その為か、雪蓮が駄々を捏ねるとするぐに雷を落としていた。

 

「まだ北郷殿のところに行く時間でもないわよ」

 

「ぶーぶー」

 

 王としての威厳などどこにも感じさせない雪蓮の拗ねた顔に冥琳は笑みを浮かべる。

 

「そうじゃあないの。ちょっと月達のことで話しがあるの」

 

「月達?」

 

 それはさすの天才軍師も予想だにしなかったことに軽い驚きを覚えた。

 

 一刀の保護下にあり、表向きは死んだことになっている月と詠。

 

 そして降伏して一将として今を生きている恋、華雄、音々音。

 

 呉の暮らしにもだいぶ慣れたようで時折、冥琳などは詠や音々音などと今後のことを話したりしていた。

 

 真名を授けあう仲になるとは思わなかったが、それも全ては一刀がいるから出来たことだった。

 

「月達がどうかしたの?」

 

「月達というよりか、月と詠のことかな」

 

 何が言いたいのだろうと不思議に思う冥琳。

 

 二人は侍女として一刀の身の回りの世話をしていることに何か問題でもあるのだろうかと思った。

 

「ほら、二人って表向きは死んだことになっているから、今は真名で呼んでいるじゃない」

 

「そうね。他に方法がないから仕方ないと思うわ」

 

「そこでね昨日、一刀と考えたの」

 

「何を?」

 

 雪蓮は筆を置いて笑顔を見せた。

 

(またこの子、ろくでもないことを考えているわね)

 

 長年、雪蓮を観察しているだけにすぐに分かった。

 

「うんとね、二人を一刀の義理の妹にするの」

 

「妹?ああ……妹ね……………………………え?」

 

 何を言っているのだという表情をする冥琳に雪蓮はしてやったりと思った。

「雪蓮……私の記憶が確かならば今、妹って言わなかった?」

 

「ええ、言ったわよ。一刀の義理の妹にするのって」

 

 比類なき才能を持つ冥琳は頭をフル回転させる。

 

 そして何度も雪蓮の言葉を繰り返していく。

 

「か、かず……北郷殿の妹ですって!?」

 

 思わず声を高くしてしまった冥琳。

 

「冥琳、どういうこと?」

 

 その後ろで手に持っていた書簡を全て落とした蓮華。

 

「れ、蓮華様!?」

 

 冷静さを欠いて大声を上げてしまった冥琳に対してなぜか泣き顔になっていく蓮華。

 

「か、一刀の妹ってど、どういうことなの?」

 

「い、いえ、私も雪蓮から聞いて驚いて」

 

 二人は一人現状を楽しんでいる雪蓮を見る。

 

「お、お姉様、それってどういうことですか!?」

 

「うん?そのままの意味だけど?」

 

 面白そうに答える雪連。

 

 だが蓮華はそれどころではなかった。

 

(一刀の妹……、それって一刀とお姉様が……ああなって……私が一刀の妹に……)

 

 みるみる顔が赤くなっていく蓮華をよそに冥琳は雪蓮に説明を求めた。

 

「一刀の話では天の国での姓、つまり一刀の場合なら北郷になるんだけど、夫婦になったり姉妹になるとその姓を名乗るそうよ」

 

「つまり、月と詠が北郷殿の義理の妹になれば……」

 

 ようやく理解できた冥琳に満足げに頷く。

 

 その隣でまだ一人混乱している蓮華。

 

「しかし、それでは根本的に解決していないんじゃない?」

 

「そうでもないわ。確かに真名の持つ意味を考えれば解決策とは言えないけれど、天の御遣いの義理の妹ということになれば問題ないわ」

 

 雪蓮が言いたい事はこうだった。

 

 いつまでも「月」や「詠」と真名を呼び続けていればその意味が薄れてしまうことになり、他者から侮られやすくなる。

 

 だが北郷一刀の義理の妹になればそういう事態は少なくとも回避できる。

 

 なんといってもあの天の御遣いの義妹になり真名の持つ意味が軽んじられることがなくなるからだった。

 

