「天神元へと 至る細道―――」
華麗に舞い踊る葵・泉美。そんな彼女の周囲には無数の鳥居型紋様が出現し、モンスター達の攻撃を何一つ通さない。誰もが、高嶺の花を摘み取る事を出来ずにいるのだ。
「おいおい、凄ぇ数の紋様だな……一体何の能力だ…?」
「うっはぁ~美しい、美し過ぎる!! こんなにも素晴らしき女性が、まだこの世には存在し続けていたというのかぁ…!!」
「…で、このアホはいつも通りかい」
「あだっ!?」
離れた位置から葵の踊りを見ていたmiriは不思議そうに眺めつつ未だ見惚れている蒼崎を蹴り飛ばし、何処からか一丁の対物ライフルを取り出して構える。
「何にせよ、防ぐだけじゃどうしようもねぇだろうしな……おい蒼崎、助太刀に行くぞ」
「ラジャー!!」
「そこだけ無駄に元気だな…っと!!」
-ズドォォンッ!!-
『ピギャアッ!?』
(! あら…)
「あれ? 対物ライフルって伏せ撃ちする武器なんじゃ…」
「気にすんな。別に伏せなきゃ使えないって訳じゃねぇんだ」
早速miriの対物ライフルが火を噴き、葵に襲い掛かろうとしていたバジリスクの頭部を跡形も無く木端微塵に吹き飛ばす。それによりモンスター達の注意がmiriに向けられ、一部のモンスターが葵からmiriへと狙いを変更して襲い掛かる。
「おうおう、来やがったぜ……蒼崎ッ!!」
「OK、お任せあれ! シュベル!」
≪Yes≫
「吹っ飛べファイヤァァァァァァァァッ!!!」
『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』』』
「ちょ、待て俺も巻き込まれ…ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
(ふ~ん…♪)
バリアジャケットを纏った蒼崎は手元に大型ミサイル砲を出現させ、そこら中に手当たり次第ミサイルをぶちかまし始めた。その所為でモンスター達だけでなくmiriも危うく巻き込まれそうになり、葵は鳥居型紋様によって爆風から守られる中で二人を興味深そうに眺める。
「たく、俺まで巻き込もうとしやがってアホめ…!!」
『グルァッ!!』
「うるさい寄るな死ねゴラァッ!!!」
『ガァァァァァァァァァッ!?』
「そぉれ吹っ飛べー!!」
『『『ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』
miriは飛びかかって来たベヒーモスの腹部に対物ライフルを突きつけ、そのままゼロ距離でベヒーモスの腹部を撃ち抜き粉砕。蒼崎はバインドで捕縛したゴブリン達を巨大ハンマーで順番に殴り飛ばす。そうしている内にモンスターの数はどんどん減っていき、残るはケルベロス一体のみとなる。
『『『グルルルル…!!』』』
「さて。かかって来な、犬ッコロ」
『『『グルァァァァァァァァァッ!!!』』』
miriの挑発に乗ったのか、ケルベロスは三つ首が同時に牙を剥け、miriに飛びかかろうとしたその時…
-ガギイィンッ!!-
『『『グガァ…!?』』』
「お?」
「~♪」
ケルベロスの三つ首が、miriの目の前に出現した鳥居型紋様に衝突。miriが振り向いた先では、フラフラ揺れる形で踊りながら二人を面白そうに眺めている葵の姿があった。
「やれやれ、親切なこって…」
「そぉい!!」
『『『グガァァァァァァァッ!!?』』』
怯んだケルベロスの三つ首に蒼崎がハンマーでそれぞれ一撃加え、ケルベロスの巨体がその場にドズンと音を立てて倒れる。それによりモンスター達は全滅し、miriは対物ライフルをしまい、葵の下まで駆け寄る。
「うふふ……あなた達、なかなか面白味があるわね。おかげで少しだけ楽しませて貰ったわ。そうね、三流エロゲーよりも少し上くらいかしら?」
「おいおい、いきなり凄ぇ事ぶっちゃけやがったな……まぁ良い。俺はユージン・S・スズキ、んでそこの女好きな馬鹿が…」
「蒼崎夜深と申します!! あなたの美しさに惚れました、付き合って下さい!!」
「やっぱストレートだなオイ!?」
葵と会話し始めた途端、miriそっちのけで葵に告白し出した蒼崎。想像以上の行動の早さにmiriが呆れて物も言えない中、蒼崎は葵の手を優しく握ろうと近付くが…
「―――あ、あれ?」
「…!」
葵に触れようとした途端、蒼崎の目の前から葵の姿が消えた。いきなりの事態に戸惑う蒼崎だったが、気付くと葵は蒼崎の真後ろにまで移動していた。
「無粋ねぇ…? 出会ったばかりの女の子に対して、いきなり告白するなんて。愚民の一人であるあなたが高貴な私に触れようだなんて、一万年と二千年早いわ!」
(何で一万年と二千年に分けてんだ…?)
