No.687788

機動戦士ガンダムSEEDDESTINY 失われた記憶を追い求める白き騎士

PHASE0 プロローグ

2014-05-19 00:23:08 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3245   閲覧ユーザー数:3092

━━痛い……━━

 

━━ここは、どこなんだ……?━━

 

━━俺は……ダレだ…………?━━

 

━━どうして……なにも、わからない……?━━

C.E.(コズミック・イラ)30年代にピークを迎えた遺伝子改変ブームによって、人類は新たな対立の図式を作り出す事となった。受精卵の段階で遺伝子を操作されて生まれた、『コーディネイター』と呼ばれる新たな人類は、旧知の『ナチュラル』にとっての脅威となった。彼らコーディネイターは知力、体力、全ての能力においてナチュラルを凌駕し、その数こそ少ないものの、学術、スポーツなど、あらゆる分野のトップを占めるようになる。やがてその格差が対立を生み、数において不利なコーディネイターは地球各地で迫害を受ける事となった。

住み慣れた土地を追われ、彼らが目指した安住の地は、宇宙だった。のちにコーディネイターたちの本拠地とな る『プラント』はC.E.50年代から着工し、エネルギー問題に悩む地球に、豊富な宇宙資源から得られたエネルギーと、無重力を生かした工業産物を供給する役割を負っていた。その利益は一部の地球におけるオーナー国が独占し、彼らはプラントに武器と食糧の生産を禁じる事で、自らの支配を覚 悟たるものとした。いわれのない支配と搾取。当然コーディネイターたちはそれに反発し、独立と対等貿易を地球側に求めた。繰り返し話し合いの場が持たれたが、そのたび決裂に終わり、両者の緊張は徐々に高まっていく。

そして━━C.E.70年、『血のバレンタイン』の悲劇によって、地球、プラント間の緊張は、一気に本格的武力衝突へと発展した。

それから早くも二年が経ち、C.E.71年9月27日、第二次ヤキン・ドゥーエの終戦を機に、一年後のC.E.72年3月10日、地球連合とプラント間に停戦条約としてユニウス条約が締結された。

 

しかし、それでも争いは終わらなかった。

 

ナチュラルとコーディネイターの間に生まれた溝は、停戦後も依然埋まることもなく、むしろ時間とともにより深さをましていっていた。

 

もちろんそれだけではない。

 

世界には国家群に関係無く民族戦争もあった。宗教戦争もあった。各地で続く小競り合いのような内乱もあった。戦争が終わってもなお、世界にはには戦争の影が色濃く残っていた。

L5(ラグランジェ5)宙域、月と地球と三角形で結んだ形で位置するこの宙域に存在するのは、コーディネイターたちの住むスペースコロニー、Productive Location Ally on Nexus Technology(プロダクティブ・ロケーション・アレイ・オン・ネクサス・テクノロジー)。通称プラント。

コーディネイターが中心となって作り上げた砂時計型をした新世代スペースコロニーの総称で、プラント1基を1区、10区で1市とカウントしており、C.E.71年時点で全12市・計92基が存在していた。

その付近で、一機のモビルスーツがとあるシャトルが宙を走っていた。

モビルスーツの名はZGMF-1001/M ザクファントム。

オレンジを基調とした装甲色の機体は、ジンからの流れを受けたデザインを若干残していた。頭部の単眼(モノアイ)や、鎧武者を思わせる全体のフォルムなどだ。この機体は、Zodiac Alliance of Freedom Treaty略してザフトの中でも隊長クラスの軍人に与えられるモビルスーツであり、従来のモスグリーンカラーではなく、パイロットの希望で色はオレンジのパーソナルカラーが施されていた。

 

「デュランダル議長。そろそろプラントに到着いたします」

 

オレンジのザクファントムからシャトルへ通信が開かれ、そこに機体と同じ髪色の青年が顔を見せた。

 

「ああ、すまないねハイネ。君も多忙だろうに……」

 

彼は現プラント最高評議会議長。ギルバート・デュランダル。シーゲル・クラインの路線を継承し、ナチュラルとの融和策を採り、戦争の痛手で混迷するプラントをまとめ上げるなど一般市民からの信望も厚い。元々の専門は遺伝子科学者であり、DNA解析の権威と称されている。プラント内外から融和路線の穏健派政治家と目されており、実際、ナチュラルに対する差別意識や地球連合に対する強い敵対意識もなく、自らの理想とする社会体制の構築による平和の実現を本心から望んでいる。

 

「いえ、議長の命令ですから。それに、自分はフェイスです」

 

