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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百十八話 狼VS狐

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2014-05-06 09:33:45 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:21301   閲覧ユーザー数:18700

 「うーむ……うまうま♪」

 

 学校からの帰り道。

 俺は臨海公園の屋台でたい焼きを購入し、頬張りながら歩いていた。

 季節も12月に突入し、頬を撫でる風が冷たくなった今日この頃。

 地球でもミッドでも大きな事件は無く、管理局の方からも呼び出される事は無いのでここ最近は実に平和な日々を過ごせている。

 

 「こういう日が続いてくれれば俺としては願ったり叶ったりなんだがなぁ…モグモグ」

 

 俺は1人、言葉を漏らしながらたい焼きにかぶりつく。

 本当に美味いなぁ。どこぞの『うぐぅ』少女が現れたら強奪、食い逃げする事間違い無しだ。

 

 「モグモグ…ゴクン。そう言えば今日の買い物当番はユーリだったっけ」

 

 て事は今日の夕食は中華になるだろう。

 

 「ん?アレは…」

 

 食べ歩きする俺の視界に映ったのはオレンジ色の子犬……もとい狼。

 

 「(……アルフさんじゃないか)」

 

 フェイトの使い魔のアルフさんがいた。

 珍しい……というよりも彼女があの形態になっているのを見るのは久しぶりな気がする。

 フェイトの魔力を出来るだけ食わない様、常に子供の姿だったからな。

 アルフさんは俺に気付く事無くテクテクと歩いていく。

 何処かに行くのかな?

 俺は歩く速度をちょいと速めてアルフさんに近寄り、念話で語りかける。

 

 「《アルフさんアルフさん。何処かへお出かけですか?》」

 

 「わう!!?」(ビクッ!!)

 

 いきなり念話で話し掛けたせいかアルフさんはビクつき、コチラを見る。

 俺の姿を捉えたアルフさんは小走りで近寄って来た。

 

 「な、何だ勇紀かい。脅かさないでおくれよ」

 

 「《あ、済みません。てかその姿で喋らない方が良いと思いますよ》」

 

 狼が人の言葉を話してる姿なんて見られたら間違い無く珍獣認定。

 そのままサーカスや動物園の見世物になるか変な研究所に送られて解体されるかも。

 俺は俺で狼に話し掛けてる姿を見られたら奇異の視線を向けられそうだし。だから念話で話し掛けたのだ。

 慌ててキョロキョロと辺りを見渡すアルフさんだが、幸いにも人の姿は無い。

 

 「《ふぅ……忠告感謝するよ》」

 

 「《いえいえ。けど珍しいッスね。その姿になってるなんて》」

 

 「《まぁたまには動物の姿に戻りたいって事もあるんだよ》」

 

 「《大きいバージョンの方じゃないんですね》」

 

 「《まあ大人の姿や大形の姿だとフェイトからの魔力供給量が増えるからねぇ…。ここ最近はフェイトに任務が入ってないっていっても緊急で任務が入るかもしれないし、いざって時に魔力切れなんか起こしたら大変じゃないか》」

 

 相変わらず主人思いの良い使い魔である。

 

 「《ところで勇紀は何してんだい?》」

 

 アルフさんが俺の方を見上げながら尋ねてくる。

 

 「《このまま真っ直ぐ家に帰っても退屈なんでブラブラ散歩して時間潰してから帰ろうかと》」

 

 「《宿題とかは良いのかい?》」

 

 「《今日は出てないんで》」

 

 今日の授業が全て終わった瞬間、どの授業からも宿題が出なかったのに喜んでいたのはレヴィ、なのは、フェイト、アリシア、はやてと一部の魔導師だったりする。

 アイツ等、どっちかというと管理局での仕事を優先してるからなぁ。レヴィは別として。

 それにシュテル、ディアーチェ、ユーリも少しずつだが成績が下がってきてるのを俺は知っている。逆に吉満は徐々に成績が上がってきており、管理局の仕事よりも勉学を優先させている。

 魔導師組で成績上位をキープしてるのって西条を除いた俺達転生者とリンディさん、プレシアさんぐらいじゃなかろうか。

 

 「《まあ、魔導師組は全員中学卒業と同時にミッドに移住するみたいだから今の成績についてはあまり気にしてないっぽいですね》」

 

