No.694237

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第83話

2014-06-15 19:23:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2342   閲覧ユーザー数:2209

 

リィン達と共に集落に到着したグエンは故障した運搬車を修理し、その後―――リィン達やグエン、依頼によって保護したカメラマンを歓迎する宴会が長老宅で開かれた。

 

~夜・ノルドの集落~

 

「いや~、グエン殿には本当にお世話になりっぱなしだわい。それでは、まず一献。」

「おっとっと。それじゃあ返杯を、と。ほれほれラカン殿もガンガン行くがいいじゃろ。勿論、精霊や異種族のお嬢さん達も歓迎されているんじゃから、ガンガン飲むといいじゃろ。」

長老と酒を酌み交わしたグエンはラカンや大人たちと共に座っているフィニリィ、リザイラ、ベルフェゴール、アムドシアス、ペルル、ミルモに視線を向け

「ええ、遠慮なく。」

「うむ!歓迎してくれた礼に後で我の演奏を聞かせてやろう!」

グエンの言葉にラカンとアムドシアスは頷き

「うふふ、まさか貴女とお酒を酌み交わす時が来るとは思いませんでしたわ、リザイラ。」

「ふふふ、それはこちらの台詞ですよ、フィニリィ。精霊を統べる者達がこうして酒を酌み交わす等、もしかしたら初めてかもしれませんね。」

フィニリィとリザイラは微笑みながら互いの酒を酌み交わし

「フィニリィ様とリザイラ様はよくお酒なんて飲めるよね?果物の方が甘くて美味しいのに。」

二人の様子を見ていたミルモは首を傾げ

「それにしても気付けば凄いメンツが集まったものねぇ。魔神が二柱に精霊の王族が二人もいるなんて。」

「アハハ……ボクとミルモだけ何だか場違いな気がしてきたよ……」

ベルフェゴールとペルルはそれぞれ苦笑しながら周囲を見回した。

 

「いや~、何というか驚いたね。あのグエン・ラインフォルトがこんな場所で暮らしてたなんて。」

一方その様子をリィン達と同じテーブルでご馳走を食べていたカメラマンのノートンは目を丸くしてグエンを見つめた。

「やっぱりその筋では有名な人なんですよね?」

「そりゃあ、導力革命を受けてラインフォルトをあそこまで巨大なグループにした立役者だからね。娘さんが会長を継いでからはさらに巨大になったけど。」

「ラインフォルトと言えば昔は火薬を使った銃や大砲を手がける武器工房というイメージだったが……いつの間にか、鉄道や導力兵器を大々的に手がけていたような印象だな。」

リィンの疑問に答えたノートンの説明を聞いたユーシスは自分が感じていた事を口にした。

 

「ああ、貴族の人にとったらそんな感覚かもしれないですね。実際、ラインフォルトは帝国だけじゃなく大陸諸国でも手広く販路を拡大している上異世界にも進出しようとしている噂もあるぐらいだし……その意味では、帝国では珍しい”国際人”ともいえるかもしれない。」

「なるほど………」

「物知りとは思ったが、そこまでの人物だったとは……」

グエンの過去を知ったガイウスは驚いた様子で話を聞いていた。

 

「しかし、その彼がどうして会長を辞めたのかは謎なんだよな。一説には病気と言われてたけど見た感じ全然元気そうだし。こりゃあ、あの噂の方が正しかったのかもしれないな。」

「あの噂?」

「なんだそれは?」

ノートンが呟いた言葉が気になったリィンとユーシスは不思議そうな表情で尋ね

「おっと、何でもない。ゴシップみたいなものさ。俺はブン屋じゃないからね。不確かな噂は控えておくよ。」

尋ねられたノートンは答えを誤魔化した。

 

「アリサさん?」

「ボーっとしているようですけど、どこか具合が悪いのですか?」

一方大人の女性達と共に色々な事を話していたエマとプリネはアリサが呆けている事に気付いて尋ね

「ん……料理が美味しすぎて食べ過ぎちゃったみたい。少し苦しくなってきたから風に当たってくるわ。」

「そうですか…………」

「………………」

アリサの答えを聞いてそれぞれ納得いかない様子でアリサが住居を出て行く様子を見守り

(アリサ……?)

リィンは首を傾げて見つめていた。そこにエマとプリネが近づいて来てリィンに小声で話しかけてきた。

 

(その、何だかちょっと風に当たりたいって……リィンさん、できればついてあげてくれませんか?)

(もしかしたら何か悩みがあるかもしれませんし……誰かが聞いてあげた方がいいと思います。)

(それは構わないが……って、どうして委員長やプリネさんじゃなくて俺なんだ?)

