No.767818

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第038話

私「投稿ですよ。恋歌さん」
恋歌「そうですね。うp主さん」
私「……あれ、怒っていらっしゃらない?」
恋歌「ん?何故です?」
私「だって、今回。私はまた重昌に女を寄らせた作品を書きましたので、それに不満は感じていらっしゃらないのかと……」

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2015-03-30 19:40:39 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1159   閲覧ユーザー数:1103

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第038話「麗羽」

東の都、長安にて。

重昌は河北の袁紹が曹操に敗(破)れた報を聞くと、直ぐに長安にて軍備強化を図った。

勢いづく曹操が次に狙うは、自身であると重昌は読み取る。

恐らく次の合戦は洛陽と長安を挟んでの戦となりうる。

何故重昌も曹操も互いに早く決戦に持ち込まなかったのかというと、当時曹操の背後には袁紹、重昌の隣国には張魯と劉表という難敵がおり、彼らが攻めてこない状況を作らずに決戦など起こそうものであれば、それぞれの難敵に背後を突かれ挟み撃ちにあいかねない。

なればこそ彼らは片や難敵を打ち倒し、片や難敵と同盟を結んだのである。

劉表や張魯との関わりは一時的に一刀や恋歌達に任せ、重昌は新参者である紅音・香蘭・胡花・雅・月・詠を従えて長安にいたのだが、そこでとある客人を迎える事になる。

「袁紹がこの国に来ている?」

兵士の報告によると、官渡にて敗北した袁紹の行方は、その後定かではなく、曹操もその身柄の搜索に力を注いでいたとか。

だが、曹操も官渡にて自分が戦っている時に、長安より重昌に責められれば痛手を被ることもわかっているため、その国境の警備の手は抜いていない。

なればこそ国境の曹操の目から逃れて自分たちの下に来るなど、重昌は不可能だとも思った。

「……お館様、どうされますか?偽物の可能性もあるかもしれません。無闇にあってそれが刺客だということも」

雅が彼を気遣いそう進言する。

恐らくは重昌の考える様な結論に彼女も達したであろうし、また控える他の者たちも最もらしく頷く。

「……詠、どう思う?」

今は雅の軍師として働く詠に質問をぶつけてみると、詠は兵士に向けて質問をする。

「袁紹と名乗る人物の他に、誰か連れはいなかったか?」

「はっ、文醜・顔良と名乗る女傑。後は数人の負傷した部下と共に訪ねてきております」

詠はしばらく考え込むと、重昌に会うべきだと伝える。

「仮に偽物だとしても相手は負傷者。こちらには紅音や雅、胡花もいますし。直ぐに取り押さえれば先生に被害が及ぶことはないでしょう」

「……それもそうだな。それに恐らく近いうちに曹操が攻めて来るだろう。有力な情報が聞けるかもな」

重昌は部下に袁紹達を通すように言うと、早速兵士は袁紹を呼びに行った。

やがて広間に招かれた袁紹達の姿を見て、その場の皆は驚愕する。

董卓連合で見せた高飛車で自信の塊の様な姿はそこにはなく。

そこにいるのは、金の鎧ではなくボロの服をまとった袁紹達の姿であり、袁紹に至ってはいつもの金色の長い巻き髪は痛み。

顔には炭がかかり、左腕の肘から先を失い、その先は痛々しく包帯が巻かれている。

「……れ、麗羽!!どうした!?その姿は……」

誰よりも先に声を上げたのは、袁紹とは官軍時代からの顔なじみである紅音である。

「………どうしたも、こうしたもありませんわ。ワタクシはただの敗軍の将。国を失い、材を失い、ただ頼れる者を頼って落ち延びてきた、ただの敗者ですわ」

かつての栄華を誇った名門袁家の出である袁紹。

彼女のこのような傷ついた姿を見て、皆が唖然とする。

「……袁本初、官渡で何があった?何がお前達をそこまでにした?」