 「《うーん…それはそれでどうかと思うけどねぇ》」

 

 全くだ。貴女も使い魔として主に一言言ってやって下さい。

 俺がゆっくり歩き始めるとアルフさんも俺と並行して歩く。

 

 「む……」

 

 適当に散歩していたつもりがいつの間にやら俺は八束神社の石段前に来ていた。ここを登ればすぐに神社だ。

 

 「(せっかくだ。寄って行くか)」

 

 もしかしたら那美さんか久遠がいるかもしれない。

 俺は迷う事無く石段を登り始める。そんな俺についてくるアルフさん。

 石段を上り切った境内に那美さんはいた。

 なんか本殿の縁側に腰掛け目を閉じてのほほーんとしている。

 あれは日向ぼっこ中だな。ただ、この寒い時期に日向ぼっこをどれぐらい前からしてるのかは知らないが風邪をこじらせたりしないのだろうか?

 ……大丈夫か、那美さんなら。

 ドジッ娘属性のおかげで身体は頑丈に鍛え上げられてるし。

 俺が近付くと足音で気付いた那美さんが目を開け、笑顔で迎えてくれる。

 

 「あ、こんにちは勇紀君。学校は終わったの?」

 

 「こんにちは那美さん。終わりましたよ。あ、たい焼き買ってきたんですけどいります?」

 

 「良いの!?じゃあ貰おうかな」

 

 那美さんの隣に座り、紙袋の中からたい焼きを取り出して手渡す。

 

 「《勇紀勇紀。アタシにも一個たい焼きおくれよ》」

 

 俺の脚元にいるアルフさんが尻尾を振り、口元から若干涎を垂らしながら催促してくる。

 狼がたい焼きを食べても良いのだろうか?

 そんな考えが脳裏をよぎるが、彼女は使い魔で人型になるのも可能だから食べても問題は無いのだろうと思う。

 袋から更にたい焼きを一個取り出してアルフさんの前に置くと、アルフさんは嬉々としてたい焼きにかぶりつく。

 

 「ムグムグ…そう言えば勇紀君、その子犬はどうしたの?」

 

 「モグモグ…犬じゃなくて正確には狼ですよ」

 

 「へぇ~、狼の子供なんだぁ」

 

 「ガツガツガツ…」

 

 たい焼きを夢中で食うアルフさんを見る那美さん。

 

 「狼がたい焼き食べて大丈夫なのかな?」

 

 「問題無いと思いますよ」

 

 「そうなんだ。今度愛さんに聞いてみよぅ」

 

 獣医の愛さんなら否定すると思うなぁ…。

 

 「てか久遠はいないんですね」

 

 「久遠は今散歩中だよ」

 

 あらら……久遠も散歩中だったとは。

 

 「《勇紀、久遠って誰だい?》」

 

 そこへたい焼きを食べ終えたアルフさんからの念話が飛んでくる。

 

 「《隣の那美さんが面倒を見ている子狐の事ですよ》」

 

 「《子狐?》」

 

 「《ええ、凄く可愛いんですよ》」

 

 俺にとっての癒し属性を兼ね備えた至高の存在。それが久遠という子狐なのだ。

 

 「《むぅ……ソイツは今のアタシよりも可愛らしいってのかい?》」

 

 む?アルフさん不機嫌そうだな。

 ひょっとして久遠に嫉妬してんのか?

 久遠と今のアルフさんか………。

 

 「《正直に言うと久遠の方が…》」

 

 「《むううぅぅぅぅ~~~~~~!!!!》」

 

 念話で唸らないで下さい。

 今のアルフさんの姿も愛らしいですよ。けどね、総合的にはやはり久遠に軍配が上がる訳なんですよ。

 不機嫌なアルフさんはそのまま俺の膝の上に乗ってくる。

 

 「《決めた!!その子狐なんかよりアタシの方が魅力的だって事を勇紀に知らしめる!!》」

 

 未だ見ぬ久遠にライバル心を抱き、宣言するアルフさん。

 とりあえず俺は一言『頑張って下さい』と念話で伝えてアルフさんを撫でる。

 

 「《あ……わふぅ……》//」

 