 雪蓮は二人の事を気に入っており、蓮華や小蓮と同じような気持ちになる事があった。

 

 特に月は控えめでメイド服が似合い誰からも可愛がられている。

 

「そこまで考えていたのね」

 

 それならば残る問題は一つ。

「もし董卓とバレたらどうするの?」

 

 義理とはいえ天の御遣いの妹になればそれだけ世間にも広がり、万が一、彼女達の素性を知っている者が現れたらどうするか。

 

「その時は一刀に頑張ってもらいましょう♪」

 

 自分ではなく一刀に責任を押し付けようとする雪蓮に冥琳はため息をつく。

 

「冗談よ。それに初めのうちはこの城の中でってことで考えているから」

 

「それならいいけど」

 

 安全という確証はないが注意していれば問題はない。

 

 そう自分に言い聞かせる冥琳に雪蓮は話題を変えた。

 

「ところで曹操の動きはどう?」

 

「あれ以来、おとなしくはしているみたいだけど、涼州と徐州を攻撃するという情報は入っているわ」

 

「そう」

 

 あのあと正式な謝罪の使者が訪れたが雪蓮は一応の礼儀をもってそれを受けた。

 

 だが心の中では決して許そうとは思っていなかった。

 

「今度攻めてきたら徹底的に叩き潰してやるわ」

 

「そうね」

 

 冥琳も同じ気持ちだった。

 

「そうだ。冥琳」

 

「なに?」

 

「さっき一刀の名前をよびかけなかった?」

 

「そ、そうかしら?気のせいよ」

 

 わずかに視線を逸らす冥琳に雪蓮は拗ねた顔をする。

 

「もう一刀は仕方ないわね」

 

「呉の種馬にするといったのはどこの誰だったかしら?それに北郷殿と過ごす時間はなかなかよいものだと気づいたわ」

 

 それは誰もが思っていた。

 

「一刀の浮気者~」

 

「ふふっ」

 

 冥琳は笑みを浮かべ隣になっている蓮華を見る。

 

「一刀の……妹……」

 

 まだ意識が飛んでいる蓮華。

 

「お~い蓮華~戻ってきなさい~」

 

「ダメね。聞こえていないわ」

 

 両手で顔を押さえて「一刀の妹」と繰り返している姿に二人は呆れていた。

「……と言うわけなの。どうかしら?」

 

 侍女の仕事として庭の掃除を終えたばかりの月と詠の前に雪蓮は言った。

 

「はあ?ごめん……よく聞こえなかった」

 

 明らかに聞こえているはずなのに再確認する詠。

 

「だ~か~ら~二人とも一刀の妹になってって」

 

「ど、どうしてそうなるわけ!」

 

 いきなりやって来て「一刀の妹になれ」と言われて不快感を表す詠の返答に雪蓮の代わりに冥琳が話をした。

 

 初めは嫌そうな表情を浮かべていた詠だが、今の自分達の立場を考えていくと断固反対というわけにはいかなかった。

 

 下手をすれば呉の国に騒乱が起こってしまうからだ。

 

 命を救われ、初めは嫌がっていた侍女の仕事も今では当たり前のようにこなしているだけに詠はすぐには返答できなかった。

 

「月はどう思う?」

 

「私は……」

 

 自分が一刀の妹になることを想像する。

 

 そして両手で顔をおさえ紅くなっていく。

 

「……へぅ……ご主人さまが……お義兄さま……」

 

(((うわ……抱きしめたい……)))

 

 その場にいた誰もがそう思うほど月は可愛かった。

 

「月はいいようね。詠はどうする?」

 

「ボ、ボクは嫌だけど……月がそれでもいいっていうなら……」

 

 そう言いつつも頬を紅くする詠に雪蓮達は笑みを浮かべる。

 

((素直じゃあないわね))

 

 雪蓮達は詠が何だかんだと一刀に文句を言いながらも、褒めてもらうと喜びを感じているのは知っていた。

 

「詠ちゃん」

 

「どうしたの、月?」

 

「よかったね」

 

「うっ……」

 

 自分たちのことをしっかりと考えてくれている一刀。

 

