No.677010

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第28話

黒天さん

今回は涼音さんのお話と、対袁紹戦のかかりになります。

2014-04-07 00:59:06 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6241   閲覧ユーザー数:4659

「雪だねぇ……」

 

「そうだなぁ……」

 

まぁ、何してるかっていえば、庭に面した廊下にすわって雪を肴に晩酌してるわけだけど。

 

一人で飲んでたら、涼音が通りがかって一緒に飲む、と言うので一緒に一杯飲んでいる。

 

分厚い雲がかかってるわけでもなく雲の合間からうっすらと月が見えて、無風で、雪はチラホラと降る程度。

 

まぁ、これを逃したらこれ以上の雪見酒日和はないだろってぐらい。

 

さっむいけど、まぁ風情があっていいもんだ。

 

酒が入れば体は暖かいしね。

 

涼音は結構酒には弱いほうなのか、まだほとんど飲んでないというのに顔を赤くしていい感じになっている。

 

「でもいいの? 雪を肴に一杯飲んだりしててさ」

 

「……ま、いいとは言えないけど、今は期を待つ時だから慌ててもどうしようもないしね。

 

それに、結構よく飲む方だから、飲んで平気な量ってのも心得てるし」

 

「あたしはお酒は弱いからなぁ」

 

「みたいだね」

 

お酒を軽くあおって、空に浮かぶ三日月に視線を移す。

「最近なんか優雨の雰囲気がちょっと変わったんだけど、心当たりない?」

 

「ん、あるといえばある」

 

「そっか。優雨は、んー、なんていうんだろ、何か後ろ暗い所があると思ってたけど、解決したのかな?」

 

「解決はしてないと思う。ただ、足踏みから前へ進む手助けはできたんじゃないかな」

 

「あたしは、何かあるのは気づいてたけど、支えや手助けはしてあげられなかったしね。

 

やっぱり元王様ってのは伊達じゃないのかな?」

 

「俺の功績ってわけじゃないよ、というか誰から聞いたのさ、その話し」

 

「あ……、あー、静里だよ」

 

「どれぐらい聞いた?」

 

「んー、昔どっかで王様やってて、天下統一したらしいって話しぐらい?

 

でも、最近そんなことがあったって話しは聞かないし。

 

まぁ、詳しい話しは聞いてないよ」

 

「そっか」

 

静里は朱里からの情報と、俺からの情報でかなり詳しく知ってるはずだけど。

 

「んー、気になる?」

 

「話を聞きたくないっていったら嘘だね。聞いてみたいとは思うよ」

 

「ま、知りたいなら話してもいいか」

 

今やしらない人間のほうが少数派だし、詳しく知らないのは菖蒲、椿花、それと優雨に天泣ぐらいか。

 

天梁は桂花から話しを聞いてたハズだし。翠はどうかわからないけど、愛紗や鈴々はそこそこ夢で見てたらしいし。

「さてどこから話したものかな」

 

まず最初は……、今は遠い昔のように感じる、現代の事から。

 

そして次は現代……、天から落ちてきた所。ひとつずつ順を追って話していく。

 

結構な長話になるから省く所は省き、なるべくわかりやすいように。

 

自分の記憶を整理するように……。

 

前の事の話しが終わったら次はこちらに落ちてきた所から。涼音と出会うまでの事を話していく。

 

「……戦なんて無い、平和な所から突然この大陸に飛ばされて、それから、身を守るために力をつけて、

 

ようやく平穏になったと思ったら、全てが無に帰って振り出しに戻って……、自分は覚えてたのに皆は何も覚えて無かった……?」

 

「うん、そんな感じ。覚えてた人もいたけど、それも夢でって形が大半でね、態度が明らかに違う人もいたし」

 

すっかり冷め切って冷たくなった酒を煽る。ひと通り話し終わってから涼音の方に視線を向けると、目に涙を浮かべ、俺の方をじっと見ていた

 

「あたしには想像できないけど、それがすごく理不尽だって事は分かる……。

 

一刀がきっと辛い思いをしてきただろうって事も、軽々しく分かるなんて言ったら失礼なぐらい」

 

その頭に手を乗せて軽く撫でる。

「ありがとう」

 

「え?」

 

涼音はきょとんとした顔になり、俺の真意を知ろうとしてか、じっと俺を見て。

 

「だって、こんな荒唐無稽な話し、信じてくれると思わなかったし。

 

