No.669112

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第三十話


 お待たせしました!

 それでは今回より反董卓連合編に入ります。

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2014-03-08 21:43:36 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:7834   閲覧ユーザー数:5379

 

 ~???~

 

「首尾はどうであった?」

 

「はっ、袁紹殿はお話をお受けすると…但し、成就した暁には河北四州の領土と

 

 大将軍への叙位をとの事でしたが」

 

「ふん、欲張りな女め。まあ良い、俺が皇帝になったらそんな口約束など幾らで

 

 も反故にしてやるがな」

 

 報告を受けた男はそう言って下卑た笑いを洩らす。

 

「ただいま戻りました…」

 

「待っておったぞ。そちらはどうであった?」

 

「はっ、言われました通りに成功の暁には幽州と涼州を進呈すると伝えました所、

 

 快く協力を」

 

「ふっ、あんな北方の痩せた土地など俺にとってはどうでもいい所だがな。まあ、

 

 目障りになるようだったら俺が皇帝になった後で大々的に討伐軍を発するだけ

 

 だがな」

 

「しかしこれだけの者達が計画に賛同するとは…」

 

「それだけ今の皇帝に不満を持っているという事よ。だからそもそも俺ではなく

 

 劉宏などを皇帝にした事が間違いだったのだ。見ておれよ、今度こそ俺がこの

 

 大陸に覇を唱える時だ」

 

 男はそう言うと洛陽の方角を見つめていたのであった。

 

 

 

「そのような噂が…間違いないのか?」

 

「ああ、何か知らんけど北方と南方の両方からそないな噂が広まってきてるっち

 

 ゅう話や」

 

 朝議の席にて及川からの報告に皆が驚く。

 

 その内容とは『今、洛陽においては涼州・天水郡の太守であった董卓が言葉巧

 

 みに宮中に取り入り、相国の位を僭称して専横の限りを尽くして洛陽の民を苦

 

 しめており、陛下も日々心を痛めている』という噂が広がっているという事で

 

 あった。

 

「何じゃ、その噂は…!そのような物、とっとと訂正させよ!洛陽の民は誰一人

 

 苦しんでなどおらんし、月が誰よりも優しき政をしているのは妾が一番知って

 

 るわ!何処のどいつじゃそのような根も葉も無い事を言っておるのは!?」

 

 その報告を聞いた命が真っ先に怒り出す。

 

「及川、今北方と南方からって言ってたが、どの辺りからか特定出来るか?」

 

「それがな…あまりにも口コミ過ぎて何か伝言ゲームみたいになっててな…文聘

 

 はんにも今調べてもらってはいるんやけど」

 

 俺の問いかけに及川は頭を掻きながらそうぼやくように答える。

 

「でも、北方というのは袁紹さんが絡んでそうな気がしますねー」

 

「袁紹が?」

 

「確か前に張譲とかいう人と共謀してて、お兄さんに追い払われたという話を聞

 

 きましたー。その辺りを根に持って月さんを陥れようというのは考えられます

 

 ねー」

 

 

 

 風のその言葉に皆、納得がいったような顔をする。

 

「それは十分に考えられますね…及川殿、南皮の方を重点的に調べてもらっても

 

 良いですか?」

 

 夢がそう依頼すると、及川は足早に玉座の間を後にする。

 

「袁紹…そうまでして権力が欲しいか」

 

「でもそれだけでは無さそうですね」

 

「どういう事だ、輝里?」

 

「どう考えてもこれだけの噂の広がり方は袁紹単独での事とは思えません」

 

「袁術が絡んでるのではないですか?両袁家の謀ならば説明もつくのです!」

 

 輝里の疑問にねねはそう答えるが…。

 

「それは無いわね」

 

 そこに入って来た一人の女性がそれを否定する。

 

「誰なのです!此処を何処だと思ってるのですか!何で袁術は絡んでないなんて

 

 言い切れるのですか!?」

 

「…随分と質問ばかりね。まあ一つずつ答えさせてもらうと、まず私の名は孫策。

 

 一応、正式に陛下に呼ばれて来た者よ。だから此処に来ても問題無いわよね?

