No.681543

恋姫英雄譚 鎮魂の修羅0

Seigouさん

開闢の修羅

2014-04-26 00:10:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:17651   閲覧ユーザー数:13585

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                         剣豪と人斬の違いとは何だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        英雄と大量殺人犯の違いとは何だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                          戦争と平和の違いとは何だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                           混沌と秩序の違いとは何だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは九州島津地方にあるとある道場

 

???「・・・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・・・」

 

ここで、道着に身を包んだ青年と老人が互いに身構えていた

 

ただし、老人の方は重々しい大剣と真剣の日本刀を構え、青年の方は全くの無手

 

これからこの老人がこの青年で試し斬りをするのではないか

 

そう思わせるほどの気迫を醸し出す

 

???「きえええええええええええええええええい!!!!!」

 

腹が震えるほどの気合で老人は青年に斬りかかる

 

???「しっ!!」

 

しかし、この青年はこの神速とも呼べるほどの剣を紙一重でかわす

 

袈裟切り、逆袈裟、唐竹割、胴、逆胴、右切り上げ、左切り上げ、逆風、突き

 

縦横無尽、変幻自在、千変万化、これらが全て入り混じったかのような斬撃の嵐を巧みにかわし、捌いていく

 

???「はっ!!!」

 

ドスン!!!

 

???「ぐはっ!!!」

 

それらの攻撃を掻い潜り、懐に飛び込んだ青年の一撃が、老人の鳩尾に決まった

 

???「大丈夫か?じいちゃん」

 

???「ぐっ・・・・・何のこれしき・・・・・ごほっ!!ごほっ!!」

 

???「ほ~~~ら、もう年なんだから無理したら寿命が縮まる一方だぞ」

 

???「・・・・・ふんっ、お前に気を使われるとは、ワシも老いたものよな」

 

そして、青年は優しく老人に肩を貸し、老人は刀を鞘に納めた

 

老人の名前は北郷刀誠、戦国時代から続く北郷流を受け継いだ20代目宗家

 

青年の名前は北郷一刀、この北郷刀誠の孫である

 

刀誠「それにしても、一刀流や二刀流はそこそこで、なぜに無刀術は馬鹿みたいに強くなっとるんじゃ」

 

一刀「馬鹿って言うなよ、いいじゃないか、これだけは確実にじいちゃんを超えたんだから」

 

そう、北郷流は一刀流、二刀流、無刀術、操氣術の四つで構成されており、一刀はこれらの内の無刀術だけは完全に祖父を超えていたのだ

 

刀誠「操氣術もいつ追い抜かれても分からん域に達しておる・・・・・これは、22代目のことも考えておかねばならんか」

 

一刀「おいおい!父さんをすっとばしてなんで俺なんだよ!?」

 

刀誠「あれはお前程の才覚がなかったからな、正直お前を21代目として数えてもいいかもしれん・・・・・一刀よ、ワシはお前に北郷流免許皆伝を授けよう、我が家の家宝、陸奥守忠久と龍滅金剛刀を「いらない」・・・・・なに!?」

 

一刀「いらないって言ったんだよ」

 

刀誠「な!!?これは我が北郷流が代々受け継いできた、いわば北郷家当主の証じゃぞ!!」

 

一刀「だから、俺は北郷流は受け継がないし22代目にもならないって言ってるんだよ」

 

刀誠「何を言うておる!!?そこまで北郷流を極めておきながら継がないなど自分勝手にもほどがあるぞ!!」

 

一刀「極めたといっても、じいちゃんも言っているじゃないか、一刀流も二刀流もそこそこ、極めているのは無刀術だけだって、こんな中途半端な奴にそんなもの任せていいのかよ」

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「だいたい、今の時代そんな人斬り包丁や馬鹿でかい大剣を振り回して何になるんだよ、せいぜいサーカスのピエロが関の山だ」

 

刀誠「・・・・・お前には、北郷流の誇りや意地はないのか?」

 

一刀「ない・・・・・だいたい俺は北郷流の存在そのものを認めていないし」

 

刀誠「な!!?なんじゃと!!!?」

 

いつか自分を超えてくれる、そう意気込んで今迄何年にも渡って一刀に叩き込んできた北郷流

 

それは言わば自分と一刀を繋ぐ血だけではないもう一つの証

 

