No.720122

ALO~妖精郷の黄昏~ 第40話 終わりの予兆

本郷 刃さん

第40話になります。
ついに戻ってきました黄昏編ですがもう急展開になります。

どうぞ・・・。

2014-09-21 12:42:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9502   閲覧ユーザー数:8671

 

 

 

 

第40話 終わりの予兆

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

明日奈が家に泊まりに来た日から3日が経ち8月中旬が近づいてきた今日。

いつものように夏休みの課題や日課の鍛練をこなし、ALOで過ごしたりし、

夕飯の為にログアウトして帰宅していた母さんとスグと共に夕飯を取り、寝る準備をして改めてダイブした。

みんなで狩りやクエストを行い、決闘(デュエル)をして、

集会場所となっているアインクラッド第22層の俺とアスナとユイの家で談笑する。

今日もそんないつも通りの1日だった。

 

今日といういつも通りの日が何事もなく終わりを迎える、そのはずだった……俺達(・・・)はその異変に気が付いた。

『神霆流』一同は俺を含めてほぼ一斉に窓の外を睨みつける。

 

「キリトくん、どうしたの…?」

「外の様子がおかしい…」

「外が…?」

 

俺達の様子が変化したことに気付いた他のメンバー、代表してアスナが俺に問いかけたので言葉少なに返す。

他のみんなも警戒しながら窓の外を見つめるが、

現実世界と時間が重なって夜になっている以外は特に変化がないせいでそれを察知できないようだ。

 

「部屋の中、少し寒いだろう?」

「そういえば、なんかさっきよりもひんやりするわね」

「アスナさんが設定した室内温度よりも寒いってのは、おかしいってわけっす」

「確かに……温度設定とかのシステムがバグを起こすなんて、初期ではあったけど今じゃ考えられないね」

 

ハクヤの問いかけにリズが体を少し擦りながら同意し、ルナリオの補足説明に古参プレイヤーのリーファも納得している。

窓に一番近いところに居るハジメに至ってはストレージから取り出した刀に手を添えて要警戒状態だからな。

 

「……外気が冷えている。明らかにおかしい」

「メンテナンスミスなんてことはないわよね…?」

「ないな。そもそも今日はメンテナンスそのものが行われていない」

 

ハジメの様子に確認の為か訊ねたシノンに対し、俺が答えておく。次に起こった変化にはみんなも気付いた。

 

「あの、かなり寒くないですか?」

「間違いなく寒くなっているね。アスナさん、気温を確認していただけますか?」

「ええ……っ、そんな、なんでこんな気温に…!」

 

寒さを訴えたシリカの肩を抱き締めたヴァルがアスナに頼み、室内温度を確認した彼女は驚きの表情になった。

俺はユイと共に開かれているウインドウを覗き込み、顔を顰めた。

 

アスナが設定した温度は26°だったはずが現在では20°以下まで温度が低下している、明らかに異常事態だ。

彼女が再び温度設定を行うことで室内が暖かくなった。

 

「ですが、一体どうしてこんなことが…」

「さぁな。『ユーミル』が新しいイベントでもサプライズで始めたのかもしれねぇけど…」

「それならいままででもある程度の予告はしていたものね」

「だよなぁ。それに夏らしくないって思うしよぉ。納涼イベントなら別だけどな」

 

ティアさんが心配そうに話すものだからシャインが最も可能性が高い案を話す。

一方でカノンさんの言うように一切の情報がなくイベントというのもおかしく、クラインの言うように納涼イベントにしては寒すぎる。

 

「とはいえ、この現象がここだけの可能性もあるよな?」

「そうだったとしたらこの層だけのイベントの可能性もあるよね?」

 

クーハとリンク、この双子の言うことも低い可能性ではないな。

いまの状況がどの程度の範囲で起こっているのか確認する必要がある。

俺はメッセージウインドウを表示し、即座に『寒冷現象が起こっているかの有無を教えてほしい』という文章を作り、

一斉に各種族の領主とケイタ、アルゴにメッセージを飛ばした。

そして全員から返信が届き、状況を悟る。

 

――『寒冷現象発生中』

 

全ての領主、並びに別の階層に居るケイタと黒猫団の面々、

アルゴの居る場所でも発生しているということは、アルヴヘイム全体で起こっていると思われる。

あと分からないのはヨツンヘイムとアースガルズか……ニブルヘイムは元からだし、ムスペルヘイムは灼熱だから、変化なしだろう。

 

……待て、ニブルヘイムとムスペルヘイムが何故変化なしだと俺は判断した?

