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No.748558
九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑰~
竜神丸さん 2015-01-03 20:45:48 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:13009 閲覧ユーザー数:1714 |
ミッドチルダ、とある
「いやぁ~素晴らしい性能だよリバインズ君! ロックシードがここまでの力を秘めているとは!」
「えぇ、あなたにもご理解頂けたようで何よりです、スカリエッティ」
「うむ! この小さな錠前が持つ力は実に興味深い! これが成っているというヘルヘイムの森とやらにもいつか行ってみたいものだ!」
「もしよろしければ、私の方でロックビークルを分け与えますよ? 近い内にまたロックシードをいくらか回収しに向かおうと思っていましたので」
「おぉ、良いのかい!? それはぜひお願いしたいね!」
「「……はぁ」」
竜神丸とロックシードについて仲良く語り合っているのは、彼と同じく白衣を身に纏った紫髪の男性―――次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ。何故彼が竜神丸とここまで楽しそうにしているのかと言うと、理由は簡単。
彼もまた、竜神丸と同じマッドサイエンティストだからだ。
興味深いと思った物を実験しまくる彼等が仲良く語り合ってしまえば……竜神丸と一緒に来ていた支配人やディアーリーズは置いてけぼりにされてしまう訳である。
「やたら楽しそうですねぇ…」
「ジェイルとは何時でもあんな感じだ。まぁそろそろ止めねぇとな……お~い、そこの二人」
「「ん、何かね(ですか)?」」
「いい加減、ドライバーの調整を終わらせてくれねぇか? ずっと待ってるんだがな」
「あぁすまないね、支配人君。実はもうゲネシスドライバーの調整は完了済みだ」
「早ぇなオイ!? さっきから俺はお前等の談義で待たされ続けてたって事かよ!?」
「まぁ良いじゃないですか~そんな小さな事でグチグチと…」
「グチグチ言わされる原因は一体何処の連中だろうなぁ畜生共が!!」
(支配人さん、相変わらず突っ込み乙です…)
竜神丸とスカリエッティのマッドコンビに盛大な突っ込みをかます支配人。そんな彼をディアーリーズは苦笑しつつ心の中で労いの言葉を告げる。
「だがまぁ、待たせてしまったのは実に申し訳ない。それじゃ、早速始めようじゃないか」
「はい、こちらも既に準備は出来ております」
「では私も、早速準備をするとしましょうかね」
「全く。頼むぞお前等本当に…」
「それじゃあ、僕はチンクさん達の様子でも見て来ます」
「あ、待ちたまえディアーリーズ君」
「はい?」
スカリエッティは既に調整を完了していた赤いベルト―――ゲネシスドライバーを支配人に投げ渡し、支配人は溜め息をつきつつも実験フロアへと入って行き、竜神丸はゲネシスドライバーを用意し、やる事が無いディアーリーズは部屋を出て行こうとするが、スカリエッティがディアーリーズを呼び止めてからある物を投げ渡す。
「! これって…」
「数週間ほど前に、君から注文されていたゲネシスコアだよ。昨日になってようやく完成したんだ」
「! …ありがとうございます!」
「何、どうって事は無いさ。娘達の世話をよろしく頼むよ」
「世話って……まぁ、お任せ下さい」
ディアーリーズが部屋から出て行った後、スカリエッティは小さく笑みを浮かべる。その後ろに、ゲネシスドライバーを装着している竜神丸が立つ。
「あなたも相当なワルですねぇ、スカリエッティ」
「おや、何の話かな」
「もう分かってるんですよ? あなたが意図的に、
「ほう?」
「あなたはいつもこの時間帯にナンバーズ逹のメンテナンスを行う筈。なのに私達の実戦調整に付き合ってくれているという事は、ディアさんだけを向こうに行かせたかったから。そうでしょう?」
「…やはり、君に隠し事は難しいようだね」
「で、どんな理由で彼を?」
「実を言うとね……ノーヴェに頼まれたのだよ。久しぶりにディアーリーズ君に会いたいとね」
「おやおや、また
「娘の頼み事とあっては、私も断る訳にはいかないからねぇ」
「ククク、あなたも親バカですねぇ」
「おや、君は君で姉を大事にしてると聞いたが?」
「む……何処でその情報を?」
「クアットロから聞いたよ? 君にも姉がいたのは驚きだったが、彼女が持つ毒の能力もなかなかに珍しい。いつか彼女も実験に付き合わせて貰いたい」
「…それは本人に聞いてからにして下さい。私はどうだって構いませんので」
竜神丸は溜め息をついてから……近くにいたメガネの女性―――クアットロをジロリと睨みつける。睨まれたクアットロは涼しい顔を見せる。
「やれやれ、口が軽い女ですねぇ」
「あら? 私がどうしようと私の勝手でしょう? お姉さんの事で突っかかられても困りますわ」