 ……うむ。

 アルフさんの撫で心地も悪くは無い。やっぱり『小動物は良い』と言わざるを得ない。

 目を細めて俺の膝の上で丸くなるアルフさん。このまま撫で続けたら眠りそうな感じだ。

 まあ、寝たら寝たらで俺がテスタロッサ家に届けたら良いだけだしな。

 俺は那美さんと会話しつつ、もう少し待ってみて久遠が来なければ帰ろうと思っていた。

 そんな矢先に…

 

 ガサガサ…

 

 草むらが揺れ、音がした。

 現れたのは俺が待っていた存在。

 最高の癒し(モフモフ)を兼ね備えた小動物の至高。

 子狐久遠がやって来たのだ。

 草むらから久遠はそのつぶらな瞳をコッチにロックオンする。

 

 「……………………」

 

 ジーッとコチラを見たまま微動だにしない。

 何でコッチに来ないんだ?

 久遠が見てる視線の先は俺……の膝の上で丸くなってるアルフさんだ。

 

 「(うーん…アルフさんが狼だから警戒してるとか?)」

 

 でも久遠は妖狐なんだから狼ぐらいでビビるとは思えない。

 ……もしかしてアルフさんがただの狼じゃないと見抜いたのか?

 と、久遠がコチラに駆け寄ってきた。

 

 トトトトト…

 

 うむ…久遠は走ってる姿も可愛らしくて良いね。

 

 トトトトトトト…

 

 近付いてくる久遠は勢いを殺す事無く

 

 トトトトトトトトト…

 

 むしろどんどん加速している。

 

 「くおーーーーーーーーん!!!!」

 

 そして遠吠えの様な大声を上げて

 

 ドカッ!!

 

 「ぎゃわん!!?」

 

 俺の膝の上にいるアルフさんに体当たりをブチかました。

 久遠に体当たりされたアルフさんは膝の上から吹き飛ばされ、今度は久遠が俺の膝の上を占拠する。

 

 「く、久遠!!?」

 

 突然の行動に那美さんもビックリしている。

 俺もビックリだ。まさか久遠が攻撃を仕掛けるとは。

 

 「久遠?いきなり何してんの?」

 

 俺が尋ねると

 

 「くぅ~~!!くぅ~~!!」

 

 久遠は鳴き声を上げながら俺の膝の上をゴロゴロ回ったり、全身を摺り寄せたりする。

 

 「ひょっとして久遠、あの狼さんが勇紀君の膝の上にいたり、撫でていた事にヤキモチ妬いてるの?」

 

 ……マジ?

 

 「そうなのか久遠?」

 

 「くぅ~~~~~~……」

 

 つぶらな瞳で見上げ、鳴く久遠。

 ……久遠、テラカワユス!!

 俺がそう思っていると吹き飛ばされたアルフさんがゆっくり起き上がり、久遠を睨む。

 

 「がぅ!!がぅがぅ!!」(痛いじゃないか!!いきなり何するのさ!!)

 

 「くぅ!!くぅくぅくぅ!!!」(ここ座っちゃダメ!!座って良いの那美とルーと久遠だけ!!!)

 

 「がぅがぅがぅがぅ!!!」(何でアンタに決める権利があるのさ!!良いからそこ退きな!!!)

 

 「くぅくぅくぅ~~~!!!」(嫌!!そっちこそどっか行って!!!)」

 

 「がううぅぅぅ~~~~~!!!!」(ぐぬぬううぅぅぅ~~~~~!!!!)

 

 「くううぅぅぅ~~~~~!!!!」(むううぅぅぅぅぅ~~~~~!!!!)

 

 …先程から何を話しているのだろうか?お互いに唸り合っている以上、穏やかな話じゃなさそうだけど。

 

 「がう~~~~~~~っっっ!!!!!」(うら~~~~~~~っっっ!!!!!)

 

 お互いに威嚇し合った後、まずはアルフさんが久遠に向かって飛び掛かって来た。

俺の膝の上から飛び降りた久遠も迎撃する。

 

 ガブガブガブ!!

 

 アルフさんが久遠に噛み付いたり

 

 ベシベシベシ!!

 

 久遠が前足でアルフさんの頭を叩いたり

 

 ゴロゴロゴロ!!

