No.770096

ALO~妖精郷の黄昏~ 最終話 終わり良ければ全て良し

本郷 刃さん

最終話になります。
『妖精郷の黄昏』は終わりです、今回だけタイトルが作者の心境w

どうぞ・・・。

2015-04-10 15:56:00 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8371   閲覧ユーザー数:7698

 

 

 

最終話 終わり良ければ全て良し

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

実験体格納室での〈Eternal the Guardian Lord(エターナル・ジ・ガーディアン・ロード)〉との戦闘後、

システムコンソールを使い『カーディナル・システム』のプログラム書き換えが行われ、

それに伴って発生した眩い光に俺達は包まれた。

光が晴れると俺達は世界樹の枝の端に居て、おそらくは強制転移させられたことがわかる。

ここからはアルヴヘイム中を見渡すことが出来、やはり光が行き渡っているようだ。

 

「凄く綺麗です…」

「世界に光が満ち溢れているみたい…」

「神秘的な光景ね…」

「まさかここまでのものだったとは……聞いていた以上だ…」

 

女性3人が感嘆の言葉を漏らし、俺自身もアイツ(・・・)から聞いていたとはいえ、想像以上の光景に驚きを隠しきれない。

なにせ、幹内部の管理エリアに突入する前とは一変している。

 

燃え広がっていた炎は消えて光となり、燃え尽きたはずの草木は新たに芽吹き、荒れていた風と海は穏やかなものへ、

凍りついていた全てが解き放たれ、消滅した月が優しく照り輝いている。

優しい光によって再生していく世界はまさしく幻想的だ、これほどのものが見られるなんて苦労した甲斐があったな。

 

「本当にアンタ(・・・)はいつも俺を驚かせてくれるな」

「ふむ、それは良かった。では今回は楽しんでくれたと判断して良いのかな?」

「色々と大変だったが、かなり楽しませてもらったぞ……茅場」

 

軽く目を瞑り、そこに居るだろう存在に対して話し掛ける。

すると、光の粒子が人の形を取り、俺がよく知る男…茅場晶彦の姿になり、応じた。

アスナ達も驚きながら振り返り、俺も遅れるようにして笑みを浮かべながら茅場を見る。

満足そうな様子だし、コイツからしても十分な成果だったようだな。

 

「礼を言わせてもらうよ、キリト君。それに協力してくれたキミ達もだ。ありがとう」

「前にも言ったが俺とアンタの関係は互いのメリットによって成立している。

 今回、俺にとってはALO崩壊の阻止、アンタにとっては自身の尻拭い、それが成立しただけだ。礼を言われるほどじゃない」

「はは、キミは相変わらずだね。だが、それでこそキリト君だ」

 

そう、結局のところ俺と茅場はあくまでも互いのメリット、望みの為に利用しあっているというものだ。

まぁ、そこに信用が無いというわけではないのは、互いに理解しているけどな。

 

「茅場さん、勿論キリトくんもだけど、今回のことをちゃんと説明してもらっても?」

「ああ、構わない。協力してもらったことだし、元々話すつもりでもあったからね。

 まぁ、私としてはアスナ君とユイ君以外に協力者を連れてきたことは意外だったが…」

「彼女は問題無い。お前のことを話すような人じゃないからな」

 

考えていたらアスナが茅場に問いかけ、アイツは快く応じたが未だに黙っている彼女を気にしているようだ。

それには俺が問題無いと伝え、それに聞いた茅場は気にすることをやめて話しをする気になったらしい。

 

「今回、私は不甲斐無くもキリト君に後始末を頼んだ。1つは先日の『アンダー・ワールド』、もう1つが此度の一件。

 彼から簡単なことは聞いていると思うが、詳しく話しをさせてもらうよ。とはいえ、そう大したものではないがね」

 

苦笑してから茅場は俺には改めて、アスナ達3人には簡潔にだが話しを始めていく。

 

