No.712620

クロスリンク・プロブレム ミクの試練! 第3話 侮蔑の悪魔・前編

enarinさん

☆投稿、また間があいて申し訳ありませんでした。ローペースですが、投稿していこうと思います。

○ボーカロイド小説シリーズ第13作目の” クロスリンク・プロブレム ミクの試練!“シリーズの第3話です。
○ちょっと現実にありそうな問題と、それとリンクするファンタジーの世界、それらをクロスリンクさせたお話です。
○ちとオカルトも入りますが、そこら辺は今の流行って事で…。

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2014-08-31 19:30:57 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:537   閲覧ユーザー数:537

(舗装劇場・ホール客席)

 

 ギューーーーン! スタッ!

 

ハク:到着しました。今回は客席にワープみたいですね

ミク:間違いなく、リンレンは芸人やっているんだね。なんか想像できないけど

ネル:今は誰かの本番コントをやっているみたいだね。とりあえず様子を見ようか

 

 ミク達が到着した客席から見える“ステージ”では、ラメ入りでピカピカ光っている、でっかい蝶ネクタイをしめて、黄色と黒を基調とした漫才衣装を着た、“リンとレン”が、必死に漫才をやっていた。

 

ミク:えっと、コンビ名は・・・“ロードローラーズ”??? 随分変わった名前をつけたんだね?

ネル:名前の紙の残りを見る限りで、この二人は“トリ”じゃないみたいだね。この二人の次が“トリ”だ

(ステージ)

 

リン:ところで、隣の家に、空き巣が入ったみたいなんだけどさ

レン:ブローーーーック!

リン:そのボケはまだ早いっての!

 

 ガス!

 

 リンはレンのボケに、片手でお約束のツッコミを入れた。

 

客:ははははは!!

 

リン:私が、“それでその家の人が警戒してね、隣の家にしっかりした塀ができたみたいなのよ”、って言ったら、

レン:ブローーーーック!

リン:だから、まだ早いっつーの!

 

 ボス!

 

 またリンがレンにつっこみを入れた。

 

客:ハハハハハ!!

 

リン:じゃあ、行くよ! 隣の家にしっかりした塀ができたみたいなのよ

レン:へぇ~

リン:・・・

レン:・・・

リン:それで返されたら、つっこみ入れられないじゃないの!

レン:ブローーーーック!

リン:遅いっての!

 

 ガス!

 

客:わはははは!

 

 そんな漫才をしているうちに、演目は終わったようだ。

 

リン、レン:そんなアホな! どうも失礼しました~!

 

 客からは大きな拍手が巻きおこり、二人はお辞儀の後、楽屋に戻っていった。

(ホール客席)

 

ミク:なんだ、結構巧いじゃないの! リンレンの違う一面を発見できたわ!

ネル:あ、こっちの世界限定だと思った方がいいと思うけど、とりあえず二人はこれで食べているみたいだね

ハク:で、どうします? 特に問題は起こってないみたいだけど

テト:o(^Д^*)(*^Д^)o

ネル:テト? え? 次のトリのコンビが出てきたって?

ミク:せっかくだし、見てからリンレンの所に行きましょう

 

 こうしてミク達は、トリを勤めているコンビの漫才を見てみる事にした。

(ステージ)

 

 ジャジャジャジャーン!

 

 派手な登場曲と共に、コンビがステージに現れた。

 

バル、ゼル:どうも~ お笑いコンビの

バル:バルでございます~

ゼル:こら! わいを忘れるな!

 

バシ!

 

 背の低いゼルは少し“つま先立ち”して、バルの頭をハリセンで叩いた。

 

バル:あれ? 何か頭に当たったようですね~ お客様知りません?

ゼル:だから、わいを忘れるなっての!

 

 バシ!

 

 ゼルは今度はバルの胸元にハリセンを叩き込んだ。

 

バル:あれぇ? 今度は胸が苦しいわぁ~ これが恋なのかしら?

ゼル:誰に恋しているっちゅーねん!

 

 バシ!

