No.729606

『舞い踊る季節の中で』 第152話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 一刀の力になりたい。そう想い剣を振るい続ける蓮華の前に強力な壁が立ちふさがる。
 それは王としても乗り越えなければならない壁。
 蓮華はその壁を乗り越える事が出来るのか……。

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2014-10-12 20:00:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3365   閲覧ユーザー数:2715

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割編-

   第百伍拾弐話 ~伸びゆく芽は、今にも咲かんとする蓮の華~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、初級医術

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

        

 

 

 

 

蓮華(孫権)視点:

 

 

 しゅっ

 …壱。

 

 ざっ、ぎんっ!

 …弐。

 

 ふぉんっ! ぎゃりぃりっ!

 …参。

 

 今っ!

 子供の頭くらいはある巨大な珠の攻撃を剣の腹で受けきると共に、軽く痺れる手を無理やり無視して地面を蹴る。

 連続攻撃後の一瞬の硬直を突いて、一気に自分の間合いに入り込むと同時に斜め下からすくい上げるかのような一撃を!

 

 がっ!

 「くぅ!」

 

 だが別の珠が剣の腹を叩き。更に別の珠が間を空けずに私の頭を襲いくる。

 剣を振るった勢いを利用して上体を更に起こす事で、数本の髪を犠牲にしただけで何とかその攻撃を躱しきったものの姿勢が崩れたため、そのまま崩れる勢いのままに後ろへと飛びすさる。

 紐で繋がれた巨大な鈴の形をした珠(アメリカンクラッカー)を左右に二つ、合わせて四つの珠が彼女……張楊の持つ獲物。

 今は右手の二つを紐の真ん中を持って縦に回し、左手で珠の一つを掴んで盾とする彼女の基本の構え。

 巫山戯た外観の割に、思った以上に厄介な獲物ね。 縄の両端に石を付けた鳥を取る道具をそのまま巨大にしたようなその得物だけど、櫻(凌統)の双節棍(ヌンチャク)とは別の厄介な動きだわ。

 でも、だいたいの癖は掴めてこれたわ。 連続した攻撃回数は三回から五回。いずれもその回数で一度攻撃を収めるか、左右の珠を入れ替える。そのいずれも足元に掛かる重心が僅かに変化している。

 今もその隙をついたのだけど、防がれた。 ……でも、逆に言えば、連続攻撃の後にはあれだけの間が開くと言う訳ね。

 

ふぉんっ

びゅんっ

 

 身体を左右に揺らし珠を躱しながら考える。

 狙うならば、最大攻撃回数である五連続攻撃の直後。

 その後に必ず先程以上の隙が生まれるはず。

 

しゅっ

しゅんっ!

 

 四回、そして…。

 

びゅっ

 

 いまっ!

 ぞくりっ!

 狙いすました瞬間と共に地面を蹴ろうとした時、背筋に悪寒が走る。

 

びゅおっ!

がちんっ!

 

 同時に、私が突っ込もうとした先に張楊の珠が上下から襲い。互いの珠がぶつかり合って、再び張楊の手元に戻って行く。

 今のは、間違いなく突っ込んでいれば、頭を潰されていた。

 私の動きを止めてくれたのは、……勘、と思えれば嬉しいが、あいにく私には姉様のような天武の才は無い。その事は十分に自覚している。

 だから今私の足を引き留めたのは、張楊の瞳。

 彼女の瞳の奥に映る灯が、私の足を前に行かせるのを戸惑わせたのだ。

 霞に、思春に、そして多くの仲間に鍛えられた眼が私の命を救ってくれた。

 

「残念です。突っ込んで来て下されていれば終わっていましたのに」

 

 珠の片方をちりんちりんと鳴らしながら、張楊は自愛に似た笑みを浮かべたまま私を挑発してくる。その視線の先を私の腰へと向けて。

 腰に付けた南海覇王。鍛錬用の剣では無く、それを抜かねば私に勝機は無いと。

 

 ふっ。

 

 その態度に自然と笑みが浮かぶ。

 怒りでも自嘲でもなく、獰猛な笑みを。

 自分でもこんな笑みが浮かぶだなんて思わなかった。

 私は姉様のようにはなれない。むろん母様のようになどとてもなれないと思っていた。

 新たな自分の発見。でも同時にそれが姉様達とは全く別の笑みだと言う事を、冴えて行く頭が教えてくれる。

 

「はっ、なめられたものだな」

 

