No.672641

【獣機特警K-9ⅡG】貿易相のおしごと【交流】

古淵工機さん

不審な荷物にはいつも彼女の眼が光る。
ちっちゃい女の子だと思ってナメてかかると痛い目見るぜ!!

■出演
ジュリ:http://www.tinami.com/view/672616

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2014-03-21 22:06:13 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:745   閲覧ユーザー数:690

ラミナ市、バーガンディー宇宙港。

最大の旅客数を誇るのがル・ブラン宇宙港であるならば、

ここバーガンディー宇宙港はラミナ市最大の貨物取り扱い港。

そしてファンガルドにおける貿易の玄関口であり、数々の惑星から飛んできた貨物船が発着する。

その2番滑走路に、貨物を満載にしたバーディア船籍の宇宙船が着陸してきた…。

 

到着した宇宙船は積荷の審査を受ける。

早速、宇宙港会社の係員の誘導で駐船場へと転がされていく宇宙船。

その近くには積荷の審査を行うために設置された貿易管理センターがあり、宇宙船はここで積荷の審査を行うのだ。

「…バーディア船籍・登録番号BDy-C77558『ニコルセ・(レプ)』、間違いありませんね」

空港の管理係の問いに、ハシブトガラス形のバーディアンが答える。

「はい、私がニコルセ・Ⅲ船長のニール・クロウです」

「一応確認いたしますが、積荷の方は」

と、きわめて事務的な雰囲気の中積荷の審査が始まった。

…そんなやり取りを、近くの通路で一人の少女が聞いていた。

耳の部分からロボットであることははっきりしていたが、容姿は小学生ぐらいだろうか。

しかし、この少女は一体何のためにここにいるのだろうか?

 

「アイゼン星より入手の産業用機械部品です。こちらがリストになっておりますので」

と、ニールが取り出してきたのは小型端末である。

「…なるほど。産業用ロボットが15体分、それに機械製造用の機材もありますね」

「そうです。ある企業から購入の要請がありまして、それでアイゼン星から輸出されたものを運んできたのです」

「しかし、その割には重量が大きいような」

「ああ、これがけっこう重い機材でしてね。運び出すまでが一苦労でした…」

そのときである!先ほどの少女が審査の現場に入り込んできたではないか!!

 

「船長さん…ちょっといいかしら?」

「ん?なんだいお嬢ちゃん。ここは君のような子が来る場所じゃないし、だいいちこんな話なんか聞いてもつまらないだろう」

と、近づいてきた少女にニールは苦笑いを浮かべながら答える。

「ふふ、確かに普通の女の子だったら興味はないわね。それにしてもこの積荷どうも怪しいにおいがするのよね~なんでかなぁ?」

「ほらほら、もういいだろ。な、いい子だから早くお帰り!」

ニールはさらに少女を止めようとするが、彼女はなおも引き下がろうとはしない。

 

「そうそうアイゼン星っていえば、ロボットのような感じの機械生命体が暮らしてる星だったわね。そこで手に入れた貨物がどんなのか興味あるわァ」

すると少女は、今度は審査官の横を潜り抜けて宇宙船の方へ続く通路へ向かおうとする。

「あっ、キミ!勝手に入ったら!!…すいません、すぐ捕まえてきますので」

と、審査官は慌てて少女を追いかける。

「はぁ、はぁ…だ、ダメだよこんなトコ勝手に入ったら…!?」

と、ようやく少女に追いついた審査官は、少女が取り出した身分証を見て思わず言葉を失った。

「あら、これでもダメ?ま…しょーがないか、こんな見た目だもんネ」

そこに書かれていた文字は…。

 

『ファンガルド貿易省 長官 ジュリ・アツギ』

…そう、彼女こそ貿易省のトップ、厚木寿梨その人だったのである。

 

「はっ、し、失礼いたしました!」

「それより例のリストと重量が合わない理由よ。どうもウラがあると思わない?」

「はぁ…それでしたら…」

「とりあえず、船長さんのところに一回戻らせてもらうわ。そうだ、あなたさっき私を捕まえようとしてたわね」

「…そ、それがなにか?」

きょとんとする審査官を前に、ジュリは薄ら笑いを浮かべながら答えた。

「いいからいいから。私の言うとおりにしてれば…あ、そうだわ」

ジュリは左腕の入力パネルのボタンを操作し、なにやら入力した。

「…長官殿?」

「これでよしっと。さ、作戦通りにお願いね」

…数分後。

「やだぁ!はなして!はなしてよぉ!!」

「ホラ、大人しくしなさいってば!…すみませんこの子が勝手なまねしちゃって」

「…まったく、元気なのはいいけど程度ってヤツがあるだろうに」

「むぅ~…だってぇ…!」

ふくれっつらをする少女の肩に手を置き、ニールはさらに続ける。

 