 

 それと、今我ら孫呉は袁術ちゃんの客将だって事は知ってるわよね?そもそも

 

 袁術ちゃんが袁紹と結託してたらとっくに私の所にも連絡が来るわ。それが無

 

 いって事は、袁術ちゃんは知らないって事ね。まあ、もし袁術ちゃんの所に話

 

 が言ってたとしても、袁紹への対抗心からまともにはやらないでしょうけど」

 

 そう孫策さんに言われて、ねねはぐうの音も出なかった。

 

 

 

「孫策、久しぶりじゃの。良く来てくれた」

 

 命がそう声をかけると、孫策さんは礼を取って答える。

 

「この度は陛下御自ら我らへの温かい援助とお言葉を賜り、恐悦至極にございま

 

 す。また、亡き母への祭祀料まで頂き、ありがとうございます。母も草葉の陰

 

 で喜んでいる事かと」

 

「何、文台と我が母は友垣じゃった。妾も何度か剣を習った事もあったしの。そ

 

 ういえば、お主と最初に会ったのもその時じゃったな」

 

 命は遠い眼をしながら、そう声をかける。

 

「はい、あの頃は『色々』お世話になりました」

 

 何だか孫策さんの言い方にトゲがあるように感じたのは気のせいだろうか…。

 

「まあ、それはともかくとして…袁術は良い主君か?」

 

 命がそう聞いた途端に孫策さんの顔が歪む。それだけで、孫策さん達がどのよ

 

 うな扱いを受けているのか分かってしまう位に。

 

「なるほどのぉ。でもそれじゃ此処に来るのも大変だったのではないのか?」

 

「…そうでもありません。今日私が陛下に拝謁するのは既に袁術…いえ、張勲は

 

 知っていますから」

 

 張勲…確か袁術の側近だったかな?

 

「ほう…知っていてあえてお主を来させたという事か?」

 

「実は、張勲よりの伝言も預かってきております」

 

 孫策さんのその言葉にその場の空気が驚きに包まれる。

 

 

 

「…何と言ってきておる?」

 

「張勲は『袁紹は何者かの言葉に踊らされてあらぬ噂をまき散らして大陸に余計

 

 な動乱を招かんとする気配あり。我ら南陽袁家においては既に真実を知る立場

 

 にあれば、事ある時には洛陽に駆けつけ陛下や董卓殿の為に戦う覚悟にて、そ

 

 の証拠に現在我らの客将である孫呉の主たる孫策を遣わすものである』との事

 

 です」

 

 そう述べる孫策さんの顔は苦渋の色がにじんでいた。おそらく孫策さんとして

 

 は、此処でこちら側に立って連合側に付くであろう袁術軍を叩きのめす大義名

 

 分を得ようとしたのだろうが、張勲に先回りされてしまい打つ手が無いという

 

 事なのだろう。

 

「すると袁術軍はこちらの味方になるという事じゃな。孫策達には不本意な話な

 

 のだろうが」

 

「本当にそうなら良いですけどね」

 

 命の言葉を遮るかの如くに輝里が言葉を発する。

 

「それについては風も同意見ですねー」

 

「…ボクもそう思うわ」

 

 輝里の意見に風と詠も同調する。(ちなみに詠からも一応真名を預かったので

 

 真名でお送りします。詠本人はかなり不満気な表情だったのは言うまでもない

 

 事ですが)

 

 さすがに軍師三人がそう意見を揃えると無視する事は出来ないのだが…。

 

「…すまぬ、どういう意味じゃ?」

 

 命がそう言った通り、何の話なのかが伝わっていないので他の人にはいまいち

 

 理解されていなかったりする。

 

 

 

「ただ単に袁術軍はこっちの味方になると決まったわけではないという事です」

 

「おそらく袁術…ではなく張勲さんは袁紹側にもいい顔してるような返事をして

 

 ると思いますねー」

 

