No.686563

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第33話

黒天さん

今回は優雨さんと月のお話。

2014-05-14 00:44:19 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7235   閲覧ユーザー数:5063

カタリと棚の物品を取る音と、さらさらと筆をはしらせる音が響く。

 

ろうそくの灯りが暗い部屋を照らし、その灯りの範囲の外は真っ暗闇。

 

何をしてるかといえば、食料庫の在庫整理。ようは戦後処理だ。

 

期間は短かったとはいえ、戦で保存食を消費したし、どれだけ消費したかをチェックして整理しておく必要がある。

 

うちは、古いものから先に使っていく、先入れ先だしを徹底している。

 

食中毒が起きた、なんてことになったら洒落にならないし。

 

その分まぁ手間はかかってくるわけだけど。新しいものを奥に、古いものを手前の取りやすい所に置けば自然と先入れ先だしになるが、

 

並べ替えは手間だし。

 

それに腐っている物が無いかの点検もしなければいけない。

 

食料庫は地下にある都合上暗いし、電灯がないこの時代では結構骨だ。カビが来てないかとか1個1個確認しないとだし。

 

「項目にない物があるわね」

 

「多分星のメンマだよ。それか俺の酒か。棚じゃなくて地べたに置いてあったでしょ?」

 

今一緒に食料庫のチェックをしているのは優雨。さすがに一人じゃこんなの手が回らないしなぁ……。

 

というわけで手伝ってもらっている。

 

しかし地下室でこうして作業をしてると時間の感覚がわからなくなってくる。

「そっちの作業の進み具合はどう?」

 

「こちらの棚はあらかた終わったわ。そちらは?」

 

「ん、こっちももう終わり。撤収しようか。お腹も空いたし」

 

そういって出口に向かうものの……、扉が開かない……。

 

というか扉締めた覚えなかったんだけど。

 

これは中に居るのに気づかずに外から閂かけられたかなぁ。

 

「どうかしたかしら?」

 

「んー、どうにも締め込まれたみたい。ま、食料庫の整理してるのは日程表に書いてあるし、そのうち誰か開けてくれるでしょ」

 

慌ててもどうしようもないし、扉の前に座り、扉にもたれかかる。

 

俺に続いて優雨が隣に座り、扉に背を預ける。

 

沈黙。ろうそくの薄明かりの中、聞こえるのはお互いの息遣いと、時々姿勢を変える時の衣擦れの音ぐらいのものか。

 

なんとなく気まずい……。

 

「……この前の話し覚えてるかしら?」

 

「ん、覚えてるよ」

 

この前の話し、というとおそらく椿花が優雨の過去話しを聞き出した時の事だろう。

 

椿花から補足説明を受けた所によると、どうも優雨の実の父親が大罪人であったらしく、

 

その子である、という所に負い目があったらしい。

「あなたはあの話しを聞いても変わらなかったけれど……、実際、どう思ってるの?」

 

そう問いかけながら、服の裾を軽く引っ張ってくる。

 

多分、不安なんだろうなぁ。

 

「前も言った通り俺は何も気にしないけど」

 

「本当にそう思ってるの?」

 

「うん」

 

即答。ここで言いよどんだらダメだとおもう。

 

「なら、もし私が、嫁にもらって欲しい、と言ったらどうするかしら?」

 

「一気に話しが飛ぶな。桂花の事を抜きにしてなら是と答えるけど」

 

「本当?」

 

「うん、優雨は魅力的だとおもうしね」

 

俺がそう答えると、顔を真っ赤にしながら、ろうそくを手に取ってそれを吹き消す。

 

照れ隠しだろうか、真っ暗になってしまった。

 

「何もあかりを消さなくてもっ……!?」

 

優雨が正面に来る気配がして、ついで唇に柔らかいものが触れる。考えるまでもなく、優雨の唇だろうけど。

 

少しの間重ねられた唇はすぐに引き離されて……。

 

「唐突だなぁ……」

 

まだ目の前に優雨の顔があるんだろう、息遣いが間近から聞こえる。

 

明るかったら、真っ赤になった顔が見えるんだろうなぁ。

 

そんなことを考えながら、手を伸ばし、髪に手が触れれば手櫛で軽く梳いて。

 

「その言葉、忘れちゃだめよ?」

 

優雨の言葉に俺が返答を返そうとしたとき、勢い良く背後の扉が開き。

 

「助けにきたよー、お?」

支えを失った俺と優雨はそのまま倒れこみ、扉を開けた椿花を見上げる格好となった。

 

あ、黒……。ちなみに、椿花がスカートなのはスカートの下に暗器を隠すためらしい。

 

太腿に小刀やら針やらが巻きつけてあるのが見えた。

 

「おじゃまだった?」

 

そしてまぁ見事にというか、お約束というか、俺が優雨に押し倒された格好になってて、胸とか太腿とかの感触が悩ましい……。

 

優雨の顔を見れば、ここまで赤くなるのか、っていうぐらい真っ赤になっていき、我に返ると大慌てで俺の上から飛び起きると逃げるように走り去ってしまった。

 

「中々仲が進みそうにないから閉じ込めてみたけど、想像以上にうまくいったみたいだね」

 

「……お前のしわざか!」

 

「ふっふっふ、まぁアレを暴露しちゃったからその分手助け位はしたげるつもりだったしね。うまくいったんだしごほーび頂戴?」

 