それを今日、北郷流免許皆伝を与えたその日に全面的に否定された

 

これには相当なショックと共に底知れぬ憤怒が湧き上がってきた

 

刀誠「我が家が長い間守っていた北郷流を否定するとは、なんたる仕打ちか!!!!」

 

一刀「だってそうだろう?北郷流はいままで数多くの人々の命を奪ってきた、言わば呪われた流派だ」

 

刀誠「それは戦場の話!殺すか殺されるかの修羅場でそんな甘いことを言っていられるか!」

 

一刀「そんなもの関係ない、どんな理由があろうと人は殺しちゃならないし、ましてや戦争を起こす理由なんて作り出してもいけないんだ・・・・・俺からすれば、戦争や闘争を起こした歴史の偉人達やそれに加担した兵士達も皆同等に人殺しの犯罪者だ・・・・・絶対に認めないし、認めるわけにはいかないんだ・・・・・奴らを認めるということは人殺しを肯定することになってしまう」

 

刀誠「・・・・・お前は、自分の先祖がただの殺人鬼だと言いたいのか?」

 

一刀「その通りだ・・・・・それに俺は北郷流だけじゃなく、あらゆる武器の存在も認めていない」

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺はじいちゃんが戦時戦場へ赴かなかった、一度も人を殺していないから北郷流を習っていたんだ、もしじいちゃんが一人でも人を殺していたら俺は絶対にこんな流派途中で止めていたよ」

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

一刀「じいちゃん・・・・・北郷流のような人殺しの流派なんて無い方がいいんだ、それくらいじいちゃんも分かっているだろう?それにこのままじゃますますじいちゃんは時代に置いて行かれる一方だ・・・・・大体今時パソコンの検索サイトで文字の一つも打ち込めないなんて、どうかしているぞ」

 

刀誠「ぐっ!・・・・・痛いところを突きおって・・・・・」

 

一刀「でも、じいちゃんには感謝しているよ、俺をここまで強くしてくれたことにはさ・・・・・おかげで、ボクシングの世界チャンプくらいにはなれそうだ」

 

刀誠「・・・・・北郷流をそんな祭りごとに使うでないぞ」

 

一刀「使わないよ、俺はそんなことよりもビジネスで金儲けをする方が性に合ってるよ」

 

この会話の間に着替えを終えた一刀は道場を去ろうとした

 

しかし

 

刀誠「待て、一刀よ」

 

一刀「なんだよ、明日早いんだよ、道場の掃除もしないといけないし、夏休みも終わりなんだからそろそろ出発する準備をしないと電車に間に合わない」

 

刀誠「これを持って行け」

 

一刀「え?」

 

祖父が差し出したのは、北郷流無刀術の戦闘装束に木の拵えの脇差だった

 

一刀「ちょっとじいちゃん、俺は北郷流は継がないって言っているじゃないか!!」

 

刀誠「分かっておる、お前は無刀術だけはワシを超えておる、忠久と金剛刀は保留にしてやるからこれだけはもらってくれ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

気が乗らないが、祖父のたっての願いでもあることを一刀も感じ取り受け取ることにした

 

刀誠「一刀よ、お前の言っている事は決して間違っておらん、むしろ正しい事だ・・・・・しかしな、間違っていない事、それ即ち正しい事と言ってしまったらそれは間違いじゃ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

刀誠「いつかお前にも決断を迫られる日がきっと来るじゃろう・・・・・その時にお前が生き残ってくれることをワシは願っておるぞ・・・・・」

 

その言葉を最後に祖父は道場から出て行った

 

一刀「・・・・・なんだよ、まるで近い内に戦争でも始まるような言い方じゃないか・・・・・まぁ仮にあったとしても俺は殺すのも殺されるのも御免だけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わり、ここは東京都浅草、聖フランチェスカ学園

 

九州から戻ってきた一刀はいつも通り2時間前に登校する

 

なぜ2時間前なのか?なぜいつも通りなのか?

