No.740594

真・恋姫†夢想~世界樹の史~第三章・枯れ木崩し編

alcaponさん

お待たせしました。
戦の気配が刻々と…

2014-11-30 13:19:24 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3103   閲覧ユーザー数:2415

 

 

第Ⅵ話『再臨』

 

 

 

SIDE 花蘭

 

早朝、宮廷の広間では、一人の少女が剣を振るっていた。

滝のように流れる汗も意に介さず、ただ無心に型をなぞる。

あの日から、私は盾を使った剣技に関しての書物を読みあさり、厳さんや鏡さんに暇を見ては習っていた。

基本となる十の型をひと通り全て頭に叩き込んだ私は、こうして毎朝『一の型』から『十の型』までをなぞっているのだ。

 

上段から振り下ろされた剣先を、地につく直前に引っ込めると、同時に左手に持つ盾を突き出しそしてすぐさま剣で突きを放つ。

何度も何度も繰り返し覚えた基本の『十の型』。

もう一度『一の型』から始めようとした時、唐突に声が響いた。

 

霞「そこまで!」

 

私はその声で我に返り、剣を鞘にしまう。

大きく息を吸うと、全身の状態が鮮明になっていく。

足もフラつき、腕も心なしか震えている。

 

霞「お嬢、頑張るのはえぇけど、自分の限界は知っとかなあかんで?」

 

花蘭「す、すいません、霞さん。

   助かりました。」

 

このまま制されず続けていたら怪我をする危険もあっただろう。

立場上、こうやって叱ってくれる人は本当にありがたいと思う。

そんなありがたい方々が周りに多く居てくれているのが、私の大きな支えとなっていた。

 

と言っても、私は前の外史?の記憶を持っているから、

その記憶を少しなぞっているだけ。

 

胡蝶「それも貴方の武器よ。出し渋ってちゃダメ!」

 

花蘭「そうですね。

   私には人より努力した時間が足りませんから。」

 

霞「ん?なんか言うた?」

 

花蘭「い、いえいえ!独り言です!」

 

霞さんは不思議に思ったのか、首を傾げます。

 

他の外史の記憶を介していない霞さんには、胡蝶さんの声も聞こえません。

 

霞「にしても、よくそんな重たいもん振り続けられるな~。

  恋ですら持ち上げるのに精一杯やったんやで?

  お嬢は他に関しては非力もえぇとこやし、体力やってまだまだやのに。」

 

花蘭「それが不思議と私にはほとんど重みを感じないんです。羽根のように軽くて…。」

 

霞「ほんまに不思議やな~。武器が人を選んどるみたいや。」

 

花蘭「…。」

 

霞「んな事より、もうすぐ朝餉の時間やで。はよ行かんと恋に全部食べられてまうで~。」

 

花蘭「ふふっ、それは困りました。」

 

私が盾を持つと、肩にとまっていた胡蝶さんがひらりと一度舞い、

盾の裏に付いている『収納すぺーす』にすっぽりと収まった。

 

胡蝶はそんな自分に、かつてあの人が言った言葉を思い返していた。

 

  一刀「おぉ!すげぇ!しかも軽い!

   ん?裏に収納スペースついてるし!もう住めそうだここに!」

 

  荘周「喜んでいただいて何よりです。(住む??)」

 

胡蝶「…ふふっ」

 

『収納すぺーす』の中で、胡蝶さんが小さく笑いました。

目線でどうかしましたか?と尋ねると、彼女はなんでもない、と言うように羽根をひらりと動かしました。

 

 

 

 

SIDE 一刀

 

---汝南---

 

玉座の間では、臣下が集いある一点のみに集中していた。

一人の男が玉座の間で跪き頭を垂れる。そこに、少女が一歩近づき書を読み上げる。

一つ読み終えると、男は頷く。

 

おぉ…!とざわめく広間。

 

