No.77291

真・恋姫✝無双 魏ENDアフター 再会編

kanadeさん

凪編、華琳編の続きです
アフターという形のまとめです。
長い作品ですが読んでいただけるとありがたいです。
コメントや感想をお待ちしてます。

2009-06-04 23:16:30 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:45597   閲覧ユーザー数:30647

真・恋姫✝無双 魏エンドアフター  再会編

 

 

――北郷一刀が帰還した。

その事実を受け、城内は再び宴の活気を取り戻した。

 

「聞いているにょか?ほんご~」

「聞いてるよ・・・とうか春蘭、幾らなんでも飲みすぎだって」

「うりゅしゃい!しょもしょもいなくなったお前が悪いにょら!」

完全泥酔モードの春蘭から痛い一言が胸に突き刺さる。

この泥酔も、そこから紡がれる言葉も北郷一刀が残した傷が原因に他ならない。

嬉しさのあまり飲んでこうなったというのは、それほど嬉しくなるほど傷が大きかったということなのだから。

「うん、ごめんね春蘭」

酔った猫の頭をよしよしと撫でると、猫は気持ちよさそうに目を細めた。

しかし、これで素直に終わるはずがないのが一刀である。

「うむっ!?」

「んっ・・・んん」

細めた眼を開けたかと思えばいきなりキスをしてきたのだ。それも、かなり熱く深いキスである。

「へぇ、私と凪には抱きしめるだけだったくせに春蘭とは口付けをするなんて、随分いい根性しているわね一刀」

「んんんーっ!!」

身振り手振りで必死に否定する一刀ではあったが、どこから取り出したのか、華琳の手には既に死神鎌『絶』が握られており、凪の方も手甲『閻王』を身に着け手に氣が集めてゆく。他の武将たちも同じようにそれぞれの獲物を構えてゆく。

――これは本当に命が危ない。

「やれやれ・・・姉者、その辺にしておけ。皆も同じことをしたいのだぞ?」

地獄に仏とはこのことである。声の主に一刀は心から感謝した。

「・・・ふんっ」

秋蘭(妹)に諭された春蘭(姉)は隅の方でいじけてしまった。

「おいおい・・・大丈夫なのか?後で虎にでもなりそうな気がするんだけど」

「まぁその時は是非、慰めてやってくれ」

「俺、殺されると思うんだけど・・・」

「なに、北郷なら平気であろう」

随分とさらりと言ってくれるなと一刀は思った。実際問題、虎になった春蘭の恐ろしさはかなり怖いものがある。過去の経験がそれを物語っているのだ。

「せめて骨は拾ってくれよ秋蘭」

「うむ、それくらいであれば引き受けよう」

いや、そこは助けようよと思いもしたがそこは自業自得。三年も間を開けた自分が悪いのだと自己完結させた。

「それよりも北郷・・・」

「なに・・・」

言葉は続かなかった。

一刀の唇が秋蘭の唇によって塞がれているからだ。

短いキスの後、秋蘭は一刀の頭を自身の胸元に抱き寄せた。

「よく戻ってくれた」

短いたった一言だったが、そこには秋蘭の想いのすべてが詰まっているように感じた一刀は。

「ただいま、秋蘭」

その一言に秋蘭は満足そうに頷いて優しく微笑んだ。

 

 

「かずとー♥!」

「うわっと・・・霞、あぶないぞ」

「そんなんどーでもええねん、約束破って今まで何しとったんや!ウチ、ずーっと待っとたんやで」

「そ、そr・・・し・・・ゆらさ・・・・」

溢れんばかりの涙をためたまま霞が抱きついてきて胸倉を掴み凄い勢いで揺さぶりを掛けてくる。魏で一、二を争う武将である張遼こと霞の力で揺さぶられては一分としない内に酔ってしまう。

――これはマズイ。なんかでちゃいかんものが口が出てしまう。

「あかん!姐さん、隊長真っ青や」

「霞お姉さま、隊長が死んじゃうの~」

「霞様、その辺りでどうか」

かつての自身の部下、北郷隊の三羽鳥のおかげでリバースだけは免れた。

しかし、つかまれた胸倉はまだ離されていない。う~、と一刀を見つめたかと思えば次には唇を重ねてきた。

秋蘭と同じように短いキスだったが、霞の方は鳩尾に一発思いっきり拳が炸裂した。

「もし、また勝手におらんようになったら馬で引きずりまわしたるからな!!」

あまりの痛さに悶絶する一刀に霞がそう言葉を掛けた。立ち上がれそうもなかったので首だけを上げて。

「ただいま、霞」

「もう、おらんようならんといてな」

また、あとでなとだけ言って霞は酒瓶片手にとって身を引いた。

霞の顔には明るい笑顔があった。

 