そして彼の名はハイネ・ヴェステンフルス。

ザフト軍のエースを示す、赤服を袖に通している上、Fast Acting Integrate Tactical Headquarters略してFAITH(フェイス)のバッジを持ちし者でもある。

 

「ん……?」

 

「どうしたかね?」

 

画面の右端、不意に写ったソレをハイネはたまたま発見した。この無限にも等しい宇宙空間の中で、ソレを見つけることができたのはきっと奇跡だろう。

 

「救命ポッドか……?」

 

ほんの少し前までの停戦前ならば見られてもなんら可笑しくもなかったであろうソレ。しかし、停戦から既に半年は経過している。

試しに通信を心掛けてみるも、反応はなく、また通信も返ってこない。ハイネここで、これはきっともう駄目だろうと思った。希望など、持てなかった。

それでも気になっていたのは、おそらく何か予感がしたからだろう。

画面を拡大して確認したそのポッドが、思っていたよりも新しかったから

そしてそれが一人分のもので、寂しそうだったから

 

『大丈夫よ、ハイネ。あなたは一人じゃない』

 

なによりも、それが過去の自分とダブって見えていたから

 

「議長、救命ボッドを発見しました。これより回収に向かいます」

 

「うむ、生きている可能性があるかもしれないからね。見捨てるわけにはいかないだろう」

 

「ありがとうございます」

 

すぐさまザクファントムをシャトルから離したハイネは、救命ボッドを回収すると、再びシャトルとともにプラントへ向かった。

プラント【アプリリウス】

アプリリウス市に所属する首都(首 基)である。

そこにある格納庫に、ザクファントムが救命ボッドを置いた。コクピットを出ると、デュランダル議長も立ち会うつもりなのか、救命ボッドの前に立っていた。ハイネはそれを見てすぐに救命ボッドを開けようと扉に向かう。

 

「ロックが掛かってるのか?」

 

確認すると、救命ボッドには幾重にも頑丈な鍵が掛かっていた。が、生憎解除するのは楽だった。おそらく鍵をかけたのはナチュラルなのだろう。

コーディネイターのハイネにはロックされた鍵など手間取ることもなく、難なくロックを解除できた。

想像するのは、中身の重要性。

これほどナチュラルには厳重な造りからして、中身はナチュラルにとって開けられては困るものなのか。それは物なのか、それとも生きていたナニカか。

大きく深呼吸をするハイネ。

別にいまさら死体に対して恐怖を感じたりなどはしない。それでも決意を固めて、扉を開けた。

 

「こ……これはっ!?」

 

「?……っ!!」

 

目を見開いたハイネに、デュランダルもポッドの中を覗いてみると、普段から不敵な表情を浮かべ、まったく動じる様子を見せなかったデュランダルですら驚愕していた。

ポッドの中にいたのは、まだ15、6程度の少年だった。ザフト軍の白服とはまた別の白い制服を身に纏っているが、所々が黒ずんだ血で汚れており、あるところでは焼け焦げた痕も見られていた。

これはどうやら、自分の手に負えるものではないと、開けてから気付いても既に遅すぎた。

ひゅっ、と息の鳴る音。それは自分の喉からだった。それはきっと恐怖だ。

恐る恐る喉元に右手を乗せて…………そして安堵の息を吐く。、脈も呼吸も不安定だったが、どうやらまだ生きているようだった。なら、尚更放っておくわけにはいかなかった。

 

 

 

プラント国立の病院。

デュランダルはすぐさま少年を近くの病院に連行させて、彼がもっとも信頼を寄せている医師を呼びだした。

 

「議長……どうでしたか」

 

1025号室から出てきたデュランダルに、ハイネは尋ねた。

 

「傷の種類はかなりものらしいが、命に別状はないようだよ」

 

「そう、ですか……」

 

『命に別状はないよ』

 

デュランダルのこの時の言葉が、かつてのあの日の医師の言葉と重なって聞こえた。そういえばあの時も、『彼女』ばずっと自分につきっきりでいてくれていたな。

 

「ハイネ」

 

「レイか……」

 

デュランダルに呼び出されてこの場にやってきた金髪の少年、レイ・ザ・バレルがどこか影を落としているハイネに声をかけた。

ハイネとレイはデュランダルが議長に就任してからすぐの頃からの仲だった。最初こそ、何を考えているのかわからない奴だったが、今では弟のように可愛がらせてもらっている。『彼女』も最近よく家に来るレイと楽しそうに会話しているのを何度か確認している。

病室に入ると、そこにいるのはデュランダルにその本人が信頼を置いている医師たちと自分、そしてレイの数名がいた。

酷く衰弱しきっていた少年は、今も目を覚まさずに相変わらず死体のように眠っていた。

 

