No.689722

貴方はどなたで私はどなた(前)

ここのつ者全員での入れ替わりネタ
投稿遅くなって申し訳ないと思っております。
前中後編仕様にしました長ェ
【ここのつ者(敬称略)】(全員)
魚住凉、遠山黒犬、猪狩十助、玉兎苺、金鳥梨、黄詠鶯花、鳶代飾、藤野楜亜羅、砥草鶸、紫桜猫、白鷺ユウ、雨合鶏、蒼海鬼月、雀崎朔夜、犀水陽乃、雁ヶ音糺、野槻狢、十刃竜吾、音澄寧子

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2014-05-27 19:02:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:399   閲覧ユーザー数:386

「今回は本当にありがとうでやんす!!これがお礼でやんす!!」

微妙になまった口調で分福茶助は集まっているここのつ者たち(中には偽り人もいるが)の前に『お礼』を運んできた。

今回彼らが手伝ったのは異国人の荷物運搬だった。人員がとにかく必要ということで茶助は知り合い全員に声をかけたのだ。

お蔭で随分と大規模な手伝いになった。

その時ちょうど偽り人である海原鯱と八蜘蛛魅夜も手伝い、今ここのつ者たちと一緒に居間のこたつに入っている。

本来なら手配書に顔が載っている彼らと居間に一緒に座るというのは中々考えられない行為なのだが、何分ここにいるのはここのつ者と呼ばれる者たち、自分たちの手伝いをしてくれた人を同心に突き出すなんて真似はできなかった。

「わっわっなにこれ!こんなお菓子見たことない!!」

「うぉ~っうまそう!」

茶助が差し出したお菓子に真っ先に飛びついたのは玉兎苺と遠山黒犬だった。

桃色の美しい髪をピョコピョコと跳ねらせ、苺はキラキラした目でお菓子を見つめる。

黒犬も、尻尾があったら振っているであろう喜びに満ちた表情でお菓子に魅入っていた。

何せ彼ら二人は「お礼に珍しいお菓子がもらえるでやんす」という言葉を聞いて釣られたようなものであった。

「あぁ、このお菓子見たことありますね、えっと…ゼリー…でしたっけ」

「寒天みてぇなもんなのか?」

「そうですね、でも寒天よりも甘くて美味しいみたいですよ」

茶助が持ってきた菓子の名称を呟いたのは砥草鶸だった。

興味深そうに眺める蒼海鬼月に菓子の説明をしている。昔異国へ行った事があると言うなら確かな情報だろう。

「おっ菓子かぁ、いいねぇじゃんじゃん持ってきてくれ!」

「鶏様少々飲み過ぎではありませんこと」

「そうですよ!お酒臭いです~っ!!」

部屋の奥で酒を飲んでいた雨合鶏が声をあげる、その勢いに滅入っているのか雁ヶ音糺と紫桜猫が顔をしかめながら文句を言う。

「あっあの!もう食べてもいいんですよね!?」

「勿論でやんす!!」

楽しみに耐えかねたように鳶代飾が茶助につめより尋ねた。その時にはもう既に苺と黒犬はゼリーを頬張っていた。

その声を合図にしてか、飾がゼリーをとるのに続いて、ここのつ者たちは各々ゼリーをとり、食べていった。

 

(透明で味がないのかなと思いましたが…意外と甘いですね…)

初めて食べる異国のお菓子を噛みしめながら魚住凉は感想を脳内で述べた。

水っぽいそのお菓子は、彼女の好みであった。

 

「ん!!うめぇなこれ!なんだ果物みてぇな味がする!!」

「ホントですね!!俺こういったお菓子は食べたことないので新鮮です」

「むむっ浮かんだのにゃ!!」

 

珍しいお菓子にそれぞれ感嘆の声をあげるここのつ者たち、それを微笑ましいなと眺めながら凉はそろそろ日が遅いということに気付く。

 

「あの、今日は皆さん泊まっていかれませんか?手伝いもあるでしょうし」

視線を魅夜と鯱にむける。

「えぇ、勿論喜んで、ですわ、正直体がキツイですから」

「……ん……泊まる…」

他の者たちも今夜は泊まることに賛成のようだ。

 

 

 

「…くぁ~……」

部屋の奥で大きなあくびをしたのは十刃竜吾だった。そしてそれにつられるように藤野楜亜羅が自身の手で口を覆いながら控えめなあくびをする。

「あの…私今日はもう寝ますね……」

さすがに14の体に重労働はきつかったのか瞼も落ちかかっている。

「わ、私もそろそろ……」

目をこすりながら自身の部屋へと向かった楜亜羅につづくように犀水陽乃もわたわたと自分の部屋へ向かった。

 

