No.696897

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-06-27 15:02:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:584   閲覧ユーザー数:551

 

 

 

 story03 戦車捜索

 

 

 

「とは言うものも・・・・・・どこにあるって言うのよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 学園の駐車場で武部が腕を上げて叫ぶ。

 

 西住達と先ほど如月の元にやって来た三人の女子生徒と共に戦車の捜索に入っていた。

 が、これが中々難航していた。

 

「さすがに駐車場に戦車は無いかと」

 

「だって一両は車の事じゃん。そうだ!裏山に行ってみようよ!何とかを隠すには林の中だって言うし!」

 

 武部は裏山の方へと向かい、「それは森です」と口にして五十鈴が後に付いていく。

 

「・・・・私達も裏山に行くか」

 

 内心で呟いて、如月が歩こうとした時、西住は木の方を見ていた。

 

「どうした?」

 

「あ、いえ」

 

 西住はすぐにこっちを向いて武部達の後を追う。

 

「・・・・・・」

 

 しかしその後も木の方をチラチラと見ていると、木の陰より一人の女子生徒が出てきてこっそりと付いていく。

 

 

「あ、あの!」

 

「ふぇ!?」

 

 と、西住は後ろを振り返って女子生徒に声を掛けると、女子生徒は驚く。

 

「よかったら一緒に探さない?」

 

「い、いいんですか!?」

 

 女子生徒は驚くも表情に笑みがこぼれる。

 

「あ、あの、普通二科二年C組の『秋山優花理』と言います!不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

 秋山は頭を下げると、武部と五十鈴が西住の近くまで来る。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。五十鈴華です」

 

「武部沙織!」

 

「私は――――」

 

 

「存じ上げております!西住みほ殿と如月翔殿ですよね!」

 

「え?は、はい」

 

「あ、あぁ」

 

 なぜか西住と如月の名前を知っており、二人は少し戸惑う。

 

「では、よろしくお願いします!」

 

 秋山が右手を伸ばしてこめかみ辺りに当てて敬礼をすると、駐車場に止まる車の間より出てきた早瀬が「あれ?」と声を漏らす。

 

「秋山じゃん!」

 

「おぉ!早瀬殿に鈴野殿、坂本殿ではありませんか!」

 

 と、早瀬に続いて鈴野と坂本が出てきて、秋山が名字を呼ぶ。

 

「知り合いか?」

 

「はい!最近知り合ったばかりですが、気の合う話相手なんです」

 

「そうなのか」

 

 以外と居るものなんだな・・・・

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「しかし、まさか戦車捜索から始まるなんて」

 

「私も思ってなかったよ」

 

 と、山道を歩きながら返事をする。

 

 あの後西住達と共に裏山に入り、それぞれ別ルートを進んでいる。

 しかし、今思えばここが船の上だって言うのが本当に忘れてしまうほどだ。

 

「でも、こんな山奥に戦車が本当にあるんでしょうか?」

 

 坂本が周囲を見渡しながら聞いてくる。

 

「確証は無いが、雑木林の中に戦車が遺棄されている可能性はある。

 巨体な戦車でも、雑木林内では色が目立たなければ遠目では分かりづらい」

 

「確かに・・・・見つけにくいかもしれませんね」

 

「でも、もし見つからなかったら?」

 

 と、坂本が少し不安そうに聞く。

 

「探す場所はいくらでもある。世の中楽な方法は無いからな」

 

「・・・・確かに・・・・そうですよね」

 

 ボソッと鈴野が呟く。

 

 

 

 

「あの、聞いてよろしいでしょうか?」

 

「何だ?」

 

 と、坂本が私に聞いて来た。

 

「如月さんは中学時代の戦車道で、印象に残った試合はあるんですか?」

 

 すると鈴野と早瀬が反応を示す。

 

 

「・・・・そうだな。一番印象に残っているのは・・・・三式中戦車に乗って相手校のM26パーシングを撃破したのが一番だな」

 

「えぇ!?三式で重戦車をですか!?」

 

「まぁ撃破と言うより、それに近いといった感じだが、まぐれなことだ。

 エンストしたか知らんが、動きを止めているパーシングが居てな。足を止めるべく榴弾を放ったのだ」

 

「それで?」

 

「まぁ向こうも黙ってやられるわけではない。主砲をこちらに向けるとすぐに撃ってきたよ。まぁすぐにこっちも動き出したが、それで狙いが思いっきりずれた」

 

「・・・・・・」

 

「だが、すぐに砲塔を旋回させて砲弾を放ったところ、パーシングのマズルブレーキに着弾して、吹き飛ばす事が出来た。

 撃破には至らないが、戦闘不能に陥れた」

 

「運絡みでも凄いですよ!」

 

 と、半分興奮気味で坂本が言う。

 

「と言うより、その時如月さんが砲手を?」

 

「あぁ。こう見えても砲手を最初にやっていて、時々操縦手やっていたな。まぁ三年からは車長に専念した」

 

「そうだったんですか」

 

「って、何気に殆どの役をやっているんですね」

 

「まぁな」

 

 

 

「あと、もう一つ良いでしょうか?」

 

「何だ?」

 

「少し聞きずらいんですけど、如月さんは・・・・その・・・・えぇと」

 

 坂本は言葉が続かない。

 

