No.737965

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-11-18 15:30:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:576   閲覧ユーザー数:559

 

 

 story47 良い事

 

 

 その後自衛隊と警察がやって来て、パーシングを奪った女性三人を逮捕した。

 

 

 その三人は如月の読み通り、過去に戦車道を受けており、戦績もそこそこのものだったが、道を踏み外し、留置所に投獄されていたが、看守の目を見計らって脱走をしており、最近でもニュースになっていた。

 しかも三人の内、リーダー格であった女性はかつて早乙女流を取っていた。だが、道を踏み外して事件を起こしているので破門している。

 

 

  

「ソーリー!本当に助かったわ、神楽!」

 

 と、ケイは両手を合わせて頭を深々と神楽に向けて下げる。

 

「まぁ、大事に至らなかったのが、不幸中の幸いね」

 

 神楽はゆっくりと息を吐く。

 

「・・・・しかし、無傷で取り戻せなかったのが、少し心残りね」

 

 神楽の視線の先には、傷だらけで右側の履帯が外れているパーシングがあった。

 

「まぁ、無傷じゃなかったとは言っても、パーシングを取り戻せた事に変わりは無いわ。こちらの方は気にしなくていいよ」

 

「そうは言うが、こちらとしては元早乙女流の者が犯した責任がある。多少の償いをさせてもらいたい」

 

「頑固だって言うのは、相変わらずねぇ。でも、せっかくだけど厚意だけで良いわよ。気にしなくていいから!」

 

 と、ケイは笑顔を浮かべて神楽の右肩に手を置く。

 

「・・・・まぁ、そうしておくわ」

 

 これ以上続けても平行線になるだけと思ったのか、神楽はそういう事にした。

 

 

 

 その後如月とケイは一試合目のことや、決勝戦での事を話し、ケイは決勝戦に向けて、如月に励ましの言葉を送った。

 サンダースは取り返したパーシングを回収車に乗せ、撤収していった。

 

 

 次に戦車教導隊の蝶野教官がやって来て。事情聴取を受ける事になった。

 しかし運営面を早乙女家に全面的にバックアップしてもらっている為か、蝶野教官は神楽相手に敬語だった。 

 

 それと、先代早乙女家当主が蝶野教官の訓練生時代の教官だったらしく、先代の61式を懐かしそうに見つめていた。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「忙しい一日になったな」

 

「そうね」

 

「まぁね」

 

 61式を元の場所に戻し、如月と神楽、中須賀の三人は屋敷の門の前に立っていた。

 既に車が用意されており、後は如月が乗れば出発する状態だ。

 

「食事は次の機会だな」

 

「そうね。ちゃんと招待してあげるわ」

 

「楽しみにしている」

 

 

 

「・・・・翔」

 

 中須賀は如月に声を掛ける。

 

「あんたと久しぶりに会えて、良かったわよ。以前と何ら変わりが無くて、安心した」

 

「私もだ」

 

「・・・・・・」

 

「西住には、私を通して言おうか?」

 

「・・・・・・」

 

 少し考えるも、左右に頭を振るう。

 

「いや。次に会った時に、自分で言うから」

 

「そうか。その方が西住にとっても、嬉しいだろう」

 

「かもね」

 

 

 

「今日は貴重な体験をさせてもらったな」

 

「お礼はいいわ。私も同じ気持ちだもの。こうしてあなたとゆっくり話せる機会を得たのだから」

 

 神楽は微笑を浮かべる。

 

「決勝戦。頑張りなさい」

 

「そのつもりだ」

 

 如月と神楽は握手を交わすと、如月はその場を後にしようとした。

 

 

 

「あっ。言い忘れた事があったわね」

 

 と、神楽は如月を呼び止める。

 

「あなただけじゃないけど、大洗に一つ伝えないとね」

 

「・・・・?」

 

 如月は首を傾げる。

 

 

「近々か、もしくは今頃大洗にいい事があるかもしれないわ」

 

「良い事?」

 

「えぇ。それがどういう形であるかは、その時次第ね」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ、それを信じるか否かは、あなた次第よ」

 

「・・・・頭の隅に留めておく」

 

 よくは分からなかったが、如月は手を振りながら車に乗り込み、ゆっくりと走り出す。

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 その頃――――

 

 

 

 

 ――――ッ!!!