 

「ホント、どうしてこんな寒さに…」

「まるでいきなり冬になったみたいですね」

「冬…?……っ、まさかっ!?」

 

アスナとユイの冬のような寒さという言葉、それに感付いた俺はすぐさま駆け出して外に出る。

待っていたのは薄着状態ではあまりにも寒い気温と冷たい風だった。

だがそれだけではない、冷たい風が勢いよく吹き抜けると一斉に木々の葉を攫っていき、木々の葉が無くなってしまった。

 

「な、なにこれ……本当に冬になったみたい…」

「それだけじゃないぞ、空を見上げてみろ」

「空…? なにか降って……嘘、これって…!」

 

ついてきたアスナが外気の寒さに身を震わせたのも束の間、俺の言葉に従い空を見上げた彼女が驚愕の声をあげた。

空から降ってきたそれ(・・・)は本来ならば夏に設定されているこの時期において、異常ともとれる光景……そう、それは…。

 

「あぁ、雪だ」

 

空から降り始めてきた物は雪、それは夏の気候設定を施している現在ではあるはずがない現象だ。

みんなも家から出て、外の状況に呆然としている。そんな中、今度は暴風が巻き起こり、体が飛ばされそうになる。

 

「くっ、みんな、家の中に戻れ!」

 

咄嗟にそう叫ぶことで女性陣を先に家に入れさせる。しかし、そこで一際大きな暴風が吹き荒れた。

 

「きゃあっ!?」

「アスナ!? みんなは先に入ってくれ!」

「キリト! アスナ!」

 

暴風にアスナが吹き飛ばされ、俺は即座に翅を展開して飛び上がり、彼女を抱き締める。

しかし、俺はそこで異変に気付いた。

 

「翅が、動かせない!?」

「ほ、ほんとだ…!」

「それなら、転いがっ!?」

「キリトくんっ!?」

 

空中に飛ばされ、アスナも翅を展開してみるが僅かに震えるだけで飛ぶことができない。

ならばと、アイテムストレージを呼び出して『転移結晶』を取り出し、アスナを伴って家に転移しようとした。

だが、そこで俺の背中に何かが突き刺さったような衝撃が伝わった。

 

「これ、は…氷の剣、か…? ぐぅっ!?」

「キリトくん!? わたしのことはいいから!」

「誰が、キミを、放すって…!」

 

僅かに視線を上空へと向けてみると次々に氷の剣が降り注ぎ、俺の背中に刺さっていく。

痛みはないが衝撃が凄まじいし、ダメージが大きい! だが心配そうなアスナにはわざと笑みを向けておく。

そこでさらに、俺は地上を見たことで気付いたことがある。

地上を駆け抜ける黒い影、そして僅かに聞こえてくる遠吠え、これは狼のものだ。

 

「ここには、Mobはいないはずなのに、なぜ…!」

「ど、どうしたの…!?」

「いや、いまはいい……転移!」

 

落ち着いて転移結晶を発動させ、俺とアスナは先程までいた自宅の中に転移した。

 

 

 

 

その瞬間、暖かい空気に包まれながら床に倒れ込んだ。

 

「キリト、剣を抜くぞ!」

「頼む…」

 

建物の中ということでダメージの減少は止まったものの氷の剣が突き刺さっているのは見栄えがいいなんてものではない。

ハクヤ達が背中に刺さった剣を引き抜いてくれて、ティアさんが回復魔法でHPをフル回復させてくれたので一息つくことができた。

 

「ごめんなさい、キリトくん……わたしが飛ばされたばっかりに…」

「アスナのせいじゃないよ。それに俺的にはそっちの言葉じゃないほうが嬉しいかな」

「うん…助けてくれてありがとう」

「どういたしまして」

 

謝るアスナに気にしないように伝え、シャインが用意してくれたコーヒーを飲むことでしっかりと落ち着かせる。

さすがの俺も突然の出来事だったから対応が遅れてしまったな。

 

「パパもママも、大丈夫ですか…?」

「ん、大丈夫だよ。だから心配しなくていいからな」

「わたしはキリトくんが助けてくれたから、平気だよ」

 

心配そうな様子のユイを安心させるように頭を撫でてあげ、アスナは抱き締めてあげている。

そして一段落ついたところで外での状況が気になっていたと思われるみんなに説明することにした。

 

「まず、さっきの暴風でアスナが飛ばされて俺も飛び上がったところまではみんなも知るとおりだと思う。

 ただそのあと、俺達は翅を展開していたにも関わらず、飛ぶことが出来なかった。

 感覚的に言うなら、ダンジョン内での飛行不可能な時と同じだった」

「それって、いまALOじゃ飛べないってこと!?」

 