 

それは、部活の朝練なのだ

 

しかし、一刀自身が何かの部活に所属しているというわけではない

 

ならばなぜこんなにも早く登校するのかというと、一刀はあらゆる部活の助っ人として毎日を忙しくしていたのだ

 

小さい頃から北郷流の手ほどきを祖父から受けているため、一刀の体力は学園でも群を抜いている

 

そのため付いたあだ名がイケメン体力大魔王

 

今日の朝練ではサッカーの練習試合に精を出している

 

その動きは恐ろしいほど俊敏、ドリブルも正確無比で5人抜きなんて平然とやってのける

 

実際、サッカーのプロチームからスカウトが何回も来ているほどなのだ

 

もちろんサッカーだけではない、野球、バレーボール、バトミントン、あらゆるスポーツ業界からのお誘いがあったが、それらを全て断り今なおこの学園に在籍している

 

一刀「ふっ」

 

大した力も使わずシュートを放つと、ボールは吸い込まれるようにキーパーをすり抜けゴールの枠の中に収まる

 

「きゃ~~~~♪北郷く~~~~ん♪」

 

「こっち向いて~~~♪北郷さ~~~~ん♪」

 

「結婚してくださ~~~~い♪」

 

「抱いてくださ~~~~い♪」

 

グラウンドの隅の方に群がる女子生徒達、彼女達は北郷一刀ファンクラブ兼親衛隊(自称)

 

彼女達は常に一刀のスケジュールを取得し、例え朝早くとも学校に来ることに余念がないのだ

 

「(おのれ北郷~~~~!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「(なんでてめーだけ~~~~!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「(神よ、あいつに天誅を~~~~!)」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

そんな一刀に嫉妬する男子生徒も学園内にはかなりいた

 

「お疲れ様~~~♪北郷君~~~♪」

 

「はい♪お茶をどうぞ~~~♪」

 

「これ、おしぼりだよ~~~♪」

 

一刀「あ、ああ・・・・・ありがとう・・・・・」

 

朝練が終わった途端に女子達が一刀を取り囲む

 

本人は息一つ切らさず、汗一つかいてないし、喉もあまり乾いていないが、人の好意を無下にするのもよくないのでもらっておくことにする

 

「ねえねえ一刀君、今日の放課後時間ある?」

 

「近くに新しい喫茶店が出来たんだけど、一緒に行こうよ~~♪」

 

「あ~~~!!わたしも一緒に行く~~~!!」

 

「あたしだって!!」

 

一刀「あ~~~ごめんね、放課後は別の部活に行かないといけないからさ」

 

「え~~~~・・・・・」

 

「そんな~~~~・・・・・」

 

彼女達の誘いを断るのはいつも心苦しいと感じているが、一刀にも予定というものがあるのだ

 

及川「ようかずピー♪お疲れさん♪」

 

一刀「おはよう、及川」

 

及川「相変わらずモテモテにも拘らずつれないんやな・・・・・」

 

一刀「仕方ないだろ、こっちにも都合というものがあるんだ、先にした約束そっちのけで遊びになんか行けるか」

 

及川「相変わらず律儀やな、何か都合付けて断ればええやん」

 

一刀「そんなことしたら先に約束した方に迷惑がかかるだろうが」

 

及川「そらそうなんやけど!!かずピーが一言OKしてくれればワイも一緒についていって可愛子ちゃん達といちゃいちゃ出来るねん!!ていうかしたいねん!!」

 

一刀「結局それが目的なのかよ・・・・・」

 

及川「当ったり前やん!!・・・・・そういえば夏休みは相変わらず実家に帰っとったん?」

 

一刀「そうだよ、いつも通りじいちゃんと修行していた」

 

及川「北郷流やったっけ・・・・・かずピー青春おもいっきり無駄使いしとるで~」

 

一刀「俺もそう思う」

 

及川「せやったらなんでそないなもんにきっちょ~~な時間使っとるねん、もったいなさすぎやで、もしかして楽しいん?」

 

一刀「いいや、面白くないよ」

 

及川「ならそれこそ断ればええやん」

 

一刀「ん~~~~、面白くないと同時につまらないと思ったこともないんだよな」

 

及川「なんやて?」

 

一刀「俺は小さい頃からこの流派を叩き込まれていたから、それを習っているのが当たり前で楽しいとか楽しくないとか、そんな概念は無かったんだ」

 

及川「・・・・・まぁ想像はできるけどな・・・・・」

 

一刀「まぁ俺もこんな流派を自分の子に継がせる気なんてさらさら無い、北郷流は俺の代でお終いだよ」

 

及川「でも北郷流って戦国時代から続いてる流派なんやろ?今から数えたら400年以上の歴史があるんやろ?もったいないような気もするけどな~~・・・・・」

 