「戦いの推移を見て有利な方に付こうって魂胆が見え見えよ」

 

 なるほど、確かに本当にこちらの味方になるつもりがあるのであれば孫策さん

 

 だけでなく袁術軍の幹部の誰かが一緒に来るはず…おそらくこちらが不利にな

 

 った場合は責任を孫策さん達に押し付けるつもりなのだろう。

 

「…袁術の行動には気を付けておかなくてはならんな。後は他の諸侯がどう対応

 

 するのかじゃが…」

 

 命はそう疑問を口にする。

 

「それは新たな報告を待たなくてはなりません。それはそれとして、こちら側も

 

 味方を確保する必要があります。四方が敵という場面は避けねばなりません」

 

「とりあえず西側はほぼ問題無いだろう。雍州は完全にこちらの支配下にあるし

 

 涼州の反抗勢力は韓遂を始め全て討伐済だからな」

 

 輝里の言葉に空様がそう言い切る。実は韓遂は十常侍と結託していた事が判明

 

 し、あまつさえ命よりの詰問の使者を斬るという蛮行に及んだので、馬騰さん

 

 と空様率いる軍勢によって討伐されて撫で斬りにされており、その後は馬騰さ

 

 んが涼州全てを掌握していたのであった。

 

 

 

「ならば後は…幽州の公孫賛・陳留の曹操・襄陽の劉表・益州の劉焉といった所

 

 だな」 

 

「公孫賛の方へは私の方から言っておくわ。あの子は私の教え子の中でも優秀だ

 

 ったから分かってくれると思うし」

 

 公孫賛については、瑠菜さんがそう言うのなら間違いないな。

 

「現状、曹操から表立った動きはありません…油断は出来ないけど、向こうもこ

 

 ちらの力は知ってるはずだし、袁紹側に与する可能性は低いと思いますね」

 

 曹操の方は夢がそう推測を述べる。確かに油断は出来ないけどね。

 

「ならば後は劉表と劉焉か…どちらも皇族に連なる家系である事を盾に自領内の

 

 事に今まで踏み込ませていなかったですからね、怪しいといえば怪しいか…」

 

「そっちも調べてみる必要がありますねー」

 

「しかし何故月が此処まで悪く言われるんだ?」

 

「月を槍玉にあげた方が信じるからでしょ。さすがに皇帝を悪く言ったら余計な

 

 反発を生みかねないのは分かってるのよ…かと言って、月を悪く言うのを認め

 

 るわけないけどね」

 

 詠は苦い顔でそう呟くように言う。

 

「とにかく、とりあえずは情報の収集と…こちらももしもの事態に備えて軍備を

 

 整えておく必要があるだろうな。ただ手をこまねいて見ているわけにもいかな

 

 いのは確かだ」

 

 俺のその言葉に皆が頷き、すぐに準備にかかり始めた。本当はこんな準備は無

 

 駄になるのが一番良いのだろうけど…おそらく無理だろうな。

 

 

 

 その頃、南皮では…。

 

「斗詩さん、猪々子さん、準備は進んでまして?」

 

「はい、各諸侯への檄は既に出し済です」

 

「後は洛陽に乗り込むだけっすね!」

 

 袁紹は家臣二人からの報告に満足気な笑みを浮かべる。

 

 彼女は張譲との密議の疑い(事実なのは命達は当然知っているが)の上、黄巾

 

 党との最終決戦の場にも間に合わなかった為、乱終息後の論功においてもこれ

 

 といって取り上げられる事も無く、南皮の太守のままであったのである。

 

 本来ならば現状維持出来ただけでも良しとする立場のはずなのだが、彼女は自

 

 分が恩賞に与れなかった事に対して強い不満を抱いていたのであった。そこに

 

 洛陽では自分より遥かに出自の低い董卓が政の中枢を担う事になった為、余計

 

 に怒りをこみ上げらせる事になったのである。そして…。

 

「さすがは袁紹様、なかなか素早いお手際にございます」

 

 その側には下卑た笑いを浮かべた男が控えていた。

 