 そのことが嬉しかったが口にするのが癪だった。

 

「べ、別に……嬉しくなんかないわよ。」

 

 言葉でいうほど詠の表情は嫌がっていなかったことを誰もがわかっていた。

 夜。

 

 悪夢の政務から解放された雪蓮は酒瓶を持って一刀の部屋にやってきた。

 

 そして昼間にあったことを話すと一刀はよかったと安堵した。

 

「でも本当にいいの?」

 

「何が?」

 

 何杯か酒を口の中に流し込んだ後、雪蓮は一刀に問う。

 

「もしばれたら天の御遣いが暴君を保護していたって悪評が広まるわよ?」

 

 冥琳も危惧していることは雪蓮も同じことだった。

 

「だからなる前に平和な世の中にするんだよ」

 

 統一ではなく平和な世の中にすればたとえばれたとしてもいくらでもいい訳は出来ると考えている一刀。

 

 そしてその考えは甘いと思っている雪蓮。

 

「そのためには曹操の力も必要なんだ」

 

 一刀が密かに考えている天下統一の策。

 

 その内容を知っているのは今のところ雪蓮だけだった。

 

 だからこそ彼女は反論していた。

 

「どうしても曹操が必要なの?」

 

「うん。雪蓮や劉備さんだけでなく曹操も含めた天下三分による共同統治。こうすることによってお互いが協力し合い平和な世の中を作っていく」

 

 そうすれば月達を利用しようとするものを早期に発見して対処することが出来る。

 

「まぁ私は平和になればそれでいいけれど、曹操もそう思っているかしら?」

 

「思わせないといけないんだ」

 

 そうしなければ何もかもうまくいかない。

 

「一刀の頑固がここまでとは思わなかったわ」

 

「迷惑……だったかな?」

 

 その問いに杯を置いて彼の腕を気遣いながら身体を寄せていく。

 

「迷惑よ。本当にあなたは変わっているわ」

 

「ごめん」

 

「いいわよ。曹操を同じ机に座らせることで何もかもうまくいくのなら、そうしてあげる」

 

 呉の小覇王らしい答え方だった。

 

「でも一つだけ条件があるわ」

 

「なに?俺が出来ることならば何でもするよ」

 

「本当?なら」

 

 雪蓮は一刀の胸に頬を寄せてしがみつく。

 

「私を置いて逝こうとしないでね。あんな気持ちになるのはもう嫌だから」

 

「うん。わかった」

 

「絶対よ?」

 

「絶対」

 

 人としての弱さを嫌というほど感じた雪蓮はその言葉を信じるかのように一刀に身体を預けた。

 

 一刀も優しく受け止め、彼女長い髪に指を絡ませて梳いていった。

 

 二人がそう過ごしている同時刻、月と詠の部屋では詠が小声で「一刀兄さん」と恥ずかしそう頬を紅くして何度も繰り返して言っているのを寝たフリをしていた月にばっちりと聞かれていたのは別の話。

(座談)

水無月:気が付けばシスコン!になり始めている一刀くんです。

 

一刀 :お前、絶対わざとだろう?

 

水無月:のんのん。そんな悪巧みをするわけがないではないですか~。

 

雪蓮 :そうそう♪な~~~~~んにも悪巧みはないわよ~~~~~~♪

 

冥琳 :貴女がいうと嘘っぽく聞こえるわよ。

 

雪蓮 :気にしない気にしない♪

 

水無月:さてさて次回ですが、赤壁直前までのお話です。

 

雪蓮 :いよいよ前半戦も残り僅かね。

 

水無月:そうです~。タイトルの「江東の花嫁」ですがもう少しでその意味が出てきます~。

 

冥琳 :あら、そうなの?

 

水無月:(ノд`)ソウナンデス。

 

雪蓮 :とにかく次回もよろしくね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詠  :・・・・・・一刀兄さん・・・・・・。

 

月  :詠ちゃん?

 

詠  :・・・・・・へ?ゆ、月!?

 

月  :♪(にこにこ)

 

詠  :lllorz


 
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