一刀「前にも話したことあるだろ、北郷流はあくまで人殺し専門の流派だって、こんな時代遅れの古武術を伝えてなんになるんだよ」

 

及川「かずピーの言ってることも別に間違ってるわけやないとは思うんやけどな・・・・・まぁ、フランチェスカ学院特進科の中でも三本の指に入るかずピーが言うんやったら間違いないやろ」

 

一刀「よせよ、それにそんなこと関係ないだろ」

 

そう、フランチェスカ学園は普通科と上進科と特進科とがあり、一刀は一番上のランク特進科で常に三位に名を連ねる雲上人なのである

 

及川「前の実力テストでも二位やったやんか、普通科の並みのワイとは天と地の差や・・・・・そんな一刀と親友でいられてワイも幸せや♪」

 

一刀「悪友の間違いじゃないのか?」

 

及川「ひどっ!?そないな事言うの!?」

 

一刀「ははっ、それより早く着替えないと、授業に遅れる」

 

及川「おう、ワイは先に行っとるで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後

 

 

ここは、フランチェスカ学園剣道場

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・・・」

 

現在この道場では剣道着を身に付けた一刀と目の前に同じく剣道着を装着した人物が竹刀を構え退治していた

 

両者が摺足でジリジリと間合いを計り

 

一刀「・・・・・ふっ!!」

 

???「・・・・・しっ!!」

 

次の瞬間、両者の間合いが一瞬でゼロになる

 

パーンという竹刀の音が響く中、両者は背中合わせになる

 

???「・・・・・ふぅ、流石だな、北郷君」

 

一刀「いえ、不動先輩こそ流石です」

 

不動と呼ばれた人物がお面を外すと出て来たのはモデルも真っ青になりそうな美人だった

 

「きゃ~~~~♪北郷君素敵~~~~♪」

 

「不動先輩も素敵だけど、不動先輩と互角に渡りっている北郷君もかっこいいわ♪」

 

「あぁ~~~、胸が締め付けられそう♥//////////」

 

「(ちっくしょ~~~、なんで北郷のやつあんなに強いんだ~~~)」

 

「(不動先輩は、全国剣道選手権で優勝する腕前なのに、なんで平気で打ち合えるんだ~~~)」

 

「(世の中は理不尽だ~~~!!イケメンな上に成績優秀でべらぼうに強いなんて~~~~~!!)」

 

道場には、既に陣取っていた一刀親衛隊の娘達がキャーキャー騒ぎ、他の剣道部員が一刀に嫉妬の殺気を放っていた

 

及川「おお~~~、流石かずピー、わいの自慢のマブダチや♪」

 

そして、なぜか居る及川

 

審判「・・・・・え~~~~と、すみません、お二人の動きが速過ぎてどっちが勝ったか分からなかったんですが・・・・・」

 

不動「情けないぞ君!今の動きくらいみえんのか!?」

 

審判「す、すみません!不動先輩!」

 

一刀「今のは、相打ちですよ」

 

不動「そういうことだ、これで56戦全引き分けか・・・・・」

 

一刀「ここまで引き分けが続くとかえって怖いですね」

 

不動「では、本番と行くか」

 

一刀「え?まさかまたですか!?」

 

不動「無論だ!私も半分以上はそれが目的で北郷君を呼んでいるのだからな!」

 

一刀「・・・・・分かりましたよ」

 

そして、一刀は防具を全て床に置き素手で構える

 

不動はそのまま竹刀を構える

 

「・・・・・・・・・・」

 

その場にいる全員が、道場の中の空気が凍りついたような感覚に陥る

 

肌がピリピリし、まるで体が息の仕方を忘れてしまったかのように硬直する

 

不動「はあああああああああああああ!!!!!」

 

そして、普段の稽古でも決して発することのない気合と共に不動は竹刀を振るう

 

一刀「しっ!」

 

不動の振るう目にも止まらない竹刀の軌道を一刀はかわし受け捌く

 

周りから見れば約束組手としか思えないであろう動き、しかし少なくとも不動は本気で斬りかかっている

 

一刀「ふっ!」

 

唐竹割りの竹刀を受け流し道場の床に押し付け、不動との間合いを一瞬でゼロにする

 

目前には一刀の拳がぴったりと止まっていた

 