「議長、彼の身元は?」

 

「残念ながら……プラントの人間ではないのはナチュラルであることからわかりきっているのだがね」

 

重々しくデュランダルが告げたのは身元不明のナチュラルの遭難者であるということだけだった。

目を覚ませば、なにか手掛かりが掴めるかもしれないがこの状態では目覚めるのにまだ時間が掛かるだろう。

 

「わかっているのは、この少年がどこかの地球上の学生で、他生徒たち、もしはなにかしらの……例えばコーディネイターの連中から暴行を受けていたことでしょう。身体には弾丸の掠った痕や刃物の切り傷、ビームの焦げ痕や殴られたり蹴られた痕などが見受けられました」

 

医師から発せられた説明に、ハイネは天井を見上げて地球にいるであろう犯人たちに殺意を覚えた。

コーディネイターを嫌悪して集団暴行に走る、という話は随分昔からあることだ。その逆もまた然り。だがしかし、だからと言ってこんなにまで痛めつけた挙げ句に宇宙へ放り出すという犯人たちの考えが理解できなかった。

 

「う……ぅぅ…………っ」

 

「!まさか、気が付いたのか!?」

 

身じろぎした少年に反応したハイネがすぐさま少年のベッドに駆け寄った。

 

「……?」

 

「大丈夫か?坊主」

 

ぼーっとこちらを見る少年に対して、ハイネはようやく安堵していつも通りの笑顔を浮かべた。

 

「…あ……なた……は………?」

 

「俺か?俺はハイネ。ハイネ・ヴェステンフルスだ。お前は?」

 

しばしの間、少年は真っ白な天井を見て、次に周りを見渡してから衝撃の一言を放った。

 

「お………れ、は……だ、れ?……どう……し…て………わからな……い」

 

「っ!?」

 

「ギル。これはもしや……」

 

「うむ……記憶喪失かもしれないな」

 

記憶喪失。

人が心や肉体に尋常ではない痛みや苦しみをいっぺんに味わったとき、脳がそれから本人を守ろうと本能的に記憶を抹消すること。強い衝撃を脳に受けたりするとこういった症状に陥ったりするが、基本的には一種の防衛機能として働くものである。

 

「お…れ……おれ…………は」

 

困惑している少年を見かねたデュランダルは、ゆっくりと少年のベッドに歩み寄る。

 

「無理に話さなくてもいい。相当な傷の量なのだからね……そうだ、名がないなら私が上げよう」

 

「えっ……?」

 

突然見知らぬ男に、名前を上げる。普通そんなことを言われたら誰だって動揺するだろう。もちろんハイネも例外ではない。

 

「ふーむ、そうだな。名がない……だからナナシ、というのはどうかね?」

 

「ギル、それはメル○ヴンです。ここはやはり中の人的にバナージやソウル、ミッドナイトなどが最良かと」

 

まさかのレイからのメタ発言にハイネは少年とは別の意味で動揺していた。そこそこ長い付き合いだが、まさかアニメ好きとは思いにも寄らなかった。

 

「あのー?一応彼の持ってた学生証らしきものから個人情報を記録したものがあったのですが……」

 

「それを先に言ってくれ」

 

完全にタイミングを踏み損ねた医師がそこでようやく口を開くことができた。ところをデュランダルがピシャリとキツく言い放った。

 

 

 

「ふぅむ、織斑一夏……日本人のようだね」

 

「IS学園在中の一年一組。年齢は16……地球のものなので俺も知りませんが、見た感じは偽装されてなさそうですね」

 

「しかしそのまま名前を教えるのは駄目ですよね。何せ記憶喪失なんだから」

 

「うむ、ここはやはり名前を考えるべきだろうな」

 

一旦病室から出たデュランダル、レイ、ハイネの三人は、これから少年、織斑一夏と呼ばれた彼の事について語り出すことにした。

ひとまず、彼の記憶喪失の原因が何なのかわからない以上、退院してからは比較的家に入れられるハイネのところで預かることになった。

学校も、医師の話を聞く限りは安定するまでの間はなるべく関わらせないようにするべきだろうということになった。

 

「ああ、議長」

 

病室に戻ると、医師が一夏に診断を行っているところだった。

 

「……………………」

 

一夏は、先ほどのように無理に口を開こうとはせずに、じっとこちらを見ていた。

 

「ふむ、ではさっきの話なんだが、君に名前を上げたいと思うのだよ」

 

「な、なま………え……?」

 

一夏は少し頭を持ち上げながら、無理に口を開いた。

 

「ああ、君の名前は刹那。刹那・F・セイエイだ」

 

