No.709186

青いチビの使い魔 37話

だしィーさん

アルビオン編8

2014-08-16 17:03:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1519   閲覧ユーザー数:1479

キキSide

 

ふむ、少しやり過ぎた。日和号・改(びよりごう・あらため)賊刀・鎧(ゾクトウ・ヨロイ)を操ってたら楽しくなってきちゃって、必要ない殺戮をしてしまった。これじゃあ俺の苦手な節度の無い『俺TEEEE系』の人たちと同じじゃん。俺は結構本気で落ちみながらタバサと一緒に宿の裏手から移動していた。ちなみに表は……もう宿を経営し続けるには困難な状況になっている。ホントごめんなさい。

 

「っと。桟橋ってここでいいんだよな?」

 

「そう」

 

俺は目の前の大樹を見て確認すると、タバサはコクリと頷きいて返答した。む~、しかし近くで見ると本当にデカイな。こんだけ巨大な樹を見てるとアッチの世界の事思い出すなぁ。うちは一族(笑)とか千手一族(笑)とか……………やべ、嫌な事思い出しすぎて悲しくなってきた。

まぁいいや。俺は白眼を発動して樹の上を視る。

 

「ふむ、あの端っこから出て行った船って、もしかしなくてもリオン達が乗った船だろーなぁ」

 

俺は白眼を解いて近くの丁度いい段差に腰を下ろす。

 

「どうするの?」

 

「シルフィーで追いつけられる……か?」

 

「……難しい。この距離だと追いつく前に船が風に乗って加速してしまう。成体であれば加速しても追いつくことが出来る。でもシルフィードはまだ幼体。船が加速してしまったらもう無理」

 

タバサの説明に大きくため息を吐く。うーん、どうしよ。ジンから依頼された王子救命を手伝わないと報酬はさすがに貰えないからな~。

 

「あの船が加速する前に追いつければ、か。とりあえず、ダメ元で追ってみるか。追いつけたら儲けってことで」

 

「あなたに任せる」

 

俺のテキトーな提案にタバサもそこはかとなくやる気の無い返答をしてくる。ってことで笛を吹いてシルフィーを呼ぶ。

 

「きゅいー!!」

 

笛の音を聞いたシルフィーはすぐさま俺たちの前へと降り立つ。さすがに喋ることはせずに鳴声だけで返事をしてくる。

 

「シルフィー。あそこの船を追ってくれ。出来れば追いついてくれると嬉しい」

 

「きゅいきゅいっ!」

 

俺とタバサはシルフィーの背に乗って、船を追いかけるように頼んだ。シルフィーは頭を上げ俺が指差した方向、見ると船を視認したのか大きく鳴くと一気に飛び立った。

 

「で、なんであんたら船に乗ってないのさ?」

 

「足止めをされた」

 

と、リオンはすまさそうに言い返してくる。シルフィーに乗って勢いよく船を追ったのもつかの間、あの船が停泊していたと思われる場所を通りすぎた時、何故か船に乗っていなきゃいけない人物達が空を、正確には出航した船を見上げていたのを目撃した。

何故居るし? と思うもリオン達を置いていく訳にも行かず、急旋回してリオン達が居る桟橋へと降り立った次第。

結果、船は加速してしまい一気に空へと進んで行き、追跡不可能となった。まあ、あの感じじゃどっちにしろ追いつけなかったっぽいけど。

 

「えっと、そうなると船に乗ってるのって……」

 

「ルイズ、ワルドにキュルケ。それにチトセの4人だ」

 

ジンが俺の言葉を切って船に乗っていった人等を言った。ってかいろんな意味で不安しかないメンツだなぁ。

 

「君たち。何のん気に話してるんだね! 早く船を追わないと僕たち置いていかれてしまうよ」

 

「まあまあギーシュ落ち着けって。焦んなくたって目の前に船を追える手段があるんだ。みんなでシルフィードに乗って行けば直ぐに船に追いつけるって。な? そうだろ」

 

「いや、無理だし。船には追いつけんよ」

 

「…………え」

 

ギーシュの慌てようにジンがシルフィーで直ぐに追いつけると夢物語を言い出したのできっぱりと否定してやったらアホ面になった。

 

「え? いや、ちょっといいか」

 

さらにジンは俺の目の前で百面相とは言わないものの、表情豊かな顔芸をした後、腕を掴んできてリオン達と離れた場所へと連れてこられた。俺はノンケだ。そんな趣味はないから手を離せ。

 

「おいっ、どういうことだよ!」

 

「何が?」

 

「『何が?』じゃない! なんで追いつけないんだよ」

 

