No.732317

義輝記 星霜の章 その三十

いたさん

義輝記の続編です。 よろしければ読んで下さい。
10/25誤字、文章修正しました。

2014-10-24 20:42:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1030   閲覧ユーザー数:952

【 快刀乱麻 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

百万の軍勢が囲む外側に、潜む軍勢。

 

平原が広がる中、雲霞の如く密集する傀儡兵を見て……上杉謙信は、横に居る武田信玄に意見を尋ねる。

 

謙信「なかなか隙が無い構えだ……。 しかし、あの辺りの軍気の事象が乱れているように見えるが、一抹の不安も感じる。 信玄……貴女には、どう見えるだろうか?」

 

信玄「………景虎の言う事も一理あります……が」 

 

謙信「……………が?」

 

信玄「その考え……正解ですよ。 かの軍気は……乱れつつも天高く昇ろうと示す『蟠竜』の事象! 一度攻撃を始めたら継続して戦いなさい! そうしないと敵に呑まれて……私達が壊滅する恐れがあるでしょう!!」

 

謙信「やはり……相談して良かった。 私は……どうも勘に頼る事が多いのでな。 信玄のように理知的に考えてくれると……非常に助かる!」

 

信玄「………何をほざくかと思えば……!」 

 

謙信の言葉に………信玄の顔が、怒りで真っ赤に染まる!

 

信玄「───良いですか!? その勘が当たるからこそ、私達武田が……幾ら攻めようとも攻略出来なかったのですよ!? 何を落ち込んでいるのか知りませんが……自信を持ちなさい!」 

 

謙信は、信玄の言葉も上の空で……空の向こうを眺め呟いた。

 

謙信「……私は……影が薄くないだろうか? 出番が少ない為……忘却されていないか? 私は第二の白蓮殿に成りはしないのか? そう……思い詰めてしまう……今日この頃なのだ………」

 

白蓮「おいっ! その理由はなんだぁ!!!」

 

白蓮は……二人の争いを止めようとしたが、逆に謙信の言葉に反応して突っ込んでしまう! しかも、信玄が白蓮に追撃を浴びせた! 

 

因みに、二人には白蓮を悪く言うつもりは……全然無い! 例え話で使用したまでだから……罪悪感もなかった。

 

信玄「わ、私と人気を二分する貴女が何を言い出しますか!!! この信玄に互角の将など貴女ぐらいしか……居ないのです!! 白蓮ならいざ知らず、景虎が──そんな訳ないでしょう!!!」

 

白蓮「どさくさに紛れて対比をするな!!! これでも……結構気にしているんだぞぉぉぉ!?」

 

謙信と信玄の口論に、更に白蓮も参加して……収集が付かない!! 

 

だが……『眠れる虎』が起き上がり、竜と虎に吼えた!!

 

信廉「─────いい加減になさい!! 何時まで無駄話をしているつもりですかぁぁ!!? 刻が惜しいです! 攻撃手順は決まっているのですから、早く実行なさい!!!!」

 

『━━━━━━━━━!!!』

 

ーーー

 

『……私の人生の中で………妹に鬼気迫る叱られ方をされたのは、この時だけですよ……』と後日……出された茶を啜り、怯えながら颯馬へ語る姉、その隣で強く同意する仲間の将が居たそうである。 

 

★☆☆

 

謙信「コホンッ! ───失礼した!」

 

謙信は咳払いを一つして、改めて命令を発する!!

 

謙信「───上杉勢よ! 配置に付け! 義清殿! 準備は宜しいか?」

 

義清「うむっ! 問題無いのじゃ!!」

 

ーーー

 

信玄「では、信廉、昌景! 其方も準備は良いですか!?」

 

信廉「何時でも!! 加勢してくれています鳥丸兵の皆さんも、既に準備は整えています! 姉上が可笑しな事していなければ、もっと早く手が打てるのに………! 颯馬の身が心配ですぅぅぅ!!」

 

信玄「………その事の件は……謝罪しているでしょう!」

 

昌景「わ、儂の方は……万事手抜かり無く!! さぁ! 急ぎましょうぞ!」

 

ーーー

 

白蓮「わ、わた、私達の準備も大丈夫だな!? 大丈夫だよな!?」

 

国譲「はいっ! 何時でも実行出来ます!!」

 

ーーー

 

謙信「ではっ! 出撃開始!!!」

 

 

◆◇◆

 

【 于吉の反撃 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて 〗

 

于吉「そんなぁ─────馬鹿なぁぁぁ!?」

 

声を大にして叫んだ後、于吉は……大号泣し始めた! 