エマとプリネに促されたリィンは戸惑いの表情で尋ねた。

 

(そこはほら、適材適所というやつですよ。)

(ええ、そうですね。)

(意味がわからん……けどまあ、行ってくるよ。)

そしてリィンもアリサの後を追うかのように住居を出た。

 

「…………ふう………………バカみたい……一人で空回っちゃって…………」

外に出たアリサは溜息を吐いた後複雑そうな表情でかつての幼い頃を思い出した。

 

~数年前~

 

「ほーら、アリサ。すっごい風景じゃろう!」

「うん、すっごいね!」

老人の言葉に幼いアリサは嬉しそうな表情で頷き

「ほらほら、二人とも。予定が押してるんだからさっさと行くわよ。」

「まあまあ、いいじゃないか。滅多にない休暇だ。君も少しは羽根を伸ばすといい。」

二人を急かそうとする女性を眼鏡の男性は苦笑しながら諌めていた。

 

~現代~

 

「…………………………」

「……アリサ?」

かつての幼い頃を目を閉じて思い出していたアリサにリィンが近づいてきた。

「リィン…………ど、どうしたの?あなたも食べ過ぎたとか?」

「ああ、結構頂いたかな。でも大丈夫か?フラついてるみたいだけど。」

「べ、別にちょっとぼうっとしてるだけで……少し風に当たればどうってこと―――きゃっ。」

アリサが突如倒れかけるとリィンがアリサに近づいてアリサを支えた。

 

「ご、ごめんなさい。」

「ほら、言わんこっちゃない。無理もない。今日は一日中、馬に乗ってたし、しかもリザイラとの激しい戦闘を繰り広げたからな。かなり体力を消耗したんだろう。」

「そっか……そうよね……そんなことも自分で気付かなかったんだ……」

リィンの指摘に頷いたアリサは疲れた表情で顔を俯かせて黙り込んでいた。

 

「……アリサ。空を見上げてみなよ。」

その時ふと空を見上げたリィンは呟き

「え…………」

リィンの言葉を聞いたアリサが空を見上げると夜空は雲一つない満天の星空だった。

「あ――――……………………」

「はは……昨日は早く寝ちゃったから気付かなかったんだな。でも……風に当たるなら、俯いているより見上げた方がいいんじゃないか?」

「…………………………ええ、まったくだわ。」

そして二人が草原に寝転んで満天の星空を見つめているとやがてアリサが口を開いた。

 

「―――――8年前だったわ。技術者だった父が亡くなったのは。それをきっかけに、私の家は大きく変わってしまった。当時、取締役だった母は事業拡大に没頭するようになって……”家族”を殆んど顧みなくなったわ。」

「そうだったのか……………確かに、随分やり手というか凄腕といった女性だったけど。」

「実際は、ルーレ駅で会った印象の数倍くらいは強烈でしょうね。一緒に食事できる機会すら3ヵ月に1度あるかどうか………代わりに一緒にいてくれたのがお祖父様と、シャロンだったの。」

「そうか……シャロンさんとの付き合いも結構長いんだよな?」

シャロンとアリサの親しげなやり取りを思い出したリィンはアリサに尋ねた。

 

「ラインフォルト家に来てから7年くらいになるわね。………家が家だから、子供時代、本当の意味での友達は少なかった。貴族の子からは疎まれ、平民の子からは特別扱いされ……でも、二人がいてくれたから少なくとも寂しくなかったわ。お祖父様は、乗馬やバイオリンなど色々な趣味の手ほどきをしてくれたし……シャロンから護身術や弓の扱い、貴族の子女並みの礼儀作法を教わった。………いっぽう母は………会長である祖父の意向を無視して際限なくグループを拡大していった。」

「そうだったのか………でも、元々かなり大きな技術工房ではあったんだろう?」

「ええ、鉄鋼や鉄道から戦車や銃のような兵器まで………”死の商人”と揶揄されるだけのモノ作りはしてきたと言えるわね。そのこと自体、複雑ではあるけど”恥”と思ったことは一度もないわ。でも――――ここ数年、ウチが作ってきたものを考えると、さすがに行き過ぎとしか思えない。」

「ここ数年作ってきたもの……?」

複雑そうな表情で話をしたアリサの話を聞いたリィンは首を傾げた。

 

「聞いたことくらいあるでしょう?帝国東部、ガレリア要塞に2門設置されている”列車砲”のことは。」

「ああ……噂くらいは。何でも、世界最大の長距離導力砲なんだってな。」

「私もスペックしか知らないけど恐ろしいほどの破壊力よ。共和国とメンフィル帝国と領有権争いをしていた”クロスベル自治州”の全域をカバー。たった2時間で、人口50万ものクロスベル市を壊滅できるらしいわ。」

「………とんでもないな。戦争というより、虐殺にしか結びつかないと思うんだが……」

アリサの話を聞いたリィンは溜息を吐いた後複雑そうな表情をした。

 

「ええ、私もそう思う。そして……母が受注したその兵器の完成に立ち会った祖父も同じだった。何というバチ当たりな兵器を造ったんだろうって悩んだみたい。そして、帝国軍に2門の列車砲を引き渡すか迷っていたところで……取締役だった母の裏切りに遭った。」

「え―――――」

「ラインフォルトグループの大株主全員を味方につけたのよ。ルーレの領主であるログナー侯爵から帝国軍の有力人物まで……貴族派・革新派双方の意を受けてお祖父様は退陣を余儀なくされ……母の新会長への就任が決定した。」