不動「・・・・・今のでも君は全く本気を出していないのだろう・・・・・いやはや恐れ入る」

 

一刀「いえ、それほどでも」

 

そして、両者は礼をしながら離れた

 

「・・・・・・・・・・」

 

ギャラリーは、余りに自分達の想像を超えた光景に声を失ってしまっていた

 

及川「うひょ~~~、相変わらずの神業やな、ワイも何回も見てるのに未だに何やってるか分からへんわ~~」

 

不動「本当に北郷流は相手が武器を持っていることを常に想定しているのだな・・・・・もしこの竹刀が真剣だったら今ので完全に折られていたな・・・・・不思議なものだ、なぜ素手で戦う方が強いのだ?」

 

一刀「一応俺は、無刀術だけは祖父を超えているみたいなんで」

 

不動「北郷君の祖父君か・・・・・祖父君も安心だろう、孫がこれほどの使い手になってくれれば本家の未来も安泰であろう」

 

一刀「いいえ、俺は北郷流を自分の子に継がせる気なんてありませんよ」

 

不動「なに!!?」

 

一刀「北郷流は、俺の代で終わりです」

 

不動「何を言っているんだ!!?聞くところによると北郷流は400年以上の歴史があるそうじゃないか!!それを次の世代に伝えることは受継いだ者の義務なのだぞ!!」

 

一刀「一つ間違っていますよ、俺は北郷流の宗家じゃありませんし、じいちゃんにも北郷流は継がないってはっきり言ってますから」

 

不動「そんな屁理屈は通用しないぞ!!考えを改めろ北郷君!!これだけの歴史ある流派を途絶えさすなど、日本の歴史を語り継ぐ上での手痛い損失だ!! 」

 

一刀「・・・・・歴史・・・・・か・・・・・」

 

不動「?」

 

一刀「知っているかもしれませんけど、北郷流はあくまで人殺し専門の流派なんです、今まで北郷流が殺してきた人々の数を知っていますか?・・・・・いえ、忘れてください、聞いて反吐が出るような数字ですし・・・・・」

 

不動「それは・・・・・しかし、それは別に君が誰かを殺したというわけではないだろう!それにそんなことはありとあらゆる流派が持つ負の遺産だ!一つの流派を途絶えさす理由にはならない!」

 

一刀「俺はそれが許せないんです!!!」

 

「!!!!??」

 

道場にいる部員、ギャラリーが一刀の怒声に背筋を強ばらせる

 

一刀「俺は、三国志や戦国時代や幕末が好きだとか平気で言っている奴らに聞いてみたい・・・・・ならお前らは、血で血を洗う凄惨な殺し合い、果の見えない憎しみ合いが好きなんだなって」

 

不動「なっ!!?彼らはそんなつもりで・・・・・」

 

一刀「そうじゃないですか、もしそうじゃないと言っているなら、そいつらは事の本質を理解していない・・・・・戦争っていうのはいつの時代、どんな武器や兵器を使っていようが結局はただのくだらない意地の張り合いでしかないんです」

 

不動「・・・・・・・・・・」

 

一刀「その戦争で一番迷惑を被るのは、そこで普通に暮らしている人達なんです・・・・・俺は、その人達が気の毒でしょうがないです、住む所を奪われ挙句の果てに戦争を起こした張本人達からはなんの保証も受ける事なく、野垂れ死んでいった人達のことが・・・・・」

 

不動「・・・・・それは・・・・・その通りだが・・・・・」

 

一刀「俺からしたら宮本武蔵は単なる人斬りだし、織田信長やナポレオンなんて頭のネジの吹っ飛んだ大量殺人犯です・・・・・奴らを剣豪だの英雄だの言っている奴らは本当に気違いもいいところだ・・・・・そう言う奴らに限って、自分自身に同じ火の粉が降りかかってきた途端に文句を言い出すんだ」

 

不動「・・・・・君は、人の歴史そのものを認めないとでも言い出すのか?」

 

一刀「・・・・・そう受け取って頂いてもいいですよ」

 

不動「・・・・・・・・・・」

 

その言葉を最後に一刀は道場から出て行った

 

「・・・・・あ、待ってよ北郷く~~~ん」

 

及川「あ~~君達、今のかずピーには触れん方がええで、かずピーはああいう話に関してはかなり敏感やからな」

 

「・・・・・・・・・」

 