「いや、普通に考えて無理だって。人間5人も乗せてスピードが落ちる上に、この大空の中見失ってるんだぞ? さらにタバサ曰く幼体のシルフィーの速度じゃ風に乗った船の速さには追いつけんらしい」

 

「いやいやいや。お前忍だろ? あのNARUTOワールドの転生チート忍者なんだろ? だったら瞬身の術とか飛雷神の術とかその上位版的な何かでッ…」

 

と、ジンがまくし立ててくるが無理なものは無理。瞬身の術は術って言いながらただのチャクラ強化による高速移動だし、飛雷神の術はマーキングしてないと飛べないし。第一俺スペック系のチートだからと、そこらへんも含めて俺の持ってる能力及び術の中に即興で追いつくための物が無いと説明してやると、

 

「終わった……。ウェールズ死んだわ、これ」

 

orz状態になった。リオン達が不審な目で見てきてるので止めて欲しい。

 

「ってか、ジンは何か無いのか? お前だってどうせ変な能力貰って『俺TEEEE』なんだろ?」

 

「俺の持ってる能力ったって、空飛べるの無いし。………いや待て。サイコキネシスが……でもアレだと速度的に……、シルフィードに………重さを無くしてやれば……これだ!! おいちょっと耳貸せ、完璧な作戦を思いついた」

 

なんでこういう人達ってこうもテンションの上がり下がりが大きいんだろ。もうちょっと静かにゆるくなれないもんかねぇ。俺は心の中では最高に嫌がるも表面には出さず、ジンの提案を聞く。そしてジンの作戦とはこう言う事らしい。

ジンの能力の1つである重力操作でシルフィーごと俺たちに掛ってる重さを無くすとのこと。そうする事によりシルフィーの速度を底上げして船に追いつくという。ただしジンは能力のことを隠したいらしいので、この能力は俺の術って事して欲しいということだ。

なんて言うか……、雑過ぎないか? まあいいや、俺は別に構わないし。

 

「いいんじゃないか?」

 

「よし、なら早速行くぞ!」

 

俺の返事にジンはやる気満々でリオン達の所へと戻り、船を追いかける旨を色々と誤魔化しながら伝えていく。俺もシルフィーにこれから行なう事を説明して上手く飛んでもらえるようにお願いをする。

タバサにもちょいちょい誤魔化しながら説明したらジト目で睨まれた。なんか罪悪感。

さて、ジンからの説明も終わったのかリオン達もシルフィーの背へと乗り、ジンは俺へとアイコンタクト的なことをしてきた。俺がそれっぽいことするタイミングに合わせるというこのなのだろう。はぁ~、しょうがない。

 

「じゃあシルフィー行くぞ~。土遁・軽重岩の術(どとん・けいじゅうがんのじゅつ)

 

と、俺は術を発動したフリをする。それと同時にジンが例の能力を発動してシルフィー及び俺たちの重さを無くした。ちなみに俺は軽重岩の術の印を知らないので使えないのである。だってアレ岩隠れの秘伝の上に禁術レベルの術だから、土影本人か関係者しか使える人居ないっぽいし。どうやって印を知れというのか。おっと話しがズレた。

まあそう言う訳で、無駄思考してる間に重さの無くなったシルフィーはどんどん加速し、結構な速度で大空を舞い飛んでいた。

 

 

 

 

 リオンSide

 

「お、見つけた。シルフィーあそこだ」

 

キキがそう言ってシルフィードの移動方向を修正した。桟橋から飛び立ってからしばらく経ち、水平線の彼方から日が昇り始めて空が(しら)み始めた頃、目的の船に追いついたようだった。

 

「や、や、やっと、お、おい、ついた、のかい!?」

 

キキの見つけたと言う言葉に顔を真っ青にしたギーシュが震えながら呟いた。今、ここにいるメンバーで平気な顔をしているのはキキとキキに抱きかかえられているタバサだけだ。

船に追いつくためにシルフィードの移動速度を上げたためにその背に乗っている僕達への風圧が強くなり、尚且つ雲が眼下に見えるほどの高度での飛行。結果、寒風を長時間当たり続けると言う少々拷問じみた状況に陥っていた。

マントで身体を包み風を防いでいたが、それでも体力はどんどん削られていき僕やジンはなんとか耐えていたがギーシュはそろそろ限界に来ていた。

 

「おい、ギーシュの奴がそろそろマズイ。早く追いついてやれないか」

 

「ん? むう、この距離なら届くか? ……まあ大丈夫だろ。3人ともどこでもいいから俺の身体に触れててくれ」

 