「…………………」

悲しそうな表情で答えたアリサに言葉がかけられないリィンは黙り込んだ。

 

「お祖父様は……私を残してラインフォルトを去った。味方だと思ってたシャロンも雇い主である母に従うだけだった。それが――――5年前の出来事よ。」

「そうか…………………アリサは……納得が行かなかったんだな?お母さんのした事というより”家族”が壊れてしまったことが。」

アリサの過去を聞き終えたリィンは考え込んだ後、アリサが士官学院に来た理由に気付いてアリサに視線を向けた。

「ええ………そうね。実の親を陥れた母様も、それをただ受け入れたお祖父様も私は納得が行かなかった……あれだけ優しかったシャロンが何も言ってくれなかったことも。ラインフォルトグループの存在が私が思っているより遥かに巨大で………その重みの前には、家族の絆なんて意味がないなんて絶対に認めたくなかった。だから私は――――実家を出て士官学院に入ったのかもしれない。」

「…………………」

アリサの説明を聞いたリィンはアリサを見つめて黙り込んだ。

 

「ふふっ、でも結局全然、母と家から逃げられなくて。お祖父様はお祖父様で飄々と第二の人生を楽しんでて。私一体何をやっているんだろうって一時期滅入ってた所だったけど……………―――この星空を見上げたらどうでも良くなっちゃったわ。やっとわかった気がする。どうしてお祖父様がこの地に移り住んだのかを。」

「そっか……―――やっぱりアリサは強いな。こうして俺に色々と話してくれたってことは………多分、前に進めるきっかけが掴めたってことだろう?」

静かな笑みを浮かべて星空を掴むかのように片手を上げたアリサに続くようにリィンも片手を上げた。

 

「ふふっ……そうね。だとしたら、それはきっと士官学院に入ったからだと思う。Ⅶ組のみんなに、部活のみんな……本音で向き合える仲間と出会えたから私は強くなれた。だから――――ありがとう。心配してくれて……空を見上げろって言ってくれて。」

自分を心配してくれたリィンに様々な思いを持つアリサは頬を赤らめて微笑みながら見つめた。

「はは……どういたしまして。白状すると、追って来たのは委員長とプリネさんに促されたからでさ……そのあたりは申し訳ない。」

「ふふっ、だろうと思った。まあいいわ、そのあたりは今後の課題ということで。」

リィンが自分を追って来た理由が予想通りな事に苦笑したアリサは口元に笑みを浮かべてリィンを見つめ、二人はそれぞれ起き上がった。

 

「そういえば、私を強いって言ってくれたけど……貴方だって色々と頑張ってるじゃない?実習ではリーダーとしても引っ張っていってくれてるし。それにプリネの護衛もしているじゃない。」

「はは、自由行動日に似たような事をしてるからな。護衛の件だって、プリネさん自身が強いから守る時が見つからない上、肝心な所はレオン教官が守っているしな。―――でも、まだまださ。”自分”から逃げてるようじゃ。」

「え…………」

静かな表情で語ったリィンの言葉に訳がわからないアリサは呆けた。

「前に”自分を見つける”なんて格好つけた言葉を言ったけど……本当は、ただ逃げてるだけじゃないかって不安に駆られる時がある。家族からも――――自分自身からも。」

「…………………その、ご家族とあまり上手く行ってないの?」

「いや、血は繋がっていなくても両親とも俺を慈しんでくれている。エリゼの双子の妹のエリスとは最近すれ違いが多いけどまあ、仲は悪くはないと思う。全部……俺自身の問題なんだ。」

「リィン……………………」

重々しい様子を纏って答えたリィンの話を聞いたアリサは心配そうな表情で見つめた後考え込み、やがて口を開いた。

 

「―――でも、そういう風に言えるってことは……多分、前に進めるきっかけが掴めたってことでしょう?」

「!」

アリサの指摘に驚いたリィンは目を見開いた。

「ふふっ、もらった言葉をそっくりそのままお返しするわ。いつも、どれだけ恥ずかしい言葉を臆面もなく言ってるか…………少しは自覚するといいんじゃない?」

「はは……―――参った、一本取られたよ。そうだな、俺も少しずつ前に進んで行けるんだよな。学院に入って、Ⅶ組のみんなや同級生や先輩達と出会えて……―――こんな風にみんなと同じ時間を共に過ごすことで。」

ジト目のアリサに見つめられたリィンは苦笑した後今までの出来事を静かな笑みを浮かべて思い出してアリサを見つめた。

 

「ええ、きっとそうよ。この特別実習だってきっと私達の糧になるわ。だから―――――」

リィンの言葉に頷いたアリサだったが何かに気付いた。

「こんな風に”みんな”と…………?」

そしてある言葉が気になったアリサが首を傾げたその時

「あー、コホン。」

ユーシスが咳払いをする声が聞こえ、声を聞いたアリサが驚いて振り向くといつの間にかⅦ組のメンバーが二人を見つめていた。

 

 

 

 


 
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