 

霞が離れた後に近づいてきたのは、一刀の部下としてともに警備隊にいた三羽鳥だった。

「ご無事ですか、隊長?」

「凪、心配せんでもええろ。隊長笑うとるし」

「隊長はマゾ野郎だから平気なの」

三者三様、それぞれの個性があふれたお言葉である。

だが、それでもどこか懐かしくてやっぱり笑みが浮かんでしまう一刀であった。

「ありがとう、凪、真桜、沙和」

せめてもの感謝の気持ちとしてそれぞれの頭を撫でると、三人ともが頬を赤らめ微笑んだ。

「三人とも、心配掛けたね・・・ごめんよ」

「そんな私達は・・・」

「隊長、凪な・・・隊長がおらんようになって一番落ち込んどったんやで」

「そうなのー。隊長がいなくなったて聞かされた時、凪ちゃんは華林様を思いっきり殴ろうとしたのー」

「真桜!沙和!!何もそのことを話さなくてもいいだろう!」

「いやぁ、だって・・・なぁ沙和?」

「うん、沙和たちあの後大変だったの。秋蘭様に気絶させられた凪ちゃんを介抱したりして疲れたの」

「そういうことや。これぐらい話たってバチはあたらへんやろ」

二人の勝ち。

心の中で一刀はそう宣言したが、笑いたい気持ちにはなれなかった。

(そっか、俺はこんなにも愛されていたんだな)

改めて思い知る三羽鳥と自分との絆の大きさを。

「本当ににありがとう。また三人に会えてうれしいよ」

ちょっとだけ驚いた顔をした三人は笑顔を浮かべ、三人同時にキスをした。

凪が唇に。

真桜と沙和が頬に。

「では改めて・・・」

三人が並んで、そして凪が音頭をとる。一呼吸だけ間をおいて。

「「「おかえり(なさい)(なの)隊長!!」」」

三人の笑顔の花が咲いた。

 

 

「兄ちゃあああああん!!」

「兄様あああああああ!!」

次にやってきたのはに涙混じりの声を上げた季衣と流琉だった。

「ぐはっ」

ドゴォッと言う効果音が聞こえそうな二人のタックルもとい、抱きつきの威力に思わず倒れそうになるのは兄の意地として踏ん張り耐えた。この威力はそのまま二人の自分への想いの強さなのだと思ったからだ。

「ホントにホントに兄ちゃんなんだよね?嘘じゃないよね?」

「うん、俺はちゃんとここにいるよ。ただいま、季衣」

涙を拭って唇を重ねた後、頭を撫でると本当に幸せそうに笑った。

「流琉もただいま。ごめんね、遅くなちゃって」

流琉にも先ほど季衣にしてあげた様にした。

「ホントに悲しかったんですよ!季衣なんて毎晩泣いちゃったりして・・・」

「流琉だって泣いてたじゃんかー!。僕だけが泣いてたみたいに言わないでよ!!」

――これまた懐かしい、二人のいつもの光景だ。

些細なことで喧嘩してまた仲直りする。そんな“一刀の知る”二人に心から安心してしまう。

たった三年、されども三年。

その間にも二人は成長しているのだ。一刀の知る二人よりもほんの少し大人っぽくなっていたことに少なからず一刀は驚いていたのである。

「二人とも、その辺にして、ね」

「うう~、兄ちゃんー」

「兄様ぁ」

――武器がなくてよかったなあ。

二人を宥めながら一刀はそんなことを考えた。もし武器があったら・・・そう考えると背筋か一気に冷たくなる。

「季衣、そろそろ」

「分かってるよーっだ。兄ちゃん、また後でね」

二人は離れ際に・・・。

「「おかえり(おかえりなさい兄ちゃん(兄様)!!」」

向日葵のように明るい声と思いを一刀に贈った。

 

 