 

 取っ組み合いになってアルフさんも久遠も転げ回ったりしている。

 アルフさんと久遠からすればガチの大ゲンカなんだろうけど…

 

 「何だかじゃれ合ってるみたいだね」

 

 「ですよねぇ。見てて和みます」

 

 小動物同士の取っ組み合いは微笑ましい光景に見え、心が癒されてしまう。

 日が暮れるまでの間、俺と那美さんはたい焼きを頬張りながら小動物の争いを見守っていたのだった………。

 

 

 

 一週間後…。

 

 「むぅ……」

 

 俺は東雲堂でアイスを買ったのだが、どうやらキャンペーン中だったらしく店員さんにクジを引かされた。

 で、その結果……

 

 「バニラアイス1個買って、クジ引いて、それが当たって貰った引換券でアイスがチョコ味、オレンジ味、バナナ味を手に入れて合計4個に増えるとは…」

 

 流石に1人では食いきらないぞ。どうしよう?

 家に帰っても俺以外に食えるのは3人だけ。

 ……間違い無く取り合いになるな。何たって東雲堂のアイスなんだし。

 人数分買い揃えるか?

 うーん……

 

 「ん?勇紀じゃないかい?難しい顔してどうしたのさ?」

 

 「ん?」

 

 誰かに呼ばれた様な気がして顔を上げると

 

 「アルフさんじゃないですか」

 

 「よ」

 

 小さく片手を上げて挨拶してきたアルフさん。

 今日は子供形態だ。けど獣耳は隠さずに出している。

 

 「耳…隠さなくて良いんですか?」

 

 見た所、認識阻害の魔法も使ってないみたいだし。

 

 「うーん…何かすれ違う人達は特に気にした様子は無かったよ」

 

 それで良いのだろうか?海鳴市在住の皆さん。

 

 「何かアタシ以外にも『獣耳で首元に大きな鈴をぶら下げた巫女服の少女』が街中でも目撃されてるらしいから、その子のせいじゃないのかい?」

 

 おぅふ。

 スッゲー心当たりあるよその子。一週間前にアルフさんも出会ってるし。

 そん時は子狐の姿だったけどな。

 

 「丁度あんな感じの子だよホラ」

 

 「んんん?」

 

 アルフさんが指差す先から歩いて来るのは今話題に上がった『獣耳で首元に大きな鈴をぶら下げた巫女服の少女』……久遠だった。

 

 「……あ、勇紀~~~♪」

 

 コチラに気付いた久遠は笑顔を浮かべ、トコトコと走って来た。

 俺の方に飛び込んできたのでとりあえず受け止める。

 

 「くぅ~~~~~♪」

 

 抱き着いてスリスリと擦り寄ってくる久遠。

 

 「今日は1人なのか?那美さんは?」

 

 「那美はさざなみ寮でのんびりしてる~」

 

 そうか……のんびりか。

 実に想像し易いな。

 

 「うぅ~~~~~……」

 

 む?

 妙な唸り声が聞こえたので、視線を声のした方に向けるとアルフさんがジト目でコチラを見ているではないか。

 

 「ちょいとアンタ!!」

 

 「???」

 

 久遠に突っ掛かるアルフさん。それに対し久遠はアルフさんの方に向いた後、首を傾げるだけ。

 

 「いきなり何してんのさ!!(当たり前の様に勇紀に抱き着いて……羨ましい)」

 

 「くぅ?」

 

 「『くぅ』じゃない…………んん?」

 

 アルフさんが詰め寄って来たかと思うと、鼻をヒクヒクさせ始める。

 

 「この匂い……どっかで」

 

 『うーん…』と両手を組んで思い出そうとするアルフさん。

 

 「…………あああああっっっっっ!!!!思い出した!!!!先週の狐と全く同じ匂いだ!!!て事は何かい!!?アンタあの時の狐かい!!!?」

 

 ………ヤベ、バレた。

 

 「まさか人型になれるなんて……アンタ、一体誰の使い魔だい?」

 

 使い魔と違いますよアルフさん。久遠は誰かとパスを繋いでる訳じゃ無いですから。

 久遠はしばらくアルフさんの方をジーッと見詰め

 

 「………この力、もしかして先週の犬?」

 

 どうやらアルフさんの魔力で先週の事を思い出した様だ。

 

 「犬じゃない!!アタシャ狼だ!!!」

 

 久々に聞いたなぁ、その反論。

 

 「…………むぅ~~~」

 

 途端に久遠は俺とアルフさんの間で両手を大きく上げ、仁王立ちで構える。

 アルフさんがコッチに来れない様、通せんぼするみたいだ。

 

 「勇紀に近付いちゃダメ」

 

 「だからアンタにそんな事決める権利無いだろ!!」

 

 お互いに睨み合う。

 ケンカはしないで貰いたいのだが…。

 それとアルフさんに先週の子狐が目の前にいる久遠だとバレた件についてはどうしようか?