「ほら君、お家の人だって心配してるだろ。何でこんなところにいるんだ?お名前は?」

「…ジュリ」

「ん?もう一度言ってごらん」

よく聞こえなかったのか、ニールはもう一度名前を聞いた。

すると少女は小さなカードを突きつけ、ニールをにらみつけながら大声で答えた!

「…厚木寿梨…。ファンガルド貿易省長官・厚木寿梨よ!」

そう、先ほど突きつけたカードは、つい数分前に審査官に見せたのと同じ身分証だったのだ!

「なっ…ぼ、貿易省の長官!?こいつがか!?」

すっかり面食らって言葉も出ないニールに、ジュリはさらに強い調子で喰らいつく。

「貿易管理法に基づき、あなたの船にある積荷を調べさせてもらいます。いいですね!!」

「まっ、待ってくれ!勝手にそんなことされたら…」

「なんですか?まさか見られちゃ困るものでも入ってるって言うの?なんと言われようが私は行くからねっ!」

「やっ、やめろっ!やめろぉぉぉ!!」

ニールは必死に叫ぶが、ジュリは貨物船にどんどん近づいていく。

貨物船のハッチを開けたその時、その中にあったものは!!

 

「…ひっく、ひっく、ぐす…ママぁ、ママぁ…」

「暗いよ、狭いよぉ…ここ、どこぉ…?」

無理やり詰め込まれた少女形のロボット…いや、機械生命体・アイゼニアンの少女が数十人。

特殊な拘束具で手足を緊縛され、身動きが取れない状態にされて運ばれていたのである!

「…なるほど。そういうことだったのね」

「あぁ、せっかくここまで運んできたのに…くそっ…」

「さぁ言いなさい!この子たちをどうするつもりだったの!?」

すさまじい剣幕でニールに迫るジュリ。だが、ニールは懐からレーザー拳銃を取り出す。

「…フン、どうしようが俺様の勝手だ。こんなところを見られたからには生かして返すわけにはいかん!くたばれェ!!」

ニールが撃鉄を引いた、その次の瞬間である!!

「ぎゃあぁぁぁぁ!!」

悲鳴はニールのものだった。手の甲に強い衝撃を浴び、しびれて自由が利かなくなった手からは銃が零れ落ちた。

「…そこまでよニール・クロウ。ジュリ長官から通報があったわ!」

「宇宙法24条…人身売買禁止条例違反、宇宙貿易条項違反、および殺人未遂の容疑で逮捕します!」

通報を受けて駆けつけてきたのは、ラミナ署K-9隊のイシス・ミツザワと煌月空だった。

 

その後、ニコルセ・Ⅲはバーディア星当局に引き渡され乗組員は全員逮捕。

こちらもまたバーディア星の軍警察に引渡しとなった。

いっぽう、連れてこられたアイゼニアンの少女たちはアイゼン星からやってきた宇宙船に乗せられ、

無事それぞれの親元へと帰っていったのだと言う。

「ありがとうK-9隊のお二方。貿易省を代表して感謝の意を表します」

イシスとソラに頭を下げるジュリ。

「いえ、ジュリさんの勘が鋭かったんですよ。私たちは通報があったから来ただけですし」

「そうですよ。もしあなたが気づいていなければきっとあの子たちは…」

拳を握り締めるソラに、ジュリが声をかける。

「大丈夫。もし怪しい荷物があっても、私たちが許さないんだから。不審な荷物は出さず入れず。それが貿易省の役目よ…これからも一緒に平和を守るためにがんばりましょ!」

「はい!がんばりましょうジュリさん!」

「ジュリ貿易長官に敬礼!!」

イシスとソラは、改めて背筋を伸ばすと、ジュリに敬礼した。ジュリもまた、二人に敬礼を返す。

 

…ファンガルド貿易相・厚木 寿梨。

彼女は今日も不正貿易を撲滅するため、小さな身体でファンガルド中を奔走するのだった。

 


 
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