 

于吉「う~うぅぅ、あんまりです…! あぁぁぁんまりですよおぉぉ!!」

 

そんな于吉の様子を、真っ正面から軽蔑するように睨みつけ、華雄は于吉へ勝負が決まった事を宣言する。 これで、逆転されるような策など……思い付かない故に。 寧ろ……あったら見てみたいとも考えた!

 

華雄「この勝負……我々の勝ちだ! まだ戦う気なら、此方も手加減なぞせん────ぐっ!?」

 

華雄は、最後まで言葉を続ける事が出来なかった………。 

 

身体が意に反して動けない! まるで、周囲の空気を固められたように、違和感を感じる?? 

 

これは……まさか────ッ!?

 

華雄「こ、この感じは……久秀から受けた────妖術!?」

 

光秀「華雄殿! どうしたのですかぁ!?」

 

周囲が、華雄の様子がおかしい事に気付き、騒がしくなる!!

 

于詰「気付くのが遅いですよ? ────『縛』!!!」

 

「「「 なっ!? 」」」

 

「う、動けないで───御座るぅ!!」

 

「め、面妖なっ!!」

 

「「 ──────!! 」」

 

『ーーーーーーーーーーーー!!!』

 

洛陽軍の将兵が………一斉に全員動けなくなった!!

 

于吉「私を完全に怒らせるなんて……見事ですよ……貴女達! ですが……完全に血を昇らせた状態で戦えば、ろくな動きが出来ませんからね。 だから、ここで一度号泣し、頭を冷やし冷静に対応すれば……ご覧の通り!!」

 

つい先程前まで……大泣きをしていた于吉が、眼鏡を直しつつ近付いてきた。

 

于吉「勝負があった? いえいえ、これからが逆転劇の始まりですよ。 貴女達の希望が……いつの間にか絶望になる。 こんな事、人生に何回も短時間に起きるなんて稀な事象ですが……安心して下さい」ニコリ

 

于吉は穏やかに笑いつつ─────言い放った。

 

于吉「──────絶望で終わりです! 逆転なぞありません!! 天城颯馬と貴女達は、全員無惨に死に絶えるのが………宿命なのですよぉぉ!!!!」

 

『──────────!!?』

 

★☆☆

 

颯馬「…………や、止めろ! この将兵達は……関係無いだろう!! 俺の命だけ奪えば……それで……済むだろうがぁ!! ゴホッ! ゴホッゴホッ!」

 

于吉「………ふむぅ。 寿命も長くなさそうですね? 良いでしょう、私が貴方の死を見届けてから、呪縛を解くとしますか?」

 

光秀「や、止めなさい! 奪うのなら私の命を奪いなさい! 颯馬や皆は──助けてあげて!!」

 

凪「何を言う出すんですかぁ! 貴女は颯馬殿の正妻!! 順序から言えば私が身代わりになるのが役目です! 私を殺しなさい! その代わりに皆を!」

 

于吉「何を馬鹿な事を。 私が必要なのは天城颯馬の命ですよ? それを逃がす訳がありません!! それに、天城颯馬を殺せば───貴女達の何人かは、後を追うでしょう。 一石数鳥~! 手間は……かなり省けますからね!」

 

華雄「き、貴様ぁぁああ!!」

 

于吉「戦闘も駆け引きも……全ては此処です! 貴女のように肉体ばかり鍛えていても……このような結果になるんですよ! 次回があれば……覚えておきなさい。 まぁ、貴女のような鳥頭では……すぐに忘れそうですがね!!」

 

華雄「くそおぉぉぉおおおぉぉ!!!」

 

于吉「雑談はこれまでです! 私は……この愚か者の苦しみ様を、死ぬまで拝見しなければいけないのでね。 苦悶の様子、後悔やら悲しみやらが浮かぶ表情を……一番良い席で見物致しましょうか!!」

 

于吉は一人で颯馬に近付く。 

 

周りに居る光秀達には目も呉れず……ゆっくりと歩みを進めた!!