 久遠が変身出来る子狐だと知ってるのはさざなみ寮の面々とごく一部だ。

 長谷川家に住んで居る面々で知っているのも俺とルーテシアだけであり、シュテル達には一切口外していない。

 何故久遠が人型になれるかを話していいかは那美さんに聞いてみないと分からんしなぁ。

 

 「勇紀から離れな!!」

 

 「嫌!!」

 

 お互いに目から火花がバチバチと散っている。

 まさに一触即発。どないしようかこの状況?

 

 「どりゃーー!!」

 

 俺が悩んでいる間にアルフさんが動いた。

 まっすぐに突き出された拳が久遠に迫る。

 

 「ていっ!!」

 

 その拳を受け止めた久遠はそのままアルフさんを引き寄せ

 

 「たあーーーっ!!」

 

 一本背負いの要領でアルフさんを投げ飛ばす。

 

 「甘ーーーいっっ!!」

 

 空中でクルクルと回転し、華麗に着地するアルフさん。

 

 「てか2人共マジでケンカは止めよう!!」

 

 俺は考えるのを止め、すぐさま制止に取り掛かる。

 2人の間に割って入ったのだが…

 

 「「うううぅぅぅぅぅ~~~~……」」

 

 ……お互い、俺を挟んで唸り合う。

 

 「とりあえず、2人共落ち着いて。ホラ、アイス食べて良いから、な?」

 

 俺は東雲堂の箱を見せる。

 

 「「……………………」」

 

 アルフさんと久遠の動きが止まる。

 久遠は和菓子が好物だが、洋菓子類が嫌いという訳では無い。

 むしろさざなみ寮で洋菓子食べてる姿を何度も見掛けた事あるし。

 

 「バニラ、チョコ、オレンジ、バナナの味があるから。好きなヤツ取って良いから」

 

 「「チョコ!!」」

 

 間髪入れずに声を上げた2人の言葉が重なる。

 

 「ううぅぅぅ~~~~!!!」

 

 「くぅ~~~~~~~!!!」

 

 そして再び唸って睨み合うアルフさんと久遠。

 頼むからケンカ止めてマジで………。

 

 

 

 人型のアルフさんと久遠がガチでケンカしようとした日から更に数日…。

 商店街で買い物を終えた俺。

 家路につく途中で

 

 「Oh……」

 

 俺は思わず嘆いてしまった。

 

 「むぐぐぐぐぐ……」

 

 「ううぅぅぅぅ……」

 

 神よ。貴方は俺に何故この様な仕打ちを仕向けたのですか?

 今、俺を挟んで2人の女性が対峙、敵視し合っている。

 片やオレンジ色の髪と獣耳を晒している大人の女性形態になっている狼の使い魔さん。

 片や金色の髪と獣耳を晒している大人の女性形態になっている巫女服の大妖怪。

 皆さんご存知アルフさんと久遠の『第三次スーパー獣っ娘大戦』が勃発寸前である。

 いや…『第三次』よりも『大惨事』の方がピンとくるかも。

 ちなみに『第一次』は小動物時、『第二次』は子供形態時の出来事を差している。

 結界の類は張っていないので、このままアルフさんと久遠がぶつかり合えば周辺の被害は甚大なものになるんだよねぇ。

 そもそも何で2人共、今日に限って大人形態になっているのか……。

 理由を聞いてみた所、特に意味は無いらしい。『たまには大人形態で過ごすのも悪くは無い』との事で。

 何で理由が被ってこう……街中で遭遇するのかね?

