No.717404

恋姫夢想 ~魏AfterStory~ 第1話 帰還

みちらさん

恋姫夢想の魏AfterStoryです。

失踪しない様に頑張ります。


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2014-09-14 20:09:15 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4228   閲覧ユーザー数:3656

 

「もう……俺の役割はこれでお終いだ。ごめんな……華琳」

 

「一刀……」

 

「さようなら……誇り高き王……」

 

「一刀……」

 

「さようなら……寂しがり屋の女の子」

 

「一刀……!」

 

「さよなら……本当に愛していたよ、華琳――――――」

 

「一刀……?」

 

 

 

 

 

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

規則的な電子音が聞こえる…ここはどこだ?

 

あの世界では聞かなかったから、本来いるべきはずの…

元の世界にいるのは間違いないだろう…

 

オレがあの世界で成すべき事は、全て終わった…

もう行くことはできない、だろうな…

おぼろげな意識の中そう感じていた…

 

そして、ゆっくりと眼を開いていくと、眩しい光が見えてくる

 

 

 

一刀が瞼を開けて最初に見えたのは、白い天井

周囲に目をやると心拍計と点滴袋があった。

 

病院か?俺はどんな状況なんだ…?

 

辺りを観察していると

 

コンッコンッ

 

ドアをたたくノックが聞こえ

 

「入りまーす」

 

柔らかい声とともにドアが開く

 

入ってきたのは白衣を身にまとった女性

 

30代にはなっていないのかな等と考えながら女性を見ていると、眼があった

 

「ほ、北郷さん!!意識が戻ったのですね!!す、すぐ先生を呼んできます!!」

 

ものすごい速さで部屋を後にする、女性。それを呆然と呆然と見つめる…

 

しばらくして先程の女性が白衣の老人を連れて部屋に入ってきた…

 

「やあ北郷君、はじめまして。医師の鈴木といいます。」

 

「は、はじめまして北郷一刀です」

 

「ふむ、意識も問題なく覚醒しているようだね。」

 

「先生…俺は、今どんな状況なんですか?」

 

「キミは3日間眠っていたんだよ。博物館で倒れたのは、覚えているかい?」

 

「えっ…そうだったのですか!?」

 

「ふむ、ではそこから説明を始めよう。君は先日学業行事で中国の歴史博物館に見学に行ったんだ。そこ

 

で倒れたんだ。一緒にいた友人の話によれば倒れたのは銅鏡を君が興味深く見つめている最中だったそう

 

だ」

 

「銅鏡…ですか?」

 

「あぁ、倒れた直後から意識がなく重体としてうちに来たんだよ。原因がわからず、植物状態に近い状態

 

になっていた。」

 

なぜか呼吸器官だけは正常であったのがまた不思議だったのだがね、と付け加える

 

「もっと不思議なのは…」

そう言うと、一刀の身体に掛けられていた布団をはがす。

 

「体格がアスリートに近いものになったのだ。寝たきりであるにも拘らず、しかもたった3日のうちにだ

 

。」

 

「(春蘭や凪たちに鍛えられたからか…)」

 

「とりあえず意識が戻ってよかった。じゃあキミ、検査の準備を」

 

「はい」

 

「ご両親や学校には私から連絡するよ。これから、検査のオンパレードだよ」

 

「ははは…」

 

 

一刀は身体の隅から隅まで調べられた

 

なぜ短期間で肉体がここまで進化したのか、意識を失った原因を再度調べるために

 

「(あの世界でのできごとは、夢だったのか?でも、身体にはこれまでのことが反映されている…)」

 

一刀自身も、あの世界の出来事が何だったのか判断できかねていた。

 

全ての検査が終わり、身体のどこにも異常・肉体変化の原因が見当たらなかったので、一刀は検査から三

 

日後に退院した。

 

 

 

 

 

 

 

 

病院での検査の3日は嵐のようだった…

絶え間なく続く検査の嵐、心配して面会しに来てくれた親や友人、学校の先生たち…

あの世界のことを考える暇がない程に…

 

そして、俺は学生寮の自分の部屋に戻ってきた…

途中で及川と会い、久しぶりに言葉を交わした…

 

部屋に入り、椅子に腰を掛ける

 

ふぅ、っと声が漏れる…

 

天井を見上げる

 

 

帰って来たんだな…

帰って…来たんだな…

 

 

小さく呟く…

 

っつーっと音を立て頬を何かが濡らす

 

なんだ…?

 

…水?

いや…涙か…?

 

なんで泣いているんだ…?

 

俺は…

 

あの世界で役目を成し遂げたじゃないか…

 

なのになぜ…

 

なぜ俺は泣いているんだ…?

 

喜びの涙…なのか?

 

いや…

 

このぽっかり心に空いた感じは…

 

喜び…そんなはずはないな…

 

寂しい…のか…

 

役目を成し遂げたはずなのに…?

 

役目を…成し…遂げた…じゃないか…

 

ポタポタっと頬を伝った涙が床を濡らす…

 

 

 

………

……………

 

 

 

声にならない音が漏れていく……

 

 

 

なぜだ…

 

なぜ俺は…

 

帰ってきてしまったんだ……

 

俺は…俺は…

 

華琳…

 

君と、もっと過ごしたかった

 

君との子を…見たかった……

 

君と一生を過ごしたかった…

 

なぜなんだ…

 

誰か……教えてくれよ………

 

 

 

椅子から立ち上がり、窓を開け

外に広がる空を見上げる

 

 

 

頬を濡らし、未だ太陽が晴天に広がる空を見上げる…

 

っふ、っと一陣の風が吹く……

 

 

 

じゃあね!また会いましょう、一刀!

 

 

 

っ!?

 

華琳?

 

華琳なのか…?

 

 

 

………

……………

 

 

 

また会おう…か

 

また…会えるのかな?

 

華琳…

 

 

 

答えはない…

 

空耳だったのかもしれない…

 

だが…

 

 

 

俺は……

 

この世界で生きるよ…

 

そして…

 

いつの日か…

 

もう一度君に会えることを願っているよ…

 

 

華琳………

 

 

 

 
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