No.714865

【恋姫二次創作】死神の毒 お馬鹿キャラ

今思ったけど、タイトルに【恋姫二次創作】ってつけた方が良いんじゃね。
つけなかったら死神の毒とか厨ニじゃないですかーやだー(今更気付いた)

2014-09-09 23:08:02 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1615   閲覧ユーザー数:1542

 剣戟の音がそこいら中から聞こえてくる戦場。劉備軍と袁術軍が対峙している。状況は圧倒的に劉備軍の有利に傾いた。劉備軍の兵にとっては当然かもしれないが、呂布がいると情報を得ていた武将たちにとっては不満しかなかった。

 

鈴々「ずるいのだ!!」

 

 天幕の外で騒ぐ小さな力持ち。簡単に大人数人を吹っ飛ばせるほどの怪力の少女は、頭から湯気を出すほどに怒っていた。その後ろについて歩く背の高い女性二人も同様だった。口には出さないが、明らかに不満顔。目の前で声を荒らげる鈴々の姿を見て、なんとか不満を押さえる。

 ちなみに、碌に有能な武官も居ない袁術軍に対し、武将を、ましてやこの三人をぶつけるのは勿体無いし、そんなことで彼女らに矢の一本でも刺さるよりは、時間をかけてゆっくり落とすという判断が下された。丁度今は白蓮と反正が、袁術軍を滅多打ちにしている。

 

愛紗「しかし、何故ソウさんが呂布を」

星「……」

 

 いつもなら押さえろというであろう星も、今回に限っては冷静さが欠けていた。それくらい呂布という存在は大きかったのだ。

 武将にとっての呂布。それは武を志すものならば、一度は夢見る武の頂に鎮座する最強の存在である。実際にあったことはなくとも、全土に響き渡るその武は真実だと感じて当然。それが文官に捕縛されたというではないか。あんな痩せっぽっちで、根暗そうで、陰湿そうな文官に。様々な関係によって、流石にそこまでは考えないが、一番最初に出る言葉としてはあり得ないという言葉だろう。

 

鈴々「なんでもいいのだ!!とにかく呂布と戦うのだ!!」

 

 子供ながらに戦闘狂である。鈴々は、天幕の入り口部分の布を一気に捲った。バサッという音と共に、天幕の中に外の光が入り込む。

 

装「ブゥーン、ブゥブゥーン。キィーってあれ?」

 

 自分の左腕を、まるで子供が車の玩具で遊ぶようにはしゃいでいる男が居る。左腕を右腕で掴み空中をブンブン振り回していた。止血の施された左肩の先はなく、右腕で掴む左腕は血抜きされ、土色に変色していた。

 

装「あ、遅かったですねぇ」

 

 

 

 

愛紗「どういうことですか!!!」

一刀「どういう事といわれても……なぁ?」

桃香「ねぇ?」

 

 既に空の太陽は沈み、暗くなっていた。

 大被害を受け敗北した袁術軍は泣きながら撤退。劉備軍は追撃を行わなかった。どうせ行ったって既に滅ぼされてますよー、と装はだらしなく言うのに、軍師朱里もその言葉の意味を理解し、追撃の必要なしと判断を下した。

 

星「聞きたいことは山のようにありますが……」

鈴々「なんで後方で待機しているはずのソウのお兄ちゃんが、前線で呂布をやっつけたのだ!!鈴々たちの役目の筈なのだ!!」

一刀「と言われてもなぁ?」

桃香「気付いたら居なくなってたし……」

朱里「敵を騙すには、まず味方からだそうです」

 

 包帯を変えるために席を外している装の変わりに、朱里が答える。今回の行動の心理は分からないが、一応話だけは聞いたので、それを利用し答える。一刀と桃香はリーダーの位置である為居てもおかしくない。当然である。

 

愛紗「あと何故左腕が!!」

朱里「呂布との壮絶な死闘で負傷したとの事です」

星「その左腕で遊んでいたぞ……」

一刀「そんなにショックじゃ無さそうだったよ」

桃香「そうそう。しょっくってのはよく分からないけど、あんまり気にしてないみたいだし。私も最初は驚いたけど、左腕を右腕で振り回しながら帰って着たのは驚くを通り越してたし……」

朱里「その後ろに呂布さんと陳宮さんも着いて来てましたね」

 

 あの後敗北を認めた呂布。しっかり敗北を認めると同時に、陳宮の首の拘束を解いた。陳宮は涙を流しながら呂布に謝り続け、それに対して呂布はそっと陳宮の身体を優しく抱いた。じゃあ着いて来てね、と左腕をもいだ装は、バスガイドの旗のように左腕をブンブンと振った。当然周囲の者全員目を丸くする。事前に呂布隊全員の安全を約束している。呂布も武人として敗北を認めた以上、投降しないという選択肢はなかった。今は天幕で監視付きの下眠っている。陳宮は首を絞められ、死にかけた挙句、呂布に敗北という二文字を与えてしまい、気落ちする筈だったが、装の狂行に思わず頭の中が吹っ飛び、その装から文官も身体くらいしっかり鍛えなさい、と怒られた事しか覚えていなかった。壮絶な一日であった。

 

鈴々「さっきあった時、鈴々達も心配したのに、笑い飛ばされたのだ」

星「ソウ殿は腕よりも先に、頭を治した方が良い」

 