「でもその果敢な態度に敬意を称して、リボン一つ分くらいは認めてあ・げ・る♪ もし、受け入れて欲しいならお座りなさい!ステイよステイ!」
「イエッサー!!」
「お前も座んなよ!?」
葵の言葉に釣られ、命令通りに犬のようにお座りし始めた蒼崎。miriから見て、今の蒼崎の姿は次の命令を待っている子犬のようだった。しかし、葵の口から告げられる言葉は命令ではなかった。
「うふふ、座ったわね? 今座ったわね! 私は人の言うことをホイホイ聞く、調教され尽くしたメス犬みたいな人は嫌いなの! だからお断りだわ! それに見たところ、あなた夜に踊ってそうじゃない? 私は一途な方が好きなの! 自分がベットの上で踊る分には全然構わないけどね!」
「ガーン…!!」
「おぉ、蒼崎を撃沈させるとは…」
葵から告げられた辛辣な言葉に、蒼崎はあえなく撃沈。葵は言いたい事を一通り言い終わった後、今度は蒼崎からmiriの方へと視線を向ける。
「それにしても、あなた達もいろんな意味で不思議ね? どうしてこんな場所にいるのか気になるけどまぁ良いわ。どうする? 私があなた達を守ってあげても良いわよ?」
「…まぁ、その親切は非常に嬉しいぜ。ただ」
miriは一本のナイフを取り出し…
『グギャッ!?』
「…あら」
葵の後方で起き上がろうとしていたゴブリンの首元に、見事命中させてみせた。ナイフで貫かれたゴブリンは今度こそ息絶える。
「遠慮しておくぜ。自分の身くらい、自分で守れないでどうするよ?」
「ふふふ♪ 自分の事は自分でって考えは素敵よ。でもね、一人で何かを為したいのなら、誰かと一緒にいた方が楽だと思うわ。私は攻撃手段ない訳だし、レジスタンスには満足な防御手段が無い訳でしょう? プラマイ0、お互い助け合って行きましょう!」
「お、おう…」
「あら、話がずれたわね。自己完結は良いけど見たところ、迷子になってこんなモンスターだらけの巣の中に入っちゃったのでしょう?それを想定しなかったのがダメね、点数で言えば72点くらいかしら?」
「うぐ……まぁ、そこの馬鹿に道案内を任せた俺が馬鹿だったがよ」
「うぅぅ……一途じゃないと駄目なのか、駄目なのかぁ…」
そんな蒼崎は、今も体操座りのままへの字を書いて落ち込んでいる真っ最中である。
「…まぁそれはそうとだ。俺もあんたに色々と聞きたい事があるんだが、良いか?」
「あら、素直に聞くのね。もっとぶっきらぼうな人かと思ってたけれど、割と典型的なヤサヤンね! もう少し捻りなさいな! 今時の少女漫画でもそんなにベタなキャラはいないわよ!? ベッタベタね! チョコレートか何かじゃないの!?」
「お菓子扱いか俺は!?」
「でも良いわ、そのベッタベタなキャラに免じて答えてあげる! さぁ、何について教えて欲しいのかしら?」
(あぁ、色んな意味で濃過ぎるのに出くわしちまったな俺…)
miriは若干面倒臭そうな表情をしつつ、すぐに表情を切り替えてから葵に問いかける。
「まずはこの世界の現状だ。何が起こっているのか、それを簡単にでも良いから知っておきたい」
「本当に素直過ぎるわねぇ…まぁ良いわ。今この世界は、さっきみたいなモンスター達によって侵略されているの。おかげでこの世界で暮らしていた人達は皆、地下に身を隠す羽目になったわ」
「! なら、管理局も…」
「そう、既に壊滅している。上層部から真っ先に潰されて、前線で戦っていた魔導師もたくさん死んだわ」
「なるほどな、やっぱそんなところか(だとすりゃ、この世界にマウザーのクソッタレ野郎は…)」
復讐の対象がいないかも知れない事に複雑な表情を浮かべるも、すぐにその表情を隠して更に問いかける。
「さっきあんたが言ってた、レジスタンスとかいうのは今何処に?」