この重昌の問いかけに、袁紹は淡々とそれまでの経緯を話し出す。

河北から曹操の収める許都を目指し、官渡にて曹操とぶつかった。

作戦上、戦略上、勢い的にも袁紹に負けは無く、袁紹優位に全てのことが運ばれていた。

しかし最後の最後で決定的なミスを彼女は犯す。

袁家の当主として、長年の旧敵として袁紹は曹操の陣に突撃を仕掛け曹操を発見。

彼女に一騎打ちを望むが敗れ、左腕を失い、袁紹軍は敗走を余儀なくなれる。

それから彼女は本陣に戻るが体調を崩し、袁紹軍は硬直状態に陥る。

それを好機と思い曹操は、即座に軍の立て直しにかかり、硬直状態の袁紹軍の指揮をジワジワと削っていき、遂に袁紹は官渡からの敗走を余儀なくされたのだ。

元々の無理な出兵により、袁紹の敗走によって公孫瓚の収めていた幽州より内乱が勃発。

留守を預かっていた袁家の軍師である田豊も、この状況に手が負えなくなり行方知れずとなった。

袁紹の下に残ったのは、五千の兵士のみとなり、攻撃することも引くことも出来ない状況に陥った。

かくなる上は、決死の覚悟で曹操軍に突撃し、華々しく散るかとも考えた。

そんな時、彼女に付き従っていた新参将である張郃が、袁紹に他国への亡命を薦めた。

新参者である故か、張郃には袁紹の誇り高さなど判らなかったのだろう。

だが袁紹は考えた。

無様でもいいから生き延びてこの雪辱を晴らすか、それとも華々しく散り華を咲かせるか。

他にも思い出した。

以前彼女は重昌に対し、彼の戦場に立つ為の心意気とは何かとは問いかけた。

彼は言った。

「生き抜くこと。無様でも、泥にまみれても、人に揶揄されようとも、生き抜くこと。そうすればいつかは機会が訪れる。軍師とは、諦めないことだからな」っと。

それから袁紹は、長安まで落ち延びることを決心するが、その道程は簡単なものでは無かった。

国境には曹操の兵が待ち構えており、また彼らも袁紹を血眼になって探している。

多くの犠牲を払いながらも、長安の国境を越えた時には、既に部下は今の数になってしまっていたのだ。

経緯を聞き終えると、重昌はおもむろに口を開いて、袁紹に訪ねた。

「……袁紹、君は曹操を恨んでいるか?」

彼の問いに、袁紹は頭を振って答える。

「いいえ、ワタクシは決して曹孟徳を恨むことありません。ワタクシと彼女は雌雄を決して戦った。そこにはなんの恨みもありませんわ。強いて挙げるのであれば……自分への恨み」

「自分への恨み?」

「そうですわ。自身の油断が招いたこと。それさえなければこんなことになりませんでした………影村様!!私の身はどうなっても構いません!!せめて……せめてワタクシの部下だけは助けて下さいませんでしょうか!!」

袁紹は腕を失いながらも、バランスの取れていない土下座で頭を地面につけ、それを見た袁紹の部下たちも涙を流しながら袁紹の行動を押し止めようとするが、文醜と顔良によって静止させられる。

自らの主の体を張った行動を無下にしない為だ。

重昌は玉座より立ち袁紹達に近寄ると、袁紹の部下たちは咄嗟に頭を下げる。

彼は彼らの周りをグルグルと回ると、袁紹の前に座り、彼女の肩を鉄扇で軽く叩くと、顔を上げるように施す。

「袁紹、何か勘違いしているようだが、私は敵方の情けは見ない質だ。ただその者が使えるか使えないか。それが問題だ」

重昌は各袁紹配下の兵士の顔を品定めし、袁紹に訪ねた。

「袁紹、各地域で潜伏している兵士はいるか?」

「そ、それは、官渡の戦いで散り散りになった者や、草として各地に放った者もおりますが……」

「………敵方の国境を傷つきながらも越える袁紹軍の兵士の練度……使える」

そう言うと、彼は懐より小さな袋を取り出すと、中には袋一杯の砂金が入っていた。

「費用は惜しまない。後ろの部下を使いそいつらを呼び寄せてここに連れて来い。それまでお前自身は人質となれ」

「そ、それでは!!」

「ただし一つ条件がある。私の草も一緒に遣わす。仮にもしお前の部下がうちの軍資金を持って逃亡する気配を起こしてみろ。お前諸共部下たちはただでは殺さないから、それは覚悟しておけ」

