No.720285

ストライクウィッチーズ~未来から現れし戦乙女~ 第1話

怪異との戦いの歴史を持つが、どことなく現代と似た構造の世界に存在する国…日本皇国。
国連の要請によりアフリカ北部で発生した怪異へ自衛隊を派遣するが、たどり着いた先は西暦1945年のストライクウィッチーズ世界であった…

とまぁ、単にストライクウィッチーズ世界に現代自衛隊と、現代版ストライカーユニットを履いたウィッチが現れたら、どうなるかなという自分の願望をかなえるために書いた小説です。
以前「なろう」で投稿したものをこちらへ掲載しましたが、内容の矛盾が多かったので今回の改定になりました。

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2014-09-21 20:18:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5188   閲覧ユーザー数:5152

2012年8月中旬

 

大西洋上。鋼鉄の艦首が風と波を切る音だけが聞こえる飛行甲板…

遥か遠くに見えるのは、水平線を挟んだ海の青と空の青。どこかのCMじゃないけど、その微妙な違いは、確かに綺麗…

そんな海の上を白波蹴立てて進むのは、私たちの職場であり、家でもある航空護衛艦【ずいほう】。

航空護衛艦と回りくどい言い方をしているが、要は航空母艦である。日本人特有の、「配慮」と言ったところだ。

なぜ私たちがここに居るのか…。それは、2年前にさかのぼる。

 

2010年にアフリカ北部で起こった大規模怪異…通称「アラブの冬」

人類は多国籍軍によるPKF(平和維持軍)を投入し、これを抑えようとしたが、戦況は初戦から思わしくなく、2年たった今も膠着状態が続いている。

その多国籍軍の中には、早くから日の丸をつけた部隊…自衛隊の姿もあった。

産油国の多いアラブ周辺には日系企業が数多く展開し、また先の湾岸戦争、イラク治安維持活動への不参加による他国からの風当たりもあり、日本政府は早くから自衛隊による支援を開始した。

邦人を含めた非戦闘員の避難や、前線部隊に対する補給作業など、当初こそ後方での活動が殆どではあったが、1年以上が経過しなお膠着する戦況は、自衛隊と言う先進国の戦力を、遊ばせることを許さなくなった…

 

こうして今…2012年8月、国連安全保障理事会の要請に基づき、自衛隊は陸海空前線戦力のアフリカ・アルジェリア方面への派遣を決定。

その規模は…

陸上自衛隊、1個旅団

海上自衛隊、1個機動護衛隊

航空自衛隊、戦闘飛行分隊

この内、既に航空自衛隊からは、百里基地所属の第302飛行隊F-15FJ戦闘爆撃機8機と、KC-767J空中給油機が、地中海を挟んだイタリアの米軍基地へ派遣され、アフリカ現地では陸上自衛隊の一部が到着し、部隊受け入れのための活動を始めている。

そして大西洋を渡っているのは旗艦【ずいほう】以下、護衛艦、揚陸艦、補給艦を合わせた合計14隻の大艦隊だ。

その【ずいほう】にはF/A-18J/BJ戦闘攻撃機2個飛行隊32機を中心に、E-2C早期警戒機4機、各種ヘリコプター6機を搭載するほか、対ネウロイ戦の要となるウィッチ10名も装備と共に乗艦している。

又その周りを、イージスシステムを搭載し高度な防空能力を持つミサイル巡洋護衛艦【いこま】【きぬがさ】と、SM-1スタンダード対空ミサイルによる僚艦防空を行う対空護衛艦【うらかぜ】【たにかぜ】が周囲を固めている。

その後方には、陸上自衛隊第18旅団の司令部要員他、戦車大隊から抽出した1個中隊に偵察隊等が乗艦している揚陸指揮艦【おおすみ】を主軸とし、第23普通科連隊に野戦特科大隊や通信を始めとする、各種職域の部隊が乗り込む揚陸艦【のと】【しれとこ】と、艦隊の弾薬、燃料補給を担当する補給艦【ましゅう】【とうや】が随伴する。その周囲には函館を拠点とする第2護衛隊群第5護衛隊の護衛艦【しらね】【はぐろ】【さみだれ】【うみぎり】が展開している。

