No.772956

電気兎の見る夢は 1

九条さん

※注意書きはプロフィールに書いてあります。

2015-04-23 17:56:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1286   閲覧ユーザー数:1285

 

 

 

 

 

ヒロインは兎とタメで幼馴染み。

 

 

 

小さい頃舌が上手く廻らず兎をバニー呼びしてがそのまま定着。

大人になってから云わなくなったが2人でいる時はバニー呼びなヒロイン。

 

 

「僕をバニーと呼ぶのは辞めてください・・」

 

 

そう口では言うが別にそれほど拘っていない兎。

 

 

ヒロインは幼い頃事故に巻き込まれ虎に助けられた過去があってかたワイルドタイガーさんの大ファン!!

 

 

私の財布はとってもコールド。ワイルドタイガーさんのカードも録画もがっちりホールド!!

 

ーーーー的な事を兎の家の大型TVを見ながらポーズ付けながらやっている。

 

因みに兎はちょっとうんざり気味にヒロインを見てはいるが別に止めはしない。

 

 

「なに?なんか云いなさいよバニー」

 

「いえ、バカだなぁ・・と思って見てただけですよ。気になさらずに」

 

「あっそ・・って気にするよ!!なにそれ!!」

 

「そう思われたくなければそんな事しなければいいでしょう」

しかもウチのTV陣取って。

 

 

「なんかバニーってワイルドタイガーさんに対して冷たいよね~~素っ気ないって云うかさ・・」

 

「・・・そうですか?」

 

 

「うん。って云うかヒーロー達全般に。ワイルドタイガーさんに特にって云うか・・さ・・・」

私の命の恩人なのにさ・・

口をとんがらせ小さく呟くヒロイン。

 

(だからですよ・・・)

兎がヒーローのなりたかったのは両親の事ももちろんあるがヒロインの事もあるからだった。

 

 

火事に巻き込まれ瓦礫の向こうにヒロインがいるのも分かっているのに幼い自分には大人の手を振りほどく事も彼女助けに行く事も出来なかった。

 

 

これ以上もう大切な人を亡くしたくなんてないのに・・・・・!!

 

自分の手のはこんなにも小さく幼い。

 

 

もっと力が欲しかった・・・・

 

 

だからNEXTの力があると分かった時、躊躇なくアカデミーに入った。

 

 

「・・アナタがあまりにもワイルドタイガー、ワイルドタイガーとうるさいから彼が嫌になったのかもしれませんね」

 

嘘ではない。

まぁ、彼ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹に初対面でヒロインにしか云われていなかったバニー呼ばわりされたのも多少なりとも関係してるがもちろんヒロインに云うつもりなんてこれっぽちもないし今後云う事もない。

 

 

「ええ!!なら私がタイガーさんタイガーさん!って云わなければバニーも少しはタイガーさんの事好きになってくれる?」

 

 

「フッ・・・・それは約束出来かねますね」

 

 

「鼻に笑ったよコイツ!ええ~~タイガーさんを好きな人は一人でも多くいて欲しいのに~~!!」

学校でもスカイさんばっかりでタイガーさんファンなんていやしないよ!!

タイガーさんのカードはいつでも私だけががっちりホールドだよ!!

でたまには同士もホールドしたいぃいぃぃぃぃ!!

 

 

そう勝手知ったる他人の家でシャウトするヒロイン。

 

 

そんなヒロインを横目に兎はフッと頭の隅に過ぎった事を口にする。

 

 

 

「・・・1ついいですか?」

 

「なに?」

 

「アナタがワイルドタイガーを好きなのは大昔から知ってます」

 

「?そうだね」

 

「カードや数少ないグッツを買い漁ってるのもよくやるなと思っています」

 

「数少ないって言わないでよ!!レアなのレア!!!!」

 

 

・・・・・僕のは買ってないんですか?

 

「?」

 

思わず口を突き出そうになる事をグッと堪える。

 

「・・・・・なんでもありません。それより今日は何処か行く所があるって云ってませんでしたか?」

 

「あっ、そうそう。タイガーさんの軌跡・・・じゃなかった、歴代のヒーロー達の軌跡~レジェンド~展があるんだよ~~タイガーさんの事の載ってるかな~~載ってるよね~~」

 

 

「無理じゃないですか?」

 

 

「何故?!」

 

 

「そのレジェンド展は現在活躍してないヒーロー達を展覧しているとネット紹介にありましたから」

 

「本当!」

 

「ええ。相変わらず下調べもせず行こうとするの辞めてくださいよ。つき合わされる僕の身にもなって下さい」

 

 

ならもっと早くヒロインに云ってあげればいいのだがヒロインの性格上、「ならその日は行かなくていいや」と会う事自体を反故にされる可能性があるので云わない兎だった。

 