「ほうほう、なかなか言ってくれますねぇ。未だにドゥーエさんを崇拝し切っているあなたが」
「あなたに言われたくありませんわねぇ、シスコンが」
「えぇ、どうせ私はシスコンですよ。それが何か悪いですか? 自称策士の自惚れさん?」
クアットロの額に血管が浮かび上がる。
「あらあら、言いますわねぇウイルスまみれな変態さん?」
「酷い事を言いますねぇ、超役立たずな伊達メガネさん?」
「あら、酷いですわね。少しばかり口が汚くなってますわよ?」
「おやま、何を言いますか。どうせ傷つく心も無いでしょう?」
竜神丸とクアットロの互いの視線が激突し、火花が激しく散る。それを見たスカリエッティは呆れたような様子で声をかける。
「全く二人共、少しは仲良く出来ないのかね?」
「「いえいえ、私達はとぉ~っても仲良しですよ~?」」
(…どっちも似た者同士ね)
スカリエッティの言葉を聞いた瞬間、竜神丸とクアットロはニコニコ笑顔で答えてみせる……もちろん、テーブルが邪魔でスカリエッティに見えない場所では、互いに足でゴツゴツ蹴り合っているのをウーノがしっかり見届けていたのだが。
一方、ディアーリーズは…
「えぇっと、メンテナンスルームはここだったっけ…?」
通路を歩いた先で、ナンバーズ逹のいるメンテナンスルームに辿り着いていた。ここでディアーリーズは、初めて
ナンバーズに出会った時の事を思い出す。
「皆は元気にしてるでしょうか……あぁ、またチンクさんをナデナデしたい…」
そんな事を呟きつつ、ディアーリーズはメンテナンスルームに入る。
しかし、それがディアーリーズにとっての失敗だった。
「「…あ」」
部屋に入った途端、ディアーリーズは目の前にいた赤髪の少女―――ノーヴェと目が合った。これだけ見れば、何の問題も無いように思えるだろう…
メンテナンスを終えたばかりのノーヴェが、一糸纏わぬ姿でなければ。
「…!? !? !? !? !?」
「あ、いや、その!! 失礼しまし―――」
ノーヴェの顔が一気に赤く染まり出す。同じく顔を赤くしたディアーリーズが、慌てて部屋から出て行こうとするよりも先に、ワナワナ震えているノーヴェの手が素早く動き…
「こんのスケベがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
-バッチィィィィィィィィィィィィン!!-
ディアーリーズの頬が引っぱたかれ、その音が部屋を出た通路先にまで響き渡るのだった。
場所は戻り、実験フロア…
『では二人共、変身してくれて構わないよ』
強化ガラスの先から眺めているウーノやクアットロ、そしてスカリエッティ。そのスカリエッティの声を聞いた竜神丸と支配人は同じ形状のゲネシスドライバーを装備しており、それぞれの手にはロックシードを加工して作り出した特殊なロックシード―――エナジーロックシードが握られていた。
「行くぞ、竜神丸」
「えぇ。そちらからどうぞ」
≪メロンエナジー…!≫
竜神丸に先行を譲られた支配人は、『ELS-04』と描かれたメロン状のエナジーロックシード―――メロンエナジーロックシードを掲げて開錠する。それを見た竜神丸も『ELS-01』と描かれたレモン状のエナジーロックシード―――レモンエナジーロックシードを開錠する。
≪レモンエナジー!≫
両者のエナジーロックシードの開錠音が鳴り響き、支配人の真上のクラックからはメロンエナジーアームズが、竜神丸の真上のクラックからはレモンエナジーアームズが出現する。
『あら? 支配人さんのアームズは、戦極ドライバーの時と違うようですが…』
『ふむ、確かにそのようだね』
ウーノの指摘通り、支配人が召喚したメロンエナジーアームズは斬月のメロンアームズと違い、オレンジ状のパーツが追加していた。スカリエッティ逹が疑問を抱く中、支配人と竜神丸はそれぞれエナジーロックシードをゲネシスドライバーに装填する。
≪≪ロック・オン…≫≫
低めの待機音が鳴る中、両者同時にゲネシスドライバーの右側に付いている押し込み式レバー―――シーボルコンプレッサーを内側に押し込む。
≪≪ソーダァ…≫≫
音声と共に、エナジーロックシードのナンバーが描かれたカバーが当分割に開かれ、ゲネシスドライバーの下部に付いた容器―――コンセントレイトポッドにエナジーロックシードのエネルギーが搾り取られ、支配人の物は橙色のエネルギーが、竜神丸の物は黄色のエネルギーが保存される。
≪メロンエナジーアームズ…!≫
支配人の頭にメロンエナジーアームズが被さり、鎧を展開。次世代型アーマードライダー―――斬月・真への変身を完了する。
≪レモンエナジーアームズ! ファイトパワー・ファイトパワー・ファイファイファイファイファファファファイッ!≫
一方で、予め展開されたレモンエナジーアームズが竜神丸の頭に被さる。そこから更に鎧を形成し、次世代型アーマードライダー―――デュークへの変身を完了する。