 

 今度はゼルが叩く前に、バルがハリセンでゼルの頭を叩いた。

 

バル:何度も叩くな! 豆造!

ゼル:豆造ちゃうわ! ゼルやがな! ってか、最初から見えたったのか!?

バル:豆造、からかうと面白いからな~♪

ゼル:だから、豆造ちゃうわ!

 

客:わははははっははははははっはっっはははっっは!

(ホール客席)

 

ミク:うーん、さすがトリを勤める漫才師、笑いのレベルが違うわね

ネル:客の心をガッチリ掴んでいるなぁ

ミク:でも、こっちもコンビで同じ劇場でやっているってことは、リンレンの先輩って考えた方がいいのかな?

ネル:リンレンが前座を勤めて、バル&ゼルがトリだから、そう考えてもいいみたいだね

ハク:あ、終わったみたいですよ

 

客:パチパチパチパチ!!!!

 

 バルとゼルの二人も、楽屋に戻っていった。今日のここでの興業はこれで終わりのようだった。

 

ミク:じゃあ、まずリンレンの楽屋に行ってみようか

 

 こうして4人は、客が帰っていくのと逆行して、ステージを抜けてリンレンの楽屋に移動した。

(ロードローラーズの楽屋)

 

 リンレンの楽屋にミク達が到着した。衣装から普段着に着替えたリンレンは、何故か帰らずに楽屋の椅子に座っていた。

 

ミク:あれ? もう本番終わったのに、なんで帰らないんだろう?

ネル:ミクさん、こういう世界では、“先輩より先に後輩が帰っちゃダメ”ってしきたりがある所もあるんだよ。先輩だと思うバル&ゼルがリンレンの後に終わったから、多分、この二人が帰るまで、待っているんだと思うよ?

ミク:厳しい世界だね

 

 ガチャ

 

 そうこうしているうちに、着替え終わったバル&ゼルが、部屋に入ってきた。リンレンはサッと立って、一礼した。

 

リン、レン:先輩、お疲れさまでした!

バル:さーて、もうわかっていると思うが、これからダメ出しタイムだ。心構えはいいな?

ゼル:今日は厳しいぜ?

リン、レン:はい!

バル:んじゃ、レン、ちょっとこっちこい

レン:? はい!

 

 レンはバルの目の前に歩いてきた。すると、バルは平手にした右手を斜め上に振り上げると、思いっきり振り下ろした!

 

 バチン!

 

レン:う!

 

 バルはレンに問答無用でビンタしたのだった!

 

リン:!

バル:なんだ!! お前らの今日の漫才は!!!! あんな塀ネタなんぞにしおって!

レン:で、ですが、このネタを使えって言うのは、先輩のご指示で

 

 バチン!

 

 再び、バルはレンにビンタをかました!

 

バル:俺らが言ったのは、“この塀ネタをアレンジして、巧い漫才やってみろ”、だ! それをあんな漫才にしやがって!

ゼル:俺らはそれに腹が立っているんだよ!

 

レン:す、すみません。未熟でした

リン:二人で心から謝りますから、お許し下さい

 

バル:ふん! 基本の塀ネタですら、こんな出来じゃあ、トリ前は無理だな。一番最初の前座からやり直しだ

ゼル:それから・・・

 

 ゼルはリンが持っていた“日当袋”を取り上げ、中身の9割を取り出し、ポケットにしまってしまった。

 

ゼル:この残りの分が、今日のお前らの漫才への給金だ

バル:頂いた分は、今日の俺達のドリンク代だ、いいな?

レン:は・・・・・・・はい・・・・・・・・

バル:今日はパァっと飲みたい気分だから、ダメ出しは許してやる。オレ達もこれから帰るから、お前らも帰って良いぞ

リン:わ・・・わかりました・・・

 

 バタン!

 

 こうして、やりたい放題やって、バル&ゼルは楽屋から帰っていった。リンとレンは寄り添ってガクガクしていた。

 

リン:レン、どうしよう・・・ 残りじゃ、今日の夕飯、カップラーメンくらいだよ・・・

レン:仕方ないよ、いつもの先輩の事じゃないか・・・

リン:今日の日当、少ない方なのに、それでもムシっていっちゃうなんて・・・

レン:・・・震え・・・止まった?