それに、俺のために泣いてくれたならそれは嬉しいから」

 

そういうと少し照れくさそうな表情を見せて。それからふっと、表情が曇る。

 

「あたし……あたしも、もしかして何か忘れていたりするのかな?」

 

「いや、涼音は多分何も忘れちゃいないよ、前は面識無かったしね」

 

「そっか」

 

「さてと……、お酒も無くなっちゃったし今日はこのへんでお開きにしようか」

 

「あ、一つだけ、聞いてもいいかな?」

 

立ち上がりかけたが座りなおし、無言で先を促す。

 

「こっちに来てから、いいことはあった?」

 

「あったよ。前は死んでしまった麗ちゃんを助ける事ができたしね、それに涼音達に出会う事もできたし」

 

そういいながら、ゆっくりと立ち上がる。涼音が俺に続くようにたちあがれば、ふらりとよろつくので、その体を支えて。

 

「うー、ちょっと飲み過ぎた、かも……」

 

「いやいや、ほとんど飲んでないでしょって、ほんとにお酒、弱いんだなぁ」

 

思い切り寄りかかられて困った感じだけど、でもこれ、本気で酔っ払ってる感じだなぁ……。

 

「ま、いいか、部屋まで送ってくよ」

 

涼音を部屋まで送っていき、今度こそお開きとなった。

───────────────────────

 

「麗よ、どこに連れて行くツモリだ?」

 

「街にお買い物だよ。お小遣いは一刀様からもらったし」

 

今日は天華ちゃんとお出かけ。

 

一刀様の紹介してくれた子なんだけど、あとで劉協様だっていう話しを聞いてびっくりした。

 

それを聞いてから一刀様と話す時みたいに、丁寧に話そうと思ったら、普段通りにして欲しいってお願いされたから、普段通り。

 

それに合わせて天華様とは呼ばずに天華ちゃんって呼んでる。

 

最近は時々桂花さんや一刀様と一緒にお茶を飲んだり、雑談したりする。

 

「買い物、とはいうが、一体何を?」

 

「屋台を回ったり、服屋さんを物色したり、小物屋さんを見たり」

 

一刀様の言うところのウィンドウショッピング? 

 

ようはあちこちひやかして回ろうという話し。

 

買い物よりも商品を色々見て回るのが目的。

 

「まぁ街に出るのは私もいいと思う、賛成だ」

 

天華ちゃんが賛成してくれたので街にでる。

 

雪が積もっているけど、今日は風は無く、なんとなく暖かい。

 

予定通りに屋台を回って、服屋さんを物色しにいって……。

 

それから小物屋さんを見に行って。

 

「そういえばこの近くに確か墓があったはずだが……」

 

天華ちゃんの言葉に首をかしげる、そういえば、この先に一刀様の作ったお墓があるんだっけ。

 

私も何度か連れてきてもらった事がある。

 

「あるよ、案内しよっか?」

 

「ああ、頼む。墓参りに行っておきたい」

 

丁度お買い物も一段落したし、言われるままに、墓に案内する。

 

天華ちゃんはそのお墓の隣にある首塚へ足を向けてその前で手をあわせる。

 

なんとなく手持ち無沙汰な私はあたりを見回して……、ソレを見つけてしまった。

 

一刀様の影響かもしれない、それを見てすぐに、考えるより先に体が動いていた。

───────────────────────

 

「ん、どうしたの?」

 

いつものように仕事をしていると、詠が息を切らして部屋へ飛び込んでくる。

 

「劉協様を知らない!?」

 

「ああ、天華なら今日は麗ちゃんと一緒に街に出てるハズだけど」

 

「何で2人だけで行かせたのよ! 袁紹の手の間諜が街に潜り込んだって話しがあるのよ!?」

 

「いや、忍者隊のが何人か張り付いてるけど……、ってマジか!?」

 

「大マジよ! 虎牢関で商人の一行に化けてたのを捕まえたんだけど、

 

そのうち一人が逃げて洛陽に潜り込りこんだって報告が今しがた上がってきたの!」

 

詠の言葉を最後まで聞かず俺は城を飛び出していた。

 

走る。とにかく走る。

 

忍者隊の者に声をかけ、天華と麗ちゃんを探すように指示を飛ばす。

 

一応今日どうする予定かは麗ちゃんに聞いてたいたため、そのルートを考えながら走る。

 