「お久しぶりなのですよお兄さん」

「お久しぶりです一刀殿」

「・・・・・・」

二人の後にやってきたのは魏が誇る三大軍師の風、稟、桂花だった。

ちなみになんの声もかけなかったのは言わずもがな桂花である。

「うん、久しぶり。三人とも綺麗になったね・・・元気そうでよかったよ」

綺麗になった発言には頬をかすかに赤らめたが、二言目で元に戻ってしまった。

「それは違うのですよ。風たちが今笑顔でいられるのは“今”お兄さんがこうしてここにいるからなのですよ」

「ええ、風の言う通りです。それに私たちだけではありません。他の者たちも皆、一刀殿が今こうしてここにいて下さってるから笑ったりできているのです」

「ちょっと!私まで一緒にしないでよね!!私は別にこんな変態、いなくたってなんてことないんだから」

「やれやれ、桂花ちゃんは素直じゃないですね、稟ちゃん」

「ええ、こんな時ぐらい素直になってもいいと思うのですが」

やれやれと、風と稟は揃ってため息をついて桂花がそれに噛みつく。

「ごめんね桂花、寂しい思いさせちゃって」

ぎゃーぎゃーと騒ぐ桂花を抱きしめて唇を重ねると、まるで声になってない叫び声をあげた後にぽかぽかと殴りつけてきた。

「なんてことすんのよ!!もし孕んだりしたらどうしてくれるのよ!この全身白濁精液男!!!」

「その時は必ず責任とって幸せにするよ?」

「っ・・・・・・」

種馬発言全開である。

抱きしめられてそんなことを言われて二の句が継げなくなった桂花はされるがままだった。

その後我を取り戻した桂花は、一刀を突き飛ばして足早に立ち去っていく。

「流石にやり過ぎだったかな」

そうは思いはしたが、去り際の小さな呟きを一刀は確かに聞いた。

――おかえり。

確かにそう聞こえた。

などとそんなことに浸っていると、すっかりむくれた風と呆れる稟が声を掛けてきた。

「むー・・・幸せにするのは桂花ちゃんだけなのですか。風たちは仲間外れですか」

「あれだけ手を出しておいて・・・それはあんまりではないのですか一刀殿」

「いや、あの場で桂花を素直にするにはああするしかないと思って」

「ではそのことを風たちにも証明してください」

「しょ、証明・・・ということはつまり・・・」

「ま、マズイ!」

「ぷはっ」

稟の妄想力は衰えていなかった。一刀との行為を完全に頭の中で完成させた稟は、その妄想と共に鼻血の海に沈んだ。

最早、この光景がなくなることはないのだろうかとさえ思った瞬間だった。

「雰囲気が台無しでなのすよ。はい稟ちゃん、トントンしましょうねー」

「ふ、ふがが・・・すまない、風」

「いつもの事だから気にしなくていいのです」

「かわらないね、二人とも」

「それは当り前なのですよ。だってお兄さんが受け入れてくれた風なのですから、風は風のままでいるのですよ」

「そっか、ありがとう。風、稟」

それぞれの唇キスをすると、風は満足そうに目を細め、頬を赤らめた。

時に、稟が再び鼻血を噴いたのは御愛嬌である。

「それでは私達も行きましょう稟ちゃん」

「ええ・・・では一刀殿、また後で」

そいって二人は距離をとった後で。

「おかえりなさいお兄さん(一刀殿)」

一刀の帰還に心からの感謝の言葉を伝えていった。

 

 

「一刀ーっ!!」

ドゴォ!!ッ

「ぐはぁっ!!」

三大軍師が去った後に来たのは、スピードとパワーの乗った素晴らしいボディブロー。あまりの衝撃に一瞬とはいえ、呼吸が止まってしまった。

ゲホゲホと咳きこんでいると。

「か~ずと~大丈夫~?」

「姉さん、どう見ても大丈夫じゃないわ。介抱してあげないと」

聞こえてきたのはのんびりとした雰囲気と冷静さを感じさせる声だった。

「天和・・・人和・・・ありがと、心配してくれて。なんとか大丈夫だよ」

背中を擦ってくれる二人に感謝を言うと、不満ですと言わんばかりの声が耳にか言ってきた。

「ちょっと!ちぃにも何か言うことがあるんじゃないの!!」

「うん、そうだね。ただいま、地和」

そっと地和を抱きしめて耳元に囁く。真っ赤になったものの、一刀の胸に顔をうずめおとなしくなった。しかし、そんな状況も長くは続かないのがこの三姉妹である。

「ああ~ちぃーちゃんいいなぁ~。一刀、私も抱っこ~」

「ちぃ姉さん、流石にずるいわ・・・私達だって抱きしめてほしいのに」

「一刀はちぃのものなんだからいいのよ!!」

「えええ~、一刀はお姉ちゃんの一刀だもん」

「違うわ、姉さん。私の一刀さんよ」

と、なんかいつの間にか個人の所有物にされてしまっている一刀であったが、そこは魏の種馬。

(ホントに愛されてるんだな俺)

