No.675819

真・恋姫無双異聞~皇龍剣風譚~ 第四十二話 エルドラド

YTAさん

どうも皆様、YTAでございます。
今回は、前回ほどは間を空けずに投稿出来ました。
久々の日常編です。

では、どうぞ!

2014-04-03 00:50:51 投稿 / 全18ページ    総閲覧数:3315   閲覧ユーザー数:2678

                       真・恋姫†無双異聞~皇龍剣風譚~

 

                         第四十二話 エルドラド

 

 

 

 

 

 

 実に静かな、気持ちの良い朝だった。

 そう。例え、起き抜けから頭の中で、ローリング・ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』が延々と(毛皮のコートを着て、あの奇怪なダンスを踊るミック・ジャガーの幻影と共に)鳴り響いていようとも、静かな朝が気持ちの良いこと自体に、なんら変わりはない。

 歌詞の内容を考えれば、マイケル・ジャクソンの『ビリー・ジーン』でないだけ、己の深層心理とやらにハグの一つもしてやりたい位だった。身体に鬱々と沈殿したままの酒気を追い出そうと、何時もの様に鍛錬に出た北郷一刀は、5キロ程の山道を走り切り、すっかり馴染みの小川の辺で、早春の朝に湯気の上がった身体を冷ましながら、暫し息を整えた。人生存亡の秋は、果たして何時なのだろう。

 

 初めは、夜が明けたら自分の寝室に鬼の形相で雪崩れ込んで来るかと思われた女性陣は結局現れず、城の数ある秘密の抜け道から出て来る時にも、追手が掛る事はなかった。してみると、朝餉時(あさげどき)を狙って奇襲を掛けようという算段なのだろうか。

 十分に有り得る。都に落ち着いてからこっち、朝の鍛錬が習慣となっている一刀は、エネルギー補給の為に朝餉を欠かすという事がない。

 

 確実を期す心算(つもり)ならば、逃げ場のない城の食堂で周囲を一斉に取り囲んだ方が良いに決まっている。実際、昨夜の一刀は、適当に包んだ予備の布団を身代わりに寝台に寝かせ、自分は寝台の天板の下に潜り込んで寝た。

 どの道、簀巻きにされ、城壁に吊り下げられるにしても、この冷え込む時期の明け方よりは、昼間の方がまだマシだと思ったからだった。一刀は、適当に茂みに隠してあった“立ち木打ち”用の丸太を抱え上げると、鋭く息を吐きながら、木刀を振るって打ち込みを始める。

 

 最初は猿叫もしていたのだが、朝の山林は思いの外、音を反響させたらしく、何時しか『朝、宮中近くの森に奇妙な声を上げる“もののけ”が出るらしい』などいう噂が立ってしまったので、自粛する事にしたのである。木刀が丸太を打ち据える度に、雑念が霧散してゆくのが心地良い。

 やがて、千を数え終わると、一刀は丸太を片付け、入念に身体を解してから、持ってきた手拭いを冷たい小川の水に浸してきつく搾り、上着を脱いで身体を拭いた。

 

 

その辺りになると、またぞろ雑念が何処からともなく返って来て、一刀の脳内をぐるぐると回り始める。聞かれた内容が内容である以上、武官、文官問わず、ほぼ全てが敵に回ると見て間違いはない。

 武官の中には一刀を庇ってくれそうな連中も居るが、軍師陣となると、面白半分に敵になる可能性がある人物数名を含め、ほぼ全滅であろう。頼みの綱は呉の美周郎くらいのものなのだが、間の悪い事に、冥琳は今、帰参中の孫策こと雪蓮の目付け役として建業に居る。

 

 してみると、三国連合の誇る神算鬼謀を有する軍師達を相手に、策謀で太刀打ち可能な人物は皆無という事になる。ましてや、大方の武官達まで相手取るとなれば、末は知れ切った往生しか残されていまい。

「とりあえず、飯を食い終わる迄は待ってもらおう、うん……」

 一刀は、先程までの勢いは何処へやら、力ない口調でそう独りごちて、帰路に着くのだった――。

 

 

 

 

 

 

「きゃあ」

 平坦な、魂の抜け切った様な声で叫び声っぽい声だけは出してみたものの、一刀の脳はオーバー・ドライブ状態だった。如何な上級文官、武官用の食堂とはいえ、朝も早よから三国の王が揃いも揃って同じ卓を囲んで茶など啜っていようとは、天の遣いを以ってしても、まさか思いもしなかった。

 

 仕掛けて来るなら、自分が食事を摂っている最中だろうと当たりを付けていたのもあるが、主に独り者の若い文官、武官達に、一斉に(すが)る様な眼差しを向けられた事が、更に動揺に拍車を掛ける。さもあろう。

 如何な選良達とは言え、本来ならば正面から顔を見る事すら畏れ多い君主達が三人、雁首揃えて同室しているのである。まぁ、曲がりなりにもその彼女達を束ねている筈の自分は畏れ多くないのか、というちょっぴり切ない疑問が一刀の頭を掠めはしたものの、食事の膳を供するカウンターの奥で焦燥しきった調理長の顔が見えてしまっては、そんな事を言っている場合でもあるまい。