その後もここのつ者達は談笑をつづけ、そこから一人…二人と眠りについていった。

そしてこの時はまだ誰も思いもしていなかったのだ……あの惨劇を……。

 

 

       ◆◆◆

「ん……」

閉じた瞼にかすかに入る日の光、遠くから聞こえる鳥の鳴き声、朝だ。

昨日は少し遅くまで談笑しすぎたな、ぼーっとした頭で凉は思う。

春は近いが未だすこし肌寒いこの季節、布団から出るのに少し抵抗を覚えつつむくりと起き上がる。

「ふわぁ~……」

ここで彼女は自分の声に少し違和感を覚える。

風邪でもひいてしまったのだろうか、何故だかやけに低い声であったような。

しかも何故であろう、頭が痛い。決して遅くまで起きたわけではないし、風邪でも引いたのであろうか…。

そう思い自身の頭に手をやる…が。

「……あれ?」

そこで凉は自身の手が視界に入ることにより背筋が寒くなるほどの違和感を覚える。

自分の手じゃ、ない。

 

慌てて両手を確認するどう見ても自分の手じゃない、というよりかは、女の手ではない。

ゴツゴツとしていて大きい、そうここのつ者の人間で例えるなら雨合という男性あたりの…。

 

そこで凉は何が起きているのかわからない思考のまま鏡の前まで膝立のまま進んでいく。

そして鏡に映った自分の姿を確認する。

「………嘘…」

 

鏡の向こうからこちらを驚いた表情で見ているのは自分、魚住凉の顔ではなく。

 

雨合鶏の顔であった。

 

「…こっ…これは……」

何度も鏡を見返し自分の(正確には雨合の手であるが誤解を生むので自分と表す)両手で体を触り確かめるが、どうやら自分はどうやってかはわからないが雨合の体になってしまっているらしい。

トカゲ(手配書に載っている偽り人の一人、変装が得意である)の悪戯である可能性を考慮して剥がれるのではないかと頬をひっぱってみたが自分が痛いだけであった。

顎にあるトゲトゲとした髭も、左頬にある特徴的な傷も、撫でて確かめる。

 

「そんな………」

 

そこで凉は一度自分の体は、という思考に至る。

自分が雨合さんの体ならば、まさか自分の体は…………。

 

こうしてはいられないと直ぐ凉は身支度を済まし、部屋を出るのだった。

 

       ◆◇◆

とりあえず皆居間にいるであろうと考えた凉はそこの障子を開ける。

 

「あっ雨合さん」

 

誰かがあげたであろう声は口調と声が一致していなかった。

 

そこには既に何人かが座っていた。だけれども皆、どこか様子がおかしい。

やけに大人のオーラを発する玉兎苺に、姿勢よく正座をして無表情の猪狩十助、あぐらをかきすごい形相の紫桜猫、やけにニカニカしている熊染、これらの面子は普段の彼らを見ていれば二度見せざるを得ない様子だ。

他にも八蜘蛛魅夜と犀水陽乃、白鷺ユウ、鳶代飾の姿が見えるが、他の皆に比べれば大した変化はない(しかしやはりどこか様子が変だ)。

 

まさか…と思いつつも凉は声をあげる。

 

「……えっと…すみません、私も混乱していて今イチ状況はつかめていないのですが、私は魚住凉です、先程起きたらこのような姿に…」

「やっぱりか…」

凉の声に反応して声を漏らしたのは紫桜猫、だがその口調から恐らく彼女(彼かもしれないが)も自分と同じ被害にあっているのだろう。

「あの…これは一体…」

「俺らもまだ混乱してんだ…だがどうやら皆中身と体が入れ替わっちまってるらしい、あ、ちなみに俺は蒼海鬼月だからな?……ったく変な気分だぜ」

口調から薄々勘付いてはいたがやはり鬼月さんだったようだ。

 

「ここにいる皆さんも…ですか?」

「あぁ」

 

「えっ?で?おっさんが巫女さんなのか?」

相変わらず声と口調があわないのだが、質問してきたのは熊染であった。

「…えぇ…あの…熊染さん…ではないですよね?」

「んっ?あぁ、十助だ!!」

やけにキラキラして言ってくる、薄々気づいてはいたがこれは喜んでいる、…身長が高くなったからであろうか。

 

「…それで苺さんは…」

………何となくその気配で察しはつく。

「……朔夜さんですか?」

「…えぇ、その通りですわ」

あぁ…いつも無邪気な天使の笑顔がまるで女神の笑顔だ…。

 

「……これは一度整理する必要がありそうですね…

紙と筆を用意します、ここにいる皆さんだけでいいので、自分の名前を書いてみせていただけますか?」

 

      ◆◇◆

 


 
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