 

 

 轟音と衝撃と共に砲弾が放たれ、遥か遠くにある標的物の中央右側に着弾する。

 

 

「・・・・マジ?」

 

「・・・・・・」

 

 近くで双眼鏡を覗いて弾着を確認していた黛と佐藤(姉)は驚きを隠せれなかった。

 

 

 少し離れた所に、まだ完全に改装が終わってないが、十二糎砲戦車(正式名称が分からないので、この際色んな名前でも良いと思い始めているこの時・・・・)が居座っていた。

 車体とはアンバランスな巨大砲の砲口より硝煙が漏れ、砲手席に耳当てをしている篠原が座り、スコープを覗いている。

 

「十発中全弾命中。その内六発を中央に着弾。何ていう精度なの」

 

「この自走砲の砲の精度はそこそこ良かったって言われているけど、それでも、ここまで凄いなんて」

 

 彼女達が居る場所は演習場の後ろにある山の中腹辺りで、そこから的がある場所まで推定4000メートル以上はある。

 

 

「戦車より、あんな所に命中させられる雫の方が凄い気が・・・・」

 

 戦車の後ろに居た瑞鶴は苦笑いを浮かべる。

 

「どうしてあんなに、スコープ越しでも分かりづらい的に当てれるんですか、先輩?」

 

 戦車の運転席上のハッチが開かれ、原田が出てくる。

 

「・・・・分かるのだ。どこに弾が落ち、どこに当たるのかがな」

 

「・・・・・・」

 

「そういや、雫が物を投げる時も、いつも確実にやって来たっけ」

 

 瑞鶴はその時の事を思い出し、呟く。

 

「あれくらい、的が動いては無いが、仮に動いても弓矢で鹿を狩るのより簡単だ」

 

「いやいやいや!?本当に何時の時代に人間だよあんたは!?」

 

 あまりもの前代的な事に瑞鶴は思わず突っ込みを入れる。

 

 

「まぁそれはともかくとして、最初こそ慣れなかったが、今は手足も同然に操れる」

 

(適応能力凄過ぎっしょ)

 

 内心で呟くと、瑞鶴はどこからともなくハリセンを取り出し、戦車の後ろで握り飯を食べている赤木にスパァァンッ!!とツッコミを入れる。

 

 

 

 

 

「それにしても、この状態で試合に出場できるんですか?」

 

 その後倉庫に戻り、整備部のメンバーはすぐに十二糎砲戦車の改装作業に入る。

 その中で原田が佐藤(姉)に問い掛ける。

 

「まだ出来ないよ。レギュレーションに沿った改装をしようにも、パーツが足りないのが現状なのよね」

 

 佐藤(姉)はレンチを肩に担ぐと、十二糎砲戦車を観る。

 

 主に足回りの改装をしていたので、移動には特に問題は無いだろうが、一番の問題のみが残ったままだった。

 

「じゃぁ、下手すれば、次の決勝戦に出場出来ないって事も?」

 

「あり得る話なのよねぇ」

 

「そんな・・・・」

 

 

「まぁ、集まった義援金で強化改造パーツを頼んでおいたから、何とかなるはずよ」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 しかしその後、彼女の予想は大きく外れる結果に(良い意味で)

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 次の日の放課後――――

 

 

 

「こ、これは・・・・!?」

 

『・・・・・・』

 

 戦車道メンバーは戦車倉庫にやって来ると、驚きの光景にただ驚きを隠せれなかった。

 

 

 

 

 なぜなら、一面を覆うほど、倉庫の床に数多くの戦車のパーツが置かれていたからだ。

 

 

 

 

「い、一体どうしたんですか。これだけの多くのパーツを!?」

 

 西住は戸惑いながらも角谷会長に聞く。

 

「いやぁそれがねー。六日前に学園に結構な額の義援金が送られてきたんだよねぇ」

 

「義援金を?」

 

「うん。送り主は書かれてなかったけど、一緒に送付されていた手紙には『上手に使いなさい』って書かれていた」

 

「・・・・・・」

 

「中古であれば戦車一台分買えるだけの金額はあったが、乗員がいないのに買ったところで意味が無い」

 

「ですから、今ある戦車を改造強化に回して、改造パーツをたくさん注文しました」

 

「そうなんですか」

 

「・・・・・・」

 

 他のメンバーが頷く中、如月はある事に確信を得た。

 

 

(そういう事か。思う存分、黒森峰と戦えって事か)

 

 あの時の神楽の言葉の意味を理解し、少しだけ口元が緩む。

 

 

 

 

 そうしてメンバー総出で、戦車達の大改造に取り掛かった。

 

 

 あんこうチームⅣ号には、砲塔と車体側面に補助装甲板『シュルツェン』を取り付け、砲を『7,5cm KwK 40 L/43』から『7,5cm KwK 40 L/48』に換装され、『F2仕様』から『H型仕様』になり、車体色もグレーから小豆色に変更された。

 これにより、Ⅳ号は攻撃力と防御力を僅かでも向上させた。

 

 

 アヒルチーム八九式には、主砲を『九○式五糎七戦車砲(57mm短砲身)』から、実際に改造されて搭載する計画があった『九九式七糎半戦車砲(75mm短砲身)』に砲塔ごと換装し、エンジンはガソリンエンジンからディーゼルエンジンに換装された。