俺の説明にALOの飛行に魅せられたスピードホリックのリーファが驚愕の表情のままに叫んだ。

他のみんなも驚いているがリーファの驚き様は当然といえる、ショックだろうな。

 

「さらに空中に飛ばされていた途中、さっき俺の背中に刺さっていたものを見て解かってもらえると思うが、氷の剣が降ってきた。

 ハジメ、外の様子を見てくれないか?」

「……家に剣が刺さっている様子はないが、周囲の木々や地面には無数に突き刺さっている。

 雪も風が強いせいか猛吹雪の状態だ……湖もおそらく凍りついているだろう」

「マジかよ…」

 

氷の剣と猛吹雪、この際『氷剣(ひょうけん)』と称するとしてそれらが地面に突き刺さり、

雪が大分積もっていることも窺えるし、湖も大変なことになっているだろう。

クラインの呆然とする気持ちも分からなくはない。

 

「それともう1つ……空中に居る際に狼らしきMobの遠吠えと影を見た」

「それ、あたし達も聞きましたよ!」

「ええ、Mobも確かに見かけたわ。名前までは目がいかなかったけどね」

 

シリカとシノンがこの報告に対して反応し、他のみんなも確かに遠吠えを聞き、何人かはMobの姿を見たようだ。

なるほど、それで俺達が転移してきた時には全員が中に入って警戒していたのか。

 

「だけど、こんな平和な層にまでモンスターが出てくるなんて、明らかに異常よね」

「そうね、でもこれでハッキリしたことがあるわ。

 この現象はバグでも異常事態でもない、こうなるようになっているイベントかクエストだと判断できるわ」

 

リズに同意したのはカノンさんだが、それに付け加えるように話した。

そうだ、雪や気温の低下ならばまだシステムの異常だと判断できるが、

氷剣が降り注いで狼のMobまで出てくれば異常ではなくイベントの発生だとわかる。

そして、俺にはこの現象が何かわかっていた。

 

「ヴァル、アスナ、リーファ、シノン、ティアさん……これは『フィンブルヴェト』だ」

「っ、そうか! そういうことなんですねっ…!」

風の冬(・・・)と…」

剣の冬(・・・)に…」

狼の冬(・・・)の3つね…」

「『恐ろしい冬』、『大いなる冬』の意味を持つ、災厄の前触れ…」

 

読書が趣味のヴァルと北欧神話などの物語を少し知っている3人、

そして俺以上に雑学に精通しているティアさんが理解するにはその単語だけで十分だったようだ。

事情が掴めていないみんなにも説明しておくか。

 

「『フィンブルヴェト』というのはあること(・・・・)が起こる前触れである三度の冬のことなんだ。

 1度目はアスナが言った風の冬で、猛吹雪になっている暴風がこれに当たると思う。

 2度目はリーファが言った剣の冬なんだが、これは具体的なことは分からない。ただそれを再現したのが氷剣だと考えられる。

 そして3度目の冬が狼の冬だ。これは血肉を求めて狼が闊歩するからだと考えていいと思うんだ」

「確かに…それならいまの外の状況と一致するっすね」

「んで、そのあること(・・・・)っていうのが問題なんだな?」

 

説明に対してはルナリオが代表して納得の意を示し、疑問に持ったことに関してはシャインが訊ねてきたので頷いて応える。

 

「キリトくん……起こるイベント(災厄)って、もしかしなくても…」

「ああ、発生するのは十中八九、間違いなく……『神々の黄昏(ラグナロク)』だ」

「「「「「っ!?」」」」」

 

アスナが毅然としながら聞いてきたのでみんなにも分かるように答えると、ヴァル達を除いたメンバーが再び驚きの表情を露わにした。

さっき指名したヴァル達4人でさえも、苦渋の表情を浮かべているからな…。

 

「以前、『聖剣エクスキャリバー』入手の時にパパと考察した結果、『神々の黄昏(ラグナロク)』の発生は十分に考えられました。

 それにパパがラグナロクについての全容をほぼ突きとめていることもありますし…」

 

ユイもさすがに賢い、ネットの情報と現状を参照してほぼ確信しているんだろう。

 

「とはいえ、ユイの言うようにこの現象がラグナロクだとしても、イベントやクエストであることに違いはない。

 鍵を握るのはNPCの『オーディン』、『バルドル』、『ヘイムダル』、それに『ロキ』といったところだ。

 飛行は出来ないが、幸い転移結晶は使用できるから今のところは待機・解散にして、

 朝になってダイブできる面子から順次情報収集を行うようにしようと思う」

「アルゴさんにもお願いしておいた方がいいよね?」

「そうだな。情報料は向こうの言い値で頼むとしよう……緊急事態だからな。

 とりあえず今日のところは解散。ログアウトするならここでして構わないから、それじゃあおつかれ」

「「「「「「「「「「おつかれ・おつかれさま~」」」」」」」」」」

 