「あちらにはこちらの要望は間違いなく伝わってますわよね?」

 

「はい、我が主は事が成就した暁には河北四州の領土と大将軍への叙位を約束す

 

 るとの仰せにてございます」

 

「さすがですわね。ならば後は私の号令一下で諸侯の軍勢を糾合して洛陽に乗り

 

 込むだけですわね。今度こそ見てると良いですわ…私こそが天下の中心に立つ

 

 のにふさわしいと知らしめてやりますわ!お~っほっほっほっほ!」

 

 一人そう高笑いしている袁紹を男は蔑みの眼で見つめていたのであった。

 

 

 

 所は変わり陳留。

 

 曹操は乱終息後の論功により正式に兗州州牧に就任して名実共に兗州を支配下

 

 に置き、着々と勢力を広げていた。

 

「以上が袁紹よりの檄の内容になります」

 

「…ふん、言うに事欠いて何が洛陽が苦しんでるよ。そうじゃないのは子供だっ

 

 て知ってる事じゃない」

 

 夏侯淵が読み上げた袁紹よりの檄の内容を聞いた曹操の第一声がそれであった。

 

「しかしかなりの数の諸侯がそれに賛同しているようです」

 

「桂花、言わずとも分かるとは思うけど、今回の檄に答えたとおぼしき諸侯は皆

 

 黄巾党討伐の際にまともに動かずに恩賞に与れなかった連中よ。自分達の愚鈍

 

 さを棚に上げて現体制を批判するなんてただの愚か者の所業と言わざるを得な

 

 いわね」

 

 荀彧の言葉に曹操はそうはっきりと言い切る。

 

「ならば華琳様は袁紹側に勝ち目は無いと?」

 

「秋蘭はあると思ってるの?」

 

「いえ、私も袁紹に勝ち目は無いと思っています。ですが…」

 

「何か気になる事があるの?」

 

「今回の件、ただ単なる袁紹の企みとは思えない節が…」

 

「それは私も思います。袁紹が考えたにしてはあまりにも巧妙な感じがします。

 

 まるで何者かが袁紹にそう言わせてるだけのような…」

 

 夏侯淵と荀彧が揃ってそう言うのでさすがに曹操も考え込む。

 

 

 

「何を言うか二人とも!例え何者がどうであろうとも、我らが華琳様を盛り立て

 

 ていく事に何ら変わりは無いではないか!」

 

「…姉者、今はそれを述べている時ではないぞ」

 

「そうよ、そもそもそんなの言わずもがなでしょうが!会話に入れないならしば

 

 らく黙っててくれる?」

 

 夏侯惇が突然そう口を挿むが、夏侯淵と荀彧にダメ出しを喰らい涙目になる。

 

(ちなみにそれを見て夏侯淵が心の中で『姉者は可愛いなぁ』と思っていたのは

 

 言うまでもない)

 

「それで結局華琳様はどうするんですか?」

 

 そう聞いてきたのは曹操の親衛隊長を務める許褚であった。

 

「季衣はどうしたいの?」

 

「えっ!?…ええっと、流琉ぅ~ボクどうしたらいいのかな?」

 

「私に聞かれても分からないわよ…」

 

 曹操の質問返しに戸惑った許褚は同じく親衛隊長を務める親友の典韋に助けを

 

 求めたが、その典韋も答えが出せるはずもなく二人で頭を抱えていただけであ

 

 った。

 

「ふふ、ごめんなさい二人とも。いきなりそう聞かれても分かるものじゃないわ

 

 ね。本当ならどっちにも付かずに様子を見たい所なんだけど…さて」

 

 

 

 曹操が少し悩み始めたその時、

 

「申し上げます!劉備様からの使者として諸葛亮殿が来られております!」

 

 そう伝令の兵士から報告が入る。

 

「劉備から?しかも諸葛亮が来るなんて…向こうで何かあったのかしら?いいわ、

 

 此処で通しなさい」

 

 ・・・・・・・

 

「本来ならば事前にお伝えしなければならない所を突然押しかけてしまい、申し

 