その他にも前方警戒のため、潜水艦が2隻先行しているが、潜水艦最大の特徴である存在の隠密性を保つためもあり、事実艦隊からは上独立した戦闘単位として動いている。

乗艦している陸自上陸部隊の総数は実に3000名に上るが、実際の部隊規模としては、これに第55普通科連隊や第18高射特科中隊、第18施設中隊等が付くのだが、先発隊として派遣された航空自衛隊や特設施設大隊の護衛や応援として、既に現地入りしている。

その代り、今回は第18旅団の航空部隊である第18飛行隊のOH-1観測ヘリやUH-1J多用途ヘリに加え、第2対戦車ヘリコプター隊のAH-64C/D戦闘ヘリや、第1ヘリコプター団のCH-47JA大型輸送ヘリが、増援として加わっている。

 

大湊、横須賀、呉、佐世保から、家族や関係者、報道陣に見送られながら各艦は出港し、太平洋上で合流。インド洋まで進むとそこで航路を南へととり、喜望峰を回るルートで大西洋へ出てからは、一度アメリカ第6艦隊の駆逐艦のエスコートを受け、バージニア州ノーフォーク海軍基地へと入港。

そこで補給と休息を取り、ついに艦隊はアフリカ大陸へと艦首を向けた。

 

 

―――――――――――――――――

 

赤道付近にいるせいか、本土とは別格の強い日差しを放つ太陽が真上を少し過ぎた頃、母艦上空に戦闘機のエンジン音が響きだした。

どうやら先ほど、国連によって制定されたアフリカ上空のNo fly zone―――飛行禁止空域の哨戒にあたっていた戦闘機隊が戻ってきたようだ。

牽引用のタグや緊急時の消防車が待機する脇を、色とりどりのベストを着た作業員が駆け抜け、艦尾からはエンジンの音と共に、戦闘機が着艦姿勢を取りアプローチしてくる。

航空母艦と言う艦種ができた時からの一番の問題…それが着艦だ。

波の影響で不規則に揺れる飛行甲板に、叩きつけるように機体を着艦させるのは、技術が進歩した現代でも難しく、パイロット達からは、「制御された墜落」と言わしめるほどだ。

そんな風景を艦橋横で見つめているのは、海上自衛隊3等海佐であり、第6航空群第172飛行隊に所属する、藤田朱里(フジタアカリ)。海自所属の機械化航空歩兵(ウィッチ)だ。

そのため階級に対し、歳はまだ21歳になったばかりにすぎない。

魔法医学が発達した現代であっても、ウィッチが現役でいられる年齢は、20代半ばまでが限界だ。

「いつも見ますけど、ほんとによくあんな距離で着艦させられますねー!」

同じように着艦風景を見つめているのは、朱里のウィングガールを務める、奄宮美園(アマミヤミソノ)1等海尉だ。

自衛隊では、飛行隊長、飛行班長を含めた10人で一つの機械化飛行隊を編成しており、美園はその中で、最小単位の2機編隊を編成したときに、朱里の直属の僚機になる。

そんな2人はこう見えて、実は立派なアラート任務の待機中なのである。

甲板とは扉一枚で隔てられた待機室で、24時間の待機に着き、命令があれば5分以内に発艦準備を終えて飛び立つのだ。

とは言え、ずっと同じ場所にいると息が詰まってしまうと、朱里は美園を誘って外へと気分転換に出てきたのだ。

「ウィッチと違って、飛行機は空中での自由度は少ないけど、彼らだってそれをこなせるだけの訓練を積んでいるもの。特に今回の派遣は、戦技競技会で空自にも勝った飛行隊を連れてきているしね。」