「先のUWの発展に使われているフルダイブマシン(STL)のプロトタイプは元々、私がSAO時に使用していたものだ。

 健は見事にそれを発展させてくれたようだが、開発陣に余計な思考を持つ者が居たらしくてね。

 人間味があることは良いのだが、不純な存在が生まれてしまった。生まれた悪意の元凶をキリト君に断ってもらったのだ」

 

UWについては3人共(・・・)知っているが、まぁどういう経緯で俺がUWへ行く気になったかを知るには丁度良いだろう。

現にアスナとユイにはジト目で見られる、茅場と会った時のことは話したがそこら辺ははぐらかしていたのがここで返ってきたようだ。

そんな俺達の様子も知らずに茅場は話しを続ける、出来れば気付いてくれるとありがたい。

 

「そして、今回の一件はSAOのカーディナル・システム、そのコピーのプログラムを書き換えることを頼んだ。

 オリジナルカーディナルにプログラムされたワールドマップ崩壊任務を防ぎ、システムそのものに修正を加えることが目的だった。

 私だけで行えるならそうしたのだが、無用に介入すればカーディナルに気付かれてしまうのでね、キリト君に協力してもらったのだよ。

 オリジナルからコピーし、その段階で修正を行っていれば今回のような事態にはならなかったのだがね」

 

今回のコピーカーディナルが引き起こしたワールドマップの崩壊はオリジナルが原因で、

それを設定した茅場の落ち度でもあるために彼は対処の為に俺と協力し合った。

 

その一方で、オリジナルカーディナルをそのままコピーし、

なんの設定もせずに使用していた下種郷、ゴホン……バカの手抜きの結果だとも言える。

いや、そもそも、事件になっていたSAOのシステムをそのままコピーして使用するとか、

バカ以前に研究者としてどうかと思うのは俺だけじゃないはず。

アスナとユイ、そして彼女も呆れた表情をしているからな……まぁ、須郷だけでなく大元である茅場にも呆れていると思うが…。

 

「直接の行動を制限された私はキリト君にプログラムの修正箇所などを全て伝え、キリト君は行動に移した。

 UWへ降り立ち、最高司祭アドミニストレータを討ち、さらにUWにおける大規模戦闘で各国を退け、日本を優位に仕立て上げた。

 ALOでも自ら悪役(ヒール)に近い位置に立ち、それでいて両軍に非の無いよう、悪質なプレイヤーも摘発した。

 私以上に人を掌の上で動かしていたようだ」

 

掌の上で動かしたとは随分な物言いだな、的外れじゃないから言い返さないけど。

だが、全てが全て自分だけでやったわけじゃない。

 

「俺1人の力じゃない、あらゆる人達が俺達に協力してくれたからだ。

 今回の件もあまり話さないでいた俺をアスナ達が信じてくれたから、俺も俺に出来ることを全力で行った。

 自分の利になる枷の嵌め直し、警告により加害者も減少し、被害を受けた人達も少しは気が晴れる。

 みんなの力があって出来たことで、なにより俺はALOが好きだからな」

「キミらしくていいではないか。だからこそ、私もキミに協力を要請できる」

 

改めて俺とコイツは似ていると思う。

自分のやることに命を懸けるところ、それに周りを巻き込み傷つけてしまうところ、

大切な人を泣かせてしまうところ、それでも大切な人が付いて来てくれるところ、VR世界をとことん好きでいるところ、とかな。

 

 

 

 

「詳しく話そうにもこれだけだ、他にも聞きたいことはあるかな?」

「キリトくんが知っているのなら、この件に関してわたしはもう無いです。でも、言っておきたいことはあります」

「なにかね?」

「『ソードアート・オンライン』の時、何度も貴方を恨みました。

 悲しくて、辛くて、憎んで、何度も殺したいとも、思うことはありました。

 それが出来ないのなら、死んでもいいとも………だけど…」

 