「は、はい!!結構でございます!!ありがとうございます!!」

袁紹は何度も地面に頭をつけて重昌に感謝をした。

「それじゃ、お前たちはこれから私の家族だ。お前たちのことは、私が守ってやる!!」

 

その後、兵士達には風呂が与えられ、ささやかながら袁紹達の歓迎会が開かれた。

傷口に触るので酒は無かったが、兵士達は久方ぶりのまともな食事であったので涙を流しながら、食を楽しんだ。

夜、袁紹は重昌に呼び出されて彼の一室にいた。

斬られた腕の治療の為だ。

重昌の予想通り、戦場で治療したとは言え、長い逃亡生活の中で傷口は開き肉も腐りかけていた為、すぐさま彼女の治療に入った。

肉を裂き、骨を削る荒作業になる為に、抑え役として顔良と文醜、雅をつけて、治療の補助役に紅音も待機させる。

この時代にも麻沸散と呼ばれる華佗が作ったとされる麻酔薬もあるが、その肝心の華佗がいないために麻薬は使えないのだ。

麻酔抜きの手術であるため、袁紹を椅子に縛り付けてしっかり固定し、口にも木を加えさせ、皆に体を抑えてもらい治療に臨んだ。

何度も失神しては痛みで起き上がりの繰り返しを起こしながらも、なんとか治療は成功して、腕から不純物を取り除くことに成功する。

治療後、顔良は重昌に訪ねた。

いっそのこと最初から腕ごと切り落とせばまだましだったのではないだろうかと。

だが彼は、それは違うと言った。

確かに手がないことに変わりはないが、肘があるのと無いとでは大きな違いがあるのだと。

事実重昌の足の片方は膝から下は無く、片方は膝から上は無い。

経験から言えば膝がある方の義足の方がやはり踏み込みやすいのだとか。

そういう意味で彼は腕の肘を残すことにしたのだ。

昼前には始めた手術は夕方には終わり、袁紹は気絶し。

人間の絶叫・悲鳴というものは精神に大きな疲れを及ぼすものであり、ましてや夜を徹して皆は治療に付き合ってくれていたので、重昌以外の面々は辺り構わず夢の世界に落ちてしまった。

それから二日経ち。

さすがに雅や紅音は何日も仕事を離れるわけにはいかないので、手術を終えた翌日にはキチンと政務に復帰し、文醜や顔良も降将であっても休める様な立場ではないので、紅音に引き連れられて軍に合流した。

間を空けては袁紹の様子を見に来ている様だ。

その袁紹は、二日間手術の後遺症にて、重昌に看取られながら痛みの中悶え苦しみ抜き、三日後の夜に目を覚ました。

【……ワタクシは一体何を?】

目を覚ました彼女の前に見えてきたのは、知らない天井と夜中であることを証明する、窓から映る漆黒の暗闇。

それに続く左腕からくる激痛を思い出すと、自らは左腕の治療を施されたことを思い出す。

手術の事を思い出すと、自らに襲いかかる左腕の痛みがさらに増し、右手で左腕を押さえながら寝具の上をのたうちまわってしまうが、自らが体を横たわらせている寝具の左を見ると、治療を施したであろう重昌が椅子の上で船を漕いでうたた寝してしまっているのだ。

自らのこの状況を考え、何故こんな時に寝ることが出来るのかと一度は考えたものの、彼の後ろに見えたものは大量の用意された包帯と、血を十分に吸った布切れ。

そして彼の手にこびり付いた大量の血糊に、彼の隣の机の上には消毒に使うであろう水の入った桶であった。

これらを見るからに、彼は自分の眠っている間、ずっと自身を看病してくれていたのである。

それを思うと彼を疑った嫌悪感が、逆に罪悪感へと変わってしまう。

なんとか体を起こそうとするが、痛みと疲労の影響で上手く体が動いてくれなく、その動作のせいか、反応を感じた重昌は慌てて飛び起きて、袁紹の背中に手をまわして彼女の体を起こした。