 

 一刀は、引き攣った笑みを浮かべて三人に手を振ると、木製のトレイを手に取って、カウンター越しに声を掛けた。

「甲定食ね。大盛りで」

「み、御遣い様ぁ。よくぞお出で下さいましたぁ……」

 

 

「いや、まぁ、うん……」

 コロコロとよく太った、肝っ玉母ちゃんを絵に描いた様な性格のこの調理長に、半泣きで袖を引かれる日が来ようとは。まぁ、一刀にも気持ちは良く分かった。

 基本的に威圧感を感じさせない劉備こと桃香は兎も角、曹操こと華琳や孫権こと蓮華は、何代も続く生粋の武門であり、生まれながらの支配階級であり、下剋上上等の群雄割拠を制した勝者達だ。封建社会で生きる人間に取ってみれば、一言二言の言葉を交わすだけでも、気力と体力をごっそりと持って行かれる様な相手であろう。

 

「みんな、おはよう。えぇと、同席しても良いかな?」

 周囲の期待を一身に背負った種馬としては、まさか素知らぬ顔で肌馬と違う曹から草を食む訳にもいかず、恐る恐る三人に声を掛けた。

「モチロンだよ、ご主人様!さぁ、座って座って!」

 

 常変わらぬ様子で笑顔を見せ、自分の隣の椅子を引いてくれる桃香に礼を言うと、一刀はおずおずと腰を降ろした。

「おはよう。鍛錬の帰りなのかしら、一刀?」

 華琳にそう尋ねられた一刀は、小さく頷いた。

 

「あぁ。まぁ、日課みたいなもんだし」

「感心ね。昨夜は遅くまで、旧友と語り明かしたのでしょう?」

「いや、あいつも疲れてたみたいで、すぐに舟を漕ぎ出したから、早々にお開きにしたんだよ」

 華琳と喋る時、その言外の言葉を察しなければならないというのが、一番、緊張する。華琳は今の一言だけで、“私は昨夜の貴方の詳しい行動など何も知らない”という牽制と、一刀自身が昨夜の事で、何かしらの誤魔化しをしはしないかというカマ掛けを、同時にしているのだ。

 

「でも、やはり不用心だと思うの」

 蓮華はそう言って、眉を(しか)めた。

「いくら、一刀を暗殺して得をする人間なんて殆ど居ないとは言え、朝早くから人気のない森をウロウロするなんて――山賊や野盗の類だって、全く居なくなったわけでもないし……」

 

「でも、立ち合い稽古ならまだしも、走り込みと素振りくらいの事で、誰かに付き合ってもらうのもなぁ。みんな、それぞれ仕事もあるだろうし。まぁ、本当ににっちもさっちも行かなくなったら、鎧着て逃げれば良いから」

「そこは、返り討ちって言うところじゃないの?」

 蓮華が呆れたように言うと、一刀は首を竦めた。

 

 

「アレは、人間相手に使って良いもんじゃないよ。人間同士の事に神様じみた力なんぞ使ったら、収拾が着かなくなるに決まってる。そしたら今度は、俺が怪物になる番だ。人間の事は、人間の力で解決するのが一番いいのさ」

「あはは。ご主人様らしいって言えば、ご主人様らしいよね~。あ、食べないの?冷めちゃうよ」

 桃香に笑顔でそう言われ、一刀は「あぁ」と、思い出したように頷いた。

「そう言えば、みんなは食べないのか?」

 手を合わせて、白米と焼き魚(無論、川魚だが)を飲み下した一刀がそう尋ねると、華琳が溜息を吐いた。

「その心算だったのだけれどね。折角、一刀の友人が来ているのだし、格式張った事は避けるにしろ、私達三人だけでも食事を共にするのが礼儀だろうと思って。そうしたら――」

 

「秋蘭さんと流琉ちゃんに、モノ凄い剣幕で止められたんだよ~。だから私達、華琳さんの私室で先に御呼ばれして来ちゃったの」

「まったく。何だったのかしらね、あれは」

 一刀は、夏侯淵こと秋蘭と典韋こと流琉の涙ぐましい気遣いを思って、密かに眼を拭った。さもありなん。調理長――“お母さん”と若い文官・武官たちから慕われる、この鉄火な壮年女性の取り仕切る食堂で出される料理は、限られた予算にも関わらず栄養満点、ボリューム満点で知られ、昼夜を問わず城に詰めて激務に励む官僚たちの、貴重にして最大の楽しみなのだ。

 

 だが、華琳がそんな事を斟酌してくれるとは、一刀には到底思えなかった。彼女は、例えば金剛石の原石を見つけたら、回りの岩を残らず剥ぎ取り、ブリリアントカットに磨き上げずにはいられない質なのだ。岩の隙間から僅かに覗くささやかな美しさで満足する事など、絶対に出来ないのである。

 食い物の恨みは恐ろしい。華琳から(当人は助言のつもりでも)叱責を受けたとして、万が一にも“お母さん”が職を辞する事にでもなったら、それこそ年単位での長い間、魏の諸侯は、城詰めの三国の官僚達から、無言の抗議の込められた視線を浴びせられ続ける事になるだろう。正に、針の筵である。