少女はそのまま玉座を降りると、男の横で跪く。

男は入れ替わるように玉座へと上がった。

 

玉座から広間を見渡すと、男は目を細める。

 

一刀「俺は正式に家督を譲り受けた今、先々代に貰った名をこれより名乗ろうと思う。

   …父より頂いた『基』の名を。」

 

七乃「…!」

雷薄「…!」

 

一刀「我が姓は袁、名は基、字名は一刀。今より袁家の当主となる!」

 

玉座の間の外、屋外の大広間からも地鳴りのような声が響く。

 

そして名門である袁家当主の交代劇は各諸侯にも知らされることとなり、

あらゆる人物が祝いに駆けつける事になるのであった。

 

 

 

 

---曹操陣営---

 

荀彧「華琳様、袁家当主に納まった男の詳細がわかりました。」

 

曹操「そう。聞こうかしら。」

 

荀彧「はっ、数年前まで当主代理を務めていた袁術の兄が譲位された模様です。」

 

曹操「兄…?確か行方不明になっていたのではなくて?」

 

荀彧「そのはずでしたが、最近戻られたとの事です。」

 

顎に手をやり、しばし考えこむ少女。

世は乱世なのだから、行方不明など珍しくはない。だけど何故か得心がいかない。

乗っ取られた?いいえ、それならば先の謀反騒動の時に既にそうなっていたはず。

 

…考えても仕方ないわね。それならば---

 

曹操「…秋蘭、出立の準備を。」

 

夏侯淵「出立、でございますか?」

 

曹操「そうよ。

   隣国の当主譲位。私がお祝いに行っても何も不思議ではないわ。

   そしてこの目で確かめるのよ。我が覇道に立ち塞がるものか否かを、ね。」

 

早速用意にとりかかる臣下らを一瞥すると、私はひっそりと微笑んだ。

漢王朝の復活に反王朝連合…この乱世で私は必ず覇道を成し遂げる。

もし隣国の新当主がつまらない人間ならば、その贄となってもらいましょう。

 

 

---河北---

 

広々とした城内。

そのいたるところで騒ぎが起こっていた。

中でも、最も騒ぎ立てているのは城主である袁紹その人であった。

 

袁紹「ちょ、ちょっと斗詩さん!贈り物の品々はもう全てお揃いですの?!」

 

顔料「は、はい!既に運び込んでおります!」

 

袁紹「猪々子さん!私の服は完璧に用意出来ておりますわよね?!」

 

文醜「姫~、本当にこんなに持って行くんですか?!」

 

袁紹「当たり前でしょう!あのお方が…一刀お兄様がご帰還あそばされたのよ!?

   お会いするときには常に綺麗な格好でなくては失礼ですわ!」

 

名前を出しただけで、顔が熱くなるのを感じる。

私の憧れのお方。もう逢えないと覚悟していたあの人。

庶民の間で流行している劇で観たように、初恋は叶わないもの、と諦めていた。

 

袁紹「…っ///」

 

鏡の前で、私は執拗に身だしなみを整える。

 

袁紹「髪の毛…良し。お化粧も…大丈夫。服に…シワはありませんわね。下着も…」

 

ボンっと瞬時に真っ赤になる。

下着を見られる、ということは正にそういった瞬間が訪れたということ。

もちろん拒む気は毛頭ないにせよ、やはりそこは彼にとって好みのど真ん中でいたいという乙女心が不安にさせる。

そこで私はぶんぶんと頭を振って、弱気を散らした。

 

袁紹「さ、さぁ皆さん!すぐに出発しますわよ!ついていらっしゃい!」

 

かくして、多少はバタついたものの、私達は河北を出発し汝南へと向かったのだった。

 

 

 

 

---劉表陣営---

 

先の戦において、目論見通り荊州の統一を果たした劉表は、勝利を祝い宴を開いていた。

 

劉表「ふっはっはっは!江東の虎何するものぞ!あのような下賎な輩は儂の敵ではないわ!

