No.670562

気付かない両天秤

九条さん

原作沿い


(本編:11~12話の間)

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2014-03-14 01:57:13 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2660   閲覧ユーザー数:2650

 

 

 

実は、メイジンとユウキ先輩同じくらい両方気になるが、違う人を同じくらい気になる

なんて・・どうしよう・・自分なんて駄目なんだろう・・

 

 

―――こう本人は思っており、その意識からか、彼女のユウキとメイジンへ態度は普通

そのものの姿勢を決して崩さない。

 

だから、ユウキが「メイジンはキミにはどう映ってる?」と聞いても、「素敵な人だと

思います。ファンです」と答え。

 

メイジンが「キミはユウキの事をどう思っているいんだ?」と訊ねても、「優しい先輩

ですよ」と。

 

 

そういった彼女の言葉がどれ程、彼の中で引っ掛かっているかも知らずに。

 

 

しかし、アランだけは気付いており、ある日何気なくヒロインと二人きり時に突如切り

出すのであった。

 

 

「キミ、メイジンとタツヤの事好きだろう」

 

「な、な、な、なんの事ですか?」

 

「無駄だよ。見てればわかる。僕の目は誤魔化せないよ」

 

真剣な蒼い眼で見つめられて、観念するヒロイン。

 

「・・・・はい。なんかお二人の事が同じくらい気になっちゃうんです。こんなの駄目

だって思うんですけど・・でも遠くから眺めてるだけだし・・」

そんな事云いながら、時たまお話とかもしちゃうんですけど・・・

 

 

アランからすれば同一人物だから惹かれて当然だとは思うが、社秘義務で伝えてないか

らなぁ~~・・別人だと思ってるなら混乱する気持ちはわかる。

 

でも、どう見てもタツヤないしメイジンもヒロインの事を気になってるのは、最初彼女

を会社で紹介された時点から分かっていた事だ。

 

 

だから自分は「彼女?」と聞いたのに、1人は「部員の一人だよ」といい、1人は「部

長なんです」と認めやしない。

 

 

そういう所は、まだまだタツヤも子供なのかな?と思っていたのだが、本当に当初はそ

うとしかお互い思っていなかったようである。

 

 

あれはいつだ・・・

 

 

そうだ、世界大会初日。レイジ・セイコンビにメイジンはユウキ先輩と選手通用口で問

われ、本人も素顔を晒したあの日。

 

 

面白半分とお節介にメイジンのファンだと云うヒロインに適当な理由をつけて、「メイ

ジンに書類を届けて欲しい」と彼の部屋に向かわせて以降なにかが変わった。

 

 

二人だけの部屋で一体なにがあったのかはアランには知りえぬ事だ。

 

 

(タツヤの性格上、突然女の子に妙な事するとは思えないし・・・)

 

 

――――ただ、確かにあの日から、何かが変わり、メイジンで徹しているのに、いやメ

イジンのまま、彼女に意識が向けられる。

 

 

メイジンとタツヤは同一人物でもあるが、メイジンになっている時の彼は己に暗示でも

掛けているかのように、タツヤの時のような柔和さはなりを潜め、憮然とした態度と絶

対的支配者ような口ぶりに徹し、まるで総帥であった時のシャアのようだ。

 

そして、メイジンでいる時の彼にタツヤの顔が覗く事はない。

 

だからこそ、ヒロインも別人と認識しているのであろう。

 

 

一回でもユウキでのバトル時を見ていれば、もう少し変わったのであろうか、運がいい

か悪いのか、その機会は見事に潰されているらしい。

 

 

だが、二人が同時気になると云って悩んでる彼女の心境を考えると、この場合不運と位

置づけした方がよさそうでもある。

 

 

「自分の気持ち、伝えないの?」

 

「どっちにですか?!」

 

「どっちでもいいじゃないか」

 

「駄目ですよ!アランさん何云ってるんですか?」

私のお話聞いてた?私、二人が同時に気になるって云ったよね?