 

「まぁ、それでも、卓を囲んで話くらいはしたいと思って、こうしてお茶を飲んで待っていたのよ」

 蓮華が、一刀の考えていた事を全て察しているらしい、生温かい眼差しを向けて言う。

「でも、及川さんは、ご主人様と一緒じゃなかったんだね。まだ、お部屋で寝てるのかな?」

 桃香は、美味しそうに茶菓子を頬張りながら、愛らしく小首を傾げる。華琳の『口に物を入れている時には喋るな』という御小言も柳に風のその様子を見るにつけ、一刀は、桃香の大物っぷりに苦笑を禁じ得ない。

 

「まぁ、あいつも大概、図太い奴ではあるけど、流石に昨日は色々とあったからな。それに、大分、呑んでたし。まぁ、こっちの飲兵衛連中とは、比べ物にならないにしてもね。ほら、蓮華が送ってくれた、楊州の老酒があったから」

「あぁ、あれ。飲み口が佳いものね、楊州の酒は。用心しないと、つい飲み過ぎてしまうわ」

 華琳は素直に同意して、仕方がないと首を振った。

 

 

「どの道、約束もせず勝手に来たのはこちらだし、夕食の時に改めよう。昼は、一刀が色々と案内して上げたい所もあるのだろう?」

 華琳からお国の自慢を褒められて悪い気はしなかったのか、蓮華が口の端を振るわせて一刀に水を向けると、一刀も同意して頷いた。

 

「気を遣ってくれたのに申し訳ないけど、そうして貰えると嬉しいな。折角だから、街――は、まだ復興作業で忙しいから十分には回れないが、遠乗りくらいには連れ出してやりたいし」

 それから暫くして、食事を終えた一刀を『自分達も直ぐに帰るから、友人を起こしてやれ』と言って送り出した三人の王は、揃って卓に身を乗り出した。

 

「やっぱり怪しいわよ!最初なんて、私達を見て明らかに動揺していたもの!」

 蓮華が、勢い良くそう言うと、華琳が窘める様な口調で答える。

「お待ちなさいな、蓮華。桃香一人なら兎も角、私達が三人揃って此処に顔を出すなんて、初めての事よ。それを踏まえれば、あの動揺を後ろめたさと混同してしまうのは危険だわ」

 

「私もそう思うよ、蓮華さん。やっぱり、あんまり詮索しない方が……」

華琳の言葉に頷いた桃香が、畳み掛ける様にそう言うと、蓮華は尚も頬を子供の様に膨らませたまま、面白くなさそうに浮いていた腰を椅子に戻した。

「でも、あの思春が、私にも話せないって言ったのよ!?」

 

「思春だって、別に敵の諜報をしていたわけではないでしょう。一刀と古い友人の間の私的な話の内容から、そう判断しただけではないの?その顔、お止めなさいな。妹そっくりよ?」

 華琳は、溜息混じりにそう言って、温くなった茶を飲み干した。そもそも、一刀とその旧友、及川祐の様子を内密に見守るよう甘寧こと思春に命じたのは、純粋な心配からに他ならなった。

 

 昨夜、緊急対策本部に設定して大広間で、三人揃って残務処理に当たっていた時、一日、戦闘と救助活動に明け暮れていた一刀の身体を慮った蓮華が、傍に侍っていた思春に、邪魔にならない範囲で様子を見て来るように、と頼んだのである。

 ところが、戻った思春は口を閉ざし、「私は、決して耳にしてはならぬ事を耳にしてしまいました。如何な蓮華様のご命令とはいえ、あそこで見聞きした事に関しては、何一つ申し上げる事は出来ません」

 

 と、(のた)もうたのである。思春が何を以って口を閉ざしたかは兎も角、“鉄の女”の異名を持つ関雲長すら裸足で逃げ出すと揶揄される程の朴念仁である彼女のこの一言は、深夜まで働き詰めてハイになった少女達(主に蓮華)の脳内に耽美な――もっと俗な言い方をすれば、腐った妄想の嵐を巻き起こすには、十分過ぎる燃料だった。

 悪い事に、少女達の三人ともが揃いも揃って、同性と夜を共にする事が満更でもない質ともなれば、尚の事であろう。

 

 

 そう。事態は、一刀本人が予期していたのとは全く違った方向へ、予期していたよりも面倒な形で進みつつあったのである――。

 

 

 

 

 

 

「“この世界を存続させる為の駒”――か」

 夜勤が明けて半休となった思春は、俄かに曇り出した空を眺めて、ほぅと溜息を吐いた。見も知らぬ世界に投げ出され、そこに生きる者達の為に人生の全てを捧げるよう強制されるとは、無理矢理に何の関係もない異世界の命運を背負わされるとは、どんな気持ちなのだろう?