行きたい物の為に外へ出たり動くのはいいが目的も無いのに約束したり会ったりするのがヒロインは酷く苦手だと云う事をよく知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『理由が無ければヒロインは僕とは会わない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つき合ってさえいればそんな事が無くてもいくらでも会う事は可能だが現状は違う。

自分達はただの幼馴染み。

 

 

一時期はこの事実にかなり落ち込んだ時期もあったが裏を返せば口実さえあればヒロインは来る。

 

 

正確には餌がヒロインの好みであればそりゃもうホイホイとやってくる。

 

 

餌=ワイルドタイガー。

 

 

「今日僕午後から暇なんでウチに寄って行きませんか?」

 

「ええ~~・・・」

嫌ではないが面倒臭そうなヒロイン。

 

 

「アナタが見たがっていた「~ヒーローの素顔~その日常~」見てもいいですよ。

ウチの大型TVで」

 

「行く!!あれタイガーさんの日常でもヒーロー!って感じでいいよねぇ~~

私、観賞用・保存用・布教用と3枚録画したよ!バニー1枚いる?」

 

 

「いりません。そもそもアレは本来僕の特集だったんですが・・・聞いてますか・・・?聞いてませんね・・・」

 

 

「嗚呼・・・大型画面で見るタイガーさんまたより格好いいよね~~・・・」

うっとりと宙を見ながら溜息を付くヒロインさん。

 

 

(まったく・・なんの因果で僕があのおじさんと組まなきゃならないんだ)

 

 

 

兎とて出来るだけプライベートで虎とは関わりあいたくない。

 

しかも気になる子が他の男の事でキャーキャー云って姿はハッキリいって面白くない。

だからワイルドタイガーの変わりになる餌、もとい口実をもちろん探してみた。

 

 

鞄や香水、化粧品。一般の女性が食い付く物は片っ端から試した。

 

仮にも顔出しヒーローそんな情報は事欠かない。

立場をフル活用しまくった。

 

有名なモデルが来る会場のチケット。

 

まだ市場に出回っていない服を先取りしてみたりもした。

 

――――が答えはいつも「へぇ~~・・・凄いねバニー」

 

だけだった。

 

 

ワイルドタイガーを見るようなキラキラした目には一瞬とてならなかった。

 

 

 

周りではヒロインにタイガーさえ与えときゃ大丈夫と云われているし本人もタイガー愛を否定しない。

 

だから兎の口実はどうしてもタイガー寄りになりがちになる。

ハッキリ云ってかなり不本意だ。

 

 

しかも虎徹はよりにもよって自分の仕事仲間。

ネタは幾らでもある。

ぶっちゃけ使いたくはないが。

 

 

 

こんな事が何度もあればそりゃワイルドタイガーが嫌になっても仕方ないじゃないかな?って思う。

 

 

しかも、元もとそれ程好きでなかった相手だ。

 

 

虎徹には色々ムカつくがだからと云ってコンビが解消されるワケも無くビジネスとして淡々とこなしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ~~んだタイガーさん出ないのか・・・まぁいいか。「昔のヒーローがいるからこそ今の俺がいる!!」ってタイガーさん前特集で云ってたもんね。タイガーさんの好きな事より知っておかないと!ファンとして失格」

 

 

準備万端行こうバニー~~っと玄関でブーツを履き手を振るヒロイン。

 

 

(本当にワイルドタイガーの事に関してだけは熱心ですね)

 

 

まぁ物欲が無く(タイガーグッツ以外)出不精な(タイガー展関連以外)物事に執着しない(タイガー以下略)ヒロインが唯一行動的になるそれがワイルドタイガーだ。

 

 

口実としても虎徹本人も気に入らないが使える物はなんでも使う男それが兎。

 

 

「はいはい。マフラー持ちましたか?今日はかなり冷え込みますから気を付けて下さい」

 

「そんなんタイガーさんの事考えただけで心と身体がポカポカするから・・くっしゅ・・ごめんやっぱりいる」

 

「・・・どうぞ」

 

「ありがとう。・・・なによその目」

 

「いえ、バカだな思っただけですよ」

 

「思っても口にしないで!!」

 

「根が正直なんですよ僕は」

 

「ソコは包み隠して!」

 

「無理ですね。さぁ行きますよ。どうせ並ぶんですから早いほうがいいでしょう?」

 

「バニーちゃん私の発言スルー?!」

 

「スルーです」

 

 

 

 

車庫に置いておいた車を呼びヒロインを車内へと促す。

 

そしてそれに続くヒロイン。

 

 

ヒロインを気遣っていつも兎は手を差し出すがヒロインはいつもその手をジッーーーーーーっと眺め、手なんて初めから無かったかのようにしてシートに座るのだった。

 

 

 

 

 

 

2011年11月10日

 

 

 
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