及川「それよりどないや♪ワイといっちょ合コン・・・・・」

 

「北郷君が来ないんじゃつまんな~~~い」

 

「下心見え見えの人と何か行きたくな~~~い」

 

「北郷君なら全面的に許せるけどね♥//////////」

 

「うん♥私もいつでも・・・・・♥♥♥////////////」

 

「あんな意固地な北郷君も素敵♥//////////」

 

及川「・・・・・つれないやん」

 

悉く道場から去っていく女子生徒の後ろ姿を涙目で見送るしかない及川であった

 

不動「君もなかなかに不遇な扱いを受けているみたいだな」

 

及川「そ~~~なんですわ!!せやから不動先輩!!これからワイとデー「すまないが、弱い上に尻軽な男に媚びる気はない」・・・・・つれないやぁ~~~ん・・・・・」

 

不動「・・・・・それにしても、彼ももう少し歴史の偉人達の立場というものを考えたらどうなんだ、いくらなんでも頑固が過ぎるぞ」

 

及川「しゃーないんですわ、かずピーは歴史の授業でも平気で歴史の偉人を犯罪者と呼びますし、それを先生が注意したとしてもその偉人について調べ尽くしているもんですから完全に先生を言い負かしてまうんです、教育委員会もかずピーを改心させようとしたんですけど、完璧に議論武装してるもんでついに委員会も音を上げてまったんです、常に弱い人の立場から物事を考えますし、100%その人達の味方ですから、強きを挫き弱気を救うを心情としてますんで」

 

不動「・・・・・確かに、彼の言っていることも分かる・・・・・人の歴史というのは・・・・・調べれば調べるほど、紐解いていけば紐解いていくほど・・・・・血生臭く、見ていて反吐が出るような代物ばかりだ・・・・・実際こうして我々が呑気に話している瞬間でも、地球上の何処かでは必ず銃声が鳴り響き、誰かが確実に戦死している・・・・・そういう血塗られた歴史だ・・・・・」

 

及川「・・・・・・・・・・」

 

不動「しかし・・・・・人の歴史は、それを積み重ねることでしか紡ぐ術がないというのもまた事実だ・・・・・我々も今こうしてこの世に生を受け、平和な時代に生きているのは、先代達の血の滲むような努力のおかげなんだという事を胸に刻まなくてはならないんだ」

 

及川「かずピーは、筋金入りの平和主義者ですから・・・・・せやから過去に戦争を起こした全ての偉人達が許せんのですわ・・・・・そして、現代でも変わらず戦争を起こしている国の指導者や前線に立っている兵士も・・・・・」

 

不動「・・・・・君の言っていることも分かる、彼もああいうところがいいところだと分かってはいるんだが、どうしても私は武人としてのプライドが先に出てしまう・・・・・その結果ああいった形で口論をしてしまったのだが・・・・・」

 

及川「かずピーには、武人のプライドなんてもんはひとっ欠片もないんですわ・・・・・あれはワイとかずピーが中学生の時ですわ、ワイが帰り道、不注意でかなりガラの悪い不良グループにぶつかってまって、その後裏路地に連れ込まれてリンチにされたことがあったんですわ、その時偶然かずぴーがやってきて助けてくれたんですわ・・・・・でも・・・・・・・・・・」

 

不動「?・・・・・どうしたのだ?」

 

及川「・・・・・かずピーは、殴るんなら俺を殴れと言って、その後30分近くワイの代わりにその不良らに殴られていたんですわ」

 

不動「なっ!!?」

 

及川「かずピーはものすごく頑丈で、最終的にその不良らが殴り疲れてナイフを取り出したんですわ・・・・・」

 

不動「まさか!?刺されたのか!?」

 

及川「いえ・・・・・そのナイフは、かずピーの目にも止まらん早業で折られたんです、それにビビった不良らはトンズラしてまって・・・・・でも、かずピーは全身アザだらけにされてまって・・・・・」

 

不動「・・・・・・・・・・」

 

及川「その時のかずピーは、全国中学空手選手権でかるく優勝するくらいド強かったのに・・・・・かずピーやったらあんなやつら思いっきり手加減して秒殺にできたはずなのにですわ・・・・・その事を後でかずピーに聞いたらなんて言ったと思います?・・・・・『及川が無事で良かったよ』・・・・・って・・・・・」