「言ったでしょう? 地下に隠れたまま、2年間ずっとこんな状態よ。昔通りの生活なんて、まともに過ごせる状態じゃないわ」
「知ってるなら案内してくれ。俺達もまずはやらなきゃならない事がある…えっと…」
「あら、名前が知りたいのかしら? 良いわ、名乗っておきましょう」
「葵・泉美、それが孤独で素敵な私の名前よ。しっかり覚えておきなさい!」
一方、レジスタンスのアジトでは…
「クソが…クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ちょ、あんた落ち着いて…ギャーッ!?」
「班長ー!?」
「おい、鎮静剤と麻酔を持って来い!! 少量じゃ明らかに足りん!!」
「わ、分かってま…ゴブゥッ!?」
傷だらけのところを回収された魔導師―――二百式は“無の反響”の影響もあるのか、今までに無いほど凄まじい荒れ方をしていた。怒りのままに椅子や机を破壊し、医療器具は無残に床に散らばり、取り押さえようとする医療班の面々は次々と被害を被っており、医療室は悲惨な状況になっていた。
「ふざけるな……ふざけるなよ……モンスター如きが、俺をコケにしやがって…!!」
何故彼がここまで荒れているのか?
それは、数時間前まで遡る…
「飛べ、地走り!!」
『む…!!』
無人のコロシアムにて、戦闘を繰り広げていた二百式とデュラハン。二百式は戦闘開始直後から様々な攻撃を繰り出すも、デュラハンはそれらの攻撃を全て剣一本で的確に防御してみせる。
『どうした? 貴様の実力は、こんな物ではない筈だ』
「チッ嘗めやがって…これならどうだ!!」
二百式の太刀が斬撃を飛ばすも、デュラハンは焦る事なく静かに剣を構え…
『フンッ!!』
「な、く…!?」
二百式が繰り出した物以上に巨大な斬撃を放ち、お互いの斬撃が相殺されて爆発。爆風で周囲が見えなくなる中で二百式は周囲を警戒し、太刀を鞘に納め居合いの構えに入る。爆風が晴れる中から、同じく居合いの構えに入っているデュラハンの姿が見えてきた。
「!? お前も居合いの構えを…」
『ほう、居合いを心得ているか。これは何という運命の巡り合わせか…』
「上等だ……俺が勝つ…!!」
『面白い、かかって来るが良い』
両者共に居合いの構えに入り、その場の空気が数秒間静かになる。そんな中、先に動いたのは…
「―――飛燕!!」
『…!!』
二百式だった。素早く太刀を抜き、突き、切り払い、振り下ろしと連続でデュラハンを攻撃する。が、その時だった。
「これで…ッ!?」
突如、二百式の腹部を苦痛が襲った。それにより二百式の動きが鈍り、その隙をデュラハンは見逃さなかった。
『そこ!!』
「ぐぅっ!?」
二百式の太刀が真上へと弾かれ、そのまま近くの地面に突き刺さる。素手の状態に追い込まれた二百式の首元にはデュラハンの剣が突きつけられる。
「俺の負け、か……すまない、はやて…」
二百式は膝を突き、両手を挙げて降参の構えを取る。そんな中、デュラハンはある事に気付いた。
『…一つ聞かせろ』
「…何だ」
『貴様、その傷はどうした?』
デュラハンに問われた二百式が自身の腹部に目をやると、腹部からは出血によって赤く大きなシミが出来てしまっていた。二百式は痛む腹部を右手で押さえる。
「貴様には関係ない……さぁ、斬るなら真正面から斬ってくれ。背中の傷は誰かを守った時か、敵から逃げた時の傷だ」
『…諦めるというのか?』
「俺は彼女の為に何もしてやれなかった、それだけの事だ……さぁ、早くトドメを刺せ」
『……』
二百式は目を瞑り、自身の身体が斬り裂かれるのを待つ。しかしそんな彼の意思に反して、デュラハンは剣を上げたまま振り下ろそうとしない。
「…どうした? 早くやれ。俺はそこまでの男だっただけの事だ」