と思いもしたのだがそんな甘い幻想は、すぐに散ることなった。

「一刀は、私のお手伝いさんなんだから~」

はっきりとパシリと言われたようなものである。Orz

「大丈夫?一刀さん」

人和、君の優しさに心からの感謝を送ります。ありがとう

「ああ、改めて・・・三人ともごめんね。約束守れなくて」

「「「・・・・・・」」」

途端に三人が沈黙してしまった。一刀としてはこうなることは考えていたのだが、言わないわけにはいかないと思ったのだ

「かずと~・・・私たちね、大陸一の歌手になったんだよ~」

「驚いたでしょ!ちぃたちを褒めなさい!!」

「そうね、それくらいの我儘はいいはずだわ。ちぃ姉さん、いいこと言ったわ」

さっきの静かさはどこへ行ったのやら。

いつもの調子を急に取り戻した三姉妹はそれぞれの意見を好きなように言いだす。

帰ってきて何度目になるだろうか、またもや懐かしいと一刀は思うのであった。

「だから~天和ちゃん、ご褒美が欲しいな~」

「姉さん!抜け駆けは許さないわよ!!」

「同感」

突然三人がそんなことを言った。

「ご。ご褒美って?」

閨か?と思ったが三人にしては控えめご褒美、キスだった。

「後で新曲聴かせてあげるから楽しみにしててね~」

「もし聞かなかったら承知しないんだから!!」

「楽しみにしてて」

ステージが別の場所にあるらしく、準備があるからと言って三人は宴会場を後にした。

そして、そこで一刀はある人物がいないことに気づいた。

「華琳は?」

この場に曹孟徳――華琳がいなかったのである。

 

 

「まったくあの種馬、次から次にデレデレと・・・」

華琳は郊外の森にある小川にいた。

気付いた時にはここに来ていたのだ。

「・・・・・・何をやっているのかしら曹孟徳ともあろうものがいたたまれなくなるなんて」

平たく言えば嫉妬していた。三年ぶりに帰ってきた愛する男に素直に想いを伝える子たちに。

嬉しいはずなのに、喜びたいはずなのに、あの場に居続けることが出来なくなって静かなこの場所に来てしまった。

「こんなに弱い女だったなんて・・・これも一刀のせいね」

愚痴を言わずにはいられなかった。言わなければ、涙が出そうだった。

一刀に出会うまで自分は時に冷酷になれる覇王だったはずだ。しかし、一刀に出会ってから、だんだんと自分の中で彼の存在が大きくなっていき、いつの間にか自分自身を預けられるほどまでに彼の事を信じられるようになっていた。

――だから、彼が消えたとき涙を流した。

溢れ出る感情のままにただ泣き続けた。

皆に告げた後、魏領に帰った後も誰一人として覇気を失くしてしまった。それだけではない、一刀は民にも慕われる人物だったせいで魏そのものが火が消えたように静かになってしまったのだ。

だから、五胡が攻めてきたときは正直覚悟を決めたものだ。

――この身、引き換えにしてでも一刀が愛したこの国を守ってみせる。

魏の武将が皆そう思った。

しかし、一刀を失った穴は大きく、五胡の圧倒的な兵力の前に屈服する手前まで追い込まれてしまった。だが、その窮地を救ってくれたのは手を取り合うことを決めた孫策率いる呉と劉備率いる蜀だったのだ。

桃香と雪蓮の叱咤激励のおかげで、少なからず力を取り戻した魏の武将たちは奮起し、三国は五胡を退かせることができた。

そうして今、待ち望んだ時なのに自分はこんなところにいる。

「傍にいるって言ったんだから・・・いなさいよね」

「もちろん・・・いるさ」

息を切らせる音が聞こえる。おそらくここまで走ってきたのだろう。呼吸を整えるまでの時間がちょっと長い。

「ごめんよ・・・来るのが遅くなって」

「だめよ・・・許さないわ」

震える声には覇王としての迫力も威厳もなく、ただ一人の女の子のものだった。

「それは困ったなあ・・・・どうしたらいい?」

「一度勝手に消えたのよ?言葉は信用できないわ。行動で示しなさい」

「うん、ごめんね大陸の覇王、そして淋しがり屋の女の子」

華奢な体を抱きしめ唇を重ねる。他の子たちにもした一刀ではあったが、華琳はそれでも彼を受け入れた。

何よりも待っていた時を少しでも噛みしめるように華琳もまた、一刀の背に腕を回す。

 

――静かな時間は、誰にも邪魔されることなく流れた。

 

 

如何だったでしょうか?

Kanade制作の真・恋姫✝無双 魏エンドアフター 四作品目『再会編』

最後まで読んでいただいた方はありがとうございます。

全員との再会を一作品にまとめたらこんな感じになりました。

三国の武将たちが集う宴会なのに全く呉、蜀のメンツが出ていません。

ごめんなさい。

次に再会編のおまけを書いている最中です。それを投稿した後は、再会の後のお話を書こうと思っております。

呉や蜀にスポットを当てた作品も書きたいなぁと思っていますので、ちょいちょい挟んでいくかもしれませんがその時はよろしくお願います。

Kanadeでした。

コメントおよび感想をお待ちしております。

 


 
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