No.679439

#ダメだこの悪魔はやく何とかしてあげないと~消えたイヤーカフス

闇野神殿さん

叛逆の物語公式ガイドブックにあったほむらちゃんのイヤーカフスは勝手に歩き回るという衝撃の設定(笑)に何というかもう強烈なインパクトを受けてノリと勢いで妄想が暴走して一晩の連ツイートでライブ執筆してしまったものをリライトしました。ダメだこの悪魔はやく何とかしてあげないと。まったくほむらちゃんは最高だぜ。

2014-04-17 04:36:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:899   閲覧ユーザー数:897

 暁美ほむらの朝は、枕元にちゃんとトカゲのイヤーカフスがあるかどうか確かめることから始まる。

 あろうことか勝手に動き回ったりするこのダークオーブの別形態であるイヤーカフス、二日前はベッドの下に、五日前はキッチンの戸棚の奥に潜り込んでいた。もちろんその日は学校は遅刻である。精々平然と澄ました顔で重役出勤ならぬ重役登校をしたが内心周囲、そして特にまどかの視線が痛かった。

 

 ある日、とうとう恐れていた事態が起きた。よりにもよって学校でイヤーカフスが勝手にどこかへ行ってしまったのだ。

 これが寝室であれば、結界を張って閉鎖空間にすれば室外に出ることだけは防げるが、学校ではそうはいかない。誰か、特に自分を目の敵にしている美樹さやかに見つかることだけは避けねば。

 もしもダークオーブがソウルジェムのように自分の肉体から100メートル以上離れてしまったら一体どうなってしまうのか。暁美ほむらはそれを考えるだけで総毛立つのを覚える。

 ダークオーブもまた、ソウルジェムのように100メートル以上離れると肉体への支配力を失ってしまうのだろうか。自分のこととはいえ、これは彼女にも判らない。だが、まさか試してみるわけにもいかないではないか。ぼっちだし。万一のときに助けてくれる誰かがいない状態でそれを試すことはリスクが高すぎる。あの偽街の子供たちに任せることにも多大な不安を覚えるし。

 

 その日、鹿目まどかは、廊下で妙なものを見つけた。トカゲ……を模ったイヤーカフスが、なんと勝手にちょろちょろと歩き回っているではないか。思わず目が点になったまどかは、思わずそれを拾い上げる。ふと、それは暁美ほむらがいつも身につけているものだと気付いた。

 暁美ほむらは、内心半べそをかきながらも必死で平静を装って校内を歩きまわる。もちろんイヤーカフスを探すためだ。下手にカフスと逆方向に歩いて100メートル以上離れてしまったらと思うと不安で仕方ない。そんな中、ふと、目の前に鹿目まどかの後ろ姿を見た。

 

「あ、ほむらちゃん」

 自分に気付いたまどかが歩み寄ってくる。どこかよそよそしげで、だけど内心では気にされているような、それでいて怖がられているような複雑な態度。あの結界のなかの幸せな世界を思い出し、少し哀しい気持ちになるが、今ばかりはまどかに構っている余裕さえない。せめて覚醒を刺激しないように立ち去ろうと思う。

 

「何か用かしら、まどか」

 焦りが声に出ているのが自分でもわかるほどだった。

「あっあのね、ほむらちゃん……」

まどかがどう話を切り出していいのか迷うようにもじもじしている。普段なら少しでも相手をしてあげたいところなのだが今だけはダメだ。

「用がないなら、行くわ」

 煮え切らないまどかの態度に焦るほむらは、そう言ってまどかの前から歩み去る。焦りが声に棘を含ませてしまったせいか、まどかもそれ以上引きとめられず口ごもる。何かを手に持っていた気もするが、今のほむらにはそれを気にする余裕もなかった。

 