 自然と出る言葉に、張楊の美しい表情から僅かに苛立ちに崩れる。

 それはそうだろう。その言葉は張楊達こそが放ちたい言葉。本来ならば神聖なる戦場に置いて鍛錬用の剣を持ち込む我等こそ非難されるべきもの。

 ましてや、今しがた命を落としそうになった私が放つべき言葉では無いのかもしれない。

 それでも………。

 

「本物の剣を持たないからといって、本気では無い等と捉えられるとはな」

 

 そう言わざる得ない。

 張楊達が、如何にこの戦に賭けているかは想像がつく。

 だがそれは我等も同じ事。

 こんな所で躓く訳にはいかない。

 なにより、この戦は一刀の戦。

 我等を助け、そして導いてくれた一刀の戦。

 その戦を遊びなどと、思われる訳にはいかない。

 我等孫呉が全てを掛けて、一刀の恩義に報いようをするこの戦を、

 手を抜いているなど、間違っても思わせない。

 

 

 

 

「ねぇ、蓮華。まだ決着つかないの?」

「……ぐぅ」

 

 だと言うのに、呑気な声が後ろから聞こえてくる。

 顔を見なくても、その声だけでも誰なのか分かる。

 いや、例え声など解らなくても、このような時にそんなあっけらかんとした呑気な言葉を掛けてくる巫山戯た人間など、姉様以外に誰がいると言うのだ。

 大方とっくに姉様の相手を気絶させて、のんびり高みの見学をしていたと言う所なのでしょうけど、少しは空気と言うものを読んでほしい。これでは我等が手を抜いていると思われても仕方ないではありませぬか。

 もっとも姉様が自分の相手を倒した後も、そうしてのんびりしているのは、他の人間の闘いの邪魔をしたくないと言うのもあるが、それ以上に無駄な体力を使いたくないと言うが本当の所だと分かる。

 それほどまでに義姉様の体力は以前に比べて低下している。そしてその体力も、いざとなったら呂布に向ける為に温存しているに違いない。

 

「まぁいいわ。私はちょっと一刀の方に行ってくるわ」

「姉様っ!」

「別に心配しなくても、一刀の邪魔はしないわよ。朱然の方がちょっとヤバそうなんで手助けしてくるだけ」

「姉様は今は私の下で動く一般兵としての参戦しているはず。そのお約束を忘れたわけではないでしょうな」

「あら、心外ね。しっかりと覚えているわよ。

 だから命じてくれないの? 一刀の邪魔をしそうな部隊を抑える手助けに行って来いって」

 

 くっ。まったく、いつもいつものらりくらりと。

 だいたいそんなふうに言われたら、私に否と言えるわけないと分かっていてそう言う事を言う。

 そして今回も……。

 

「分かりました。姉様は朱然の部隊に合流。敵部隊の足止め(・・・)を」

「さっすが可愛い妹。 愛しているわよ」

 

 まったく、調子の良い。

 

「ただし、呂布には絶対手を出さない事、此れは王としての厳命です」

「はいはい、分かってるわよ。出来る限り守ってみせるわ」

「姉様っ!」

「あっ、そうそう蓮華。貴女の相手、今の貴女にはちょうどいい相手よ。

 貴女がこれからも王として歩むつもりならば、何としても一刀との約束を果たしてみせなさい」

 

 人の話など碌に聞かずに、相変わらず自分勝手な事ばかり言って駆けだす姉様を背中で見送りながら、あらためて張楊と相対する。

 ちょうどいい相手とは姉様も言ってくれる。間違いなく張楊は私より遥かに各上の相手。

 だけど、姉様がああいうのだ、決して届かせれない相手では無いと言う事。

 そして王ならばこれくらいの無理を通すだけの道を、自分の力で見つけてみせろと言う事なのだろう。

 

「待たせたな」

「構いません。これも戦人としての礼儀。

 ただし、これからは全力を出させてもらいます」

 

 姉様との会話の間、一度も攻撃をする素振りすら見せずに、律義に待ってくれた相手に私は心から感謝をするも、それは同時に相手の強さを表すもの。 此処で相手に呑まれれば呑み込まれるのは此方。けっして今のような隙を見せるわけないは行かない。

 

「はぁぁぁぁーーーーっ」

 