 

 「大人の姿にまでなれるなんて……狐のくせに生意気な」

 

 「別に私がどの様な姿に変身出来ようとも駄犬には関係無い」

 

 「だからアタシャ狼だって言っただろ!!物覚えの悪い駄狐め!」

 

 最早視線で相手を射殺せるぐらいの殺気を放っているね2人共。

 だが流石にドンパチやらせるのはマズい。

 

 「アルフさんも久遠も落ち着いて下さい。これ進呈しますから」

 

 ちょっと下手気味に出て買い物袋から取り出したのは新発売のドッグフードとイチゴ大福。

 それを見たアルフさんと久遠は殺気を収め、ドッグフードとイチゴ大福に注目する。

 

 「暴力はいけません暴力は。平和が一番なんですから」

 

 てか後始末が面倒臭い事になりそうだからホントにドンパチはご勘弁願いたい。

 

 「……はっ!?待っておくれよ!!何で勇紀がドッグフード持ってんのさ!?」

 

 涎を垂らし始めていたアルフさんが我に返り、俺に問い詰めてきた。

 

 「そういう日もあるって事ですよアルフさん」

 

 「(そういう日って……どういう日だい?)」

 

 反論が無いって事は納得してくれたって事だろう。

 

 ポンッ

 

 あ、久遠が子供形態になった。その瞳はイチゴ大福に向けられ、キラキラと輝いている。

 ちなみに俺達以外に人影は見当たらない。

 良かった良かった。見られてたら大変な事になっていた。

 

 「勇紀~、大福~」

 

 「ケンカしないって誓える?」

 

 「うん」

 

 「ならあげよう」

 

 「わーい♪」

 

 イチゴ大福を1つ手渡すと嬉しそうに受け取り、ハムハムと頬張り始める。

 

 「アルフさんもケンカしないですよね?ドッグフード(コレ)あげますから」

 

 「ま、まあしょうがないね。ほかならぬ勇紀の頼みだ。矛を収めようじゃないか。け、決してドッグフードに釣られた訳じゃないからね!!」

 

 そうは言うものの視線は常にドッグフードに釘付けであり、涎がタラリと出始めている。

 その様を見て俺は苦笑せざるを得ない。

 

 「ここで食べるのもアレですから神社行きましょうか」

 

 俺達は揃って八束神社に移動する。

 神社に着いて縁側に座るとすぐアルフさんもドッグフードを食べ始め、久遠には2個目のイチゴ大福を手渡した。

 2人共美味しそうに食うなぁ。

 俺も買い物袋から家で食べようと思っていたどら焼きを食べる。

 

 「ガツガツガツ…」

 

 「ハムハム…」

 

 「モグモグ…」

 

 皆、何か喋る事は無く目の前の食べ物に集中する。

 うーむ……和菓子を食うと緑茶が欲しくなる。

 俺は宝物庫から緑茶入りの水筒を取り出す。

 

 「勇紀、私甘酒~」

 

 「ほいほい」

 

 続いて宝物庫から甘酒の入った徳利とお猪口を取り出して久遠に直接渡す。

 

 「くぅ~♪」

 

 嬉しそうに自分でお猪口に甘酒を注ぐ久遠。

 

 「ガツガツ……勇紀、良いのかい?アンタのレアスキル見せちゃって」

 

 「今更ですよアルフさん。久遠には俺のレアスキルを何度も見せてますから」

 

 ズズズと緑茶を啜りながら答える。

 

 「そうなのかい……あ、勇紀、アタシにも何か飲み物おくれよ」

 

 「じゃあコレどうぞ」

 

 宝物庫からリンゴジュースの入ったペットボトルを取り出してアルフさんに渡すと早速フタを開けて飲み始めるアルフさん。

 

 「くぅ~♪美味しい~♪」

 

 甘酒を飲む久遠もご満悦のご様子。

 子狐形態は当然の事として子供形態の姿も愛い奴よ。久遠の笑顔にはマジ癒されるわぁ。

 

 「むぅ~~~……やけにその狐の事、気に入ってる様じゃないか」

 

 「まあ、付き合い長いですからね」

 

 隣の久遠を撫でてやると目を細め、心地良さそうにする。

 

 「ぐぅぅ~~~~……」

 

 「…………ふふん♪」

 

 唸るアルフさんを一瞥した後、勝ち誇るかの様に鼻を鳴らす久遠。

 

 「っ!!~~~~~~っ………………ふ、ふん!!撫でられるぐらいどうしたってんだい!!」

 

 「勇紀、いつも久遠と会った時撫でてくれる。これ、誰よりも仲良しという証拠♪」

 

 「だ、だだだだだからどうしたってんだい!!!!(いつも撫でて………ぐぬぬぬぅぅぅぅぅ~~~~~~っっ!!!)」

 

 アルフさんの眼光の鋭さが増していく。

 てか凄い動揺してますね。……何で?