気遣いや(てら)いを剥ぎ取った、北郷一刀の生の言葉。何時もどこか飄々とした雰囲気を漂わせ、何を考えているのか分からない男の、“友人”だけに見せた本心。

 

 正直なところ思春は、北郷一刀は家族と縁遠い男なのだろうと思い込んでいた。格別の未練も抱かぬ程度の関係で、だから特に話題にする事もなく、ヘラヘラとこの世界を楽しんでいられるのだろうと。

「なんと浅慮な……」

 口に出してもどうにもならぬから、口にしなかった。そういう事だったのだろう。

 

 実際には、北郷一刀には深い愛情を掛けてくれる家族が居た。さもありなん。愛された事のない人間が、赤の他人を慈しむ事など出来はしない。

 愛されていて当然の筈だ。物乞いや百姓をすら、心から慈しめるような男なのだから。何度もこの身を委ねた男が、己を守る為に鎧を――あの黄金のではなく、笑顔という鎧を必死になって纏っていた事に気付きもしないとは。

 

 いや、気付かずにいるのが北郷一刀の望みであったならば、それも良かろうが、屋根裏などに潜んで盗み聴いてしまったという事実が、思春の胸に何とも言えぬしこりの様なものを残していた。それが、主への報告を拒むという、隠密として、股肱の臣と主からの信頼を賜る者して、あってはならない事を思春にさせたのである。

 適当に当たり障りのない答えを用意しておけば良かったものを、現段階にあっても、思春はそんな事を考えもしていなかった。是か非か、YesかNoか、0か100か、敵か味方か。

 

 

 基本的に思春とは、こういう考え方を好む人間だからだ。だがまさか、その気性ゆえの一言が、思春本人の預かり知らぬところで、北郷一刀を(主に八百一な意味で)追い詰めていようとは。

「此処においででしたか、思春殿!――あ、失礼しました。何か、大事な御思案のお邪魔をしてしまいましたか?」

 

「明命か。いや、大した事ではない」

 思春にすらも足音が聴こえなかったのは、当然だ。隠密の修行は、一にも二にも先んじて、己の足音を消す事から始まる。思えば、数多、訓導した後進の中で、明命にだけは一度たりと、声を荒げて誤りを正した記憶がない。

 教えた事は、片っ端から吸収してしまったものだった。

 

「それより、どうかしたのか?」

「はい。その、申し送りがまだ済んでおりませんでしたので、それで……」

「あぁ、そうだったか。相済まなかった」

 思春が、バツが悪そうにため息を吐くと、明命は心配そうに思春の顔を覗き込んだ。

 

「あの、思春殿。僭越ですが、お加減が宜しくないのでは……御役目をご一緒するようになってから、こんな事は初めてですし……」

「私とて人間だぞ。そんな事もある――あまり、苛めてくれるな」

「はぅあ!?申し訳ありません、そんな心算は!!」

 

「――冗談だ、本気にするな。で、申し送りだったな。連華さまの今日のご予定は……」

 思春は、『冗談?貴女が?』と語り掛けてくる明命の視線を敢えて無視して、淡々と申し送り事項を告げるのだった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と申しますか……ジョン・ウーもビックリの光景ですなぁ」

 及川祐は、一刀に案内された城壁の上から城の全景を見遣り、困惑とも感嘆ともとれぬ様子で、呆然と呟いた。

「まぁ、気持ちはよく分かる。経験者だからな」

 一刀は同意して、煙草に火を点けた。慣れぬ酒を飲んだ後の二日酔いで食欲が出ないと言う及川を風に当たらせようと、此処まで引っ張ってきたのである。

 

「今更アホなこと訊くようで何なんだけどさ。あの鉄の鎧着てる人達とか、派手な刺繍の服着てる人達とか、エキストラやCGじゃないんだよな?」

「あぁ。まぁ、そうだ」

「すげー……」

 

「懐かしいわぁ。俺も、そんな感想しか出なかった――さて、街に出るか。少し散歩してから馬を借りて、遠乗りにでも行こう」

「おう……って、馬ぁ!?」

「そ。この世界じゃ、馬か徒歩しか移動手段はないんだぞ。まぁ、馬車か牛車って手もあるにはあるが、御者を手配しなきゃならないし」

 

「俺、馬とか乗った事ないんすけど……」

「繰り返すが、俺もそうだったぞ。そう遠くに行くわけじゃないし、気性の優しい馬を借りてやるから、大丈夫だって」

 一刀は、携帯灰皿に吸い差しを突っ込むと、一人スタスタと歩き出した。これまた経験則上、異世界に放り出された直後というのは、見知った人間の後を無条件に追い掛ける位しか出来ないと知っていたからだ。馬に乗りたかろうが乗りたくなかろうが、一種の幼児退行状態にある及川に選択の余地などありはしないのだ。

 

 それに、少なからず城に居るよりは、及川を外に連れ出していた方が、一刀の精神衛生上、遥かに宜しい。

「広い、広過ぎるよ一刀さん!」

正直なところ、どこぞの軟弱者のような口調で文句を言いつつも、城壁から城門へと続く道程を追い縋って来る及川に負けぬほど、一刀の心中は不安で満ちていた。

 

 

 このタイミングで、三国の君主が揃いも揃って食堂で待ち構えていたのは、まさか偶然ではないだろう。前向きに捉えるのならば、一刀が思っている程には怒っていないのかも知れないが、大勢の臣下の手前、どう切り出していいのか決めあぐねただけ、という可能性だってある。