かつてのアスナの思いを俺は初めて聞いた。

当時の結城家における中で親のレールから外れることに恐怖していたということは聞いていたが、

アスナが茅場に対してそこまで負の感情を持っていたことは正直意外だった。

だが、アスナはそれだけでは終わらず、真剣な表情から穏やかな笑顔を浮かべた。

 

「あの日、もしもSAOが存在していなかったら、リズ達や仲間のみんな、ユイちゃん、キリトくんと出会っていませんでした。

 キリトくんとユイちゃん、みんなと一緒にいることが、いまのわたしで居られるが出来たのは、貴方のお陰かもしれません。

 だから、ありがとうございます」

 

やや呆然とする茅場を見て俺は微笑が浮かぶ。

コイツのこんな表情を見るのは初めてだ、負の感情を向けられているかと思えばそうではなく、感謝を向けられた。

驚くというか、困惑しているのだろうけどな。

 

さらに、今度はユイが少女の姿になり、話し始める。

 

「わたしはパパとママ……いえ、キリトさんとアスナさんに出会うことができました。

 お二人の娘になって、愛情を注いでもらって、わたしもお二人が大好きです。

 カウンセリングの実行を止められていなかったら、わたしはお二人と出会えなかったかもしれません。

 わたしにとっても、貴方が施した一手は大切なものになりました。ありがとうございます」

 

そうだ、ユイがカウンセリングの任務を止められていなかったら、

記憶を失うことはなくそのままカウンセリングに随時していたはずだ。

無理に俺達のメンタルデータの閲覧を行い、負荷が掛かったからこそ出会うきっかけになったんだ。

アスナといいユイといい、茅場の起こした行動がなければ俺は彼女達と出会うことはなかった、か…。

 

「2人の言う通りだな。礼を言い合うような関係じゃなかったが、言わせてもらうぞ……ありがとう、茅場」

 

2人の心からの言葉を聞き、俺も言うべきだと感じた。

言える時に言わず、後悔したりするなんて御免被るからな。

アスナとユイと俺の感謝の言葉に茅場は動かず、しかしそれを受け入れたのか表情が柔らかくなった。

 

「いままで周りの言葉など耳に入れなかったからか、酷く驚いたよ……だが、心地良いものだね」

「そうだな、だからお前には色々と言いたいことがある。言うのは俺達ではなく、彼女(・・・)だけどな」

 

茅場が出て来てから一言も喋らなかったウンディーネの女性が進み出て、茅場の前に立つ。

 

――パチンッ!

 

女性はそのまま手を振り上げ、茅場の頬を叩いた。

避けられたであろう茅場だが、それを受けたということは自分に恨みでもあるのだと考えているんだろう。

俺でもそう思うが、今回に限っては勘違い甚だしい……何故なら…。

 

「本当ならもっとたくさんぶちたいところだけど、いまの1発に全ての思いを込めさせてもらったわ。

 亡くなった人、絆が壊れた人、様々なものを失くした人、狂わされた人、色んな人達の思い、

 そして……私を置いて逝った怒りを込めさせてもらったわ」

「キミは……凜子くん、だったのか…」

 

ウンディーネの女性は俺が連れてきた凜子さんだ。

この機会を逃せばいつ2人が会えるかも解らない、それならここで引き合わせるのが一番だしな。

俺達の言葉に続けて凜子さんの登場ということもあり、さすがの茅場も動揺が大きかったようだ。

 

「キリト君の仕業か…」

「彼は話してくれただけよ。私が茅場くんに会いたくて、キリト君の手伝いを買って出たの。

 どうするか聞かれて、折角だから会おうと思ったの」

 

茅場が俺を一瞥したが凜子さんが話しを続けるので彼女に目を合わせ直している。

俺達はさすがに離れることも出来ないので聞くしかないわけだが、いいのか?