   しかし、奴も思いの外しぶといのう…また取り逃がしてしもうたわ。」

 

陶謙「えぇ、害虫と言うものは得てしてしぶといものでございます。」

 

陶謙の答えに気を良くした劉表は、一気に酒をあおった。

 

劉表「此度の荊州統一の進言、まさに的確じゃった!おかげで儂の元へ多くの物が集っておる!」

 

その言葉を聞き、男は恭しく頭を下げる。

それは堪えきれぬ笑みを隠すためであった。

着々と進む野望への階段。アレを手に入れるためなら、犠牲は厭わない。

むしろ犠牲が多いほうが燃えるかもしれない。

 

ちらりと劉表を盗み見る。

続けて広間へ視線を移す。

皆一様に、酒に酔っているようだった。

 

劉表「して、陶謙よ。貴殿の例の望みじゃが…。」

 

陶謙「はい。」

 

劉表「すぐに取り掛かれ。あの小娘、あろうことか孫堅の救出に軍を出しおった。

   これは儂への明らかな敵対行為じゃ。」

 

陶謙「承知いたしました。

   …アレの処遇は負けせて頂けるのですよね?」

 

劉表「無論じゃ。

   儂は約束を守る男じゃ。」

 

陶謙「ふふっ、ありがとうございます。」

 

 

 

 

SIDE 一刀

 

汝南から南西の山岳地帯。

そびえ立つ山々の麓の村に、少数の精鋭を引き連れた一刀達が駐留していた。

 

事の発端は、ある一通の書状であった。

『我が一族の宝、返せ。刻限までに返さねば、その方に我が一族は牙を向く所存。刻限は次の満月までとする。』

書面を見るにどうやら山越族からのようで、そこには首飾りのような絵も書いてあり、それを一刀達に盗まれたと証言しているのだった。

 

村の民へ聞こ込みをしたのだが、

皆揃って『この山で盗みなどすれば、山の神の怒りに触れる。私達はそのようなことはしない。』との事である。

 

一刀「ここまで来てみたけど、ほとんど手がかりは無しか。」

 

紀霊「首飾りねぇ…んなもんテメェらで勝手に失くしたんじゃねぇのか?

   つか、こんな事に旦那自ら出て来なくても…。」

 

一刀「各地で異民族の動きが活発になってるしね。火種は早めに摘んどいたほうが良いさ。」

 

紀霊「そんなもんッスかねぇ…。

   んでも、この辺りは山越の奴らが崇めてる怪物も居ますから気をつけねぇとよ。」

 

一刀は紀霊のみを連れ、村の周辺を散策していた。

付近を散策していると、所々に熊のようなものを象った木の像が立っている。

猛獣と生活を共にする山越族と、猟をして生活をしているこの村の人達が祀っているものなのだろうか。

 

しばらくそうして歩いた頃、一刀はふと足を止めた。

 

紀霊は不思議に思い声を掛けようとするも、手で制される。

一刀はその場にしゃがみ込むと生い茂った地面の草に触れた。

…可怪しい。ほんの少しの違和感だったが、そのまま先へ進めば進むほどその違和感が顕著になってくる。

 

紀霊「お、おいおい旦那!これ以上先はヤベェって!山越のシマに入っちまう!」

 

一刀「気が付かないか?」

 

紀霊「んあ?気がつくって何に…ん?」

 

言われて見渡してみると、ハッとした。

この辺りは山岳地帯になっており、村の民も主に猟で生計を立てている。

敷地や水源など地質的に作物が安定して育ちにくいためだ。

 

猟師たちは獣道を逸れるような真似は絶対にしない。ましてや、そこに自分たちの痕跡を残すなど有り得ないことだ。

だが、この辺りの地面を見てみると、人が無造作に踏み荒らした痕跡があった。

 

紀霊「旦那、こりゃあ…」

 