 ともあれ、今、不確定要素として一番に恐ろしいのは、件の話がどれだけの女性達に知られているのか、という事だ。

 

「まぁ、どの道、晩飯までの自由か……」

「はぁ?何がよ?」

「いや、何でもない」

 一刀は、深くため息を吐くと、気を取り直して歩調を及川に合わせた。差し当たって、そんな事は些細な問題だ。恐らく今日からの数日間は、隣の旧友と肩を並べて歩く、正真正銘、最後の時間になるのだろうから。

 

 『後にしてくれ』と土下座くらいすれば、皆も少しは猶予をくれるだろう。

「おぉぉぉぉ!時代劇みてえ!!」

 程なくして、城下町を歩きながら、及川は興奮した様子で声を上げた。

「天下の往来で大声出すなよ、こっ恥ずかしい。“おのぼり”かと思われるだろーが」

 

「いや、だってさ。こんな光景、修学旅行で太秦に行った時以来、見た事ないぜ!?しかも、セットじゃなくて、全部モノホンなんだぞ!!」

「あ~行ったなぁ、太秦。マツ○サンバⅡの“カセットテープ”とか売ってて、レア過ぎて思わず買いそうになったわぁ」

 

「そうそう!お前、土産コーナーで延々悩んでたよな」

「年寄りっ子には天国だったからな」

「じゃ、なくて!!」

「ん?」

 

「いや、なんつーか、これホントに現実なの?」

「マジレスすると、現実であって現実じゃないな」

「哲学タイム的な?」

「まぁ、ある意味な」

 一刀は、「御遣い様!」と声を掛けて来た定食屋の店主に手を振りながらそう答え、思い付いたように及川の顔を見た。

 

 

「折角だし、座って話そうぜ。粥くらいなら食えるだろ?」

 微妙に食事時からは外れているとあって、店内には疎らだった。数人の男達が、それぞれに別の卓を一人で独占して食事を掻き込んでいる程度だ。

 

「そういや、中国の朝飯は中華粥ってのは、有名な話だよな」

 及川はそう言って採譜を手に取り目を落とし、店主が傍に来ると顔を上げた。

「この、“ゆーさんちょ”っての、下さいな」

「お前、読めるのか?」

 

 一刀は僅かに驚いた様子でそう尋ねた。魚生粥(ユーサーンチョ)は、コイ科の川魚の切り身を乗せた粥の事だ。及川は気の抜けた様な顔で笑った。

「大学の中国語の講師の先生が、結構な美人でさぁ。よく聴講に行ってたんよ。それで、ちょっと覚えた。恋は偉大だよな。でも流石に、こっちの文字は読み辛い」

 

「そらそうだろ……あ、俺は、これね」

 一刀が採譜を指すと主人は「かしこまりました」と言って会釈をしてから、厨房へと引っ込んだ。

「で、さっきの話だけど、どういう事だよ」

「まぁ、分かり易い例からいってみようか――あの、奥の角の席の男が食べてるの、何だと思う?」

 

「何だと思うって……普通の海老チリだろ?」

「おかしいと思わないか」

「??何で?」

「海老チリは、日本生まれの中華料理だぞ」

 

「うっそ!?」

「本当だ。彼の陳健民が、乾焼蝦仁(ガンシャオシャーレン)って料理を日本人好みにアレンジしたのが海老チリだからな。見た目もかなり違う。因みに、ソースの元はケチャップだし、唐辛子なんて、本来はこの時代には無い」

「マジか……てっきり、唐辛子って中国のもんだと……つか、トマトあんの!?」

 

「なきゃ、ケチャップは出来ないだろうが。まぁ、流石に俺達のイメージするケチャップよりは大味だけどな。一応、言っとくが、トマトも唐辛子も原産はアンデス地方の国々で、トマトに関しちゃ、イタリアですら食べ始めたのは十五世紀ごろだぞ」

「えーと、それはつまり……どゆこと?」

 

 

「もう一つ、例を出そうか」

 一刀は、一合徳利と杯を二つ、盆に載せて運んで来た店主に礼を言って、彼が卓を離れるのを待ってから、話を再開した。

「これは、何だと思う?」

 

「酒だろ?なんか、昨日のより凄まじくキツい臭いがするけど」

「悪名高き白乾児(パイカール)だからな。因みに“蒸留酒”だ」

「……先生、質問」

「ん」

 

「蒸留技術って、存在してるんすか?」

「原始的な蒸留装置自体は、紀元前からあるぞ……“エジプトには”だけどな。白乾児って酒が歴史に登場するのは、本来は五世紀頃の話だし、蒸留酒の技術が俺達の知る形に確立されたのは、ルネサンス期の錬金術士たちの研究によっての事だ」

「今は……」

「三世紀。少なくとも、俺達からすれば“その筈”だ。まぁ、これを作る蒸留装置も方法も、かなり原始的ではあるから、俺がもっと良いのを作らせて、度数の高いのを作れる様にしてるところだ。医療用に使いたくてな」

 