 

「キリト君から最期の言葉も聞いたし、いまの貴方が本人のエコーであることも聞いたわ。

 それでも、貴方が茅場くんであることに変わりはないわ。

 本当はもっとたくさん言いたいことがあるけど、あまり貴方を引き留めたくはないからこれだけは言わせて…」

 

茅場は常に『ザ・シード連結体(ネクサス)』を通して様々なVR世界を移動している。

その邪魔をしたくないと、彼の自由を奪いたくないと、多くは言わないつもりか。

そんな凜子さんだが、先程のアスナのように穏やかで優しい笑顔を浮かべた。

 

「私も茅場くんを愛しているわ…」

 

その言葉と共に茅場にキスをした。

俺はユイが見えないように手で目元を隠すが、アスナはチラチラとなんだかんだ見ている。

おいアンタ達、子供(ユイ)の前だぞ。俺が言うなだって? 知るか。

 

「悪いのだけど、これで貴方を縛らせてもらうわね。私も生涯独身を貫くつもりだから」

「……はぁ、止めろと言っても止めないのだろう? 好きにしたまえ」

「ええ、そうさせもらうわ」

 

いやはや、いい雰囲気というか、周囲の幻想的な光景も相まってかなり絵になる、2人共顔立ちは整っているからな。

だが、凜子さんは惜しみながらも自分で茅場から離れて俺達の下へ戻ってきた。

 

「「ありがとう、キリト君」」

「どういたしまして」

 

茅場と凜子さんは同時に礼を言ってきたのでそれを受けておく。

大したことをしたわけではないが、俺達の礼も受け入れられたからな。

 

「さて、私はそろそろ行くとするよ。この世界で私が出来ることはもうないからね。

 だが、最後に彼女達のことも改めて紹介しておこう」

 

茅場の周りに光が集束していき、再び人の形を取っていく。

合わせて5人分、見覚えのある姿を認識して、俺は豪華なその面子の名を思わず呟いた。

 

「ウルズ、ベルザンディ、スクルド、それにフレイヤとヘル…」

「キリト君、なにもユイ君の後継であるMHCPはストレアとノルン三姉妹だけではない。

 MHCP06がフレイヤ、MHCP07がヘルだったということだよ。総勢7人だったわけだ」

「そう言えばウルズ達を紹介した時も全員とは言っていなかったな。

 始まりのユイ、発展のストレア、過去専門のウルズ、現在専門のベルザンディ、未来専門のスクルド、

 死を司りながらも両極に位置するフレイヤとヘル、ということだな」

「如何にも。SAOがありのままのゲームとして展開していれば、彼女達は7人でバランスを取り、各々の役目を果たしていた」

 

そういうことだったのか。通りでフレイヤは途中で居なくなり、ヘルは最初から参戦せずにいたわけだ。

5人の女性は微笑みを浮かべながら俺達に一礼するとその姿を消した、多分戻るべき場所に戻ったのだろう。

 

「では、これで本当に最後だ。また会うこともあるだろう、さらばだ」

 

あっさりとしながらも何処かいままでとは違う雰囲気で消えていった茅場晶彦。

どうやら凜子さんのことがずっと気がかりだったんだろうな…。

凜子さんから小さな声で「バカ」というのが聞こえたが、聞こえなかったフリをしておこう。

 

「さぁ、俺達もみんなのところに戻ろう」

「うん、キリトくん♪」

「今度はパパのポケットに入りますね♪」

「ふふ、本当に仲が良い家族ね」

 

俺達は翅を展開して飛び上がり、仲間達の場所へと戻る。

こうして、『アルヴヘイム・オンライン』を騒がせた『神々の黄昏(ラグナロク)』は、

コピーカーディナルのシステム修正により終息していくことになった。

 

キリトSide Out

 

 

 

 

和人Side

 

「それでは、無事グランド・クエストを終えたことを祝して、乾杯!」

「「「「「「「「「「かんぱ~い!」」」」」」」」」」

 