微かに漂ってくる血の匂い。

出来うる限り音を立てないように、慎重に歩を進めていく。

血のついた布切れやひん曲がった短剣が落ちているのを傍目に、一歩また一歩…。

 

そして、真っ赤に染まった箇所へと辿り着いた。

 

紀霊「おいおい…。」

一刀「これはこれは…。」

 

血の海の跡。

あまり見たくはないが、人の一部だったものも転がっている。

 

一刀「お?」

 

視線の先、折れた枝に引っかかるようにして、首飾りがぶら下がっている。

手にとってみると、橙色に鈍く輝く石であしらった首飾りだった。

 

紀霊「これぁもしかして、山越族の…」

一刀「そのようだね。」

紀霊「んでもって…」

一刀「うん。」

紀霊「すげぇ振り向きたくないんだけど…」

一刀「そうだね。」

 

二人の間を、荒い鼻息が通り過ぎる。

それを合図に二人はそれぞれ左右へ跳躍した。

 

ズドンっと地響きとともに抉られる地面。

 

一刀「大熊猫(パンダ)??!!」

 

そこには、ゆうに3メートルを越す大熊猫が居た。

大熊猫は一度天を仰ぎ唸ると、強引に腕を振り回す。

巨体故に、それだけの攻撃で十分な脅威だった。当たれば間違いなく即死だろう。

 

紀霊「旦那!!これはマズイって!!逃げるぞ!!」

 

一刀「いや、多分逃げるのは無理だと思う!」

 

紀霊「じゃあどうす…って、おいおいおいおいマジっすか?!」

 

一刀を見やると、あろうことか熊猫に対し無手の構えをとっていた。

 

紀霊「いや絶対無理っすよ!!早く逃げ…どわっ危ねぇ!!」

 

一刀の元へ駆け寄ろうとするも、大熊猫が大木を投げつけたことにより行く手を遮られてしまった。

一人と一頭がその場で睨み合う。

ざわざわと木々が風で蠢きあい、葉が舞い散る。

怪物たちの戦闘が始まった。

 

先に動いたのは大熊猫だった。

咆哮を上げながら一刀めがけ突進していく。その速さたるや、巨体であることを全く感じさせないスピードだった。

間一髪のところでそれを躱すも、続けざまに右腕、左腕を力任せに叩きつけてくる。

負けじと腹部にカウンターを合わせるが、まるでダメージを与えられない。

すかさず距離を取る一刀。

 

一刀「…参ったなこりゃ。」

 

ポリポリ頭をかく。

そんな隙を、大熊猫は見逃さなかった。

先程よりも速い突進、今度は両腕を大きく広げ迫ってくる。

それを見ていた紀霊は、「逃げろ!」と叫ぼうとした。が、ハッと言葉を失ってしまった。

一刀が構えをとった瞬間…時が止まったように思えたからだ。

 

紀霊「な、何だ…?!」

 

目の前の景色が、ゆっくりと時を進めている。

舞い散る葉も、飛び交う鳥も、風に揺すられる木々も、まるで止まっているように感じる。

 

一刀「北郷流、無手一の型。」

 

大熊猫が眼前まで迫り、今にも一刀を叩き潰そうと両腕を振り下ろそうとしている。

ゆっくりと、一刀は熊猫に近づいて行く。

 

一刀「山紫水明。」

 

腰元で力を込めた掌底を、熊猫の腹部へ叩き込む。

そのまま一歩後ろへ下がり、相手へ一礼する。

 

ふぅ、と息をつくと、まるで何もなかったかのように時が動き出した。

瞬間…ドン!!という鈍い音が響き、大熊猫はよろめくき膝をついた。

やったか?と紀霊は思ったが、大熊猫はむくりと起き上がり四つん這いのまま一刀へ近づいていく。

そのまま一刀の脇腹に鼻先を潜り込ませる熊猫。

一刀は大熊猫の鼻の上あたりをゆっくりと撫でたのだった。

 