 

 

◆◇◆

 

【 朱里達の活躍 の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山付近 にて 〗

 

朱里「むぅぅぅぅぅぅ…………」

 

雛里「じぃぃぃぃぃぃ…………」

 

桃香「どう……? 何か見つかった……訳……無いよねぇ……はぁ~!」

 

ーーーーー

 

順慶と大洪との対決は………熾烈を極めた! 

 

順慶「そこを退けなさい!!」

 

大洪『誰が退けるか! 寝言をほざくんじゃねぇ!!』

 

左校『御遣い様の手助けが出来る……このような機会を戴けるとは……! 人生、悪くは無い! 悪くは無いわぁぁぁ!!!』

 

大洪、左校はたった二人だけで、順慶の攻撃を受け流し、弾き、迎撃したりと無力化を実行! 飛び散る土砂や残骸等は……配下の元青州兵が防ぎ……被害は皆無となる! 

 

大洪、左校の攻撃は軽やかに、しかし的確に順慶へと当たる! しかし、順慶も気による回復を使い、受けた攻撃の傷等は皆無。 全く互角の状況だった。

 

しかし、遂には──────!

 

順慶「あっ! ああぁぁ━━━ーーーーー!」バタン!

 

氣の大量消費により枯渇が始まり、二人に易々と捕縛! 

 

捕虜として、二人に連行させて………そのまま監視をさせる事になった。

 

そして……重傷を負った星達は、負傷者収容所に送られて、治療を受けている状態である。

 

ーーーーー

 

華琳「各勢力に伝令! 敵の勇将『筒井順慶』を捕縛した! 内側からの圧力が弱まり、少しは状況がマシになる筈! その隙に、外側と内側の敵を壊滅させる策を見つけて欲しい! 判明次第……曹孟徳に伝令を請う!!!」

 

伝令兵『はっ!!!』

 

ーーー

 

朱里「わ、私達が御役目を果たせる──絶好の機会なんですっ! 何とか打開策を得るように、周囲を隈無く探すのですが…………!」

 

雛里「だけど……陣内容が完璧過ぎて……突っ込む所も無い有り様なんです! ………皆さんに負担を掛けちゃうのが……とても悔しいのにぃ!!」

 

桃香「で、でも……ご主人様……じゃなかった、一刀さんが『この世界に完璧なモノなんか無い! もし、あれば……それは友情だけだ!』って呟いていたよ?」

 

雛里は……困ったような顔を浮かびながらも……嬉しそうに呟く。

 

雛里「天の知識とは……西に伝わる禁断の箱ですよ! わ、私や朱里ちゃんが学んだ知識を、悉く不定、破壊して行くんですから! ……それも容赦なく。 だけど……最後に……必ず『希望』を残すのも一緒なんですよね!」

 

朱里「あっ! ひ、雛里ちゃん! か、完璧じゃ無いというと前提で考えると…どう見る? もっとグチャグチャとした状態だと考えていたら?!」

 

雛里「えぇ~とぉぉ? 完璧じゃ無い状態だったら、命令系統が組織だって無いこと? 命令が分かりづらいとか? 他には………?」

 

朱里「それだよぉ! それぇ!!」

 

雛里「はわぁ─────!?」

 

朱里「………命令を伝達する人は必ず居る筈!! もしくはは頭になる兵士さんだよね? だから、その頭になる兵士さんを潰せばいいんだよ!?」

 

桃香「だけど……そんな人が居るの? 全員白装束だから分かんないよ?」

 

朱里「いえ、必ず現れます! 私達が何かしたら、必ず命令を遂行するよう指示する者がいる筈でなんですよ! だから……その動きをする者を狙えば────!!!」

 

ーーー

 

華琳に伝達すると、すぐさま狙撃弓兵が準備された。

 

華琳「季衣! 流琉! あの敵の集団に軽く当たりなさい!」

 

季衣、流琉「「 はいっ! 」」

 

季衣達は、五十人程引き連れて弓を斉射した!!

