No.761876

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY 34 新たな火種

やぎすけさん

少しずつ物語は動き出す

2015-03-02 23:39:41 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1193   閲覧ユーザー数:1141

前回のあらすじ

フォルス街を後にし、列車で次の地に向かったキリトたち3人は深い森が広がる地域“グローレスト”に辿り着く。

途中で揉めつつ辿り着いたこの場所は駅と街が直結していない土地だった。

3人はそれぞれに過去を振り返りながら、新たな地に足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

STORY ⅩⅩⅩⅣ 新たな火種

 

 

 

 

 

デュオ視点

木々の間を縫うように伸びる獣道を辿り、俺たち3人は神秘的な雰囲気を放つ森を進む。

前に通り抜けたフォルス郊外の密林とは異なり、眩しいくらいの光が差し込むこの森は歩いていてとても心地良い。

木漏れ日の中で舞い踊る蝶、時折どこからともなく響く鳥のさえずり、遠くから聞こえる小川のせせらぎ。

それら全てが、長い戦いを終えたばかりの俺たちを癒しているかのようだった。

その時、突然何処かから火薬の炸裂する音が響く。

 

アスナ「なに・・・!?」

 

デュオ「火薬の炸裂音だ!」

 

キリト「遠くじゃないな」

 

俺たちはそれぞれに顔を見合わせて頷き、音のした方へと駆け出す。

道から外れ、草木を掻き分けて進むと、音の正体が目の前に現れた。

そこにいたのは幼い少女と、それに向かって大砲のような筒を向ける二足歩行の巨大な亀だった。

少女の方は大体7~9歳といった感じで、背負っている革袋を見るに山菜か何かを採りに来ていたのだろう。

亀の方は体長約3m、上下左右に黒い筒状のものが十字を描いて突き出した甲羅を背負い、中年男性のような顔にニヤニヤとした気味の悪い笑みを浮かべたまま、ねっとりとした唾液の滴る舌で少女を拘束している。

そして背中から延びる筒の1つが、少女に向けられていた。

 

デュオ〈させるか!〉

 

俺は2人とアイコンタクトを交わし、背中から剣を抜き放つ。

 

デュオ「ぜあっ!!」

 

そのまま上段に構えて振り下ろす。

俺の存在に気付いた亀男は、咄嗟に飛び退くがそんなことは予測済みである。

 

キリト「うおぉぉぉ・・・っ!!」

 

飛び退いた先で構えていたキリトが、右斬り上げで亀男に斬りかかった。

驚いた様子で防御態勢を取るが、反応が遅かったためにキリトの斬撃で大きく体勢を崩す。

 

キリト「スイッチ!」

 

アスナ「はぁぁぁ・・・っ!!」

 

そこへ、さらにアスナからの追撃。

恐ろしいほど正確で素早い突きが、亀男の腹部数ヵ所に命中する。

だが、それらは全て亀男の外殻によって弾かれた。

硬質の音が響くと同時に、アスナと亀男が互いにその場から吹き飛んだ。

 

?「ぐぬっ・・・!?」

 

アスナ「くっ・・・!?」

 

キリト「アスナ!」

 

慌てて駆け出したキリトが、飛んできたアスナを受け止める。

その間に剣を構え直した俺は、刀身に意識を集中させた。

刃がクリムゾンレッドに変化し、熱を帯びて焔を作り出す。

 

デュオ「行け!ブラスト!」

 

再び上段に構えて振り下ろすと、その軌跡から赤い三日月が解き放たれた。

飛翔した斬撃は、そのまま亀男へと吸い込まれる。

そして亀男に激突した瞬間、衝撃を伴って爆発した。

やがて爆煙が晴れると、そこには焼け焦げて抉れた地面があるだけになっていた。

 

キリト「デュオ!」

 

アスナ「デュオくん!」

 

駆け寄ってくる2人。

俺は剣を背に戻してから振り返る

 

デュオ「倒したのかはわからないけど、とりあえず奴はいなくなったみたいだ」

 

俺の言葉を聞いて、キリトとアスナも剣を鞘に納めた。

そして俺たちは襲われていた少女に向き直る。

すっかり怯えきった少女は、その場でうずくまって震えていた。

 

アスナ「大丈夫?」

 

少女の前に駆け寄ったアスナは、その場にしゃがみ込んで優しく問う。

少女がこくりと頷くと、アスナは優しく微笑んでから次いで問い掛けた。

 