俺の音頭で始まった宴会という名のオフ会。

定休日のダイシー・カフェを使わせてもらい、寿司やピザ、その他の宅配サービスも利用し、

さらには店で購入したデザートや菓子類を持ってきて行っている。

なお、資金は全て俺の懐から、色々と黙っていたツケだ。

 

「いや~悪いな、キリト奢ってもらって」

「……志郎、悪いとは思っていないだろう?」

「ははは、とにかくごちそうになりますね」

「うまうま」

「お前ら、野菜もあるんだから食え。ほら、サラダ」

「公輝さんも世話ばかりしてないで食べないとだめだって」

「おい志郎、お前だけ後で金取ってやろうか?」

 

悪びれることなく笑っている志郎に景一がツッコミ、苦笑して僅かな遠慮をみせる烈弥、

とにかく食べていくのは刻だが公輝が各自の皿に取り分けたりしているので九葉もツッコむ。

昔から一緒に行動していたし、俺が奢るといえば遠慮しない辺りは楽しい。

 

「それにしても、アンタよくこれだけ注文する気になったわね…」

「高校生が出せる金額じゃないと思うのよね」

「和人さんだからなんとかしたのはすぐに分かるけど…」

「ねぇお兄ちゃん、いつの間にこれだけ買える余裕になったの?」

「今回は私達も払ってないですし…」

「和兄、どれくらいお金あるのか聞いちゃってもいい?」

 

里香と詩乃は驚きと呆れを含んだ声でピザを食べており、珪子とスグは俺の仕事具合で余裕ができたと感じたようだな。

雫さんは普段年上として支払いを行うからか俺に払わせることに戸惑いがあるようだが、燐は興味津々といった様子で聴いてくる。

燐だけではなく、参加メンバー全員が気になっているし、桁だけでいいよな。

 

「細かいのは教えないが、7桁はある」

「「「「「「「「「「ぶふぅっ!」」」」」」」」」」

 

食べ物、または飲み物を口に含んでいたやつらは吹き出し、それ以外も驚きで呆然としている。

明日奈も咽こんでしまったから背中を擦ってあげる。

 

「UWあっただろ? あの一件全部の報酬が7桁あったんだよ。ほとんどは将来の資金にするから貯金してあるけど」

「和人くん、そういう話はわたしにもしておいてよ…」

『そうですよ、パパ』

「すまない、素で忘れていた」

 

あの時は報告とか俺の警備とかゴタゴタしていたし、特に考えないようにしていたからな。

今度からはしっかりと話しておこう、うん。

 

「ちっきしょう、俺もしっかり働いて金を貯めないといけないからな……いやでも、もう準備金はある程度用意出来ているし…」

「遼太郎さん、どうかしたの?」

「い、いや、なんでもないぜ」

「ほら、2人とも。そろそろグラスが空いているかと思ったから淹れておいたぞ」

「ありがとうございます、エギルさん」

「お、サンキューな、エギル(助かったぜ…)」

 

遼太郎の言葉に奏さんが反応したようだがエギルの見事な入りに気を逸らされたみたいだ。

それにしても準備金ということは、まさか遼太郎の奴……ふむ、そうだとしたら楽しみにしておこう。

 

「ホントに和人は規格外を往くよな」

「らしいって言えばらしいけどね」

「「「そうそう」」」

 

京太郎、幸、それに哲、勇介、宗司の黒猫団ズ、人を人外のように言うな……否定はできないけどさ…。

 

「ほらほら、シーちゃんも食べなヨ。キー坊の奢りなんだし、元気になったんだから贅沢してもいいくらいサ」

「ありがとうございます、アルゴさん」

『シウネーは俺達の分までもっと食べなくちゃな。俺も治ったら食べまくるけど!』

『完治までもうちょっとだったね、頑張れ』

『僕達も治ったら盛大にパーティをやりましょう』

『タルの提案に賛成だよ』

 