「もう、ワケわかんなくなって来た……」

「それだけじゃないぞ。キャベツだの玉葱だのピーマンだの、普通に流通してるからな。つまり、“外史”ってのはそういうものなんだよ。“観測者”と呼ばれる人々が、『こんなだったらどうだろう?』って空想した世界が形を成したのが、外史の正体って事。観測者たちが『あったら面白いな』とか『あった筈だ』と勘違いしてる物は、この世界には“現実として存在してる”んだ」

 

「単純に、登場人物の性別を変えて過去をトレースしてるって訳ではないと……」

 及川が困惑気味にそう言うと、一刀は頷いて、杯を干した。

「そうだ。第一、魏・呉・蜀が仲良くしてるなんて、本来ならありえないだろ」

「しかも、我が親友はハーレムキングと来た」

 

「言うほど楽しいばっかりでもないぞ。しかも相手が揃いも揃って、熊だの虎だのを素手で狩れる様な連中だとな」

「……よく生きてるな、お前」

「奇遇だな。俺もそう思う」

 

 

「しかし、観測者……か。昨日も聞いたけど、どうもピンとこないんだよなぁ」

「後で、卑弥呼に会ったら訊くといい。俺なんかより、よっぽど分かり易く答えてくれるだろうさ」

「そうなんか?まぁ、それならそうするけどさ」

 及川はそう言うと、運ばれて来た粥を啜って驚いたように唸った。

 

「美味いな、これ」

「鯉の親戚みたいな魚らしいからな。泥抜きすると、意外と淡白で美味いんだよ」

「何か、急に食欲湧いてきた」

「火傷すんなよ、ガキじゃないんだから」

 

 一刀は、ハフハフと粥を啜る及川に苦笑を向けながら、実はあまり得意ではない白乾児を、ちびちびと舐めるのだった――。

 

 

 

 

 

 

「おぉ、これまた壮観だぁ……」

 及川は、軍馬達の静養の為に郊外に設えてある広大な放牧場を見て、再び感嘆の声を上げた。地平線すら見渡せる広大な草原など、山岳が多い日本では、そう見れるものではない。

 そこに、美しい毛並みの逞しい軍馬達が自由気ままに行き交っているのだから、最早それだけで、文字通り絵になりそうな景色である。

 

「はは、そうだろ。あ、ちとヤバいか……?」

 一刀は、馬岱こと蒲公英が、厩舎から出てこちらに手を振る姿を遠目に認めて、そう呟いた。しかし、今更になって踵を返すのも、蒲公英の不況を買いかねない。

「おはよー、ご主人様~!!お友達を案内してたの?」

 

「あぁ、そうだよ。ちゃんと紹介はしてないよな。こいつは及川祐。俺と同じで、真名はない。及川、こっちは馬岱だ」

 一刀がそう言って互いを紹介すると、蒲公英は朗らかに笑って及川の手を握り、勢い良くブンブンと振り回した。

 

 

「よろしくね、及川さん!たんぽぽは、姓は馬、名は岱、真名は蒲公英だよ!」

「えと、どうぞ宜しく――って、あれ、良いの?その、真名ってのを教えてくれて」

 及川が、蒲公英と一刀を交互に見ながらそう尋ねると、蒲公英は悪戯っぽく笑った。

「うん!だって、及川さんはご主人様の“大切な人”なんでしょ?なら、たんぽぽの仲間だもん!」

 

「はぁ?何なんだ、蒲公英。その、“大切な人”って。気持ち悪い」

 一刀が訝しげにそう言うと、蒲公英の笑みは、何故か更に大きくなる。

「良いって良いって。たんぽぽには、ちゃ~んと分かってるから!」

「何だか、物凄く嫌な予感がするんだが……まぁ、いいや。それより、紫燕は居るか?こいつを乗っけて欲しいんだけど」

 

「そりゃ居るよ。紫燕は引退して、今じゃご主人様と同じ種馬だもん」

「……俺に本当に節操がなかったら、“ブワッ”て顔文字入れてるとこだぞ……」

 一刀が項垂れながら吐き出す様に言うと、蒲公英はケラケラと愉快そうに笑った。

「そしたら、ご主人様は誰に乗るの?龍風も居るけど、まだ休ませて上げないとでしょ?」

 

「そうだな。付き合いの長い、麒麟か黄鵬にでも乗せてもおうかと思ってる。龍風の様子、どうだ?」

「昨日の今日にしたら、元気だよ!……にひひ」

「?なんだよ、その笑いは」

「ちょっと来てみて!」

 

 蒲公英は一刀の手を取ると、柵の近くへと導いて、指差した。そこには、思っていたよりも元気そうに草を食む龍風がいる。

「本当に元気そうだな……良かった」

「それだけじゃないよ!ほらほらぁ」

 蒲公英に急かされる様に指摘され、その指先を辿っていくと、何故だか一塊になって、遠巻きに龍風を眺めている馬達が居た。

 

「どうしたんだ、あれ?」

「あれね。み~んな、牝馬なんだよ!」

「へ?」

「みんな龍風の子供を産みたいもんだから、ああしてずっと気にしてるの!でもね、龍風はおっきくて、ちょっと気難しいでしょ?だから、近づきたいけど近づけないで居るんだよ」