 聞こうとしている内容は、如月もすぐに察した。

 

 

「こんな姿になってしまった、か?」

 

「は、はい」

 

「っ!」

 

 と、早瀬がキッと坂本を睨む。

 

「鈴!!如月さんに向かってなんて事を聞いているんだ!!」

 

「え、え?」

 

 いきなり怒鳴られて坂本を戸惑う。

 

「あんたは如月さんがどんな目に遭ったのかを―――――」

 

 

 

「昴。落ち着いて」

 

 これ以上熱が上がらないように、鈴野は早瀬を制止させる。

 

「だけど!」

 

 

「・・・・鈴はあの場には居なくて、事実を知らないままでしょ?悪気は無いはず」

 

「それは・・・・」

 

 早瀬は言葉を詰まらせる。

 

「そうなのか、坂本」

 

「は、はい。如月さんが卒業した後に戦車道を取ったんです。まぁ、あんまり活躍したと言うわけではありませんでしたが」

 

「そうか・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

「そ、その・・・・すみませんでした!何も知らずに、こんな事を聞こうとして!!」

 

 坂本は深く頭を下げる。

 

「気にするな。お前は事情を知らなかったのだ。故意で言わなければ、私は怒らんさ」

 

 如月が坂本の肩に右手を置くと、坂本は頬を少し赤く染め、「はい!」と返事を返す。

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

「とは言うものも・・・・」

 

 それから山道を歩きながら雑木林を探すも、山の中腹辺りまで来ても戦車らしきものすら見つからない。

 

「こうも見つからないとは・・・・こいつは中々厳しくなってきたな」

 

「は、はい」

 

「そうですね」

 

「・・・・・・」

 

 さすがに元気だった三人も少し疲れが見えていた。

 

 

「しかし、こんな所にスクラップ置き場があるとはな」

 

 私が後ろを振り向くと、そこに屋根があって使えなくなった機材や鉄屑が山積みに集められたスクラップ置き場があった。

 何十年もここに集められているのか、物凄い量の錆びたスクラップが積み重ねられている。

 

「見るからに問題になりそうだな、こいつは」

 

「確かに言えてますね」

 

「でも、なんでこんな所にあるんでしょうか?知り合いの船舶科の話だと、スクラップ置き場は学園艦の底にあるって聞いてますけど?」

 

 坂本はスクラップの山を見ながら呟く。

 

「昔放棄したスクラップをそのまま放置しているのだろう。まぁある程度片付けられては居るようだが」

 

 しかし以前まではまだあったと思われ、スクラップの山の横の地面には鉄錆の欠片が落ちている。

 恐らく最近片付けられたのだろう。

 

「はぁ。もしこの山の中に戦車があったらいいですね」

 

 坂本はぶつぶつとぼやく。

 

「そんな楽な事を誰も考えは―――――」

 

 だが、如月は最後まで言う前に、スクラップの山を見てある違和感を覚える。

 

 

 

「如月さん?」

 

 急に黙り込んだ私に早瀬が首を傾げる。

 

「・・・・案外・・・・楽な事もあるのだな」

 

「はぁ」とため息を付く。

 

「え?」

 

 鈴野は顔を上げてスクラップの山を見る。

 

「あっ」

 

 と、早瀬はスクラップの山を見つめているとあることに気づく。

 同時に坂本と鈴野も気付く。

 

 

 よく見ると、スクラップの山の中に、何やら不自然に真っ直ぐな鉄材が混じっていた。しかもその周りが不自然に盛り上がっている。

 

 

「分かったのなら、行くぞ」

 

「「「はい!」」」

 

 と、如月はスクラップの山に近付いていくと、三人も少し慌てて後に付いて行く。

 

 

 

 

 しばらく錆臭い中汗だくになりながらも鉄屑を退かして行く事一時間半後―――――

 

 

 

 

「・・・・これは」

 

 鉄屑の中より姿をあらわしたそれを見て鈴野が声を漏らす。

 

「眠り姫とのご対面って所か」

 

 汗だくになって顔が汚れる事を気にせず、四人はスクラップの中に隠れていたそれを見る。

 

 

「これ、そこそこ強力な戦車ですよね?」

 

「しかもレアな分類に入る戦車ですよ!」

 

「あぁ。しかし、よくこんなものがあったな」

 

「そうですね」

 

 スクラップの鉄屑の山の中に埋まり、四人の視線の先には深緑色の巨大な車体を持つ旧日本陸軍最後の戦車――――――

 

 

 

 

 

 

 ――――――『五式中戦車チリ』があったのだ。

 

 

 それが私達と共に戦う相棒との出会いであった。

 

 

「とにかく、見つけたものは見つけたのだ。生徒会に連絡を入れるか」

 

 如月はスカートの右ポケットより携帯電話を取り出して生徒会に連絡を入れる。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 その後鉄屑の山を探っていると何やら戦車のパーツの一部らしきものが見つかり、更に見覚えのあるような形状のマズルブレーキを持つ砲身が見つかった。

 

 西住達が山の中で38tを見つけ、バレー部が崖で八九式を、歴女チームが池の底で三突を、一年がウサギ小屋でM3を見つけた。

 

 これにより私達が見つけた五式中戦車と倉庫のⅣ号を含めれば六両の戦車が揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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