明日、というよりも今日の朝以降の予定を伝え、アスナの提案に同意し、いまは解散することを指示した。

まぁ全員がログアウトしたわけではなく、ハクヤとハジメとシャインの3人は残ったわけだが…。

 

「聞きたいことがあるんじゃないのか?」

「まぁな、座らせてもらうぜ」

 

俺が座るソファの対面に彼らは座り、アスナがお茶を淹れてみんなの前に出した。

左右にはアスナとユイも腰を下ろす。

 

「キリト。お前は今回の一件、どうみる?」

「どう、とは…?」

「……以前、俺達はお前からALOのカーディナル・システムはSAOの時と同様のフルスペック版だと聞いた。

 『クエスト自動生成機能』も健在だということも…」

「俺達的には企業であるユーミルが作ったクエストじゃなくてカーディナルが生成したクエストだと判断したわけだ。

 だからお前が下した判断を聞きたい……俺達はどうすればいい?」

 

シャインの訊ね方に含んだ物を感じ、ハジメとハクヤの言葉から俺が同じ考えをしていると判断しているのは分かる。

だがハクヤの言う“俺が下した判断”というのがまた別の物だというのも察せられる。

この3人は口を割るような奴じゃないし、むしろ大変な役をさせてしまうだろうから、簡潔にでも伝えた方がいいだろう。

 

「俺の下した判断は“問題無し”だ。“俺を信じて”、いつも通り思うままに、楽しんでクエストに挑め」

 

多くは語らず、ただそれだけを3人に話した。

ハクヤもハジメもシャインも俺を見てからアスナとユイを一瞥し、2人の真剣な表情で悟ったらしく笑みを浮かべた。

 

「……そうか、ならばキリトに任せよう」

「だな。俺達はいつも通り楽しむか」

「アスナちゃんとユイちゃんも、コイツのこと頼むぜ」

「勿論ですよ」

「はいです♪」

 

明らかに事情を知っているというアスナとユイを見て判断したな、コイツら。

確かに俺はみんなには伝えていない『神々の黄昏(ラグナロク)』のことを、アスナとユイには伝えているけども…。

 

「俺への信用は無いのか…」

「お前は前科持ちだからなぁ。ALOにGGO、それにUWの時もだし」

「「「「確かに」」」」

「おい」

 

SAOをクリアしてからのALOに関しては認めよう。

だがGGOに関してはアスナとハジメ、UWの時もアスナは知っていただろう。

いや、もういい、みんなのささやかな反撃くらい、受けておくのがいいだろう。

アスナとユイは勿論、3人も俺が単独行動をすることを理解してくれているのだから。

 

話しも終わり3人がログアウトしたことで、俺とアスナとユイは寝室に移動して、そこでログアウトした。

 

 

 

 

そして朝、現実世界で準備を整えた俺は早々にALOにダイブし、戻ってきた。

それに同じタイミングでアスナも現れ、ユイも合わせ3人で挨拶を交わし、早速行動を開始した。

まずは『アウトロード』のダイブ中であるメンバーを確認、とはいえダイブ中のメンツは全員が家のリビングに集まっていた。

 

「おはよう」

「おはよう、みんな」

「おはようございます」

 

俺達が声を掛けるとみんなもそれに応え、口々に挨拶を交わす。

居るのはハクヤ、リズ、ヴァル、シリカ、ルナリオ、ハジメ、シノン、シャイン、ティアさん、カノンさん、

さらに昨日はダイブすることが出来なかったクーハとリンク、エギルもこの場に来ていた。

 

リーファ(スグ)は剣道部の活動があるため帰宅は昼過ぎになり、クライン(遼太郎)は仕事があるので夜からになりそうだ。

 

「驚きどころの状態じゃないな、コレ。話には聞いてたけど見たらよく分かった」

「僕もビックリしたよ~。夏真っ盛りのはずが辺り一面どこもかしこも冬一色だもん」

「1日来なかっただけでこの様だからな。こっちは商売あがったりだ」

 

クーハはどこか感嘆しながら窓の外の様子を窺い、リンクはこんな有り様のはずなのに無邪気にはしゃいでいる。

一方のエギルはアルヴヘイム中がこんな状態なため、店は閑古鳥が鳴いている状態らしい、ドンマイ。

 

 