 

 「ま、ままままあ所詮狐のアンタはその程度の間柄なんだろうね。だけどアタシと勇紀の関係はそんなもんじゃないよ」

 

 腰に手を当て胸を張り、必死に取り繕うアルフさん。

 

 「くぅ……負け惜しみ……」

 

 「だ、だだだだったらその証拠をみ、みみみみみ見せてやろうじゃないか!!!!]

 

 大声で叫ぶ様に言った後、立ち上がって俺の目の前に移動するアルフさん。

 目が据わっていて迫力あるなぁ。

 けど俺とアルフさんの関係を見せるって何するんだ?

 久遠も首傾げて俺達の様子を見ている。

 

 「い、いいい……いくよ勇紀////////」

 

 ガシッ!!

 

 んん?

 俺はアルフさんにいきなり両肩を掴まれましたよ。しかも結構力強い。

 そのままアルフさんは顔を真っ赤に染めたまま意を決した様に頷き一気に顔を近付けてきたかと思うと

 

 「んんっ…////////」

 

 「んぐっ!!?」

 

 唇で唇を塞がれた。

 俺の目に映っているのはドアップされたアルフさんの顔。

 あまりにも突然の事だったので俺は目を見開いたまま硬直していた。

 

 「んーっ……んんんっ……////////」

 

 アルフさんの柔らかい唇が押し付けられる。

 女の人とキスしたの久しぶりだなー……って

 

 「んーーーーーーーーっ!!!?////」

 

 何で!!?何でキスされてんの俺!!?

 現状を認識した俺はパニックに陥る。

 アルフさんはキスを止めようとせず、顔を離そうともしない。

 

 「んーーーーっ……ぷはぁ……////////」

 

 しばらくしてアルフさんは自分から顔を引き離し、俺の唇を解放してくれた。

 そして久遠の方に向くと『ドヤァ』っていうぐらいの笑みを浮かべる。

 

 「ふふん!アタシと勇紀はこれぐらいの事をする仲なんだ!アンタなんかよりも一歩も二歩も先を進んでるんだよ////」

 

 「いやいやいやいや!!何言ってr「く……」…ん?」

 

 すぐ俺の隣から

 

 バチッ

 

 何かが弾けるような音が聞こえた。

 

 「くぅ~~~~~~~~っっっっ!!!!!!!!」

 

 バチバチバチバチバチッ!!!!

 

 「んぎゃあああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」

 

 「あ…アルフさーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!!!!!!?」

 

 久遠が全身から放った電撃を食らったアルフさんが悲鳴を上げ、仰向けで地面に倒れ込む。

 

 「ちょ!!?久遠!!?いきなうぶぅっ!!!?」

 

 横に向いて攻撃した理由を聞こうとした瞬間、またもや俺の口に何かが押し付けられる。

 それはハンカチだった。

 何時の間に持っていたのかは知らないが、久遠は俺の口にハンカチを押し付けた後、乱暴にゴシゴシと拭き始める。

 

 「んぶっ!!んぶぅっ!!」

 

 ち…力込めすぎじゃないですかね久遠さん!!?

 不機嫌そうな表情を浮かべた久遠がハンカチで拭くのを止めたのは2分程経ってからだった。

 とりあえず俺はアルフさんを回収する。

 アルフさんは大人形態を維持しきれず、こいぬフォームになっていた。

 

 「ぷぅ……」

 

 頬を膨らまし不機嫌オーラ全開の久遠。

 理由はアルフさんを膝の上に乗せてるからだろう。

 

 「久遠さん久遠さん。流石に電撃はやり過ぎじゃないですか?」

 

 膝の上に乗せたアルフさんに治療魔法を施しながら久遠に問う。

 

 「勇紀、浮気ダメ」

 

 「いや…浮気ってアンタ……」

 

 「そこ座って良いの久遠とルーと那美だけ」

 

 「久遠とルーは分かるとしても那美さんは流石に乗せないぞ。あの人はもう大人なんだし」

 

 それにルーだって成長していくんだから膝の上に乗せるとしても子供の間だけだ。

 

 「とりあえずその犬、どけて」

 

 「コラコラ。お前の電撃食らって弱ってんだから治療しないといけないの」

 

 君の電撃は非殺傷設定じゃないんですよ。

 

 「膝の上に乗せなくても治療出来る」

 

 どんだけ自分以外の動物が乗るのを嫌がるんですかこの子は?