リン:う・・うん。大丈夫、帰ろうか?

レン:うん、そうしよう。銭湯で暖まろうよ

 

 バタン

 

 二人は荷物を持って、楽屋の電気を消して、退室した。

(リンレンの後ろ)

 

 ミク達はリンレンの後を付いていきながら、話し合っていた。

 

ミク:・・・リンレンが・・・いじめとカツアゲにあっていたなんて・・・知らなかった・・・

 

 ミクは半泣き状態だった。

 

ネル:この状況と元の世界の事を考えると、リンレンの悩みはそう言うことになるね。コッチの世界のアレは、いくら何でもやりすぎだ!

ハク:私、腹が立ちました! 芸人の世界が厳しい事はわかるけど、それとアレは別種です!

テト:ヽ(`Д´)ノ

ミク:あの二人・・・私たちの世界では、多分、悪い先輩とかから“やられていた”んだと思う。家では明るい笑顔を作っていたけど、それは家族を気遣っていたからで・・・ごめん、気づかなくて・・・

ネル:・・・しかし、あのバル&ゼルとかいう二人、ちょっとひどすぎるな。厳しいを通り越して、悪魔的だとも思える・・・

ハク:あの・・・それなんだけどね・・・

ミク:何?

ハク:あの楽屋で、あのバル&ゼルをスキャンしたんだけど・・・どうもおかしいんです。なんというか、人間のフラグがないっていうか・・・

ミク:! もしかしてアイツら、もう悪魔と契約したんじゃ!

ネル:・・・いや、契約したからといって、その人間から“人間のフラグ“が消滅することはないよ

ミク:じゃあ、あの二人は?

ネル:まだ解らない。でも、“普通ではない存在”と思った方がいいみたいだね

 

 そうこうしていると、廊下の突き当たりで、リンレンの前に、スーツ姿のおじさんが現れ、リンレンにお辞儀した後、名刺を差し出した。

 

 『バル&ゼル マネージャー 鈴背』

 

リン:おじさんは、先輩のマネージャーなんですか?

鈴背:そうです。さっきの楽屋、ちょっと用があって立ち寄ったんですが、中が修羅場だったから、盗み聞きしてたんだけど、うちの二人が申し訳ないことをしました

レン:いえ・・・そんなことは・・・

鈴背:いえ、隠さなくても良いです。あいつら、ここの所、売れてきたのをいいことに、後輩をいじめてカツアゲしまくっているらしいのですが、先ほど聞いた事で、確信しました。もう私も我慢できません

リン:・・・

鈴背:そこで、取引というか契約したいのですが、あ、勿論、拒否でも結構です

レン:いえ、言って下さい

鈴背:わかりました。私もあいつらのマネージャーをやっているのですが、裏社会にも顔が利きます。私の名前を通して、あいつらを葬るってのはどうでしょうか?

リン:え!? 葬るって・・・殺しちゃうの?

鈴背:いえいえ、この世界で喰っていけなくすることです。私も職を失う事になりますが、その時はプロダクションに希望を出して、あなた達のマネージャーとして雇っていただければいいのです。どうです? これもこの世界で生きていく知恵だと思いますけど?

リン、レン:・・・・

ミク:そうだそうだ! 良いぞ! マネージャー! もっとやれ!

ネル:・・・そう簡単な事じゃないと思うよ

ハク:はい

ミク:え!? だって、協力してくれるって言っているよ?

ハク:あの“鈴背“ってヤツ、『悪魔』だよ。人間のフラグが1つもない

ミク:え!!!???

ネル:まさに“悪魔の知恵”。私たちが倒す相手は、どうやらあのマネージャーらしいよ。そして、リンレンが、もしここでヤツと契約してしまうと、僕たちがあの悪魔を倒した後、存在が消滅するのは、バル&ゼルじゃなくて、“リンレン“、って事になるんだ

ハク:悪魔と契約した、って事だからね

ミク:ええええ!!!! だめよ! 助けに来たのに! すぐに止めないと!