頭に洛陽の地図を思い浮かべ、2人が立ち寄りそうな場所と、出かけてからの時間を考え、大体どのあたりにいるかを予測。

 

当たりをつけた場所で屋台の店主に聞いてみると、その二人連れなら墓へ向かった、と教えてくれる。

 

何事も無くあってくれ、そう願いながらも墓へ走りこむ。

「天華ちゃん!」

 

麗ちゃんの悲鳴にも似た叫び声が聞こえ、そちらを向けば2人の姿が見える。

 

その正面に、どこにでもいそうな男が一人。

 

問題はその手に握られた小刀。

 

声をあげた麗ちゃんが天華を押しのけて男の前へ立ちふさがり、麗ちゃんの行動と男がその小刀を構えて突進したのは同時。

 

位置が悪い……! 男の位置は麗ちゃんの向こう側、投げ物がつかえない。すぐに脚を踏み出し、走るが……。

 

間に合わなかった。

 

雪の積もった地面に血がてんてんと落ちる。

 

「ハァ──ッ!!」

 

走りこんだ勢いのまま、その男の脳天に飛び蹴りを食らわせる。

 

足に嫌な感触が伝わってくる、おそらく首が折れた。

 

その感触だけでもう動けないと判断して意識をそちらからはずし、麗ちゃんの状態を確認する。

 

刺されて地面に倒れたその脇腹に深々と小刀が突き刺さっている。

「あ……、一刀様……」

 

「しゃべらないで、大丈夫だから」

 

「麗……」

 

呆然とその姿を見下ろす天華。俺とほぼ同時に男を仕留めようと動いていた護衛につけた忍者隊の者へ指示を飛ばす。

 

軍師の誰かを、出来れば朱里を連れてきてくれるように。

 

確か軍師の中で一番医学関係に強いのは朱里だった気がする。

 

小刀を下手に抜くのはためらった、一気に出血するおそれがあるため、そうするなら包帯なりなんなり、止血のための道具を用意してからだ。

 

「私でも、天華ちゃんを守れました……」

 

「麗、しゃべるな、傷に障るぞ?」

 

「でも、もっと遊びたかったな……、はじめて……歳の近い友達が出来たのに……」

 

「怪我が治ったらいくらでも遊べるよ」

 

おそらく内臓は傷ついていないとおもう。問題は麗ちゃんの体力が持つかどうかというあたりか。

 

「治りますか……?」

 

「治るよ、きっと」

 

俺の言葉を聞くと、うっすらと笑みを浮かべ、気を失った。

 

そのすぐ後に朱里が来てくれて、麗ちゃんを治療してくれた。

 

朱里がいうには当分安静が必要……。生きるか死ぬかは五分、下手に小刀を抜かなかったのは良い判断、とのことだった。

 

処置が終わったあと担架で麗ちゃんは城に搬送され、あとには俺と天華だけが残された。

 

お互いに口を開かず、ただ、その場に立ち尽くす。

「なぁ、一刀よ」

 

先に口を開いたのは天華。天華が俺の手を取り、握られた拳の指を一本ずつ解くように引き剥がしていく。手のひらには、血が滲んでいた。

 

強く握りすぎて、爪が手の平を傷つけていたらしい。

 

「行動に移すのはいつになる?」

 

「……、袁紹の本隊が動いてから、だね」

 

「未だ動かず、か。何故こちらに刺客を放ったのだろうな?」

 

「曹操へ圧力をかけた目的がこちらへの誘いであった場合、誘いに乗ってこないこちらにしびれを切らしたのは考えられるかな。

 

曹操から俺が離反した理由が曹操を助けるため、だったのは連合軍にいた者はみんな知ってる事だし、

 

その俺が漢の中枢に食い込んでるのも、少し調べれば簡単に分かる事。

 

だとすると、より直接的な行動で誘いをかけてきた、というのは考えられなくもない」

 

「乗るか?」

 

「乗るよ、仕掛けてきたということは、おそらく本隊の方がもう動くはずだし」

 

「だが……、冷静にな?」

 

そういって、俺の手のひらに出来た傷をゆるく撫でてくれる。

 

「怒りは……戦まで取っておけ。私だって怒っている、大事な友人を殺されかけたのだからな」

 

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

次回から対袁紹戦となります。

 

今回は特に書くことは無い感じですね。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

 


 
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