 天幕の中で左腕で遊ぶ装に対し、三人は当然驚いた。衛生兵を呼んだり、とにかく叫んだり、ブンブン振り回すのを止めさせたり。顔を真っ青に言う三人に装はこういった。「良いんじゃないですか?左腕の一本や二本」半笑いで言う装に対し、呆れしか沸かない三人はその時すっかり呂布の事など忘れていた。そして思い出し、今に至るわけだ。

 軽い皮肉を交えていう星に対し、反論を言える人間はそこには誰一人居なかった。

 

朱里「と、とにかく、これで袁術さんも追い払えたわけですし、呂布さんも兵の皆さんの衣食住を約束するなら仲間になるって言ってましたし」

星「先ほどの話からも思ったが、何故そこまで簡単に信じる?」

一刀「呂布もソウの行動で馬鹿らしくなったそうだよ。普通自分の左腕を引っこ抜いて振り回す人なんて居ないからな」

桃香「目の前でやられたら余計に……ね?」

 

 やれやれ、といった風に語る桃香。実際に目の当たりにしたらグロいなどを通り越して、なんと言って良いかわからなくなるだろう。

 

白蓮「なあ、袁術を本当に追っ払っただけで良かったのか?やろうと思えば全軍とは行かなくても、かなり攻撃できただろう?」

桃香「あ、白蓮ちゃん居たんだ」

白蓮「最初から居たよ!!」

朱里「それは大丈夫ですよ」

 

 逃がして良いという理由を知っている朱里は冷静に言う。

 

星「ほう?」

朱里「多分、今頃は袁術さんのお城は孫策さん達に乗っ取られていると思います」

愛紗「孫策はたしか袁術の配下の」

朱里「そうです。でも、望んで配下に為ったわけじゃなくて、孫策さんのお母さんである孫堅さんが亡くなり、吸収される形だったはずです」

一刀「そういえば、董卓連合の時も袁術とあんまり共闘はしてない感じだったよね」

桃香「なるほどー。じゃあ今回の袁術さんの総攻撃は絶好の好機だったわけだ!!」

 

 一同が納得する。そりゃあ不満を持っていて、何時か乗っ取ってやろうと企み、乗っ取るべき相手が大きな隙を見せたのだ。これほどの隙は次はないかも知れない。喜んで乗っ取ったわけだ。

 

星「言いたい事はまだあるが、本人が居ないのだから仕方ないか」

愛紗「仲間になるのだと言っているのだし、呂布との手合わせはまた今度此方から頼めばいいか」

鈴々「鈴々が先なのだ!!」

愛紗「分かった分かった」

 

 鼻息荒く言う自分の義妹の頭を軽く撫でて言う。一刀は周りを見回して特に意見のある人間が居ないかを確認する。

 

一刀「じゃあ今日はこの辺で解散で良いかな?」

 

 一同は頷き、その夜の反省会は、一番反省すべき者に反省させず終わった。

 

 

 

 

反正「無茶しすぎよ」

装「このくらいしないと、騙されてくれませんよ」

 

 反正は装の左肩の血の滲んだ包帯を外す。

 

装「膿まないようにしてくださいねぇ」

反正「分かってるわよ」

 

 止血したとはいえ、グロテスクな肩の断面を見て、消毒用の植物を傷口に当てる。

 

反正「持ってきて正解だったわね」

装「そうですねぇ。なければ今頃この左肩から黄色い汁が」

反正「少し黙りなさい」

 

 半笑いで言う装に、反正はドスを効かせた声で言う。

 

反正「それにしても、貴方の演技は本当に異常ね」

装「ケケッ、首を絞めた相手に嫌悪感を抱かせない方法。それはお馬鹿なキャラを演じる事ですねぇ」

反正「嫌悪感を抱かせず、しかし内心では警戒させるようにする。劉備の配下の面々にもね」

装「お馬鹿さんが一転、悪魔になれば、一気に警戒は上がり、殺しに来てくれるでしょうね」

反正「命を大事にしないのね」

 

 装はヘラヘラと笑って答えている。左肩の痛さを抑える為であり、あえて左肩の痛みを無視しているのだ。

 

装「命は大事ですよ。それでもね、僕は自分の誇りの方が大切です」

反正「同意見よ」

 

 反正は新しい包帯を装の左腕に巻く。過剰なほどに巻き、黴菌が入らないように細心の注意を配る。

 

装「これ以上詰らない人生は必要ない。永遠に次の時代が来ないようにしなければ、ねぇ?」

反正「そうね。それより、片腕でこれから戦っていけるの?使えないようなら長江に放るわよ」

装「大丈夫ですよ。大丈夫。あと三本も手足がある。十分です」

反正「そう。ほら、終わったわよ」

 

 逸らしていた目を左肩に向ける。血の滲んでいない真っ白な包帯。腕が無くなったのは始めての装。なんとも不思議な感覚に思わず笑みがこぼれた。

 

装「腕がなくなると……こんな感じなんですねぇ」

 

 新しい発見に装は何時ものほんの少しだけ、機嫌が良かった。

 

 

 

 

 その頃安康は。

 

安康「あー、もう夜ですな……」

 

 窓の外を眺めていた。笑っているような三日月は周りの星よりも自己主張を激しくし、嫌に不気味であった。

 安康は顔を窓から机に向けた。

 

安康「仕事……多すぎですな」

 

 一人静かに筆を走らせていたのだった。


 
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