No.72665

チェーンソーでも切れないの

xx凛さん

そんなもの、信じちゃいないけど、

君が言うから信じちゃうんだ。

2009-05-09 12:49:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:923   閲覧ユーザー数:891

 

 

「ねぇ、見て!」

 

急に彼女が僕を引っ張って、手を差し出してきた。

その手は握り拳で、小指だけがぴんと立っている。

その小指に注目しても、何も気になるところなんてない。

 

 

「……怪我なんてないけど?」

「ちっがーう!もっとよく見てよ」

 

言われたとおり突き出した指を見る。

小指、といえば約束か?

指切りげんまんなのか?

 

 

僕が眉をひそめて考えていると、彼女は軽くため息を吐いた。

 

「なんで分かんないのかなぁ」

「分かるわけねぇじゃん」

 

わざとらしくがっかりした仕草をする彼女にそう言うと、にんまり笑って僕の小指を引っ張った。

痛い。顔を歪めると、彼女は自分の小指と僕の小指を交互に見て、口を開いた。

 

 

「赤い糸、ついてるでしょ」

 

 

なんとも乙女チックな考え。頭がくらくらしながらも僕は彼女の小指を握った。

そんな僕の行動に彼女は、何?といった表情で僕を見上げている。

 

 

「切れちゃうよ、糸なんて」

 

相手が乙女チックな思想なら、僕もそれに返すだけ。

しかし彼女はまだにんまり笑顔を崩さず、僕の小指に自分のそれを絡めた。

 

「そうね、普通の赤い糸なら切れちゃうね」

「じゃあ僕らも切れちゃうよ」

「私とあんたのは、普通じゃないの」

 

彼女は僕の小指にキスをした。

 

 

 

「絶対切れないの、それがチェーンソーでもねっ!」

 

 

 

次は僕の唇にキスしてそう言った。

自分で言ったくせに、自分で真っ赤になっている彼女が愛しくて、小指を絡めたまま抱きしめた。

苦しいよ。なんて言って、彼女は小指をきつく絡めてきた。

 

 

 

 

チェーンソーでも切れないの

 

 

 

 

僕は小指どころか、全部の指を彼女の指に絡めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

end


 
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