 

不動「・・・・・本当に宝の持ち腐れだな、武というのは、人を傷付ける為だけのものではなく、己の身を守る盾でもあるのに」

 

及川「かずピーにとって、武術は単なる暴力の象徴でしかないんですわ・・・・・」

 

不動「惜しいな、あれほどの才覚を持ちながら、武術そのものを憎んでいるなど・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ふぅ!・・・・・くそっ!!」

 

学生寮の自分の部屋に帰ってきた一刀は、即行でベッドの中へダイブする

 

どうやら、先ほどの不動との言い争いで心はだいぶ乱れているようだ

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

しかし、それでも深呼吸をし自分の心を落ち着かせる

 

一刀「(・・・・・不動先輩の言いたいことも理解できないわけじゃないんだけどな)」

 

そもそも、戦争が悪いことであるという概念そのものが20世紀後半以降のものであり、それまでは人と人とが殺し合い恨み合うなんてことは当たり前だった

 

きっと自分がこうして平和主義者でいられるのは、戦争のない時代に生まれているのと、紛争から遠く離れた平和な国に居るからなのだろう

 

しかし、逆に言えばそんなことが当たり前になってしまうくらい人の感覚が麻痺してしまうくらいの歴史の教科書にも載せられない、公にも公開できないような凄まじい出来事が過去に幾千も起きていたということだ

 

十字軍の勝手な遠征で殺されたイスラムの人々の肉親、新撰組に斬られた人々の肉親達はその後どうなった?はっきり言って大迷惑もいいところだ

 

その人達の境遇を考えると、胸が締め付けられる

 

当時、その偉人達に殺された人々からしたら面白くない話だろう、自分達を殺した人物が後の世では犯罪者ではなく武将だの英雄だのと持て囃されているこの現状が

 

自分がその人達の立場でそんなことを聞いたら「ふざけるな!!!!」と声を大にして叫ぶだろう

 

一刀「・・・・・俺は認めない、そんな事・・・・・そんな事がまかり通るなら、無駄な犠牲になった人達は全くうかばれないじゃないか・・・・・」

 

言葉に出すことで、自分の考え、信念が揺るぎない物であることを再確認する

 

一刀「・・・・・さて、今日の宿題をとっとと終わらせるか」

 

いつまでもふてくされていても仕方がないので、ベッドから起き上がり机に向かい始めるが

 

ガコン

 

一刀「?・・・・・なんだ?」

 

扉から聞こえてきた物音に椅子に預けた腰を再び上げ、誘われるように歩を進める

 

一刀「・・・・・って、こんな時間に郵便だって?」

 

扉のポストには一つの小包が入っていた

 

一刀「送り主は・・・・・何も書いてないか・・・・・」

 

小包には張り紙一つ貼っていなく無造作に包装紙でグルグル巻きにされていた

 

一刀「いったい誰なんだ?及川辺りの悪戯か?」

 

本人が聞いたら「ひどっ!」と言いそうだが、一刀は気味悪そうにしながらもその包装紙を外していく

 

一刀「・・・・・これは、鏡?」

 

出て来たのは、かなり古びた銅鏡だった

 

訳が分からない、たとえ及川でもこんな意味のない悪戯なんてしないだろう

 

一刀「一体何なんだ?こんなもの送られる覚えなんて・・・・・なっ!!?」

 

次の瞬間、その銅鏡が眩い光を放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「外史は無限、世界は無限、人の歴史は・・・・・無限・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんお久しぶりです

 

前作の北郷伝の外伝をすっとばして新たな外史が幕を開けます

 

今回の一刀は、前作の一刀があまりにチートになり過ぎてしまいましたので若干縛ろうと思います

 

基本的な能力は同じですが具体的に言いますと

 

①合体奥義は封印

 

②縮地の干支の型は封印

 

③忠久と金剛刀は封印

 

④回天丹田は・・・・・・・・・・今後の展開によります

 

と、大体こんな感じで行こうかなと思っています

 

自分も今回のストーリーは、全体的に漠然とした部分が多いのではっきりしなくてすみません

 

あと、前作ではあまりに擬音表現を多用してしまいましたので、今回は控えようと思います

 

その他にも、様々な前作からの反省点をふまえつつ書いていきたいと思います

 

では新たな外史、鎮魂の修羅をお楽しみください


 
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