アスナ「あなた、お名前は?」

 

?「・・・セリア」

 

怯えていた少女が消え入りそうな程小さく答えた。

それに対してアスナは、にっこりとした笑顔を浮かべる。

 

アスナ「そうセリアちゃんって言うんだ。それじゃあセリアちゃん、あなたはどこから来たのかな?」

 

セリア「・・・あっち」

 

セリアはそういって、俺たちの来たのとは別の方の獣道を指した。

 

セリア「あの道の先に私たちの村があるの」

 

アスナ「そうなんだ。ねえ、お姉ちゃんもセリアちゃんの村に行っていいかな」

 

セリア「うん・・・」

 

静かにだが嬉しそうに頷いたセリアは、アスナに手を借りて立ち上がると、その手を握ったまま歩き出す。

半ば引っ張られるようにして歩き出すアスナに続き、俺たちもセリアについて行った。

通常視点

???サイド

亀男「くっそ!あのガキめ!よくも俺の甲羅に傷を・・・!」

 

デュオのブラストによって退散させられた亀男は、焦げ付き小さな亀裂の入った自らの甲羅を摩りながら森の奥へと向かっていた。

すると、

 

?「情けないですね」

 

木々の隙間を縫うようにして何者かが飛んできた。

 

亀男「ギラス、てめえ見てやがったのか?」

 

ギラスと呼ばれたその者は朱色の長髪で、中性的な顔立ちをしているので性別は見分けづらい。

背中に猛禽類のような翼を持ち、右手には三国志の呂布が愛用したという方天戟に似た矛が握られている。

怪しげな薄笑いを浮かべたギラスは、何処か見下すような口調で続ける。

 

ギラス「グートあなたはもう少し考えて行動すべきですね」

 

グート「なんだと!?」

 

ギラス「後ろへの注意が足りていませんよ」

 

グート「何・・・っ!?」

 

慌てて後ろを振り返るグートだが、そこには茂みが広がるだけで誰もいない。

だが、その一点にギラスは鋭い視線を向けている

 

ギラス「お前は先に戻ってその甲羅を治しておきなさい。あとは私が片付けておきます」

 

グート「ちっ・・・わかったよ」

 

渋々と従ったグートは木々の間を跳び回り、さらに森の奥へと消えていった。

少しして、不意にギラスが口を開く。

 

ギラス「いい加減、隠れていないで出てきたらどうです?」

 

すると、茂みの中からフードを被った人影が現れた

深々と被ったフードでよくは見えないが、頬にネズミのヒゲのような3本線のフェイスメイクがされている。

 

?「にゃハハハ・・・バレてたか?」

 

男性とも女性とも聞こえる声で、人影が悪びれずにそう問い掛けた。

ふん、と鼻で笑うギラス。

 

ギラス「確かに、貴方は隠れるのがお上手なようだ。しかし、気配の殺し方はまだまだですね」

 

?「あちゃ~、やっぱ、スキルに頼りっぱなしだったのがよくなかったか~」

 

軽い口調で続けているが、眼では逃げられる隙を伺っている。

 

ギラス「自己紹介がまだでしたね。私は火の鳥のギラス。貴方は?」

 

?「ご丁寧にどうも。オレっちはアルゴ。よくネズミって呼ばれてるナ」

 

そう言ってフードを払うと、金褐色のショートの巻き毛があらわになった。

 

ギラス「おや?ネズミというわりには可愛らしい顔ですね」

 

アルゴ「嬉しいこと言ってくれるじゃないカ」

 

などと軽口を叩いてはいるがお互いに相手の出方を伺っている状態にあり、2人の間にはピリピリとした空気が漂っている。

しばらくの間、その場を静寂が包む。

不意に、アルゴは一瞬だけギラスから視線をずらした。

反射的にギラスもそちらに意識を向ける。

その瞬間、アルゴは地面を蹴って逃げ出した

 

ギラス「逃がしませんよ。はあっ!!」

 

アルゴが踏み出した直後、ギラスが方天戟を前に突き出した。

すると戟の切っ先から炎の塊が飛び出し、それらはやがて高熱の槍となってアルゴを襲う。

 

アルゴ「オレっちだって、そう簡単にやられるわけにはいかないナー!」

 

飛来する槍をジグザグ走行で回避しつつ、なおも逃げるアルゴ。

しかし、それを逃がすまいとギラスも追いすがる。

 