 

季衣「皆! 気負わずに射てぇ!!」

 

流琉「大丈夫! 外れても構いせん!!」

 

シュッ! シュ────ッ! シュッ!

 

数十本の矢が敵勢に届き、傀儡兵達が倒れる! 

 

季衣「まだまだぁ!!」

 

流琉「槍兵の皆さん! 弓兵さんを守る為、前に出て下さい!!」

 

槍兵『はっ!』

 

そんな慌てふためく傀儡兵に、遂に指示を出す兵が数人………!

 

傀儡兵「───!? ─────!?」

 

傀儡兵長「━━━━!! ━━━━━━!!!!」

 

ーーー

 

狙撃弓兵「見つけたぁ───────っ!」シュッ!

 

狙撃を命じられていた弓兵が、目標を見定めると素早く放つ! 

 

その矢は───傀儡兵長の頭へと吸い込まれるが如く、矢が突き刺さる!!

 

傀儡兵長「━━━━━━━━!!!!!!!!!!」バタッ!

 

『狙撃成功』の報が入ると────華琳は直ぐに動いた!!

 

華琳「良し! 私が直接攻めて見極めるわ! その後の反応を即時に皆に伝えよ! これが、我々の流れに持ち込める好機としてぇ!!」

 

朱里が睨んだ通り、そこの敵勢の反応が鈍くなる! 攻撃も守備も反応がズレるのだ。 これにより、曹操軍の被害は激減する!! 

 

華琳が認めし攻略の要は、伝令にて各勢力に伝達! 次第に優勢になる洛陽軍であった。

 

 

◆◇◆

 

【 覚えている人は……多分居ない の件 】

 

〖 司州 河南尹 鶏洛山砦付近 にて 〗

 

 

颯馬「ぐっ………くっ!」

 

力を入れて立ち上がろうとするが……まるで力が入らない。 力を入れる度に激痛が走り、意識が朦朧。 少しずつ死に近付いている事は……確実だ。 

 

それでも、颯馬が立ち上がり……出来れば……差し違えても于吉を討つ腹積りだったのだが……身体がこうも弱まっては……どうしようもなかった。

 

于吉「……何か決意をしていたようですが……無駄な足掻きですよ。 いい見せ物になりますがね! あーっはははははは!!」

 

于吉は笑いながら……三歩手前で立ち止まる。 颯馬には術を掛けていないため、自由に動けれる。 但し、別の理由で自由が利かない状態だった。

 

小太郎「動けぇ!! 動けぇ!!!」

 

凪「あ、天城様ぁ!! しっかりして下さい!!」

 

愛紗「解けぇ! 早く術を解けぇぇ!!」

 

皆が口々に于吉を罵り、颯馬を心配し、この術を解くように命じるが……于吉のにやつきは変わらなかった。

 

于吉「何を言っているかは分かりますが……私の崇高な目的と、全く一致しない事を頼まれても、それは無理と言う事ですよ────!?」

 

于吉の話が終わる手前で、横から何か飛ばされてきた。 そして、于吉の服へ軽く『トンッ!』と当たる。

 

于吉「何ですか……これ───はぁぁあ!?」 

 

当たった物を見て、于吉は慌てて外しに掛かる! 

 

于吉「あぁ……『飴』が私の服に付着している!? は、早く洗わないとアリが来て大変な事に! い、いやぁ! それよりも……誰も動けないのに、この私に物を投げつける事など不可能! 誰が─────!?」

 

于吉が……投げられた方向を伺うと……風が飴を口に咥えていた。

 

★☆☆

 

于吉はコメカミをピクピクさせながら……風の傍に寄る。

 

于吉「貴女は……飴を美味しそうに食べていますね?」

 

風「風は軍師ですので、頭をよく利用しますー。 だから、どうしても糖分が必要なのですよー! この飴を欲しくても、風の物だからあげません!!」

 