 静かに気勢を上げて行く。

 深く、ゆっくりと。

 決して必要以上に上げ過ぎない事。

 思春に何度も窘められた事は、今や体に染みつくまでに至っている。

 以前の私では力と速さが上がっても、その力を扱いきれずに動きが単純化し読み易くなってしまうだけだと。

 霞にも同じ事を言われたわ。そこに野性的な動きと天性の勘を織り交ぜれる姉様ならともかく、私には向かない戦い方だと。

 だから私は私の戦い方をするだけ。

 先程の見つけた新たな自分を思い出しながら、その域に自らの意志で持って行く。

 

「いくぞっ」

 

 今度は自ら前に出る。

 もともと、間合いは向こうの方が上。ならばこちらから出向かねば勝機はない。

 獲物は相変わらず鍛錬用の模擬剣。南海覇王は必要ない……というか、この相手には模擬剣の方が有利。

 刃も無く、斬る事も叶わぬ模擬剣だが、南海覇王より優れた物がある。

 

ぎんっ!

がっ

 

 左からの重い攻撃を剣の腹で受け止め弾きながら、右からの攻撃を体術で避わす。

 無茶な体勢になる身体を一気に沈ませて、張楊の足を払い……を後ろに飛びすさり躱される事で、又もや間合いはふりだしもどる。

 模擬剣の強み。それは強度だけなら剣に厚みがあるぶん南海覇王より勝り、またその重さも本物より増している。

 張楊のような鈍器の類を得物を相手にした場合。これはただの剣を持つより強みなる。

 模擬剣では斬る事は出来ないが突く事は出来る。どうせ私の腕では張楊ほどの敵を相手に、珠と珠を繋ぐ紐を斬る事などできやしない。

 もっとも、あれだけの重さの珠を繋ぎ止めている以上、おそらく縄の中に鋼線も含まれているに決まっていだろうから、どちらにしろ今の私の腕では、南海覇王では刃を欠けさせるか砕かれる可能性が高いだけ。

 

「なるほど、右利きでは無く最初から両利きだったと言う事か。

 左右を使い分けての攻撃では無く、重心を僅かに左右に入れ替えるだけで、先程まで以上の連続攻撃が可能と」

「相手の実力を見ていたのは、貴女だけではないと言うだけの事です」

 

 なるほど、得物は違えど戦い方も似ていると言う事か。

 まったく姉様といい、一刀といい、人の前に気軽に大きな壁を置いてくれる。……が、泣き言など言う訳にもいかない。そんなものなど最初から湧きやしない。代わりに脳裏に浮かぶのは毒矢に倒れた時の姉様の姿。そして目の下を隈を作ったまま静かに狂って行く一刀の姿。なにより悪政に苦しむ民の姿。

 ああ、弱気など湧く訳がない。

 

「もう一度だけ言います。

 腰の剣を抜かれてはいかがですか」

 

 だから分かる。

 張楊は私をなめているのではなく、促しているのだと。

 私の全てを持ってかかって来いと。くだらぬ縛りなどで実力を抑えていては自分に勝てやしないと。

 

「ああ、そうさせてもらおう」

「………」

 

 私の言葉に眉を顰める張楊。

 悲しげに、そして受け入れた表情でもって、私を潰すこと決意する。

 来る。張楊の本気が。だが、それは張楊の本来の動き。

 そうでなければ意味がない。

 そうでなければ勝ち目などない。

 速さも、力も、癖も全て覚え直しだ。

 

ぎちちっ

ぎゃりっ

 

 左右から四つの珠が僅かにずらして攻撃がせまる。

 くぅ、速いっ。だが左右同時の分、一撃一撃の重みは先程より軽い。

 

ぎぎんっ

 

 そのかわり手首の捻り一つで、珠と珠をぶつけあって攻撃の軌道を変えてくられるのは厄介だが。

 

がっごつ

ぎぎんっ

 

 しかし、これなら十分に防げる。

 左手に模擬剣。そして右手に鞘に収めたままの南海覇王。

 左右に其々握った得物が張楊の攻撃を悉く防ぎ、そして弾く。

 より頑丈な鞘に収めたまま使う事で、私の未熟な腕で南海覇王を折られる事も無い。

 此れならば、張楊の攻撃になんとか対応できる。

 だが、それだけだ。勝機はまだ見えない。

 これからだ、これから見つけて行くのだ。

 ああ、この(いくさ)が一刀の(いくさ)ならば、この闘いは私の闘いだ。

 私がこれから王であるために、あらゆる困難に立ち向かうための力を手にするための闘い。

 一刀と姉様の隣に立つための闘いの一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 


 
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