No.75735

白い青年

Lucaさん

眠る前の戯言。

2009-05-26 21:02:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:551   閲覧ユーザー数:542

「其れってさ、何の位掛かるの、」

 黒い髪の青年が、椅子の背を支えに後ろを見遣る。

 柔らかな髪が下へと引かれて、簾の様に緩く揺れた。

「……は、」

 白い髪の青年が、振り向いて其れを見遣る。

 眼帯と眼鏡で、印象的に鋭さを増した片の視線が訝しげに細められる。

 黒の青年は姿勢を戻して、逆に坐り直す。

 背凭れに顎を乗せ、首を傾げた。

「だから、其の、食べ終わる……の、」

 だっけ、と少し上にある顔を見た。

「訊いて如何するんだ。」

「如何も。……てか如何も出来ないデショ、」

 二人の視線が宙で交わる。

 黒の青年がにこりと微笑った。

「まぁ、如何も出来ないんなら寧ろ君に協力しようかな、と思う訳ですよ。」

 其の言葉を聞いて、白の青年が僅かに不思議そうな表情を浮かべた。

「……今迄多くの者に会って来たが、そんな事云う奴は初めてだ。」

「あれ、そう、」

 今度は黒の青年がきょとんとして。

「だって、ボクが覚えた知識も、感情も、何時か死んで仕舞ったら消える筈だったんだよ。……けど、君が。」

 柔らかく、微笑む。

「君が代わりに、君の中でずっと残るのだと、こんな、嬉しい事は無い。」

「……興味深い意見だな。」

 白の青年が、口元に手を遣り考える仕草を見せる。

「贅沢云えば、君が更に知識を増やしていって呉れると嬉しいんだけどねー。」

 ボクはもう使えないけど、気分の問題、と笑って。

「…………覚えておこう。」

 決して承諾では無い其の返事に、其れでも満足したのか笑顔で頷いて黒の青年は立ち上がる。

「宜しく頼むよ。……じゃぁそろそろ寝るね。」

 肩越しに手を振り、白い部屋を出て行く。

 白の青年は其の後ろ姿を見送って、小さく零した。

 

 ――御休み、紗雪。


 
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