 訳ございません」

 

 それから小半刻後、諸葛亮が曹操に拝謁するなりそう申し訳無さそうに挨拶し

 

 ていた。

 

「一体どうしたの?あなたがいきなり来るなんて…確か今は平原にいたのよね?」

 

「はい、我が主劉備様は曹操様のご推挙もありまして今は平原の相の地位に就い

 

 ております。その節にお骨折りいただいた事、改めましてお礼申し上げます。

 

 本日まかりこしましたのは、お恥ずかしながら曹操様にお願いの儀があっての

 

 事でございます」

 

「お願い…?そっちで何かあったという事ね?」

 

「はい…実は」

 

 

 

 時は少し遡り、平原にて。

 

 義勇軍を率いていた劉備は黄巾党討伐での働きと曹操からの推挙によって平原

 

 の相となっていた。彼女の政は常に下々の者の立場に立った物であり、諸葛亮

 

 ・鳳統の両軍師の働きもあって民から慕われていたのだが…。

 

「袁紹さんから檄と書状が?」

 

「はい、檄には『政を壟断する董卓を討つべし』と書かれているのですが…」

 

「董卓さんって確か北郷さんのご主人さんだったよね?」

 

「はい、今は陛下のご親任も厚い方です」

 

「なら袁紹さんの言ってる事っておかしいよね?」

 

「はい、まさしくその通りです」

 

「じゃ、お断りの返事を『それがそう簡単にいかない話が…』…何かあったの?」

 

「檄と一緒に来た書状には『もしこの檄に応えない時には攻め潰す』と…」

 

「何だと!それはただの脅しではないか!!」

 

 書状の内容に真っ先に激昂したのは関羽であった。

 

「そうなのだ!攻めてくるというなら鈴々がちょちょいのぷーでぶっ飛ばしてや

 

 るのだ!!」

 

 関羽の言葉に張飛もそう同意を示す。

 

「待て二人とも、戦うと言うのは簡単かもしれんが彼我戦力差は如何ほどあるの

 

 だ?」

 

 そこに割って入るのは新たに劉備に仕える事になった趙雲であった。

 

 

 

「袁紹軍は全軍でおよそ五万、我らは精々一万といった所です…」

 

「ふん、鈴々と愛紗がそれぞれ一万人力だからそれで無問題なのだ!」

 

 張飛はそう言って胸を張るが、

 

「あわわ、鈴々ちゃん、例えそうでも全面対決となったらそうはいかないでしゅ、

 

 鈴々ちゃんと愛紗さんが頑張っても他の兵士さんが倒されたら終わりですから」

 

 鳳統にそう言われてしまう。

 

「ならばどうする?何処かに援軍を頼むのか?」

 

「そうだ!白蓮ちゃんの所にお願いしよう!」

 

「それは既に考えましたけど…こちらから幽州へ行く道はほぼ袁紹さんに塞がれ

 

 てしまっています。向こうもそれは想定済のようです」

 

「では他には…陛下に事の次第を奏上するとか?」

 

「うむ、ならば至急洛陽に『ら、洛陽はダメ!!』…桃香様?」

 

「せ、先生にこんな事が知れたら、また、お、怒られちゃう…ブルブルブルブル」

 

 劉備は洛陽と聞いた瞬間に怯えたような声を出す。

 

「愛紗、どういう事だ?」

 

「うむ…洛陽にはな、桃香様が昔教えを乞うたという盧植様というお方がおられ

 

 るのだが、何があったか知らないが桃香様は最近そのお方の話が出る度にああ

 

 なってしまわれてな…」

 

 趙雲の問いに関羽がそう渋い顔で答える。

 

「しかし洛陽がダメだとすると…他に知己はおらんのか?」

 

「後は曹操殿位しか…『そうだ!曹操さんにしよう!それで決定!!』…はぁ」

 

 

 

「というわけなんです…正直、このような話をするのも憚れるのでしょうが」

 

「はぁ、なるほどね…でも盧植殿ってそんなに怖い方だったかしら?」

 