僕の言葉にキキは少し考える素振りをすると、袖から何かを放り投げながら僕達にそう言ってきた。僕は風圧と寒さでまともに動けないギーシュを引っ張って共にキキの背に手を置く。ジンも同じ様に肩へと手を置いた。

 

「…ッ、…た、む、ちょい右。………よし、当たった。んじゃ送るから向こうの人たちへの説明は任せるな。シルフィー、重さ戻ると思うからバランスに気をつけとけよ」

 

キキは何かしらの準備が整ったのかそう言うと、

 

「な、なんだお前ら!?」「うおっ!」「いきなり現れたぞ」「魔法か?」「マントつけてるってことは貴族だよな?」

 

僕たちは船の甲板上に居た。遺跡なんかにあるテレポーターと同じようなことをしたのか? キキの使う力にはまったくもって驚かされる。

 

「どうした、一体何の騒ぎだ? ………ッ! 君たち、なんでっ!?」

 

船員達が僕たちのことで騒いでると奥の方からワルドが姿を現し、僕達の姿を見ると驚愕し、目を見開いた。

 

「ワルド子爵よかった。追いつけたようですね」

 

「……あ、ああ。 そうだね。君たちが無事でなによりだ。しかしよく追いつけたね。驚いたよ」

 

驚き固まっているワルドにジンは近づき笑顔で話しかけるとワルドもぎこちないが笑みを作り返していた。僕もいつまでも座り込んでいるわけにも行かないな。なによりギーシュを休ませてやらなければ。

僕は隣でガタガタと震えているギーシュに肩を貸し立たせてやる。

 

「おい、こいつを休ませてやりたい。部屋を用意して欲しいんだが」

 

「分かった、案内する。着いてきてくれ」

 

僕は近くに居た船員に声をかけて部屋へと案内してもらう。途中、甲板がまた騒がしくなったがシルフィードの鳴声が聞こえたのでキキ達乗り込んできたのだろう。

 

「ちょっとうるさいわねぇ。何なの……って、え、ダーリン? ダーリンじゃない!!」

 

「リオン!!」

 

「よかったわ、無事だったのね。でもどうやって……あっ、シルフィードに乗ってきたのね。ってことはタバサも一緒なのよね。甲板にいるのかしら」

 

「ちょっとキュルケ! リオンに引っ付きすぎよ! リオン、大丈夫…って冷たっ!? あなた身体すごく冷えてるじゃない。早く温めないと」

 

ギーシュを部屋へと送り届け、今後のことを話すために甲板へと戻るため通路を歩いていると部屋から出てきたキュルケとルイズにでくわした。2人は僕を見ると驚き、近づいてきてそれぞれまくし立ててきた。

 

「まったく。お前たちはもう少し静かにできないのか?」

 

「なぁっ! せっかくご主人様が心配してあげてるのになによその態度。大体リオンは使い魔としての自覚がね…」

 

「まったくルイズってば。ダーリンが居なくて寂しくてしょぼくれてたクセにダーリンに会った瞬間これだものねぇ。うふふふ」

 

「///////ッ!!? なななななんあないを言ってるのよっ! リオンが居なくてわわわた私が寂しいなんてにゃいんだから!」

 

「はいはい。あ、そうだわ。ダーリンにコレ返さなくちゃね」

 

キュルケは一通りルイズをからかうと思い出したようラ・ローシェルで預けた手紙を渡してきた。

 

「預かってもらっててすまなかったな」

 

「どういたしまして。でも追いつけるんだったら預かってる意味無かったわね」

 

「そうだな。でも元々追いつけるとは思っていなかったからな。この船にいること事態僥倖(ぎょうこう)というものだ」

 

僕は手紙を受け取り懐へと仕舞った。

 

「ちょっと待ちなさい。それ本当は私が持っているべきものでしょ。っていうかなんでキュルケなんかに預けたのよ!」

 

「別に近くに居たのがキュルケだったからに決まってるだろ」

 

「む。……そ、それじゃあ、なんでキュルケは私に手紙を渡さなかったのよ」

 

「だってあれはあたしがダーリンから預かったんだし、責任持たなきゃね」

 

「きぃぃぃぃっ! なにが責任を持たなくちゃよ! とにかくリオン! その手紙は私が持つわ、よこしなさいっ! って勝手に何処行くのよ、待ちなさいってば」

 

はあ、まったくうるさい奴らだな。僕はバカ騒ぎをしている2人を置いて甲板への移動を再開する。後ろからはルイズとキュルケが一旦止まったと思った言い合いをまたしながら追いかけてきた。しかし、本当にこいつらは言葉が尽きないものだな、そこにだけは感心する。

 

 

 

 

 

 


 
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