「せつ、な…?それが、おれの…なまえ?」

 

「そうだよ(今のところだけは辛い過去は忘れるんだ。でなければ心が砕けてしまうのなら、ね)」

 

「あ、あなたたち……は?」

 

刹那という名前を与えられた一夏は、今度はハイネとレイにも視線を向けた。

 

「改めてになるが、俺はハイネ、ハイネ・ヴェステンフルスだ」

 

「レイ・ザ・バレルだ」

 

「ハイ、ネ……レ………イ」

 

「そうだよ。さ、もうお休み刹那。時間はたっぷりあるんだから、休んだっていいんだよ」

 

そう言ってデュランダルはそっと一夏の頭を優しく撫でた。そうすると、しばらくしてゆっくりと瞼が閉じられ、規則正しく寝息が聞こえてきた。

 

「刹那、君は今しばらくの間だけでも思い出さなくていい。君がそれと立ち向かえるようになるまで、君を傷付けてしまう過去など……」

 

記憶喪失。

ハイネはぐっすりと寝息をたてている一夏を複雑な表情で眺めていた。

かつての自分にダブって見えたこの少年。

だからだろうか、ハイネはこれから共に生活することになるこの少年を支えていきたいとそう思った。

こうして、織斑一夏は刹那・F・セイエイとなった。

【オマケ】

 

デュランダル「やあ、みんなの議長。ギルバート・デュランダルだよ」

 

ハイネ「フェイス特務隊、ハイネ・ヴェステンフルスだ」

 

レイ「ザフト軍事アカデミー在中、レイ・ザ・バレルだ」

 

デュランダル「今回まず最初に言っておきたいことはこの作品は作者がタグで理解した者もいるやもしれんが、ハーメルンのIS×SEEDDESTINY小説にてTSシンの魅力を知った作者がもう一つのDESTINYにおけるイチカ君とは別の介入をしたかっただけで断じてもう一作の方が難航して書き直すとかそう言うわけではないのであしからず」

 

レイ「ちなみに赤と菫の瞳はテストが終わったら投稿する予定らしい」

 

ハイネ「てーかテスト期間中に投稿とかアホか作者」

 

デュランダル「まあまあ、そのおかげでこうして私たちがいられるのだから感謝しようじゃないか」

 

ハイネ「まあ…議長がそう仰るのなら……」

 

レイ「ではアンケートに移る」

 

ハイネ「唐突だな」

 

デュランダル「内容は織斑一夏こと刹那・F・セイエイの機体についてだ」

 

ハイネ「フツーにエクシアでよろしいのでは?」

 

レイ「最初こそ作者もそう考えていたらしいが、OOとSEEDでは比べるまでもなく圧倒的すぎると判断されたらしい」

 

(例 劇場版のサバーニャとストフリの広範囲攻撃)

 

デュランダル「それでもダブルオーは欠陥機だから採用してもいいらしい。それと作者は最近フラッグを押しているようだ」

 

ハイネ「それってつまりあいつに変態になれと!?」

 

デュランダル「いや……なにもそこまでは…………」

 

レイ「ちなみに候補はこうなっている」

 

・ダブルオーガンダム&ケルディム(ガンダム史上もっとも有名な欠陥機のため、種でも丁度良さそうと思ったから。あと作者の趣味)

 

・フラッグ(今量産機で二番目に好きだから。なお、一番はブレイヴ)

 

・エクシア&デュナメス(純粋に一夏のスタイルに合ってるから。あと作者の趣味)

 

・百式(機体ネタで)

 

・ムウの乗ってたストライクの改修機(誰得?)

 

ハイネ「なんだかフラッグが一番妥当に見えてきた」

 

デュランダル「最後のは仮に出ても一回程度らしいよ」

 

レイ「OOセカンドシーズンのオマージュのつもりでしょうか?」

 

デュランダル「しかしおっさんが乗っていた機体の回収機に乗せられるというのはあんまりじゃないか?」

 

レイ「ちなみにストライク以外は∀の設定を利用するらしい」

 

ハイネ「まさかの採掘!?」

 

デュランダル「ならサザビーも期待出来そうだね」

 

ハイネ「けどそういうのって大抵敵も利用してきますよね」

 

デュランダル「キララク勢はよそのデータを集めてストフリとインジャを造ったくらいだからね。ありえそうだ」

 

レイ「とにもかくにも、この中から刹那のパートナーが決まることとなる。全ては読者によって決まる」

 

ハイネ「…………あれ?なんか刹那が戦うこと前提になってません?」

 

デュランダル「それが、ガンダム作品における主人公の運命だよ」

 

ハイネ「嫌な運命ですね!?」


 
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