 曹操は自分の中での印象との違いに戸惑った声をあげる。

 

「まあ、良いわ。とにかく、劉備は私達の後ろ盾が欲しいわけね?」

 

「は、はい!」

 

「桂花はどう思う?」

 

「単なる後ろ盾ではなく、こちらの支配下に入ってもらうという形であれば」

 

「だそうよ、諸葛亮?」

 

「…政にまで口を出さないと約束をしていただけるならばそれでも構いません」

 

「「えっ!?」」

 

 諸葛亮の言葉に曹操と荀彧は驚きの声をあげる。

 

「おそらく曹操さんからはそう言われると思い、劉備様からは既にその許可は

 

 得ております。ですが、あくまでも軍事方面においてという条件ですが」

 

「へぇ、さすがは諸葛亮ね。この際、正式に私に仕えない?劉備の所にいるよ

 

 り待遇は遥かに良いわよ」

 

「折角のご申し出ですが…私は私で劉備様に賭けておりますれば」

 

「そう、それは残念。まあ、それはともかく、後ろ盾の件は了解したわ。袁紹

 

 が本当に攻め寄せて来た時にはすぐに連絡しなさい。助けに行ってあげる」

 

「ありがとうございます。ではすぐに主に伝えます」

 

 ・・・・・・・

 

「良いのですか、あれで?」

 

「良いのよ、それよりも桂花、すぐに公孫賛に劉備をこっちの保護下に入れた

 

 事を伝える使者を」

 

「…!分かりました、すぐに」

 

 曹操の言葉から何かを察したらしい荀彧はすぐに行動に移す。

 

(ふふ、どうやら少しは私にも良い目が巡って来そうね。これで大陸が動乱の

 

 渦に包まれれば…)

 

 曹操はそう思いながらほくそ笑んでいたのであった。

 

 

 

 さらに場所は変わり南陽にて。

 

「えっ!?お嬢様…今、何と?」

 

「じゃから、妾も麗羽と共に董卓打倒の兵を上げると決めたと言ったのじゃ!

 

 これが決定事項じゃぞ。もう麗羽にもそう返答の使者を出したしの」

 

 袁術の側近である張勲は半日ばかり境目の視察に出かけており、帰って来た

 

 所を袁術からそう告げられ、戸惑いの声をあげる。

 

「美羽様、その件については私に一任していただいていたはずでは…」

 

「何を言うか、此処の主は妾じゃぞ。最後に決めるのは妾じゃろう?あやつも

 

 そう言っておったぞ?」

 

「あやつ?一体誰です?」

 

「知らん」

 

 袁術のその言葉に張勲は開いた口が塞がらないまましばらく呆然としていた。

 

「…あ、あの~、美羽様?名前も知らない人に会って、その人の言葉を信じる

 

 のですか?」

 

「名前は…確か張…張…張…何か名乗っておったが忘れたのじゃ!でも言って

 

 る事は正しかったのじゃ!この戦に勝った暁には妾が大将軍になれるとな!

 

 じゃから妾は董卓を討伐するのじゃ!!」

 

 袁術はそう言ったまま奥へと引っ込んでしまった。

 

(なっ…くっ、しまった。まさか私が僅か半日留守をしていただけでこんな事

 

 に…しかし一体誰がお嬢様を?それ以上にこのまま袁紹側に付いても碌な事

 

 にならないのは目に見えてますし…此処は孫策さんにしっかり繋ぎをつけて

 

 おいてもらわなければいけませんね) 

 

 張勲はそう決心していたのであった。

 

 

                                  続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 というわけで今回より反董卓連合編です。

 

 と言ってもただ単に連合が組まれるというわけでもない

 

 様相を呈してきましたが…。

 

 とりあえず次回以降は各諸侯のさらなる動きに一刀達が

 

 絡んでくる…といった流れで進む予定です。

 

 

 それでは次回、第三十一話でお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 今回は無かったけど白蓮さんの出番は近い内にまた

 

    ありますので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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