于吉「ほぅ……。 では、私の服に付けた飴は……貴女の飴と認める事ですね? どうやって当てたのかは知りませんが?」

 

風「異議アリですー! 風は貴方の術により動けないのに……どうやって投げると云うのですかー? 証拠不十分で風は無罪となりますよぉー!?」

 

于吉「この飴は貴女の飴! 他に投げる者は出来ない! それらを総合すれば……犯人は貴女しか居ない。 どう投げたかは、簡単じゃないですか? 口から飛ばせば済むだけです!!」

 

風「冤罪ですよー? 風がその通りにやってもぉ……プゥッ!! ……ほらっ! そこにしか当たりませんー!」

 

その飛ばされた飴の先には……于吉の身体があり……必然的に服に再度付着した。 確かに……風の云う通り……付着箇所はかなり低いが、さっきよりベッチャリ、ネチョリと付いてしまった。

 

于吉「………どうやら……死にたいようですね?」

 

風「風は……事実を訴えたまでですぅう!」

 

于吉「人の寿命はどうせ短いのですよ? 死にいそぐ必要もないのに……」

 

于吉は、風に憐れむような顔をして顔を覗き込む。

 

風「……貴方は……風を怒らせました~! 風は事実を訴えているのに……信じない高慢さー! 漢女のような女々しい仕草を見せ掛けて、実は図々しい態度ー! 許さないですよー!!!」

 

─────ブチン!

 

于吉「ふっ! ふふふっ!!」

 

于吉の笑いに怒気が混じり始める。

 

于吉「……左慈とお揃いになっている、私の大事な一張羅を汚しただけではなく、漢女と私を同一視する貴女は、私の手で死になさいぃぃい!!」

 

キレた于吉は、懐から短刀を持ち出し───頭上高く振り上げて、勢い良く下ろした! 

 

────目標は………風の心臓部! 

 

 

周りの者達、特に………稟の顔は真っ青に変わる!! 

 

 

 

しかし、当事者の風は………身体が動けないのに関わらず、両足を肩幅まで広げ、顔に左手を当て、右肩を上げつつ右手をピーンと伸ばした。 

 

 

 

そして、目を細めて……一言……呟く。 

 

 

 

風「………やれやれだ……ですよぉ~!」

 

 

 

 

──────────ガッ!

 

 

『何か』が、于吉の短刀を受け止めた。 

 

 

于吉「なっ!? 何故ぇ!? そんな馬鹿なぁぁあ!! 『おらぁぁっ!』───グボバァァァ!!」 ゴロゴロゴロ!! 

 

そして、拳を握り締め、于吉の顔をぶん殴って吹き飛ばす!!

 

 

 

??「ったく……人が寝ているのに、物騒な起こし方するじゃねえか?! このトンチキがぁ!」

 

 

 

 

 

 

その『何か』に全員の視線が集まったが……『何か』は別に気にしている様子を見せず……于吉より奪った短刀を、遠くに投げ捨てた!

 

そんな中……いち早く声を掛ける風。

 

 

風「……やっと自由に動けますねー。 ですが、風を助けるのが遅いですよー?」

 

??「結果が良ければ……全て良し! 固い事は言いっこ無しだぜ?」

 

風「ふぅ……。 確かに、油断していた風達も悪いのですから仕方ありませんねー。 ではでは……助けてくれて感謝してますよー! 『宝譿』!!」

 

宝譿「───当然だ!!」フン!

 

風の頭の上で……宝譿が……腰に手を当てて反り返っていた。

 

 

 

 

『──────えっ? えっ!? えええぇぇぇぇっ!?!?!?』

 

辺り一面に……若い乙女達が叫ぶ頓狂な甲声が響き渡った!!