『……』
するとデュラハンは振り上げた剣を下ろし、鞘に剣を納めたまま何処かに立ち去ろうとし始めた。これには二百式も驚き、彼を引き留める。
「おい待て!! 何故トドメを刺さない!? 情けをかけるな!!」
『分からないか?』
立ち去ろうとしていたデュラハンが振り返る。
『貴様は力が強くとも、精神が弱かった。それだけの事だ』
デュラハンが淡々と告げる言葉。その言葉に、二百式の中の感情が怒りに変わった。
「…ふざけるなぁっ!!! ならば俺は自分の意思で死を選ぶ!! 貴様などに分かるものか!! この俺の覚悟がぁ!!!」
二百式は服の袖からクナイを取り出し、すぐさまそれを自身の胸部目掛けて突き立てようとする。しかしその瞬間、デュラハンが一瞬で二百式の目の前まで接近し、剣で彼のクナイを遠くまで弾き飛ばす。
『その程度で諦めるのであれば、私が貴様と戦った意味も無い』
「何ぃ…!!」
『今の貴様には死ぬ価値すら無いと、そこまで言わないと分からんか?』
「貴様…ッ!? ぐ、がはっ!!」
何かを言おうとした二百式だったが、限界を超えてしまったのか彼の口から多量の血が噴き出した。
「げほ、ごほ…!! くそ……俺、は…」
二百式はその場に倒れたまま意識を失い、デュラハンは剣を鞘に納めてから彼を見下ろす。
『…貴様はまだまだ強くなる。このようなところで、諦める事などしてくれるな』
それだけ告げてから、デュラハンは無人コロシアムから姿を消す。その数時間後、生存者の捜索を行っていたレジスタンスの魔導師達によってアジトまで回収される事となるのだった。
そして、現在に至る。
「あの野郎、俺に情けを掛けやがって…!! 覚悟が無いだと? ふざけた事を抜かしやがって!! クソがクソがクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「お、落ち着いて下さい!! そんなに暴れたら傷が…」
「あぁ!? 誰に指図してやがる、雑魚の分際でぇっ!!」
「げふっ!?」
取り押さえようとした医療班の男性の顔面を殴るだけでなく、医療室の壁にも大きな壁が出来るくらい殴りつけるなど、今の二百式は医療班の面々ではとても止められそうにはなかった。そんな中、レイモンズに連れられたロキとBlazが到着する。
「うわ、やっぱりか…」
「む、知り合いかい?」
「あぁ~知り合いっちゃ知り合いなんだが……うん、色々すまん」
「このままじゃ色々マズいな。ひとまず、俺が止めて来よう」
目の前の惨状を見て、流石のロキとBlazも頭を抱えずにはいられなかった。このまま何時までも放置してはレジスタンスの面々に迷惑だろうと思い、ロキが二百式を止めようと一歩踏み出そうとする。しかし…
「どいてろ」
「ん?」
そんなロキを、横から割って入って来たスキンヘッドの男が手で制止する。スキンヘッドの男はロキをその場に制止させてから、拳をパキポキ鳴らしつつ暴れている二百式の下まで移動する。
「お、おい!? 危ねぇぞ…」
「いや、彼なら大丈夫だ」
「へ?」
思わずロキとBlazが引き止めようとするが、レイモンズは何も問題ないかのように二人を止める。これにはロキとBlazも思わず眉を顰める。
「潰す!! 潰す!! 何が何でも潰してやる!! 刺し違えてでも奴をこの手で潰してやる!!」
そんな中でも未だ暴れ続ける二百式。そんな彼の後ろから伸びた手が、彼の肩をポンポンと叩く。
「あぁ!? 雑魚が指図するなと言っ―――」
-ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!-
「―――ッ…!?」