 

 

「なんとまぁ……」

 一刀が唖然としてそう呟くと、隣にいた及川が、力強く頷いた。

「硬派だな、飼い主と違って」

「よし。そのケンカ、買った!」

 

「だって、本当の事だろ!暴力反対!権力者の言論弾圧、断固反対!!」

「喧しいわ、この腐れマスゴミが!!」

「あはは!二人は、本当に仲良しさんなんだね♪」

「だから、そういう事を言うの止めろって、気持ち悪い」

 

「だって、今みたいに誰かと楽しそうに言い合いしてるご主人様なんて、たんぽぽ見た事ないよ?」

「そんな事ないだろ。春蘭とか桂花とかとは、よくやってると思うぞ?」

「え~。全然、違うよぉ――あ、見てみて、ご主人様!」

蒲公英は、からかう様な様子もなく、ただ単に間違いを指摘するような口調でそう言うと、また、龍風の居る方を指差した。

 

「ん?あれは、的盧か?」

見れば、額の白い模様がそのまま名となった桃香の愛馬、的盧が、おずおずと、しかし、しっかりとした足取りで、龍風に歩み寄よろうとしていた。

「的盧だけはね。ああやって一生懸命、龍風に“話掛けてる”の。どんなに煩そうにされても、絶対に諦めないんだ。あっちは、ホントに飼い主にそっくりだね♪」

 

「……あぁ。そればっかりは、否定できないな」

 一刀は、何故だか胸の内が暖かくなるのを感じながら、蒲公英の言葉に頷いた。 元々、的盧は、魏と国交を結んで間もない頃、華琳が桃香に馬を送りたいと言い出した時に貰い受けたのである。

桃香は、南船北馬の言葉に違わず、一頭だけでも一財産の値が付くであろう立派な軍馬達には目も呉れずに、厩舎の隅で大人しく人間達の様子を眺めていただけの痩せ細った馬の元に歩み寄り、鼻を撫でて『この子がいいです!』と言ったものだった。

 

 華琳が何度、考え直すように諭しても、桃香は一切、耳を貸さなかった。その時は、心底、嬉しそうに的盧の首を撫でている桃香の事を、華琳も魏の重臣達も呆れた様な眼差しで見ていたものだが、一刀や焔耶と共に五胡の軍勢に追われた時も、前回、桃香の故郷に罵苦の大群が攻めて来た時も、的盧は臆することなく、桃香の為に勇敢に大地を駆け抜けたのである。

 

 

 桃香は、その度、華琳に的盧がいかに名馬かという惚気を聞かせに行っては、華琳の微苦笑を誘っていた。

「で、どうなんだよ。上手くいきそうか?」

 一刀が柵に寄りかかりながら、目だけを向けて蒲公英に尋ねると、蒲公英は、得意の不敵な笑みを浮かべた。

「そりゃ、上手くいくんじゃん?ご主人様だって、“あの手”で桃香様にコロっと落とされちゃったんでしょ?」

 

「あのなぁ、蒲公英。俺は、女性を邪険にした事なんか一度としてないぞ」

「ほれみろ。やっぱり軟派じゃねぇか」

「うっせぇよ、カストリ記者が!」

「何だと!人を鬱病持ちでコンプレックスの塊みたいに言うのは止めろ!泣くぞ!!」

 

「あ~はいはい。二人が相思相愛なのは分かったから、静かにしてよ。ほらほら、動きがあったみたいだし」

「む……」

 蒲公英に宥められ、一刀がもう一度、二頭を見遣ると、龍風は、鼻を近づけて同じところから草を食もうとする的盧に迷惑そうにしながらも、追い立てる気もないようだった。

 

「さて、あっちはもう心配ないみたいだね♪」

 蒲公英は、ニコニコと笑いながらそう言って、両肘を預けていた柵から体を起こした。

「で、紫燕だったよね。黄鵬は今、放牧中だから、ご主人様は厩舎に居る麒麟に乗せてもらいなよ。たんぽぽ、鞍を付けるの手伝って上げるからさ」

 

「あぁ。ありがとう」

 一刀が、駆け足で厩舎に向かって走って行く蒲公英の背中に礼を言って歩き出すと、それを追いかけるように肩を並べた及川が、半ば呆れ、半ば感心したように呟いた。

「嵐みたいだなぁ。あの蒲公英って子」

 

「まぁ、慣れれば可愛いものさ。ああいう部分も」

「流石、種馬は言う事が違うな」

「お望みなら、思い切り蹴り飛ばしてやるが?」

「遠慮するよ。怖ぇし」

 及川は、蒲公英にも負けぬ程の小憎らしい笑みを浮かべて、一刀の言葉に肩を竦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、気分爽快!!」

 及川は、なだらかな丘の上で紫燕の背に跨ったまま伸びをすると、眼下に広がる草原を見渡した。

「空は抜ける様だし、空気は上手い!言うこたぁ無いね!」

「気に入ってもらえて何よりだ。手綱は放すなよ。紫燕はベテランだから滅多な事じゃ暴れたりしないが、万が一、棹立ちになったら、頭から落ちるぞ」

 