そう言いながら目の前にタキシングしてきた機体を見つめる。

海上と航空の両自衛隊で運用されるマルチロール戦闘機、F/A-18Jホーネットだ。

海自で運用していたF-4BJと、空自のF-15Jで代替えできなかったF-4EJ戦闘機の後継機として導入された比較的古い機体で、度重なる改修で第1線に留まっているが、航空自衛隊ではすでにF-15FJへと機種転換されており、海自の機体もあと数年で開発が完了する国産の第5世代戦闘機、F/A-4に代わる予定だ。

 

 

―――――――――――――――――

 

普段と変わらない甲板上と違い、艦内のとある一室では、不穏な空気が漂っていた。

『ホーム…こちらホークアイ02。レーダーコンタクト。アンノウン(国籍不明機)、数は1。艦隊方位040、高度1700フィート、速度400ノットで飛行中…』

「ホークアイ02、ホーム。目標はアンノウンで間違いないか?」

飛行甲板の右舷に設置された島型艦橋の基部、飛行甲板よりさらに下の区画に設置されているのは、戦闘指揮所と呼ばれる艦の頭脳に当たる場所だ。

通常の護衛艦にはCIC(Combat Information Center)として設置されているが、【ずいほう】を始めとする航空母艦のそれはCDC(Combat Direction Center)と言う名でよばれている。

それは自艦だけでなく、搭載する艦載機や随伴する艦艇の行動も指揮する、まさに艦隊の中枢と言うにふさわしい場所だ。

『ホーム、ホークアイ02。目標はアンノウン…いや待て…。ESM探知!これは…ネウロイだ!』

その言葉に、隊員達はわが耳を疑った。

既に艦隊は国連で指定された飛行禁止空域直前の海域に居るとはいえ、一番近いアフリカ沿岸部までは、ドロップタンクを装備したホーネットでようやく作戦半径に入る距離だ。水を嫌うネウロイがそうそう来られる距離ではない。

「クソッ!たった今CAP―――空中哨戒―――機を降ろしたばかりだってのに!」

「現針路を維持した場合、およそ30分で、護衛艦【きぬがさ】の迎撃圏内に入ります。」

「全艦に対空戦闘準備を発令。飛行長、スクランブルをかけろ!」

「了解!…待機室、CDC。リーマ03、07、スクランブル!」

だが、その時…

「船務長!各レーダーに異常発生!ノイズが酷く、探知不能!」

「通信システムにも異常!GPS、衛生データリンク、遮断しました!」

『ガガガ…こ…ら、ホークア………ム、応答せ…』

「こちらホーム、ホークアイ02、よく聞こえない、繰り返せ!」

 

「ふ…、藤田3佐!これって…」

「一体…どうなってるの…?」

さっきまで雲一つない快晴だった空は、瞬く間にどす黒い雲に覆われ、周囲には霧が立ち込め始めた。

霧は徐々に濃くなり、1メートルと離れていない美園の姿までもが、霧の中に消えていき、それだけでなく、徐々に声までもが聞こえなくなり、いつしか意識までもが、彼方へと途切れて行った…

 

 

目が覚めたときは、辺りはすでに明るくなっていた。というよりも、目に映るのは青く広がる空だけ…

「ぅ…っつ…」

頭がズキズキする。いつの間にか甲板上に倒れ込んでいたようだ。

すぐ横には、同じように頭をさすっている美園の姿がいた。

「隊長…私…どうしたんでしょうか?」

「解らない…むしろ、私の方が聞きたいわよ…」

何時間にも感じた自身の体とは違い、腕時計で時間を確認すると、あの異常気象が始まってから5分とたっていない。

辺りを見渡してみると、朱里達と同じように頭をさすりながら辺りを見渡す者。倒れ込んでいる隊員に手を貸している物や、航空機に異常がないか点検している者もいる。

「藤田3佐!奄宮2尉!」

艦橋から飛び出してきたのは、朱里達と一緒にアラート待機についていた整備士の一人だ。

「スクランブルです!哨戒中のホークアイがネウロイを捕捉。艦隊防空圏内まで約30分とのこと。」

「分かったわ。美園、行くわよ!」

「了解!」

そう言うや否や、すかさず朱里は近くに駐機してある自身のユニットへと向かう。

F-35CライトニングⅡ

米ロッキード・マーチン社と日本の三菱重工が主軸となり、各国の技術と資金提供により開発された第5世代ジェットストライカーだ。

ステルス性を重視した独特の機体形状に、魔導ターボファンエンジンでは最大クラスの出力を誇る、プラット&ホイットニー製F135を国内でライセンス生産したF135-IHI-400を搭載しているこのストライカーユニットは、まさに新世代のそらとぶ箒と言えよう。