ギラス「甘いですね。火の壁!!」

 

ギラスは飛翔しながら、手に持つ戟をアルゴの前方に投げつけた。

それが地面に突き刺さると、そこから吹き出した炎が壁となりアルゴの行く手を阻む。

 

アルゴ「な・・・っ!?」

 

慌てて制動を掛けるアルゴだが、その選択が間違いだと気付いた時にはもう遅かった。

 

ギラス「巻火死(まきびし)!!」

 

壁となっていた炎がアルゴを取り囲み、巨大な火柱となって彼女を包み込む。

 

アルゴ「うあぁぁぁ・・・!!」

 

全身を焼かれ悲鳴を上げるアルゴ。

それを見て、ギラスは愉快そうに笑みを浮かべる。

 

ギラス「いいですよ。その可愛らしい悲鳴をもっと私に聞かせてください」

 

アルゴを包む炎は彼女の衣服はおろか武器すらも焼失させていき、同時に彼女のHPを凄まじい勢いで奪い取る。

 

アルゴ「あぁぁぁ・・・!!」

 

HPが0に近付くにつれてアルゴの悲鳴は段々と弱々しくなっていく

 

ギラス「何やらこそこそと嗅ぎ回っていたようですが、これで終わりです!」

 

ギラスがそう告げ、アルゴのHPが今まさに0なろうとしたその時、

 

?「ブラスト・カタラクト!!」

 

突然声が響き渡る。

その直後、水によって形成された三日月が駆け抜け、アルゴを包む火柱を斬り裂いた。

 

ギラス「なに・・・っ!?」

 

ぶしゅうと音を立てて溢れた水蒸がたちまちにして辺りを包み込んでいく。

 

ギラス「ちっ・・・!へあぁぁぁ!!」

 

思わず舌打ちしたギラスは、手を振って方天戟を呼び戻すとそれを振るって蒸気を振り払った。

視界が晴れた時、先程まで火柱があった場所に1人の男が立っていた。

右手に大振りな長剣を持ち、左手には青いロングコートにくるまれたアルゴを抱えている。

 

?「女の子にアタックする時は確かに熱い方がいいらしいが、何も物理的に熱くするなよ」

 

手にした長剣で飛び散る火の粉を消しながら、男はギラスに言い放った。

ギラスは男を訝しげに見つつ問い掛ける。

 

ギラス「貴方、そのお嬢さんのお連れの方でしょうか?」

 

問いに対して男は首を横に振り、こう答えた

 

?「いや。ただの通りすがりの紳士(ジェントルマン)さ」

 

ギラス「そうですか。で、どうなさるおつもりです?」

 

?「お前さんがこのまま帰るなら見逃すけど、闘るつもりなら相手になるぜ?」

 

そう言って剣を持ち上げ、切っ先をゆっくりとギラスに向ける。

 

ギラス「怪我人を抱えたままこの私を倒せると?」

 

?「余裕だな」

 

ギラス「笑止!!」

 

突如としてギラスが獣を思わせる獰猛な表情を浮かべると、方天戟を振り被って駆け出した。

それを見た男もニヤリと口元を歪めてから駆け出す。

 

ギラス「キェエエエ!!」

 

?「ふん!」

 

すれ違う瞬間、互い得物が振り切られる。

ガキン!!と甲高い金属音が響き、2人の立ち位置が逆転した。

 

ギラス「っ・・・!?」

 

着地した瞬間、ギラスは声にならない短い悲鳴を上げて炎に包まれる。

そして、そこにはギラスだったものの残り火だけが残った。

 

?「まだ生きてるんだろ?」

 

不意に男がそう呟く。

すると残り火の1つが浮き上がり、男へと近付いていく。

 

ギラス「気付いていらっしゃるとは、さすがは噂のベリル様」

 

名前を呼ばれた男、ベリルは少し驚いた顔をしたが、何事もなかったかのように振る舞う。

 

ベリル「お前みたいなしぶとい奴は結構見てきたからな。気配を探ればすぐわかる」

 

ギラス「ふふふ、お見事です。次はグローレストの神殿にて相見えましょう」

 

それだけ言い残して、ギラスの残り火は消えていった。

 

ベリル「気が向いたらな」

 

不敵な笑みを浮かべたベリルは、消えゆく気配の主に向かって呟いた。

 


 
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