No.754563

ガンプラビルダーズ ジャンカーズ 第6話

初めてのガンプラバトルを終えて少しずつ変化していく物語

2015-01-29 21:37:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:637   閲覧ユーザー数:629

 

 

 

 

 

椅子に座り外を眺め珈琲を飲む男の部屋のドアが開く。

白衣を着た男性が一礼をし、入ってくる。

 

「どうやら反応があったようだな。」

「はい。しかし一瞬だけの反応だったので補足範囲の断定までは・・・。」

「そこまで出来れば中の下だろう。どこだ?」

「桜蕪町のようです。」

「桜蕪町・・・」

男はデスクに飾られている写真たてを手に持つ。

「そうか・・・。」

 

男は白衣の男にハンドシグナルを送り、白衣の男は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠二たち外野の者たちは唖然としていた。

「勝った・・・のか・・・。」

「勝った・・・勝った!」

「あいつすげぇ~!」

 

観客の歓声が響く。

 

ほかの場所でプレイしていたプレイヤーも駆けつけてくる。

誠二はそのプレイヤーたちを尻目に狼の方へ近づいた。

 

 

狼は魂が抜けているかのように呆然としている。

勝利したことへの高揚感や優越感は一切なく、ただ目の前に転がっているレッドフレームの末路をただ見ることしか出来なかった。

 

誠二が狼に駆けつける

「やったな狼・・・。お前はやったんだ。」

誠二の手が狼の肩に乗る。狼の意識が戻ってくる。

 

「俺が、俺がやったのか・・・。」

狼はレッドフレームの残骸をすべてかき集める。一つ残らずバッグに放り込んだ。

 

「あ!あいつは!」

狼がヅダのプレイヤーのほうを見る。しかしそこには誰もいなかった。

残されていたのは、戦いに敗れたヅダだけだ。

「あいつ・・・逃げ足も速いのか。」

誠二が皮肉を言う中、狼はヅダのプラモを見つめる。

 

「これ、俺がやったんだよな。」

「あぁ、でもあいつはお前が初心者だとわかってて入ってきたんだ。こうなるのは当たり前だぜ。」

「違うんだ」

狼はヅダのパーツを集めだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつは自分のプラモに絶対的な自信があった。それは戦っててすごく伝わってきた。でも勝敗が決まって

今あいつはここにいない。」

誠二と狼は卑劣な相手でありながら、その完成度を誇っていたヅダの末路を見ながら思い返していた。

「狼・・・。」

 

「俺とあいつの中の根本的なものは何も違わなかったんだ。ただ、慣れているかどうかだけだった。あいつはプラモを作ることが好きな人間なはずなんだ。」

 

誠二は残骸の中にある対艦ライフルに目がいった。

「おい・・・おい!狼!これ!これ!」

「この対艦ライフルだよ。戦ってるときお前もへんだと思ったろ!なんであんなに連射できるんだって」

狼は思い出した。リロードをすることのないヅダに疑問を抱いていたことを。

誠二はその対艦ライフルを手に取りバッグに入れた

 

「こいつは少し調べないとな・・・もちろん使うわけじゃないからな!俺はこういう武器きらいだし!」

そこに恵美さんがスタッフと共にやってきた。

どうやらスタッフに大騒ぎのプレイヤーの足止めと状況把握に来ていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません狼さん。できれば状況の把握をさせていただきたいので一度スタッフルームにお越しいただいても?」

「あ、あぁ・・・すいません。すぐ行きます。」

狼がヅダのパーツを集めようとする

「あ、そちらのパーツはこちらで処理いたしますのでそのままで結構です。プレイヤーの特定にも使いますので。」

「あ、そうですか。すいません」

狼はヅダの本体をそのままにスタッフルームへ全員で向かう。

 

「やぁ。」

そこには机に座る男性ともう一人、サングラスをかけた男性が珈琲を飲んでいた。

「うぇぇぇ!」

誠二がいきなり大声を出す。

「なんだよ誠二いきなり大声だして・・・。」

 

「狼・・・。この2人知らないのか!ガンプラバトルシステムを開発したBカンパニーの社長『湊総司』さんとガンプラバトルの無敗の名人『メイジン』さんだぞ!」

 

総司は手を振り、メイジンは静かによろしく頼むと挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湊は3人にソファに座る様手招きをする。

「えっと、君が狼君だね?君は初心者プレイヤーだというのは聞いているよ。このようなことになってしまったことを謝罪させていただきたい。申し訳ない。」

 

その男は立ち上がり頭を下げた。

 

「CPU戦専用の筐体には、プロテクトがかかっていてね。対人戦にするには互いの同意が必要なはずなんだ。しかし状況を教えてもらったから推理すると、相手はなんらかの違法行為をしているとしか考えられないんだ。」

湊のPCには監視カメラで撮られていたヅダとレッドフレームの映像が流れていた。

 

「私は、神聖なるガンプラバトルによる違法行為は決して許さない。名人の名を受けている限りな。」

メイジンが静かに怒りをあらわにしている。

 

「それで狼君、誠二君、恵美さん。あなた方のどなたか、ヅダを使っていたプレイヤーの顔や情報を持っているのなら、些細なことでもかまわない。提供してくれるとこちらも助かる。」

「ちょっといいですか?」

狼が湊に出された珈琲を一口飲み口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違法行為っていうのは、確かに許されない行為です。でもその違法行為っていうのは誰でも出来るんですか?いや、別に俺がしたいってわけじゃないんです。ただもし、誰でも出来るっていうのなら」

 

「この違法行為を広めた張本人がいる。」

 

横にいた恵美が割って入ってきた。

「ちょ叔母さん!俺のせりふ盗らないでよ!」

「だってそういうことですよね?」

 

「君たちは鋭いね。私達はこの違法行為が見つかったときから調査をしていてね。この違法行為を広めている人物の特定をすすめているんだ。メイジンにも各地でのイベントの合間に違法者の取り締まりや抑制を働きかけてもらっていてね。」

 

「何かわかったら、ぜひとも連絡をしてくれ。」

「わかりました。」

「俺も了解です!」

「今回はわざわざすまないね。」

 

3人は湊の部屋をあとにした。

 

「相羽・・・狼君か・・・メイジン。彼をどう思う?」

「私はメイジンであり預言者ではないさ。ただ、彼が今回のバトルで道を開いたのなら、それが運命だったのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~疲れた疲れた」

スタッフルームで一連のことを話した狼たちは車に乗り、自宅へと向かっていた。

狼はキャラにもなく車から流れる風景をみて黄昏に浸っていた。

 

「狼。そんな顔しなさんな。誠二君が直すの手伝ってくれるんでしょう?」

「おう!明日学校だけど夜まで付き合ってやるよ!」

 

「明日数学の模擬テストじゃなかったか?」

「・・・数学ごときに俺達はとまらないぞ!」

「狼は本当にいいオトモダチを得たもんだ。でも誠二遅くなるし送ってくよ。高校初の模擬テストなんだから気合入れないと」

「じゃぁ学校終ったらだな!」

「そうだな。そん時は頼むぜ誠二」

 

 

狼達がセンターに行っているときであった。

「なん・・・だと!」

狼のおみせの前に立つ定休日をみている人物がいた。

その人物の手にはガンプラが握られている。

ガンプラを力強く握りこむと走り出した。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択