一瞬だった。振り返った二百式の顔面に固い拳を炸裂させ、そのまま床に薙ぎ倒す形で叩き潰したのだ。二百式は陥没した床に埋まり、スキンヘッドの男は両手をパンパンと払う。
「すまなかったね、ダニー」
「これくらいはどうって事ない。この手のタイプは、こうでもしなきゃ聞かんからな」
スキンヘッドの男―――ダニーの行動を見たBlazは呆然とした表情になり、ロキは興味深そうな視線をダニーに向けていた。
「おいおい、マジかよ…」
「暴走していた二百式を簡単に止めるか……どうやらこのレジスタンスも、それなりに強豪揃いのようだな」
ニヤリと笑みを浮かべながら、ロキは小さく呟く。
その時…
「はぁ~い♪ お待たせレイモンズ……って、あら? 何かしらこの状況」
「ん……ロキ、Blaz!?」
「あ、ヤッホー二人共」
「「miri、それに蒼崎!?」」
そこにタイミング良く葵も帰って来たようで、ちょうどmiriと蒼崎の二人もロキ達と合流を果たすのだった。
場所は変わり、とある森の中の洞窟…
『ウフフフフ…♪』
『あは、人間だ人間だ、キャハハハハハ♪』
『おやおや、また妙な力を持った人間を捕まえて来たねぇアラクネ』
『繁殖に役立てると思った、それだけ』
『へぇ、可愛らしい顔してるじゃないの』
「…あれ、何この状況」
アラクネに持ち帰られたばかりのUnknownは、女性モンスター達に取り囲まれていた。彼の四肢は地面に寝かされたままアラクネの蜘蛛の糸で拘束されており、女性モンスター達も明らかに彼を逃がしてくれそうな雰囲気ではない。
『ふ~ん、この子がそうって訳? アラクネも良い男を捕まえて来たじゃない』
そんな中、この女性モンスター達のリーダー格と思われるサキュバスがUnknownの前に姿を見せる。黒いボンテージに身を包んだ青肌の彼女はUnknownの上に跨り、獲物を見つけた肉食動物の如く舌舐めずりをする。
「…えぇっと、取り敢えず説明して欲しい。何故私はここに捕らえられている?」
『答えは簡単よ。あなたのような強い力を持った男は、私達ヴァリアントが繁殖を行うのにとてもちょうど良い逸材なの。そんな男を捕まえた以上、何もしないままあなたを解放する訳が無いでしょう?』
「という事は……やっぱり、ヤんなきゃ駄目?」
『えぇ、ヤんなきゃ駄目ね』
「際ですか……って、ちょお!?」
それだけ言って、サキュバスはUnknownの身に纏っている巫女服を爪でビリビリに引き裂き始めた。これには流石のUnknownも焦り出す。
「ちょ、ちょい待ち!! そういうのはあれだろ!? ちゃんとそれに至るまでに必要な段階を踏んでからヤるべきであって―――」
『今更逃げようとしても駄目よ? あなたにはこれから、全員分の相手をして貰うんだから』
「いやだから…うぶっ!?」
Unknownの顔面に、サキュバスの豊満な胸が押し付けられる。
『観念しなさい。大丈夫よ? これからやるのは、とぉ~っても気持ち良い事だ・か・ら☆』
「んん!! んん……ぷはっ!? えぇい、良いから離せ!! じゃないと―――」
『じゃないと何かしら?』
「ッ!?」
抵抗しようとしたUnknownだったが、サキュバスが彼のナニを直接握る事でそれを制止する。
「く…!!」
『さぁ、坊や……一緒に楽しみましょ?』
『子作り子作り、キャハハハハ♪』
『精気を寄越せー!!』
Unknownの頬を一舐めしてから、サキュバスは妖艶な笑みを浮かべてから行為を開始する。それと同時に他の女性モンスター達も次々と彼に襲い掛かる。
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
その後、洞窟からは男の娘の断末魔が響き渡り続けるのだった。
また、別の場所では…
「…あれ~?」
またしても咲良が迷子になってしまっていた。