ネル:大丈夫、テトが準備しているよ

 

テト:(-_-)

 

 しかし、リンレンは内なる心を開放し始めていた。

 

リン:・・・わ・・・私たち・・・もう・・・我慢・・・できない・・・

レン:こんな・・・地獄な生活が続くのなら・・・

 

ミク:だめ!!!!!!!

 

リン、レン:貴方と契約し

 

テト:ストップ!!!!

 

 ピタッ!

 

 前と同じように、その周りが全て止まって凍てつき、あの鈴背とミク達だけが、動ける状態になった。

 

ミク:あ・・危なかった・・・危機一髪・・・

 

 動ける鈴背は、中指で眼鏡をクイッと上げて、ミク達を睨み付けた。

鈴背:・・・もう少しで目的が達成できたものを・・・連絡を受けた通り、またもやお前らが邪魔に入るわけだな・・・

ネル:こいつ自体が悪魔本体で、“鈴背“、は人間に擬態したときの偽名だな?

鈴背:・・・クックックッ・・・もう一つ、いや、2つ、偽名があるがな

 

 鈴背の姿が瞬時に消えて、二人の人間型の生き物がその場所に現れた。

 

バル:バルでーす!

ゼル:ゼルでーす!

バル、ゼル:二人合わせて、バル&ゼルでーす!

 

ミク達:!!!!!!!

 

バル:リンレンの先輩という立場で接触し、いじめ抜いて、カツアゲしまくり・・・

ゼル:くたびれぬいた所で、優しいマネージャーとして接触して、悪魔との契約をかわさせることで、お前らの救出劇を完全失敗に追い込む計画だったが・・・

 

 バルとゼルの二人が消えて、そこに再び、鈴背が現れた。

 

鈴背:寸前で計画が潰されてしまったか・・・

 

ミク:お・・・・・おまえら全員・・・同一存在・・・

鈴背:その通り。バル&ゼルであり、鈴背である・・・。名前も、バルゼル・・・鈴、ベル、背、ゼ・・・

 

 そういうと、鈴背は思いっきり両手を胸の前でクロスさせ、かがみ込んで、全身に力を入れると、巨大な何かに変身したのだった!

 

ベルゼブブ:我こそは、侮蔑(ぶべつ)の悪魔、ベルゼブブ!!!

 

 そこに現れた巨大な何かは、恐ろしくでかい、蠅のバケモノだった。王冠を被り、右手にはねじ曲がった杖を持っており、口から床に消化液を垂らしていたため、床がジューーーと音を立てて溶けていた。

ミク:う!!! げほ!

 

 ミクはそのあまりの醜さに、思わずかがみ込んで、せき込んでしまった。

 

ベルゼブブ:おや? お前は我らを倒して家族を救い、帰還する命を受けているのではないのか? それともここで命果てるつもりか?

ネル:ミク・・・

 

 しかし、ミクと悪魔との戦いは2回目、ミクにもそれなりの根性は座っていた。それに、なにより、こっちの世界とはいえ、家族がこんなヤツに振り回されていた事が、正直、許せなかったのだ。

 

 スチャ

 

ミク:・・・ふぅ。ネル、神威の力を頂戴

ネル:大丈夫なのか? 少しやす

ミク:頂戴!

ネル:・・・わかった、でも無理するなよ

 

 ネルは、紫のクリスタルを輝かせて、光をミクに当てることで、ミクに神威の力を与えた。

 

チャキ!

 

 ミクは前とは違っていた。ひるまず、刀をしっかり構えて、ベルゼブブを睨み付けた!

 

ミク:絶対に・・・許さない!

ベルゼブブ:来るがいい! 人の子よ!

 

 こうして、ミクと蠅の王との、対決が始まったのだった!

 

(続く)

 

CAST

 

ミク:初音ミク

リン(鏡音リン):鏡音リン

レン(鏡音レン):鏡音レン

 

妖精ネル:亞北ネル

妖精ハク:弱音ハク

妖精テト:重音テト

 

その他:エキストラの皆さん


 
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