そして、他にもきているのはオフ会初参加のアルゴこと“歌澤伊織”、シウネーこと安施恩(アンシウン)

ジュンとテッチ、タルケンとノリは通信プローブを利用しての参加だ。

ようやく俺以外のメンバーに本名を明らかにしたアルゴ、俺には最初に会った時に名乗ってきたからな。

シウネーも初めてのオフ会ということでかなり嬉しそうであり、

その様子を見ているスリーピング・ナイツの面子も嬉しそうなのが伝わってくる。

彼らには後日、ALOでお礼をしておこう。

 

一頻りみんなとの会話を終えてカウンター端の席からその様子を見る。

食事に手を付けたり、飲み物を片手に話しをし、または話し込む様子をゆっくりと見ていると落ち着くな。

グランド・クエストやその前日の準備でバタバタしていたから、その反動だろう。

 

「珍しくのんびりしてるな」

「色々と疲れたんだよ。手回し、作戦立案、指揮と指示、戦闘など、しかもお前らが相手だからな。

 枷も外れていたから、相当精神がすり減らされた」

「……確かに、戦いの場以外では自身を律しておかねば周囲に被害が出るからな。

 しかも今回は買って出たとはいえ重要局面は1人で行動しただろう? ならばその疲れも仕方が無いな」

「なにはともあれ、お疲れさんっと」

「……ゆっくり休め」

「サンキュー。ま、夏休みの課題も終わっているし、ゆっくりさせてもらうよ」

 

志郎と景一から労いの言葉を受け、苦笑して応える。夏休みも中盤であり、あと少しすれば後半に突入する。

長期休日の課題は終わらせているのであとは満喫するだけだ。

前半も楽しく過ごせたが、やることは済ませているのでここからはさらに気兼ねなく過ごせる。

 

「みんな、食べ足りなかったら言うんだぞ。また注文するからな」

「「「「「「「「「「ゴチになりま~す!」」」」」」」」」」

 

はは、奢られる気満々だな~。ま、みんな加減を知っているから良いけど。

 

それから午後3時頃までオフ会は続き、そのあとは各自解散となった。俺は明日奈と自宅へ向かう、家デートだ。

 

 

 

 

家に着いて冷蔵庫で冷やした麦茶を飲み、そのまま俺の部屋に移動した。

スグと刻は外でデートしてくるということで、母さんは仕事で夜まで居らず、親父も相変わらず海外だ。

まぁ、もう少しでお盆休みになるのでその時には家族全員揃うだろう。

ちなみにいまの俺と明日奈はというと…。

 

「かずとくん、ぎゅ~ってして」

「はい、ぎゅ~」

 

イチャついている、というか超充電タイム。

俺は背中をベッドに預け、明日奈は俺の脚の間に座り凭れ掛かっている。

ご要望通りに彼女のお腹に手を回して抱き締めてあげると凄く嬉しそうにしてくれる。

 

「なでなでして~」

 

今度は撫でてくれとおねだりしてきたので優しく撫でてあげると気持ち良さそうに表情を緩めている。

まるで猫、いや仔猫みたいだな、本当に可愛い。

 

「明日奈は甘えん坊だな」

「甘えん坊なわたし、いや?」

「全然。むしろ大歓迎」

 

普段でも甘えてくれるけど、ここまでに甘えてくれるのは珍しいので俺としては新たな一面が見られて嬉しい。

本当、明日奈を知れば知るほど彼女に溺れていくのが判る。

そこで明日奈のお腹に手を添えていたことで判ったことが1つ。

 

「明日奈、お腹がちょっと出てる」

「ふぇ、うそっ///!?」

「ホント。多分食後だからだと思うよ。特にデザートを食べていただろ?」

「うっ……だって、美味しかったんだもん…/// うぅ、かずとくんにみっともないこと知られちゃった…///」

 

おぉ、いつもなら拗ねてちょっとだけツンツンするところだが、今回は落ち込んだか。

ツンも可愛いが落ち込む姿も実に可愛い、というかいじめたくなる…いや、弄りたくなる!