ここで俺達は改めて現状を再確認することにした。

まず、外の様子は夜と変わらず、深い雪に覆われて吹雪いており、無数の氷剣が地面に突き刺さったままになっている。

だが夜に比べれば風は弱く、氷剣は降り注いでいないことから外に出ることは可能だろうが、

未だ狼型のMobが群れを成して闊歩しているままだ。

また、各種族の領主から届いた最新のメッセージによって同現象が続いていることが分かり、対処や指示におわれているようだ。

さらにアルゴから買った情報ではヨツンヘイムでも同様の現象が起こっていること、

ニブルヘイムとムスペルヘイムは変化が無いこと、アースガルズは今のところ変化はないことが判明している。

加えて同現象が発生している場所では飛行行動が不可能となっている。

 

 

以上がいまのところ分かっている内容だな。

 

「さて、以上のことを踏まえて俺達が取る行動は当然ながら情報収集だ。

 イベントかクエストだとしても、それが始まるための起点があるはずだからな。

 NPCとの会話なのか、なにか行動を起こすことなのか、スタートをハッキリ確認する必要がある」

「ラグナロクに対して準備する必要もあるからな。それじゃあ誰が何処に行くか決めよう」

 

知っておくべきことがあるのをみんなにも伝えておき、いち早く理解したシャインが言葉を繋いでくれた。

情報収集を行うにしても全員で1ヶ所に行くのは効率が悪く、とはいえ戦力を分散させすぎるともしもの戦闘で敗北しかねない。

ここはしっかりと役割分担をしておく必要性があるな。

 

「先に言っておくが俺が知る全容というのはあくまでも、

 『神々の黄昏(ラグナロク)』をカーディナル・システムが己の役割を果たすために起こすというものであって、

 内容そのものを熟知しているわけじゃない」

「……それは当然だろう、お前が無用な被害を進んで出させるような奴じゃないことは私達全員が知っている。

 信頼して話すべきじゃないと思っているのならそれも大した問題にならない。

 私達もまた自身の思うように、信じるように進むだけだ」

 

そう、俺が知っているのはあくまでもカーディナル・システムの自滅システムのこと、

言語モジュールを搭載しているAI達の行動原理のこと、茅場がこれに干渉していることである。

そして話すべきではないし、みんなも自分の判断で知る必要はないと以前に決めていた。

ならばあとはお互いに信頼し合い、やるべきことをやるだけだ。

ハジメの言葉にはみんなが頷き、応えてくれていることが有り難い。

 

「分かった。まず、アースガルズにはアスナ、ユイ、エギル、ヴァル、シリカ、ピナのAグループが。

 ヨツンヘイムにはシャイン、ハクヤ、ハジメ、ルナリオ、クーハ、ティアさん、リンクのBグループに。

 カノンさん、リズ、シノンの3人にはイグドラシル・シティと央都アルンを中心に行ってほしい」

「アースガルズだね、了解です」

「ヨツンヘイムってことは主に『ミズガルズ』や周辺での情報収集か、了解」

「あたし達はアルヴヘイムということね、了解よ」

 

Aグループは神話についてある程度の知識があるアスナとヴァルを中心に構成し、

Bグループはヨツンヘイムということで戦闘中心のメンバーにティアさんを加えた構成、

そして最もイグシティとアルンには店を構えているリズと神話を知るシノンとガードとしてカノンさんという構成にした。

最初に名を呼んだ者が基本的にリーダーを務めることになり、各自がそれに応えた。

 

「それで、キリトくんはどうするつもりなの?」

 

俺自身の名が出ないことを指摘したアスナ。ちゃんと伝えておいた方がいいだろう。

 

「核心をつきにいく、俺が行くのは………ヘルヘイムだ」

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

はい、今回から本格的に黄昏編に戻ると同時にそのまま始まってしまうような展開にしました。

 

というのもキリトがUWに行っている間や事後処理で自由が利かなかった時間を黄昏の潜伏期間としていたからです。

 

今回も含めて次回も基本的には黄昏の前段階になり、その後に本格的な黄昏になりますのでお楽しみに。

 

少し短めですが今回はここまでにいたします、それでは次回で・・・。

 

 

 

 

追伸

 

ある企画を考えておりまして、その是非を聞いてみようかなと思います。

GGO編を書いていた時にやった読者様参戦企画をまたやろうかなと思いました。

神々の黄昏(ラグナロク)』の戦いにおいてプレイヤーとして登場していただくのもありかな、とね。

というわけですのでその企画の是非についてもお答えいただければ幸いです。

お答えもお待ちしております・・・。

 

 

 


 
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