「おっと、そうだった。バイクじゃないんだもんな。忘れてたよ」

 及川は僅かに慌てて、手綱を握り直してその感触を確かめた。この丘は、まだ都の郊外といってもいい距離にある。いくら騎馬の方が経験豊富とはいえ、初めて馬に乗る人物を本格的な遠乗りになど連れて行けるわけがない。

 何のトラブルも起きなかったとしても、尻の皮がぺろりと剥けてしまうのは確実だし、下半身全体を襲う筋肉痛とのダブルパンチで、暫くは満足に動けなくなってしまうだろう。

 

「しっかし、良い眺めだなぁ」

「だろう?じきに、この辺りも水路が通って開墾が始まる。そうすれば、もっと動物や魚が集まるし、緑も豊かになる。ほら、あっちの方に、林があるのが見えるか?」

 及川は、そう言って一刀が指差した方に視線を遣り、頷いた。

「あぁ。ちょっと、それらしいのは見えるな」

 

「あれは、俺が植樹させた防風林だ。あそこからこの辺りまで、水路や田んぼ、畑が伸びて来るのさ。堆肥(たいひ)を使って土壌を改善しながらな。何年も前から馬糞とか集めて、せっせと堆肥作ってた甲斐があったわ。この国じゃ馬糞は燃料になるから、周りから非難轟々でさ……ま、それは兎も角、管理森林が広がれば、腐葉土と動物の糞で肥料が出来るし、水路を通して鯉や田螺(タニシ)を養殖すれば、骨や殻を手頃なカルシウム源としてPhコントロールが容易になる。今じゃ、現代の日本と同じ、苗まで育ててから田植えをする育苗(いくびょう)と、他の植物の間植で収穫量が数倍に上がってるし、生産コストも良い具合に減って来てるよ」

 

 

「お前、本当に“国を作ってる”んだな……」

 及川は、呆然とした表情を浮かべて遥か彼方の防風林を眺めながら、そう言った。

「そうさ。何で俺だったのかなんて知らないし、知りたくもないけど、選ばれたからには全力を尽くすよ。まぁ、“天の遣い”なんて胡散臭いものに祭り上げられちゃったからにはそれ位はしてみせないと、あんなでっかい城に住むのは申し訳ないからな」

 

「そうか……あれ、風車……だよな?」

 及川は、ふと防風林とは反対方向にある幾つかの大きな影を見つけて、一刀に尋ねた。

「あぁ」

「あれも、お前が?」

 

「そうだよ。やっぱ、石造りの風車は良いよな。景観を壊さないし」

「いや、そう言う事じゃなくて……何してるんだ、あの風車で。粉でも挽いてんのか?」

「それぞれ用途は別だけど、あの大きいのでは、電気作ってる」

「そっか。発電所か……って、はぁ!!?」

 

「色々と作るついでに、冷蔵施設もと思ってな。やっぱり、食料の長期保存は大命題だから。まだ、試作段階なんだけどさ」

「いや、意味わかんねぇし……」

「行って見るか?今の時間なら真桜が居るかもしれないし、説明がてら、軽く案内してやるよ」

 

「うん、軽くが良いな。詳しく聞いたら、頭痛くなりそうだからさ……」

 及川は、一刀に習った通りに紫燕の腹を膝で軽く叩いて、麒麟に乗った一刀に付いて行くよう促す。紫燕は、及川の心中を知ってか知らずか、大きな鼻息を一つ吐いて素直に一時の主の言う事を聞き、ゆっくりと歩き出した――。

 

 

                               あとがき

 

 はい。今回のお話、如何だったでしょうか?

 個人的には、XPのサービス停止を受けてPCを乗り換えてから初めての投稿だったんですが……いやぁ、新しいって凄いですねぇw

 新調したのも型落ちのモデルであるにも関わらず、以前、使っていた物とは天と地ほどの差があります。惜しむらくは、以前使っていたOfficeと、新しく導入したoffice2013のユーザー辞書との間に、相互性が無い事でしょうか……。

 

 恋姫関連、三国志関連の単語は常用漢字でないものが物凄く多いので、全部打ち直して移し変えるのが面倒で面倒で……orz

 まぁ、それはさておき、今回のサブタイ元ネタは

 

 エルドラド/THE ALFEE

 

 でした。

 NHKのアニメ、モンタナ・ジョーンズのEDテーマで、私の世代だと、THE ALFEEを知ったのはこのモンタナ・ジョーンズか、銀河鉄道999の映画ではないかと思います。

 歌詞が今回のお話と結構リンクしていたし(本家はラブソングですけどw)、理想郷というモチーフもピッタリだという事でチョイスしました。

 

 また、後半の農業の描写に関しては、小笠原樹さんにアドバイスをしてもらいました。樹さんが過去にTINAMIで連載していた二次創作の中で使用していたアイディアも、許可を頂戴した上で、これから少しずつ、私の作品の中に取り入れさせて頂くつもりです。

 

 では、何時ものように、支援ボタンクリック、コメント、お気に入り登録等、お気軽にして頂けると大変励みになりますので、どうぞ宜しくお願いします。

 

 それでは、また次回、お会いしましょう!


 
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