大熊猫「なぉ~ん♪」

 

 

 

---下邳---

 

城下に居並ぶ約十万の兵達。

彼らは城門を見上げ、ただ一人の男を待っていた。

 

??「陶謙様、ご準備が整いました。」

 

陶謙「ふふっ、ありがとう。」

 

壇上へと上がる陶謙を前に、その場に居る者達はしんと静まり返る。

そんな彼らを見渡すと、満面の笑みで言い放った。

 

陶謙「僕の為に死ぬ者達よ。それしか価値の無いものたちよ。

   これより君たちは自分の死場を見つけるために、僕の望むものを持ってくるんだ。

   そうすればこの世の最上級の快楽を約束しよう。

   だが、それすら叶わない哀れな敗残兵は…地獄にまた舞い戻ることになる。要するに現状維持、だね。」

 

??「(気味が悪いわ…一体何なのかしらこの兵たちは。

   それに、こんな大軍がどこに隠し持っていたというの?)」

 

陶謙「さぁ、乱世が産み落とした敗残兵諸君!

   汝南の民を皆殺しにするのだ!そして僕の前にアレを持って来い!

   ただし…アレに傷ひとつでも付けたら、地獄に一生繋ぎ止めてやるやるから覚悟してね。ふふふっ」

 

真っ黒な導士服を着こみ、フードで顔をすっぽり覆った兵達。

彼らは汝南へ向け、大きく軍靴を鳴らし行軍する。

 

??「それでは、私は下邳の守りに就きます。

   陶謙様も万が一に備え北海へお戻りください。」

 

陶謙「万が一…?

   くすっ…そんなことがあったら大変だねぇ。

   良い報告を待っているよ。」

 

 

 

---山越の集落---

 

ズシ、ズシと巨体を揺らしながら歩く大熊猫の背に乗る一刀。

その横を恐る恐るといった様子で紀霊が付き添っていた。

 

一刀「(デパートの屋上思い出しちゃった…。あぁ、いかん…なんかセンチメタルだ。)」

 

集落に着くと、村の入口で山越族の戦士たちがひれ伏していた。

もう既に日は落ちかけ、松明の明かりが彼らの影を映し出す。

その真中には車椅子に座る少女。彼女もまた、頭を垂れていた。

 

 

??「守り神さま…我々は一族の宝を奪われ、未だ取り戻せておりません。

   このままだと、今宵の満月に歌を捧げることも難しくなるでしょう。

   どうか…どうか私の命一つでお怒りをお治めください…!」

 

大熊猫はその様子をじっと見つめると、一つ唸った。

 

一刀「…あ、あの~。」

 

山越族「っ??!!」

??「…?!」

 

一刀「あなた達が山越族かな?」

 

??「そ、そうですが…あなたは?」

 

一刀「俺は揚州を治める袁家の当主で、名を袁基といいます。」

 

??「袁家の…?そのような方が何故こちらに…と言いますか、早く初初(ちゅちゅ)様から降りてください!」

 

一刀「おっと失礼。

   …この子、初初って言うのか。」

 

地に降り立つと、御礼代わりに鼻先を撫でる。

 

初初「くるるるる~~♪」

 

嬉しそうに喉を鳴らすと、その場に座り込む初初。

 

一刀「で、よければ君の名前を聞かせてくれるかな?」

 

見慣れない光景にポカンと口を開ける少女だったが、

声をかけられたことにより我に返る。

 

??「し、失礼しました。

   私は山越族の長をしております。留賛と申します。

   …あの、つかぬことをお伺いいたしますが…初初様とはどのような…?」

 

一刀「あぁ、さっきこの子と戦って勝ったんだ。

   いや~強かった!あははっ」

 

初初「ぬぉっ♪」

 

留賛「戦った?!って、しかも勝った??!!」

山越族「…!!」

 

おぉ、とざわめく。

 

一刀「で、だ。

   ここまで来たのは、君らから書状が届いてね。『宝を返せ』って。」

 

留賛「そ、そうだわ!驚いてすっかり忘れておりました!