両者共にアーマードライダーへの変身を完了したが、彼等が現在変身している個体は通常のアーマードライダーとは違っていた。どちらも鎧部分にストローを彷彿とさせるラインが存在し、肩当ては右側にしか装備されていない。そしてアームズウェポンとして、刃の付いた赤い弓―――ソニックアローを装備していた。
『…竜神丸さんのだけ長過ぎません?』
「あぁ、音声は気にせずに」
(…まぁ、奴が趣味で考えた音声だからな)
クアットロの疑問に竜神丸は気にしないよう告げる中、音声が長い理由を知っている支配人は仮面の下で思わず苦笑する。
『さて、では始めてくれたまえ』
スカリエッティの声がフロアに響き渡り、斬月・真とデュークの前には無数の機械兵器―――ガジェット・ドローンが出現する。それを見た斬月・真とデュークはそれぞれソニックアローを構える。
「んじゃ、まずは俺からだ」
「えぇ、どうぞ」
先に斬月・真が駆け出し、手に持ったソニックアローで接近して来たガジェットを斬りつける。離れた位置から別のガジェットが狙撃して来るが、それに気付いた斬月・真がソニックアローで上手く弾丸を弾き、最初に斬りつけたガジェットを蹴り飛ばして別のガジェットに激突させる。
「うし」
斬月・真はソニックアローを左手に持ち、右手で引き鉄を引いてエネルギーの矢を放ち一機目のガジェットを貫いて粉砕。続いて放った矢は大きくUターンし、後方から斬月・真に襲い掛かろうとしていたガジェットのコアを貫き、爆散させる。
「ハァッ!!」
斬月・真が真上に向けて矢を放つ。すると放たれた矢がメロン状のエネルギーとなり、破裂した瞬間に無数の矢に分裂し、複数のガジェットを纏めて粉砕した。
「…ふぅ」
『なかなかだね。次、頼むよ』
「はいはい」
斬月・真は後方に下がり、次はデュークが前に出る。デュークは手に持ったソニックアローを構えたまま、一歩ずつゆっくりと前に出て行く。
≪ピピピ≫
一機のガジェットが、デューク目掛けて強力な弾丸を放つ。しかしデュークは防御も回避もせず、その場に立って弾丸を受け、彼のいた場所が爆発する。
『な、避けない!?』
『ふむ、どうしたのだろうか?』
ウーノやスカリエッティが驚く中、斬月・真は全く驚いていなかった。何故なら、彼はデュークが避けなかった理由を既に理解していたからだ。
(アイツの事だ。あのプロフェッサーのデータもきっちり再現している筈……となれば)
斬月・真が見据える先で、爆風が少しずつ晴れていく。そこには…
「…やっぱりな」
「いやはや、何とも強力な一撃でしたねぇ」
傷一つ付いていない、余裕そうな態度のデュークが立っていた。デュークが避けなかった理由はただ一つ…
避けられなかったのではなく、避ける必要性が無かったのだ。
「さて、では動きましょうか」
デュークは左手でソニックアローを構え、右手で引き鉄を引き矢を放つ。放たれた矢は二、三機のガジェットを纏めて撃ち貫き破砕させる。
「…ふむ」
デュークは何やら首を傾げた後、ソニックアローを背の後ろに持って行き、右手だけを前に突き出したままガジェット達のいる方向へと歩いて行く。
『あら? アイツ、何を…』
クアットロが言いかけた瞬間、ガジェットがコードを伸ばしてデュークに襲い掛かり…
「フッ!!」
-ドゴォンッ!!!-
『『『!?』』』
「…はぁ」
何と、デュークの裏拳だけでガジェットが破壊されてしまった。これにはスカリエッティ逹も驚きを隠せず、斬月・真は「やっぱりな」と言いたげに首を振る。
「うん、もう飽きてきましたね」
デュークはソニックアローを構え直し、ゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを押し込む。
≪レモンエナジースカッシュ!≫
「―――ハッ!!!」
デュークがソニックアローを一振りした瞬間、レモンの断面型エネルギーが放たれ、残っていたガジェットを纏めて斬り裂き、粉々に爆散させた。
『す、凄い…』
『ふむ、素晴らしい…! もはやテストする必要も無さそうだね』
『ッ…』
斬月・真とデュークの性能を見て、ウーノは純粋に驚きの表情を見せ、スカリエッティは楽しそうに笑い、クアットロはデュークを見て複雑そうな表情を見せる。三人がそれぞれの反応を見せている中、斬月・真とデュークはそれぞれエナジーロックシードの開いていたカバーを閉じて変身を解除、支配人と竜神丸の姿へと戻る。
「竜神丸……お前、やっぱり改造してやがるな?」
「えぇ。かつて戦極凌馬がやっていた通りに、データをチューンさせて貰いました♪」
「…お前らしいよ、全く」
竜神丸が悪そうな笑みを浮かべるのを見て、支配人は呆れたように溜め息をつくのだった。
一方、メンテナンスルームでは…
「……」
「……」
ディアーリーズとノーヴェの二人が、頬を赤く染めたまま互いに背を向けた状態で椅子に座っていた。ディアーリーズの左頬に赤い紅葉が出来上がっている辺り、ノーヴェに相当強く引っぱたかれたのだろう。
(き、気まず過ぎる……しかもノーヴェさんの、思いっきり見てしまった…!!)