「どうかしたの、まどか?」

 ほむらが立ち去った後に肩を落として佇むまどかに声をかけたのは、まどかにとって幼馴染であり、帰国して三年ぶりの再会を果たした親友の美樹さやかだった。

「あ、さやかちゃん……あのね、これなんだけど」

 そう言って、まどかはさやかにイヤーカフスを見せる。

「これって……ほむらが付けてたやつじゃん」

「うん……さっき廊下で拾ったの。それでほむらちゃんに返そうと思ったんだけど」

 トカゲのイヤーカフスは、さっきまで歩いていたのが嘘のように今では普通のアクセサリーに戻っている。

「どうしよう……」

 困ったように呟くまどか。

「あの悪魔のものなんて、捨てちゃったら?」

 さやかが言う。彼女はなぜかほむらを悪魔と呼び、嫌っている。なぜそうなのかはまどかにはうかがい知れないのだが、どうやらさやかはほむらに強い敵愾心を抱いているようだ。

「だ、ダメだよぅ!」

 慌ててまどかは手と首を振る。

「あはは、流石に冗談だって。でも、気になるんだったら、追いかけて返してやりなよ」

「わ、わかったよ、さやかちゃん!」

 まどかは、改めてほむらを探しに駈け出して行った。

「ったく、世話がやけるんだよねぇー、まどかも、あの悪魔のヤツも」

 それを見送ったさやかはそうため息を落とした。

 

「ない……ないわ……一体どこへ行ってしまったというの……」

 既に放課後で時刻も遅く、他の生徒たちも誰もいない。

 人目を気にしなくてもよくなったためか、ほむらは恐れと焦りをダダ漏れにして涙目でイヤーカフスを探し回っていた。

「ほむらちゃーん」

 

「ま、まどか!?」

 さっき冷たく突き放してしまったまどかが、自分の名を呼びながら駆けてくることにほむらは動揺を隠せずにいる。瞳に湛えられた涙も心細げな表情も取り繕う暇もなく、ほむらはまどかと向かい合う。

「あの、ほむらちゃん、これ!」

「こ、これは……」

 差し出されたまどかの両手には、あれほど探していたトカゲのイヤーカフスがちょこなんと鎮座していた。

「あ、あのね、さっきこれ拾ったの。それで、ほむらちゃんに返そうと思ったんだけど、あのときは返しそびれちゃって、でも、大事なものなんだよね?」

 

「あ、あり、ありがとう……まどか」

 思わぬことに気持ちの整理をつけることも出来ず、ほむらは涙目のままか細い声でそう口にしていた。

 そんなほむらの態度にまどかは一瞬きょとん、とした顔になる。そして、嬉しそうに笑ってこう言った。

「ウェヒヒッ、ほむらちゃんって、そんな顔もできるんだね」

 そのまどかの声にようやくほむらは我に返る。

 

「なっ……まどか、あなた何を」

 もはや取り繕うことも完全に手遅れになったことを突きつけられて、ほむらは真っ赤になりながらそれだけをかろうじて口に出す。

「ウェヒヒ、ほむらちゃんって、ちょっと怖いかもってずっと思ってたけど、本当は可愛かったんだね」

「わ、忘れなさい、まどか、さもないと……」

 必死になってこわれた仮面の欠片をかき集めるようにしてほむらはまどかを恫喝しようとする。だが。

「あっれーいいのかなほむらちゃん? これ、まだ私が持ってるんだよ?」

 そう。カフスはいまだにまどかの手の上にあった。

 

「あぅ……」

 いまだまどかの手の上にある自らの命に青ざめるほむら。

「お願い……まどか、いじわるしないで」

 これまで悪魔として意識して張っていた気持ちの破片ごと涙をぽろぽろと零してほむらは泣き出してしまった。普段張り詰めている分だけ、いったん崩れると脆いのが彼女だった。

「ああっ、ごめんねほむらちゃん」

 まさか、こんなに簡単にほむらが泣き出してしまうなどとは流石に思いもしなかったまどかは、精一杯に優しくほむらを慰める。

「……ひっく、えぐ」

「ごめん、ごめんねほむらちゃん、そんなつもりじゃなかったんだよ」

 これまで気持ちを鎧っていたものが全部壊れて、昔のまま、素のままになってしまったほむらを抱き寄せる。

「ばかぁ……まどかのばかぁ」

「うん、ごめんねほむらちゃんウェヒヒ」

 泣きじゃくるほむらをあやすように慰めるまどか。完全に立場が逆転してしまったふたりを、再び動き出したトカゲのイヤーカフスがまどかの肩の上から不思議そうに、呆れたように、でもちょっとだけ嬉しそうに見上げていたのだった。

 

とりあえず完


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