 

「だって・・・(どっちに云っても同じなんだし)」

 

「?」

 

キョトンとした顔をするヒロインにアランは口を噤む。

 

 

あまり、当人同士の問題に他人が口を突っ込むべきでもないだろう。

 

(本当・・・どちらかが、告白すれば簡単に関係は変わるのに・・・)

 

サングラスで視線は隠してはいるが、バトルが終ると次回対戦相への作戦である場合も

あるが、大抵は彼の意識は彼女へと向けられる。

 

 

そう、彼女は気付いていないが、話しかけるのはいつもメイジンなのだ。

 

彼女は「メイジンとは時たま、お話させて頂いてる」と云ってはいるが、ヒロインに話

し掛けるのはいつも彼の方が先だ。

 

 

PPSE社特別観戦プレスにおいて、試合を全貌出来る関係者の特権のような席がある。

 

他の選手もいない、云わば特等席なような所だ。

 

PPSE社のパスをいくら持っていようと、通常の選手観覧席では、選手でもないヒロ

インはその性別もあり大変目立ち、興味の対象として、声を掛けられる事も少なくない。

 

 

しかし、PPSEの関係だと分かれば引き下がる者も多いが、レナート兄弟や、ニルス

・ニールセンのようなやっかいな輩の方が声を掛けてくる確立が上がる。

 

 

だからと云ってその度に、自分やンメイジンが間に入っては、重要関係者だと知らせて

いるようなものである。

 

 

だから、「僕達も使うしキミもおいで」とアランが招待した。

 

 

最初彼女は「大丈夫です、一般席で見ます」と遠慮したのだが、

 

「キミそれで、こちらが用意した席に辿り着けなかったでしょ?ウチのスタッフ困って

たよ」

 

「すみません・・・」

 

「まさか、タツヤから聞いてたけど、そこまで方向音痴だと思わなかった僕も悪いけど。

キミの感想も大事なナマの資料なんだからちゃんと見て貰わないとね」

辿りつけないなんて理由勘弁してよ。

 

こう、理論づくめで押し切られてヒロインに反論の余地はなかった。

 

 

確かに、彼女の感想は資料であるのは事実だが、モニターは他にも数人いるので、別に

ヒロインだけではない。

 

ようは彼女をここに来させる理由があればなんでもいいのだ。

 

 

ハッキリ云ってヒロインが迷うであろう事は予想済みで、彼女をここに納得ずくで来さ

せる理由の為に一般席を用意したようなモノだ。

 

 

正確には彼女との会話で、刺激を受けるメイジンに用がある。

 

 

だからと云って「メイジンはキミと会話をすると大変イマジネーションを刺激されるん

で話して欲しい」

 

 

などと正直に云ってもヒロインの性格上辞退するのも想定済みだ。

 

よしんば承諾しても、妙に意識され、固くなりこちらが思った成果を出せない可能性が

あり、それはこちらしても大変困る。

 

 

ならば、適当な理由をつけ、目の届くプレス席に置いておき、試合が終ったと同時に話

をさせた方が時間やなにかと都合がいい。

 

 

彼女はいつも行方不明で、用がある時に探してもすぐ連絡の取れない事が多く、携帯も

電池が入ってなかったり、切れていたり、置き忘れていたりと理由はさまざまだ。

 

 

ただ、自分の方向音痴を自覚しているのか、絶対に会場周辺にいるので、呼び出しを掛

けたりする事も少なくは無い。

 

まぁ、そもそも、社員でもなく、一般モニターという枠組みである、彼女に用がある事

など早々ないのだが。

 

 

 

 

彼女に用がある時、それはメイジン関連であるとヒロインは気付いているのであろうか?

 

 

 

 

 

 

バトル観戦を終え、不思議そうに首をかしげるヒロインに、声を掛けるメイジンを見る

のはこれで何度目だろう。

 

 

確かにこれから会話する事になるので彼女の云う「お話させて頂く」という意味もあな

がち間違ってはいないのだが。

 

 

「何か、今のバトルで気になることでもあったのか?」

 

「・・・なんでさっきの眼というかモニターああいう設計にしたんでしょう?」

 

 

「どれの事だ?」

近づき彼女が手にしている大判の携帯を覗き込むメイジンに、ヒロインの態度はあんな

にも固くなっていると云うのに。

 

「・・えっと・・これです。この機体、なんでこうモニターが山形に動く設計にしたん

でしょうね?」

 

出てきた画像に触れ、指でさっきの見た光景を画面でなぞるヒロインは彼と顔を合わせ

ないように必死になっているのが分かるほど、あからさまであるのに。

 

何故、メイジンはメイジンで気付かないのだろうとすら、アランは思う。

自分達にする態度とまるで全然違うではないと。

 

「ああ、これは・・・」

 

そう云って傍かれ見ればわからないであろう嬉しそうな表情で説明するメイジンを見る

のも何度目だろうか。

 

 

 

 

「僕は、報告と資料作成があるので先に失礼させて貰うよ。メイジンあとでね」

 

 

「ああ」

 

「ヒロイン、キミも遅くならないウチに帰るんだよ」

 

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

「それじゃ」

 

扉を開き部屋をアランは後にする。

 

 

(本当・・・どちらかが、告白すればこの関係は変わるのに・・・)

 

 

 

 

 

 

 


 
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