「調子に乗るんじゃない」

 

「はうっ」

 

取り敢えずデコピンを食らわせておいた。

 

まぁ、椿花的には善意でやったんだろうし、結果オーライということで、今度何か食べにいくという事でご褒美は決まった。

───────────────────────

 

一日の仕事が終わり、夕食を取って、風呂に入れる日だったので風呂にはいって、

 

さて後は寝るばかり、と、軽く部屋でくつろいでいた所でトントンと部屋のドアを叩く音。

 

この控えめなノックは月かな。

 

「開いてるよ」

 

そう答えると、予想通り月がはいってきた。今日はメイド服ではなく、いつもの服。

 

帽子はかぶってないけど。

 

しかし床を引きずるこのスカート、凄い歩き辛いんじゃないかなぁ、なんていつも思う。

 

「ゆっくりお話がしたいと思って来てしまいました」

 

そう言われれば確かに、袁紹との戦の後は個人的な話はしてなかったっけ。

 

「お茶でも出そうか? それともお酒がいい?」

 

「そうですね……、たまにはお酒で……」

 

棚の上から徳利を降ろしてきて、湯のみに酒を注いで、差し出すと、ゆっくりとそれをすする。

 

「口当たりが優しいお酒ですね」

 

「俺の数少ない嗜好品だから、ちょっと良いのを買ってるし。一度にたくさん飲むわけじゃないから量より質でね。

 

月は、お酒は強い方だっけ?」

 

「いえ、あまり強い方じゃないです……」

酒が入り、いつもより饒舌になった月と他愛ない話しをして時間を過ごす。

 

こういう時間が取れるのは幸せな事だと思う。

 

話題はまずは実務的な事から始まり、ついでここの所の食事の内容の話し。

 

最近節約メニューからようやく普通に変わったんだよな、兵糧に余裕がでてきたから。

 

それから、詠の事へと話題が移る。

 

「そういえば……、一刀さんは詠ちゃんを抱いたんですよね」

 

「う……」

 

よくご存知で……。

 

「私は……だめですか?」

 

「そういうのは素面の時に言って欲しいけど!?」

 

ぐっと月が顔を近づけてくる、すぐ目の前に揺れる瞳が来て……

 

覗きこんでいると、深い紫色のその目に吸い込まれそうな錯覚を覚える。

 

一瞬うろたえた間に、月に唇を奪われた。

 

「素面の時になんて、恥ずかしくて言えるわけないです」

 

そういって月がため息をつく。赤くなった頬と、少し潤んだ目が艶っぽく、普段と違う印象を受けてドキっとした。

 

「お酒の勢いでごめんなさい……、でも、前の世界からとても一刀さんをお慕いしているのは本当です。

 

まだ、桂花さんみたいに全部を思い出せたわけじゃないです、でも、はじめて麗ちゃんが侍女の服を着て一刀さんの傍にいるのを見た時に、

 

私ものすごく嫉妬しちゃったんです。だから、ずっとお慕いしてたのは本当のはずです」

 

「ありがと」

 

前も、関係こそ無かったけど、慕ってるって言ってくれてたしそれが本当だっていうのは良く知ってる。

 

「だからお願いします……、詠ちゃんと同じように、その……」

 

そういって立ち上がって俺に背を向けて、するすると帯を解く音が聞こえてくる。

 

月ってこんな押しの強い子だっけ……。

 

酒を飲んだ状態でっていうのは避けたかったけど、ここまでされちゃうと追い返すわけにもいかないし……。

 

何より泣かせたくないし、観念することにした。

───────────────────────

 

「へぅ……」

 

全部脱ぐのは恥ずかしいっていうから半脱ぎだったんだけど、逆に余計興奮したのは内緒。

 

……おかげで月にケダモノ呼ばわりされたけど。

 

月は両手で頬を抑えて恥ずかしそうにしながら、チラチラと横目でこちらの様子を伺ってくる。

 

「可愛いなぁ……」

 

「ありがとうございます……。ふふ、詠ちゃんも……可愛かったですか?」

 

「こういう時に他の子の名前出すもんじゃないと思うけど」

 

まぁ詠は凄い可愛かったけどね。普段との差もあってだと思うけど。

 

「それに月だって、閨での事、他の人に喋られたらイヤでしょ?」

 

「それは……はい」

 

「じゃあ、そういうことは聞かないように」

 

頭に手を乗せて軽く撫でる。

 

「俺もこういう時は他の子の事、考えないようにしてるんだから。そうしないと失礼だと思うしね」

 

「なら普段は桂花さんのが一番でも、今この時だけは私だけの一刀さんなんですか?」

 

「ん、そのつもり」

 

そう答えるととても嬉しそうな笑顔を浮かべ、俺にぎゅっと抱きついて。

 

「なら……、少しだけワガママいってもいいですか?」

 

そういうので頷くと、要求は第二ラウンドだった。

 

……、月も十分ケダモノだと思った。

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は優雨さんと月の甘い話しでした。

 

この先の拠点は大半がこんな感じになりそうです。

 

極端に言えば、キスシーン当たり前、事後シーン1話に1本、ぐらいの勢いになりそうですのでそのつもりで。

 

あくまで予定ですが。

 

これから皆との関係が一気に進んで行きます。麗ちゃんあたりにも手を出しそうな勢い。

 

あと希望があったら璃々ちゃんもあるかも? こちらは1からですが。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。


 
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