 ま、それだけ久遠に好かれてるって事が分かるのは嬉しいんだけどさ。

 

 「……後で子狐モードになってくれたら存分に乗せてあげるから今は我慢しなさい」

 

 「……ぷぅ」

 

 「ていうか久遠、『イチゴ大福あげるからケンカはしない』って約束したよな?」

 

 「ケンカじゃない。久遠の一方的な虐殺」

 

 「余計に性質悪いからな!?」

 

 サラリと発言する久遠に俺は戦慄した。

 

 「くぅ……それより早く犬どけて」

 

 「だから今治療中だからね!?」

 

 「……ぷぅ」

 

 まだ納得いかなさそうな様子の久遠の頭を撫でながら俺は苦笑する。

 それからアルフさんの治療を終えた後は約束通り子狐になった久遠を膝の上に乗せ、満足がいくまで撫で続けたのだった………。

 

 

 

 ~~アルフ視点~~

 

 うーーー……。

 アタシは現在不機嫌である。

 それもあの久遠とかいう狐のせいだ。

 

 「アルフ、本当に今日はどうしたの?」

 

 「何でもないよフェイト」

 

 アタシは今家に戻ってきている。

 フェイトが言うには勇紀が家まで運んでくれたって話だ。

 ぐぬぬ。勇紀と一緒にいられる時間があの狐のせいでほとんど奪われちまった。

 勇紀とき、キスしたとこまでの記憶はあるけどその直後の記憶は無い。

 けど何をされたかは覚えてる。あの狐が放った高出力の電撃でアタシは意識を失ったんだ。

 キスした直後で上機嫌になったアタシはすっかり油断してたよ。

 

 「何でも無いというならその不機嫌なオーラを収めなさい」

 

 「リニス…それも無理だよ。……あの狐め」

 

 「「狐?」」

 

 「あの狐がいなけりゃもっと勇紀と一緒にいられたし、き、キス以上の事だって…////」

 

 「「キス以上(・・・・)?」」

 

 はっ!?

 『しまった!』と思った時にはもう手遅れだった。

 

 「ねぇアルフ…キス以上ってどういう事かな?ナニしようとしてたのかな?」

 

 「それ以前に貴女は勇紀君とキスしたのですね?」

 

 「そ…それはだね、ホラ!アレだよ!!」

 

 「アレって何?ちゃんと言ってくれないかな。私はアルフの主なんだよ?」

 

 「教え子が隠し事をするのは見過ごせませんね。正直に吐きなさい」

 

 ヤバイ!ヤバイよ!!

 フェイトもリニスも瞳から光消してゆっくり迫ってくるよ。

 

 「さあ…」

 

 「アルフ…」

 

 「「こ・た・え・な・さ・い!!」」

 

 た…助けて勇紀ーーーー!!!!

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 キャイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンンンンッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 ~~アルフ視点終了~~

 

 ~~キャラクターステータス~~

 

 NO.0012

 

 八神シャマル

 

 LV   82/ 999

 HP 6700/6700

 MP  650/ 650

 

 移動力     6   空  A

 運動性   120   陸  A

 装甲   1100   海  B

 照準値   150   宇  -

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 183 命中 197 技量 199

 射撃 185 回避 196 防御 188

 

 特殊スキル 援護攻撃L2

       援護防御L4

       支援攻撃L2

       ガード

       修理技能

       サイズ差補正無視

 

 ~~あとがき~~

 

 久々の個別イベント。

 やっとアルフネタが思い付きました。良かった良かった。

 後はテスタロッサ家の大ボス、リニスの個別イベントを考えないと。

 他のキャラは高校生編に回しても大丈夫でしょう………多分。

 ちなみに久遠はハーレム対象になりません!絶対になりません!!この子は勇紀の癒し(モフモフ)担当ですので。

 


 
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