その他の各種性能も、既存のストライカーユニットを遥かに凌駕しており、現状これを超える性能を持つのはアメリカ空軍のF-22しかいないと言われている。

青い光を放ちながら足を挿入し魔力を送り込むと、始動用のスターターが回転を始める。

整備員と共に発進準備を終え、魔力ファンが空気中のエーテルを切り裂く独特の金属音が響き始め、インテークからものすごい勢いで空気を吸引し始める。

『シアラー03・07、コントロール。スクランブルオーダー。カタパルトナンバー1・2より発艦を許可する。発艦後はホークアイ02の指示のもと、直ちに迎撃せよ。』

「シアラー03、ラジャー。」『07、ラジャー。』

広大な飛行甲板を横切り、指定されたカタパルトへと向かう(といってもカタパルトは全部で2つしかないが…)。

緑色のヘルメットとベストを着た誘導員の指示を受け、ランディングギアに付属するランチバーをカタパルトに引っ掛けると同時に、背後にはジェットブラストディフレクター―――ジェット排気をせき止めるつい立―――がそそり立つ。

全ての準備が整ったことを確認し、魔導タービンをミリタリーパワーにまで持っていく。

すぐ横には緑色のヘルメットと黄色いベストを着たシューターが膝をついており、朱里から準備完了の合図を今か今かと待っている。

「シアラー03、発艦準備完了!」

『ラジャー。シアラー03、テイクオフ!』

「テイクオフ!」

シューターが指を艦首へ向けた瞬間、ブレーキが外れた体はカタパルトの圧力と、ユニットから出るジェット排気の反作用で急激に加速。艦首を切ったころには、スピードは300ノットに達していた。

そしてそのまま時計回りに円を描くように上昇する。

首を巡らし後ろを確認すると、美園もアングルドデッキの第2カタパルトから、丁度発艦したところだ。

そして十分に高度を取った所で編隊を組み、一路ネウロイの出現ポイントへと向かった。

 

 

―――――――――――――――――

 

「レーダー回復。母艦との通信も復旧しましたが、衛生リンクは依然として不通。現在の所そのほかの問題はありません。」

「原因はやはりあの異常気象か…」

高度約2万フィートから電子の目を振りまけるのは、海上自衛隊が保有する早期警戒機E-2Cホークアイ。アメリカ海軍が開発した艦上運用が可能な空中警戒機で、機体上部に円盤型のレーダーを装備しており、高高度を飛ぶ事で、艦載レーダーよりも広範囲の索敵が可能だ。

そのため航空自衛隊にも配備されており、空飛ぶレーダーサイトの異名を持つ。

「機長。先ほどホームから、アラートウィッチが発艦しました。コールサインはシアラー03です。」

「よし。コンタクトはまだか?」

「ちょっと待ってください…。今!レーダーコンタクト。シアラー03、捕捉しました。」

コックピッドに座る機長と副機長の背後。機体左方向を向いて一列に並んでいる3人のオペレーターの前には、幾つものディスプレイやコンソールが並んでいる。

彼らの見つめるディスプレイにはネウロイを示す赤い表示と、朱里達を示す2つの緑色の表示が点滅している。

『ホークアイ02、シアラー03。発艦完了!』

「シアラー03、ホークアイ02。レーダーコンタクト、感明度良好。目標は正方位080、高度1700、速度400ノットで変わらず。発見次第これを撃破せよ!」

『シアラー03、ラジャー!』

「機長!」

「どうした?!」

「新たな目標を捕捉!ネウロイの侵攻方向、水上艦艇と思われます!」

「なにっ?!」

 


 
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