   どうか我らの宝を返してください。アレが無ければ我が一族が滅びてしまいます!」

 

一刀「その前に聞きたいんだけど…盗んでいったのは本当に俺達の仲間だった?」

 

留賛「盗人が逃げるとき、『汝南太守、袁術様の命により奪いに来た!』と叫んでいて…」

 

一刀「それはいつの事だい?」

 

留賛「つい七日ほど前になります。」

 

一刀「…なるほど。その頃には既に当主は俺になってたはずなんだけど…。」

 

留賛「えっ?!それでは…!」

 

一刀「それに…逃げた男、途中で初初にやられてたみたい。

   証拠にほら、初初と会った時にこれを見つけたんだ。」

 

と、首飾りをポケットから差し出す。

そこには盗まれたはずの首飾りがあった。

留賛はあまりに驚き、恐る恐る触れようとする。

 

その様子を、自分では付けられないのかと勘違いした一刀は、そっと前から手を回し髪飾りを留賛に付ける。

留賛の肩越しからは、綺麗な満月が空に浮かんでいた。

 

一刀「ほら、これで大丈夫かな?」

 

と尋ねる一刀だが、留賛は真っ赤な顔で驚いている。

周りの山越族も、何やら只事ではないとざわめく。

 

留賛「…あ、あ、あのあのあの!…ふ、不束者ですが、どうか末永くよろしくお願いします…///」

 

一刀「…はへ??」

 

その言葉を皮切りに、山越族の雄叫びが轟いた。

留賛は何やら書状を差し出す。松明のもとで呼んでみると、それは山越族の掟に関してだった。

 

『婚姻に関して…

 第一条、族長の婚姻に関して

 第一項、婚姻の際は、満月の夜に守り神様の眼前にて、首飾りをかけてもらい、その場で答えを出す事。

 この約束が交わされて以降、双方に撤回は認められない。』

 

一刀「…。」

 

留賛「…ぽっ///」

 

一刀「いやいやいやいやいや!!(チクショウまたかよっ!!)

   ていうか君は本当にそれで良いの?!」

 

留賛「私はこんな身体ですから…。そんな私が欲しいと言ってくださるのであれば、是非に。

   それが初初様に勝てる程の戦士だなんて、私にとってこれ以上はございません。」

 

一刀「(終わった…orz

   帰ったら七乃になんて言おう…)」

 

留賛「幼いころに事故で腱を切って依頼、このように脚を満足に動かすことも叶いませんが、

   …きっと丈夫なお子を産んでみせます!

   さ、そろそろお布団に参りましょう?今晩は初夜ですもの…///」

 

一刀「あのちょっと…」

 

留賛「お子が…欲しゅうございまする///」

 

その晩、山越族の宴が盛大に執り行われ、留賛の天幕からは嬌声が漏れ聞こえていた。

大いに盛り上がった宴だったが、離れの天幕の外では紀霊と初初がポツンと静かに佇んでいた。

 

紀霊「旦那…俺ぁ、アンタに出会うまで女にモテたいと思ったこともあったけど…やっぱりそれなりでいいや。」

 

初初「ぬぉ」

 

 

 

 

今回もお読み頂き、誠にありがとうございます。

相変わらずモッテモテですね。

次回からは戦争に入っていきます。お楽しみに!

 

 

 

ちょこっとヒロイン紹介

 

姓:留

名:賛

字名:正明

真名:鈴鳴(すずな)

武具:琥珀の首飾り

 

山越族の姫。黒髪でおかっぱヘアー、そして白い着物をきた少女。

歩くことが出来ないため車椅子での生活を余儀なくされているためか、

非常に小柄。近接戦闘能力は皆無だが、歌によって士気を向上させる力を持つ。

 


 
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