No.674185

【獣機特警K-9ⅡG】大人たちのひととき【交流】

古淵工機さん

Q:あれ、確かミライちゃん未成年(19歳)じゃなかったっけ?
A:この話の半年ほど前に20歳になったようです。そういうことにしといてください。

■出演
エリシア:http://www.tinami.com/view/671261

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2014-03-27 23:36:57 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:678   閲覧ユーザー数:641

ラミナ市内のメインストリートから細い路地へ折れてしばらく歩いていくと、

そこにあるのが『Silhouette』と呼ばれる小さなバーである。

まるで人気のない路地に面したこの店だが、実は知る人ぞ知る隠れた名店であり、

昔から官僚や公務員などが訪れることで知られる。

 

「あら、いらっしゃいませ」

今宵も、看板娘のエリシア・バイオレットが笑顔で来客を出迎えた。

「こんばんは、エリシアさん」

まず入ってきたのはピューマ形ロボットの女性。司法省刑事局の局長、アイヴィー・ヒルトンだ。

既にカウンターでは元K-9隊員で今はプロのバイアスロン選手となっているアレクセイ・フタロイミツィや

プラネットポリス本庁の特別犯罪対策室長のマキ・ロックウェルらが杯を交わしていた。

 

「あら、アイヴィーさんじゃないですか」

「マキさんも来てたのね。それにアレクさんも…あら?そういえばフィーアさんは?」

よく見ると、いつもは一緒に来ているはずのフィーア・天神・フタロイミツィの姿が今夜は見当たらない。

アレクはウォッカをあおった後、がっくりとうなだれながら答えた。

 

「…実は彼女、旧友たちと旅行に行ってまして…2週間は戻ってこないそうで」

その話を聞いたエリシアが答える。

「あぁ、それで今夜は一人ってワケなのね…」

「そうなんだよ…。はぁ…フィーア…orz」

ただでさえ娘が彼氏に付きっ切りでさびしいアレクだというのに、嫁まで旅行中とあっては今回は余計に寂しそうである。

テーブルの上には涙の水溜りが出来上がっていた…。

すると再びドアが開き、またもやがっくりうなだれた様子の客が一人。

「いらっしゃ…あら、ミライちゃん…?」

「スピリタス…お願いできませんかね、へへへ…」

一同が驚いたのも無理はない。普段であれば、強くてもせいぜいテキーラ程度しか飲まないミライが今夜はスピリタスである。

ミライの隣ではアレクがため息をつきながらぼやく。

「一体何があったのミライちゃん?…あぁ、そっか、いまだに彼氏が見つかってないんだね。はぁ…」

「ち、違いますよアレクさん!そんな色恋沙汰じゃなくてもっと深刻な問題なんスよ…」

 

すると、ミライの身体を見たマキが異変に気づく。

「ミライちゃん…ひどくボロボロじゃない。一体誰にやられたの!?」

「それがさぁ…聞いてくださいよマキさん…」

話によれば5日前、ミライは連日の激務で機体が消耗してすっかりくたびれてしまったが、

まだ給料日前、つまり財布の中身が一番寒い時期、いつものロボットショップでメンテを受ける程の余裕はなかったそうである。

そんな中、一人の女技術者、名前を確かルグナルと言うのだが…彼女が格安でミライの機体を修理してくれるという。

そこで早速、引き受けてみたミライであったが…。

 

「…修理を受けた最初は何ともなかったんスけどね…いつものようにトレーニングをしてたら急にイヤな音がして…何だろうと思ってたらあたしの身体がバラバラに壊れたんスよぉぉ!!」

「う、うわー…それは…」

「ご愁傷様ですネ…」

「ちくしょう、完璧にダマされた!あのヤブ技師めぇ!!」

その叫びを聞いて、ボックス席に座っていたドーベルマン形ロボットの女性…テレジア・アウディが一言。

「…あきれた。私にひとこと言ってくれればタダで修理してあげたのに」

「お、仰るとおりです博士ぇ…ぐすっ…」

ミライは大粒の涙を流しながらテレジアの元に向かう。

「ほら、泣くだけ泣いたら私のところへいらっしゃい。ちゃんと修理してあげるから」

「は、はぃ…」

と、ここでまた扉が開くと、今度は白衣を着たサザル族の女性がやってきた。レルカだ。

「やぁ。テキーラあるかい?」

「あ、これはレルカ博士。相変わらずテキーラがお好きみたいね」

「一仕事終えた後にこれを飲むとスッキリするんだよ」

今夜のレルカはこれといった悩みを抱えてはいないようであるが、

それを見ていたアレクはさらに落ち込み、ミライはぶつくさと文句をたれる。

「いぃなぁレルカ博士は。はぁ、フィーアが旅行に行ってなきゃ今頃はなあ…orz」

「なんだい楽しそうにさあ…あたしがどんなひっどい目にあったかも知らないでって、自業自得だからあんまり文句言えないんだけどさ…orz」

そんな落ち込みムードの二人をよそに、レルカはテキーラを飲み干すと豪快に一息。

 

「くぁーーー!やっぱりテキーラはテンション上がるね。じゃ次、カルーアミルクで」

「まだ飲むんですか博士?」

「あ、じゃあ私スクリュードライバーで」

「マキさん、もう35杯目ですけど…」

 

嬉しい酒に悲しい酒…。

酒にもいろいろな種類があるように、酒を飲む人にもさまざまなドラマがある。

そんなドラマを見届けながら、エリシアはいつもと変わらぬ柔らかな笑顔を浮かべる。

Silhouetteの夜は、まだまだ続く。


 
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