No.741757

遭難と邂逅の航海日誌 その5

VieMachineさん

なにか、ぐだぐだ日常系を書きたいと思って書いたものです。
なのでぐだぐだです。設定は深紅の宇宙の呼び声から2000年程度後。

副長視点はドギマギ枠?
http://www.tinami.com/view/740928 : その1

2014-12-06 02:08:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:462   閲覧ユーザー数:462

航海日誌 ET 26352/04/10 座標変更無し

前滞在者の残したものは非常に奇妙であるが、とてもシンプルなものが多い。

目的のために洗練された形状が、一種の美的なものを感じさせる。

ただ、目的そのものが長い年月によりわからなくなったものも多く、

正直首を傾げずには居られないものもある。

そこが楽しいのだが。

/筆記者 ミステル・セイファート

 

「火をそのまま使っていたとは。」

「というか、こんなん2000年前だって使ってないでしょ。」

 

姉の持ってきた金属でできた格子の表裏を繰り返し確認しているのだが、

何の変哲も無い金属である。料理が美味しくなる魔法の道具と避難所の

データベースには書いてあったらしいが。

 

「あ、違う。ほとんどの場合は赤外線つかうらしいよ。」

「ああ、では我々の自動調理器の先祖みたいなものだな。」

「えっと、というか、これは加熱器具じゃないみたい。ん~余計なものが落ちてパリパリ?

 何が言いたいのかわかんないな~。」

「……油分を落としたうえで、さらに乾燥させることによる風味付けのことだろう……」

「ほんとに、艦長は料理がお好きですね。ん?どうしました?」

「いや……うん、なんでもない。」

 

できあがりの振れ幅があり、工程も大変な料理という趣味があることは、

艦長に出会うまでは知識としてしか知らなかったのだが、実際にやってみると

なかなか、楽しめるということが最近わかってきた。

とはいえ、私自身はまだまだ食材をありのままに並べる程度のことしか

できないのだが……。

 

「加熱調理もそろそろ試してみてもいいかもしれないな。」

「暇だし??」

「ああ、暇ではある。」

「じゃあ、ここに書いてある白いヤツ作ってみようよ。焼くらしいよ?

 どんな味なんだろ。そもそも、これ見たことない食材だな?スナックバーみたいだけど。」

「う~む。保存食だろうか。喉につまる??……えっと?どうしました艦長。」

「え?……いや…」

 

先ほどからずっと感じていた視線に耐えきれず、艦長に声をかけることにしたのだが、

当人自身もきづいていなかったのだろうか。なにやら惚けたようにこちらを見ていたのだが…。

 

「先ほどからどうしました?もしや調子でも悪いのですか。」

「ダメだよ艦長。ちゃんとメディカルチェックしないと。」

「いや……その…耳がな?」

「え?耳ですか?」

 

我々エリシウム型人類は地球型人類と違い、頭頂部から側頭部にかけて耳があることが多い。

これは地球に存在するいくつかのほ乳類に似ており、我々の人種を示す用語にはそのような

生物の名前が付いていることが多い。まぁもともと、エリシウム型人類と地球型人類は同一

の種を祖とし、より地球型人類が祖に近い種であることがわかっている。このため、我々、

エリシウム型人類は大昔に誰かが身体改造でやらかしたというのが定説になっている。

 

「一部の地球の方達は、特別な感情を得るみたいですね、この耳に。」

「うむ……可愛いなぁと思ってね…。」

「え?かわいい?へへへ~。私かわいいのかぁ。」

「耳がな!……あくまで耳が可愛いと言われてるんです、姉さん。」

 

はしゃぐ姉をたしなめながらも、依然艦長の視線を感じ続けており、なんというかその。

 

「気恥ずかしいです。」

「あ~すまんな。いや、耳がな。動くんだよな。」

「そりゃ動くよ~。」

「地球型人類はあんまり動かないんだよ。ほら、それそれ。」

 

無意識に耳元を上げていたのに気づく。

 

「いや、まぁアレですよね。避けてましたけど。犬っていいたいんですよね?」

「うむ。」

「う~ん。そんなにいい顔されても困るんですけどね。」

 

そうはいっても、実はほとんど自分で耳を動かすことはできなかったりする。

要はほとんどのケースで勝手に動くのだ。これは動かせなくなったというより、

最初からそうだったらしい。結論としては、

 

「いらないものつけられて、恨みますよご先祖様……という感じですよホント。」

「え~実は気に入ってるんだけどボクは。」

「感情ダダ漏れじゃないですか実際。」

「なるほど、言われてみればそうだな。今度からはそういう目で見ることにしよう。」

「いや勘弁してください艦長。本当に……」

 

未だ感じる視線にいたたまれなさを感じると共に、頬が上気することも自覚できた。

これはまずい……艦長はわざとか知らないが無防備過ぎるのだ。いや、わざとに違いない。

 

「あ~逃げるんだ~。」

「仕事にもどるだけです。」

 

姉の言葉を背に、事実観測室へ逃げ出すことにした。

忍耐だ。

 


 
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