『うぉい、今回も俺達はこんな状況なのか…!!』
『本当、デジャヴを感じるわね…』
『くそ!! 本当に何処なんだここは!!』
『う~ん、誰もいない~』
『確かに妙だよね。確かミッドチルダって、前に来た時はこんな状態じゃなかった筈だけど…』
それぞれ手か足の状態となっているグリード達も、ここが自分達の知るミッドチルダではない事は薄々気付いてはいた。しかしその推測通りだと確定出来るような情報が全く無い為、こうして咲良を連れて街中を歩き続けているのだ。
「うぅ~…足が疲れたぁ~…」
『アンク、少し休憩しましょう? 少し咲良ちゃんを休ませてあげなきゃ』
『…チッ、仕方ない』
足が疲れた咲良の為、しばらく休憩を取る事になった六人(?)。そんな時だ。
『…ん? 誰か来るよ?』
『何、本当かカザリ!!』
カザリが何かの気配を感じ取り、ウヴァ達も警戒する。すると何かが猛スピードで走って来るような音が聞こえ始め、何かが咲良達のいる場所まで近付いて来た。
『! あれは…』
「―――あ、見つけた!」
バリアジャケットに身を包んだ青髪の少女は咲良達の前で急ブレーキをかけるも、すぐには止まれず「うわわわわ!!」と慌てながら瓦礫に中に突っ込み、そしてすぐに瓦礫の中から飛び出す。その少女の顔を見てアンク達は驚愕する。
(コイツ、確か機動六課の…!?)
アンク達はすぐにメダルの山へと変化し、咲良の中に吸収される形で身を隠す。そのおかげで少女には気付かれなかったようだ。
「痛たたた…またブレーキ失敗しちゃった」
「スバル!!」
そこにオレンジ髪の少女も駆けつけて来た。
「馬鹿スバル、一人で先々進むなっていつも言ってるでしょうが!!」
「あうぅ、ごめんティア…」
「全く……スバル、その子は?」
「あ、うん、ちょうど見つけたところなんだ。ねぇ、君一人? お父さんやお母さんは?」
「ふみゅ? えっと…お兄ちゃん探してるの!」
「お兄ちゃんがいるの? 分かった、私達が探してあげる!」
「あなた、名前は?」
「ふゆ? 咲良だよ!」
「咲良…うん、可愛い名前だね! 私はスバルだよ」
「アタシはティアナ。よろしくね、咲良ちゃん」
こうして咲良は、この世界のスバル・ナカジマとティアナ・ランスターによって保護される事となる。
そして、別の場所でも…
「「そぉいっ!!!」」
「フン!!」
『ギャォォォォォォォォォォォンッ!?』
朱音と瑞希の二人がトロルに強烈な蹴りを喰らわせ、イーラを構えたawsが蹴り飛ばされて来たトロルを一瞬にして細切れにしてみせた。awsはイーラを待機状態に戻してから、トロルに襲われかけていた少年と少女の下まで歩み寄る。
「さて…君達、怪我は無いか?」
「え、あ…」
「えっと、大丈夫…です」
「そうか、それなら良かっ…た…」
少年と少女の顔を見て、awsは言葉に詰まりかけた。何故なら、三人が助けたその少年と少女は…
「あ、ありがとうございます! 僕、エリオ・モンディアルと言います!」
「キャロ・ル・ルシエです! 助けてくれて、ありがとうございます!」
あの機動六課の一員である、エリオとキャロだったのだから。
更に…
「…ふむ、これまた面白い状況ですね」
「アル…?」
竜神丸とキーラの二人も、ある人物達と遭遇していた。その人物達とは他でもない…
「良かった、生存者を見つけた!」
「私達はレジスタンスの魔導師です、もう大丈夫ですよ!」
フェイト・T・ハラオウン、そして高町なのはの二人だった。
(さて、これまた面白くなってきましたね…)
そう考えつつ、竜神丸が密かに笑みを浮かべたのは言うまでもないだろう。
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