「……大丈夫か。気分はどうだ?」

「………み、水を――」

それを聞くとすぐさま重昌は、自身の用意した飲み水をコップに掬い取り、袁紹の口元に持ってきてやる。

彼女は重昌の持つ手と共に、右手を使って勢いよくコップを口元に押さえるようにして、口横から垂れている水を気にせずに勢い良く飲み干していく。

「傷の痛みはどうだ?」

「………酷く痛みますわ。今までこんな痛み……味わったことなど……」

「そうだ。だがな覚えていて損はない。生きている証拠なのだから」

袁紹に向けて重昌は一つ笑みを浮かべて答えると、突然袁紹は涙目になりながら重昌を振り払った。

しかし疲れでバランスが取れず、彼女はそのまま寝具に前のめりになってしまうが、直ぐに精一杯の力を使い片手で体を半分起こす。

「………貴方様には……こんなワタクシの姿を見せたくはありませんでしたわ」

「こんな姿?」

「………こんな傷だらけの………醜い姿……」

「……醜いって。それならこの国で最初に再開した時h「あの時はワタクシを慕ってついてきてくれた部下の為必死だったのですわ!!」……」

袁紹はポタポタと涙を流しながら続けた。

「女性の命である髪はボロボロになり。体は傷だらけになってしまいましたわ。それに重昌様、ワタクシの体を看病するにあたって、ワタクシの素肌は拝見致しましたのでしょう?」

その問いに重昌は黙ってしまう。

彼女の体には戦いの傷跡だけではなく、何故か乳房には吸い後が残り、腹や下半身にも人の噛み跡がある。

それらを想定して、彼女は強姦を受けたのだ。

「賊に処女を奪われそうになった時、運良く猪々子さんと斗詩さんが助けに来てくれましたけれども、ワタクシの体は既に汚れてしまった。戦場に出たとき、そうなってしまうことも覚悟して挑んでいますが、ですが貴方様にだけはこんな私の体を見て欲しく無かった」

彼女のそれらの告白により、普段女性の気持ちに鈍感である重昌は直ぐに彼女の自分に対する気持ちに気がついた。

すると彼は足元の裾をたくし上げ、自身の両足の義足を外し、また上半身だけを脱ぎ袁紹にその体を見せる。

「し、重昌様!!その体は!?」

体に掘られる様にしていくつも付いた傷跡を見て、袁紹は驚愕した。

「かつて神速と言われたこの足は、片方は子の為、片方は部下の為に捧げた物。これらの体の傷跡は、修行で付けた物もあれば、嫁との喧嘩で付けた物もある。……麗羽、この俺の体は醜いか?」

「い、いいえ!!それらの傷は、重昌様の人生と言ってもいいものです。それを美しいと思えど、醜いなんてとても」

「……ありがとう――」

彼はいそいそと義足を元に戻し、服を着込んだ。

「麗羽が言った様に、これらの傷は俺の人生だ。良かったと思うこともある。間違ったと思うこともある。しかし決して後悔だけはしてはいけない。女性にとって体という物はとても重要な意味を持つことは、残念ながら俺は男だから全ては判らない。辱めに関しても、男であるから女性が思う羞恥心がどういったものなのかも判らない。だがこれだけは言える。俺にとって麗羽は麗羽でしかないのだから。たとえ辱めを受けようと、命である髪が傷もうと、体に傷が付こうと、心は麗羽であれば私は気にしない。でも少なくとも今思えることは――」

重昌は寝具に座り、自分の顔を袁紹の顔まで近づける。

「俺は今の麗羽はとても綺麗だと思うよ」

そういうと袁紹の瞳からジワジワと涙が溢れ出し、顔が崩れると、重昌の胸に蹲って泣き出した。

しばらくして、袁紹が落ち着き、重昌が彼女の体を寝具にゆっくりと横たえさせる。

「本当であれば俺の麗羽に対する今の気持ちを”体全体”で表せればいいのだけれども――」

彼女は反論の隙さえ与えられずに重昌に唇を奪われ、少しの間の後、唇から顔が離れると袁紹の顔は見る見るうちに赤くなる。

「今は傷が塞がっていないからこれで我慢してくれるかい?」

「………はい………」

彼女は、顔は真っ赤のまま穏やかな気分になり。

傷の痛みも忘れてそのまま目を瞑った。

「大丈夫だ……ずっと傍にいてやるから。『ふたりというのはいいものだ。楽しい時は二倍楽しめる。そして苦しい時は半分で済む』」

彼は麗羽が眠りの呼吸をしてからも、彼女の頭をずっと撫で続けた。

「お休み……麗羽」

 


 
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