No.759906

真・恋姫無双 別たれし御遣い 第二十話

ZSANさん

鞘華の決断

2015-02-21 22:47:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3206   閲覧ユーザー数:2804

~一刀視点~

曹操軍が撤退したのを見届け、城に急いで戻る

「華佗、鞘姉の容体は!?」

華佗に食ってかかると

「治療は今終わった

 応急処置のおかげで、手遅れにならずに済んだ

 だが、意識を取り戻すのには、2、3日掛かるだろうな」

「じゃあ、助かるんだな!?」

「ああ、ちゃんと静養すればな」

華佗はそう言って、親指を立てる

「ありがとう、ありがとう・・・」

華佗の手を握り、泣きながら膝を付き、礼を言う

「医者が患者の治療をするのは当たり前だ

 礼は必要ない

で、俺に見て欲しい患者は誰だったんだ?」

鞘姉の事で忘れていたが、華佗を探していたのは元々は冥琳の診察を頼む為だった

いつの間にか、孫呉の主要な面子が集まっていた

その中から冥琳が進み出る

「私の事だな」

「分かった

 此処じゃなんだから、別の部屋で診よう」

そう言って、皆部屋から出て行った

部屋に眠ったままの、鞘姉と二人だけになる

寝台の横に行き、眠ったままの鞘姉に語り掛ける

「本当に助かってくれたんだよな

 良かった、鞘姉を失わずに済んで本当に良かった」

涙が止まらなかった

大切な従姉が、姉のような人が、初恋の女性が助かった

涙の理由はそれだけで充分だった

そして、2日後・・・

~華琳視点~

出陣した時の意気揚々とした進軍とは正反対の雰囲気の中での撤退だった

孫策の暗殺未遂

それを防いだため、鞘華が負傷

最悪ね

「華琳様、あの男の言った事は本当なんでしょうか?

 華琳様の気高さを利用した虚言では・・・」

桂花の意見に対して、いつの間にか来ていた霞が

「それはないわ

 一刀は武に優れとったけど、普段は本当に穏やかな奴なんや

 その一刀がウチの動きが止まるほどの怒りを押し殺しとった

 華琳があそこで退かんかったら、華琳の首が取られとったかもしれんわ」

桂花の意見を打ち消した

「ならば、帰還したら直ぐに、鞘華お姉様の返還を孫呉に要求しましょう」

この桂花の意見には、私が答える

「それは無理よ、いえ、無駄よ

 鞘華はもう、私達の所に戻らないわ」

「なっ、何故なんです!?」

「今回の戦、私は北郷一刀の捕縛、若しくは討ち取ったのであればその事実を鞘華に知られないようにする

 桂花にもそう密命していたわね それが目的だった

 だが、孫策を暗殺しようとした下衆の所為で滅茶苦茶よ

 鞘華が孫策を助けた、これは完全な利敵行為よ

 私としては暗殺が失敗したのは喜ばしいけど、それはあくまで私個人の心情

 国としては無関係の事よ

 更に、鞘華は客将で何時でも出て行って良いと私から言質を取っている

 利敵行為をした者が戻る場所など無い事を鞘華も理解している

 これで戻って来る程、鞘華は愚かでは無いわ」

私の話を聞いて、桂花が落ち込む

「まあ仕方が無いわ

 それよりも『天の御遣い』が離脱した事で領内が不安定になる事は間違いない

 その対処が最優先

 戻ったら忙しくなるわよ!」

「御意」

鞘華、私はまだ諦めないわよ

貴女を必ず・・・

~鞘華視点~

目を覚ますと見知らぬ部屋だった

状況判断を・・と思い視線を横に向けると一君の寝顔が有った

え?どういう事?

起き上がろうとしたら、右腕に鋭い痛みが走った

「いった~!」

思わず声が出た

その声で一君が目覚めた

「鞘姉!

 意識が戻ったんだ!」

そう言って抱き付いて来た

「良かった、本当に良かった」

一君が泣いているのは声で分かった

抱き付かれて狼狽したが、泣いている一君を引き剥がす訳にもいかず、その背中を撫でてあげる

 

程無く、一君も落ち着いたらしい

抱き付かれても悪い気はしないんだけどね

そして、一君から説明を受けた

記憶と整合もついて、私の方も落ち着いた

で、2日も寝て居たという事は2日も何も食べていない

「あの~、一君

 何か食べる物ない?」

「急いで何か作って来るよ」

一君は、苦笑いして部屋を出て行った

すると、入れ替わりに孫策が部屋に入って来た

「お目覚めの様ね 私の自己紹介は要らないわね

 本当に、一刀は貴女の事 大切に思っているのね~」

「そんな事をわざわざ言いに来た訳じゃないでしょ?」

「ええ、本題は貴女の今後の事よ

 取り敢えずは、怪我が治るまでは私の命の恩人でもあるから、大切な客人として扱うわ

 その後、私達と行動を共にするなら、前に言ったように歓迎するわ

 仮に此処を出て行くとしても、それまでの安全は保障する

 怪我が治るまでに、考えて置いて」

そう言って孫策は出て行った

そうか、でも華琳の元には帰れないだろうな

それに、もう一君と敵対したくない 離れたくない

だって、私の初恋の相手なんだから・・・

 

一君が料理を持って戻って来た

一見してわかる 一君の手料理だ

一君は私がお婆ちゃんや母さんに料理を習った時、一緒に習っていた

幼い時だったから、姉のような私と同じ事がしたかったのだろう

でも、私よりうまくなっちゃったんだよね~

女としての、年上としての、姉のような存在のプライドが~!

しかし、食べようとしたが利き腕が使えない

「仕方ないな

 はい、あ~ん」

一君がレンゲを使って、料理を掬い口元に持ってくる

ええ~!?そりゃ嬉しいけどさ~

照れくさくて仕方が無かったけど、嬉しさには勝てなかった

「あ~ん」

利き腕が使えないのも、これならいいかな・・・

 

その時、扉から複数の人が覗いているのを気付かなかった

(う~、羨ましい~)

(う~ん、なかなか良いわね)

(憧れます~)

(何故、こんなに気になるのだ・・)

~あとがき~

 

華琳は鞘華を”取り敢えず”手放す覚悟をします

まあ、諦めてはいませんが

 

鞘華も華琳との決別を覚悟します

 

ちなみに覗いていた()は上から、静里、雪蓮、穏、蓮華です

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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