 

「それじゃ、消化しやすくなるようにマッサージしてあげよう」

「え、んぁ…///」

 

俺は明日奈のお腹を一度撫で上げ、さらに服の下に手を入れて直に撫でる。

強弱をつけて撫でれば、声を我慢しつつも艶めかしい小さな声がどうしても漏れるようだ。

お腹のお肉は摘まめるほどもないの摘まもうとすれば、小さな悲鳴を上げそうになっている。

 

「やぁ、ん…///」

 

首を小さく横に振っていやいやする明日奈を見ていると背中がゾクゾクしてくる。

相変わらず、俺の加虐心を擽るのがお上手なようだ、このお姫様は…。

しかしだ、これ以上弄って拗ねられては本末転倒、元々今日はみんなへのお詫びとしての奢り、

そして明日奈へのお詫びは甘やかしてご機嫌を、ということだからな。

 

「ごめんな、ついイジメたくなってさ。ん…」

「んぅ…///」

 

腕の中にいる明日奈の顔をこちらに向けさせ、謝ってからその瑞々しい唇に軽くキスをする。

軽くしたからか、それとも僅かなだけだったからか、どちらにしても足りないと訴えるような表情をしている。

 

「もっと、キス、ん…//////」

 

案の定というべきか、先程までの弄られていた様子を一変させて、控えめながらも求めるようにキスをねだってきた。

深い口付けはなく、舌も使わない、ただただ重ねて合わせるだけのキスばかりをするが、これは明日奈の甘えの証だ。

愛してほしいわけじゃない、ただここにいて甘えさせてほしいという彼女からの無意識のサイン。

だからそれに優しく応えてあげればもっと嬉しそうに抱きついてくる。

そこでふと明日奈の変化を感じ取り、苦笑する。

 

「明日奈、眠たかったら寝たらいい。俺は傍に居る」

「でも、折角かずとくんと2人きり…」

 

もう1つの甘えのサイン。俺だけの前で明確に眠気を露わにするのは安心感からだと思う。

キスだけではなく眠気からも瞼が重たくなったのを察知できたからな。

さすがに布団の上で寝かそうと考えたが、明日奈がお望みなのは…。

 

「じゃあ、膝枕して…///」

「仰せのままに、俺のお姫様」

 

腕の中に居た明日奈をお姫様抱っこしてベッドの上に寝かせ、俺は壁に背中を預けて明日奈のご要望通りに膝枕をする。

気持ちよさそうで嬉しそうな、それでいて眠気のある笑顔を俺に見せてくれる。

 

「ありがとう、かずとくん…」

「おやすみ、明日奈…」

 

夏とはいえ薄手の服なので冷房の効いた部屋は寒いだろうから寒すぎないように気温を調整し、薄い掛布団を掛ける。

恋人とはいえ無防備じゃないかと思うが、邪まな思いが湧かないほどに愛おしい寝顔を見せてくれるので逆に落ち着く。

皺が付かないようにそっとスカートを脱がして、丁寧に畳んでおく。

俺は烈弥から勧められて借りた小説を開き、読書に耽る。

 

UWとラグナロク、色々と大変だったが無事に解決して良かった。いまはただ、この穏やかな日々を過ごそう。

 

和人Side Out

 

 

END

 

 

 

 

 

あとがき(ミニ)

 

これにて『ALO~妖精郷の黄昏~』は終了となりました、投稿が遅れて申し訳ないです。

 

このまま全体のあとがきも投稿しますのでそちらもどうぞ。

 

今後の活動について書きます、それとアルゴの現実世界の名前はオリジナル設定ですのであしからず。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

 

 


 
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