(ど、どうしよう、ビンタしちゃった……本当は早く謝りたいのに、顔を向けられない…!!)
両者それぞれ異なる考えが浮かんでいる中、離れた位置から他のナンバーズ逹が二人の様子を眺めていた。
(な、何か気まずくないっすか…?)
(まぁ、ノーヴェも私達が思っている以上にウブだからな。仕方の無い事だ)
(ね、ねぇ、早く何か声をかけた方が良いんじゃないの? さっきからずっとこの調子だよ?)
(そうは言うが、あんな状況で私達が声をかけられると思うか?)
(うん、どう考えても無理そうよね)
赤髪の少女―――ウェンディ、青髪の女性―――トーレ、水色髪の少女―――セイン、右目に眼帯をつけた白髪の少女らしき女性―――チンク、茶髪の女性―――ディエチがそれぞれ小声で話し、そして結論に至る。
(((((よし、二人きりにしてやろう)))))
「え、あの、ちょ、皆さん!?」
「あ、ちょ、何処行くんだよ!?」
二人の声を無視したまま、トーレ逹はメンテナンスルームから出て行ってしまった。結果、メンテナンスルームにはディアーリーズとノーヴェの二人きりとなる。
「あ、あのぉ…」
「え、えっと…」
ディアーリーズとノーヴェは顔を赤くしたまま、相手の様子を窺うように顔を見合わせる。
「…さ、さっきはすみませんでした…」
「い、いや……その…叩いて、ごめん…」
「い、いえ、何も考えずに入った僕が悪いですから! そ、その……まさか、ノーヴェさんが……裸でいるだなんて…」
「!! し、仕方ねぇだろ、メンテ中はスーツ脱がなきゃいけねぇんだからよ!!」
「で、ですよねぇ~…」
「ま、まぁでも…………お前になら、別に見られても…」
「え?」
「な、何でもねぇよ!!」
「す、すいません!? …はぁ…」
「……」
ノーヴェに怒鳴られ、ディアーリーズが激しく落ち込む。そんな彼を見たノーヴェは…
(か、可愛い…)
落ち込むディアーリーズを見て、思わずハートを射抜かれてしまっていた。
「…来週」
「え?」
「ドクターに頼んで、ミッドじゃない別の街へ買い物に行く事になったからさ、一緒に付き合え。そうしたら今回の事は許してやる」
「え……良いんですか? それだけで」
「い、良いんだよ!! 分かったらハイかYESのどっちか返事しろ!!」
「拒否権ないんですね!?」
ノーヴェの一方的な発言に戸惑うディアーリーズだったが、彼女の裸を見てしまった罪悪感もあった為、断る道理は彼には無かった。
「分かりました。一緒に行きましょう
「ほ、本当か?(やった、上手くデートに誘えた…!)」
「はい、約束です(それでノーヴェさんの怒りが収まるなら)」
ディアーリーズと買い物の約束が出来て、ノーヴェは内心で嬉しそうに舞い上がっていた。最も、二人の考えている事は同じようで何処か違っているのだが、それは今は言うべきではないだろう。
ミッドチルダ、機動六課隊舎…
『なるほど。ここが例の機動六課か』
突如、屋上に姿を現した民族衣装風の服を着た男。彼は懐からある物を取り出す。それは…
『さぁて……面白くなるのはここからだぜ?』
アーマードライダーの顔が描かれていない、無印の戦極ドライバーだった。
運命には、誰も逆らえない―――
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