 

 

 

稟「ふ、風! 宝譿は………人形じゃないんですか!?」

 

風「もぉ~! 稟ちゃんまで驚くのですかぁ~? 宝譿は人形なんかじゃありませんー!! 風の相棒ですぅ! 稟ちゃんが知らない訳ないんですよぉ? 何進大将軍と四人で食事の際に同席しているじゃないですかぁあ!!」

 

稟「だ、だって………何時も、風の頭の上に乗っているから……」

 

宝譿「おいおい……。 普通の人形が、頭に乗って動いたり、喋ったりすると思うかい? 常識で考えなきゃいけないぜぇ……稟ちゃんよぉ?」

 

風「全くですよー? そんな考えは非常識と……どうして分からないのですかねぇ? 風は悲しいですよぉ~!!」

 

稟「非常識の塊である貴女に云われたくありません!!!」

 

風「えぇ~! この品行方正な風を捕まえて、何と云う言い草~!!」

 

ーーー

 

凪「風様! 先程の姿勢は……な、何かの武術的構えなのですか? もし、そうなれば……ぜ、是非……御教授して下さい!」

 

風「う~~ん、凪ちゃんすいませんねぇ~! あの姿勢は、一刀お兄さんより教わった『天の国の挑発姿勢』なんですよー! ですから、凪ちゃんの思っている物とはー全然違いますぅー!!」

 

凪「そ、そうですか………。 でも、とても良い感じの姿勢でした!」

 

ーーー

 

愛紗「で、では……飴を……投げたのは……其方の宝譿サン……が?」

 

宝譿「俺じゃないぜぇ? 風の術は俺が解いたから……あの時には自由に動けた筈だなんだが………。 それからさぁ……俺、そんなに怖いのかぁ?」

 

愛紗「────ッ!」ブルブルブル

 

稟「では………風?」

 

風「風は口で飛ばしてなんかいませんもぉん! 手で投げたのです! 嘘は言ってませんからー! 事実だけを語ったのに、信じないアイツが悪いのですー!! まぁ……勿論、口実ですけどね~!!」

 

『はぁ……………………………』

 

 

★★☆

 

光秀「─────于吉はどこに行きましたか!?」

 

凪「辺りの氣を探って見ましたが……見当たりません! どこかに逃走したようです!!」

 

鹿介「天城殿の容態が悪くなっています! 早く医者に診せたいのですが……この場所では!!」

 

颯馬「ぐぅ! うぐぅ!!!」

 

小太郎「そ、颯馬様ぁ!! しっかり!! しっかりして下さい!!!」

 

悲嘆に暮れる御遣い勢! 

 

そんな中………あの男が現れた!!

 

 

───────「待たせたな!!!」ザッ!

 

 

光秀「貴方は………!!」

 

華佗「もう大丈夫だ! 颯馬の事は俺に任せろ!! 親友の重大な危機! この俺がぁみすみす見逃すなんかしないぜぇ!! 必ず助けてみせる!!」

 

華佗が現れて颯馬の身体を診察する。 

 

華佗「───ッ! 酷い怪我だ!! 重要な器官、大小の気脈血脈……全部綺麗に逸れているが……出血の量と元々の身体が弱っていた事もある! 早急に手術が必要だ! しかし、今の颯馬では手術に耐えられないかもしれない!」

 

光秀「私の命が必要でしたら──何時でも差し上げます! だから──颯馬を! 颯馬を!!」

 

小太郎「光秀様ばかり良い格好させるなど反対ですぅ!! 私の命を代わりに!!!」

 

鹿介「止めて下さい二人共! 貴女方には家族も仲間がいます! その役目は私が受けましょう! 将ならば……戦場での死は付き物! 愛しき者の為に使われるなら……某も満足して逝けます!!」

 

華佗「盛り上がっているところを悪いのだが……軽く氣を注入するだけで大丈夫だ。 勿論、命を救うのに別の命奪うなど、医者としての矜持に反する!」

 

 

『////////////////』

 

 

華佗「邪魔が入らないよう周りを囲んでくれ! 集中力がいるんだ! 颯馬の生命を助けたいなら、静かに見張りを頼む!!」

 

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

宝譿の件は……大分前に設定していまして、作品にも出ています。 決して中途半端に出した設定では無い事を申し上げます。

 

その作品は雷雨の章 その壱、その弐にを見ていただければ。

 

話も少しずつ……終わりに向かっています。

 

また、宜しくは読んで下さい!!

 

 


 
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