 主砲以外は甲型から乙型仕様となり、主砲の威力も車体側面と後部で損傷、運が良ければ撃破可能となった。これにより、八九式は攻撃力と馬力が向上になった。

 

 

 カバチームⅢ突には、主砲を『7,5cm StuK 40 L/43』から『7,5cm StuK 42 L/70』に変更され、車体には天板以外にG型に準じて増加装甲板が追加され、車体側面にⅣ号同様にシュルツェンを装備させた。

 これにより、Ⅲ突は攻撃力と防御力の攻撃が施された。

 

 

 ウサギチームM3には、エンジンを『ライトR-975-EC24ストローク星型9気筒空冷ガソリン』から『GM 6046 2ストローク直列12気筒液冷ディーゼル』に換装され、試合時には大きめの砂利の入った砂袋を車体前部と側面にぶら下げる予定である。

 これにより、M3はエンジン出力が向上し、速度が上がっている。

 

 

 カメチームの38tは『ヘッツァー改造キット』によって車体上部を丸々交換し、『38tヘッツァー改』となり、主砲も『3,7cm KwK 38(t) L/47』から『7,5cm PaK 39 L/48』に換装された。

 これにより、装甲及び火力が飛躍的に向上した。

 

 

 カモチームのルノーB1bisには、エンジンを『ルノー4ストロークガソリン直列6気筒液冷ガソリン』から『ルノー社製V型12気筒液冷ガソリン・エンジン』に換装され、車体前面装甲を60ミリから70ミリに増加させ、車体内部も改装されて車体にある75m砲に少しだが左右旋回機構が追加され、鋳鋼製のフェンダーが履帯を保護する為に追加された、計画案の状態である『ルノーB1ter』仕様となった。

 これにより、エンジン出力と防御力、及び機能性の向上が施された。

 

 

 レオポンチームのポルシェ・ティーガーには、主砲を『8,8cm KwK 36 L/56』から長砲身仕様である『8,8cm KwK 43 L/71』に換装された。

 これにより、主砲威力を少なからず向上させる事が出来た。

 

 

 クマチームの五式には、エンジンを『液冷V型12気筒ガソリンエンジン』から『過給器付き500hp空冷ディーゼルエンジン』に換装され、砲塔全周と車体前部に増加装甲板が追加された。予備履帯を砲塔側面前部と車体側面に付け、試合時には砲塔側面後部に大きめの砂利が入った砂袋を提げる。半自動装填装置には、実際の計画案通りに改装が施され、連射速度が向上した。ジャイロスタビライザーも新品のと交換されたので、砲身の安定性が飛躍的に向上した。一部をペーパープランで終わった『チリⅡ』仕様となっている。

 これにより、エンジン出力と防御力が少なからず向上しており、砲撃の命中率を上げている。

 

 

 ネズミチームの四式には、特にこれと言った目立った改良は施されて無いが、試合時には大きめの砂利の入った砂袋を砲塔と車体前部に下げる予定である。

 アリクイチームの三式にも、四式同様の改良が加えられる。

 

 

 タカチーム九七式には、各箇所に増加装甲板を追加しており、あまり効果が無いように見えるも、無いよりマシな状態となった。

 

 

 ゾウチームフェルディナントには、特にこれと言った改良は施されなかったが、当初は主砲を『10,5cm PaK 45 L/52』から『12,8cm paK 44 L/55』に換装させる予定だったが、装弾数が少なくなる上、何より次の試合ではそこまで火力を必要としないので、発見当初のままにしたという。

 

 

 クジラチームオイ車には増加装甲板を全体的施し、僅かながらも装甲厚増加になった。

 

 

 キツネチームの戦車に大洗の戦車の中で一番大掛かりな改修が施され、見た目は他の戦車の砲塔を被せたような不恰好だが、三式中戦車の砲塔をモデルにし、砲と砲手席をカーボンでコーティングされた装甲板を組み合わせて被せている。足回りを強化し、エンジンを更に出力の高いものに換装しているため、見た目にはよらず結構機敏に動けるようになった。

 しかし、元々は急造品であるが為に、砲弾を収納するだけのスペースが無い。その為、試合時には車体後部に砲弾と装薬が積まれた大型リヤカーを牽引し、行動しなければならない。しかしそれでも一度に持ってこれる砲弾は極端に少なく、一発一発が大事なものになっている。

 

 

 ちなみに、五式、四式、三式、九七式、八九式の砲塔側面には、ティーガーⅠ初期生産型の砲塔に取り付けられている煙幕発射機を取り付けられている。

 何でも、次の作戦に必要不可欠となるものになっているらしい。

 

 

 

 こうして全ての戦車の大掛かりな改造が終了した。

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択