No.665355

【獣機特警K-9ⅡG】戦慄へのカウントダウン【交流】

古淵工機さん

こちら(http://www.tinami.com/view/552751 )でなにやら事件が起こった様子。
タイムリミットが刻一刻と迫る…的な緊迫感がでてればいいんですが。

あと、最後のおいしいところをやっぱりあの男が盗んでいきますw

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2014-02-22 23:13:05 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:736   閲覧ユーザー数:669

ラミナ市最大の商業施設・9 to 10Ⅱ…。

いつもは大勢の人々でごった返すこのビルだが、今日はやけに様子が違っていた。

ビルの周囲には立入禁止のロープがしっかり張られ、人々は9 to 10Ⅱを固唾を呑んで見守っていた…。

「一体何があったんです?」

ラミナ警察署長、エルザ・アインリヒトが、ビルの管理をしている茶トラ猫形ファンガーの女性に訊ねる。

管理人は重い表情で答える。

「ええ、ビル内部に爆弾を仕掛けたという電話がありまして…」

さらに、隣にいた女性…このビルの中で料理店を営む、花房蘭が続く。

「そんな脅迫信じるかって言ったんだけど、そしたらあいつ隣のビルの爆弾を爆発させたらしいんだよ」

蘭の夫、ギルン・キトナも同調する。

「頼む!このままじゃ商売にならない!それどころか、大勢の市民が犠牲になる…!」

「わかりました、我々に任せてください…。さて、聞いての通りだ。これよりわがK-9隊はビル内に仕掛けられた爆弾を回収、および解除にかかる。犯人の予告だと爆破予定時刻は今から1時間後。爆弾の数は15個だ。気を引き締めてかかれ!」

「了解!!」

エルザの合図で、次々に入っていく警官隊。K-9隊も例に漏れず、この作戦に参加していた。

「…ったく、犯人もハデにやってくれるじゃないスか!」

と、筑波未来はやり場のない怒りを募らせる。

「この爆弾がいっせいに爆発したら、窓は確実に吹き飛ぶ。仮に怪我人が出なかったとしても、しばらく営業できなくなる恐れもあるわ」

と、冷静な分析をするのはイシス・ミツザワ。

「ひどい!9 to 10Ⅱはみんなが楽しく過ごせる場所なのに…こんなことするなんて許せないわ!!」

と、煌月空。

三人がしばらく進んでいくと、イシスの特殊探知センサーが何かを発見した。

 

「…爆弾発見。これより解除に移ります」

イシスは手際よくカバーを外すと、回路の分析を行い、そのまま信管を丁寧に取り外していく。

「おぉっ!さすがイシスさんスね!」

「そりゃそうよ。ダテに長いこと警官やってたわけじゃないもの…こちらイシス。1個目の爆弾は解除しました」

…残り時間、50分。

5階・婦人服売り場…。

特殊な防護スーツに身を包んだ女性が二人、手に特殊探知機を持って爆弾の捜索に当たっていた。

生活警備課のミウ・カワグチとテムナ・ツルハシも、今回の任務に駆りだされることになったのである。

「いやぁそれにしても、わざわざスーツ用意してくれはって、エルザ署長はホンマええ人やわ」

「油断しちゃダメだよテムナ。確かにこのスーツは爆弾テロ対策用の頑丈な服だけど、私たちはロボットでもサイボーグでもないのよ。ヘタしたら命にかかわるんだから油断しない!」

「へぇへぇ…ん!?」

テムナの持っていた探知機が反応する。

 

「ミウ、爆弾あったで!!あの試着室の前や!!」

「よし!すぐに解除に移ろう!!」

ミウも爆弾の解除方法は熟知していた。カバーを外して、慎重に信管を切断する。

 

「よし。止まった…!こちらミウ。爆弾を解除しました!」

残り時間、45分…。

8階…書店などが並ぶ専門店街では、本庁からの出向組であるシーナ・ヴァイスとタム・カワグチが捜索に当たっていた。

「はぁ、アンタはいいわよね。あたしみたく重いスーツ着なくても大丈夫なんだもんね」

「そうでもないわよシーナさん。この作戦に参加している警官は全員が命がけ。機械の身体になったとはいっても、それは変わらない事実なんだから」

すると、ヴァイスの持っていた探知機が作動する。

「レコード店よ!!急ぎましょ!!」

 

地下1階・食料品売り場。

「こちらソウ!鮮魚売り場付近に爆弾を発見!!」

三沢颯の掛け声で集まるのはナタリア・天神・フタロイミツィと宮ノ陣竜矢。

「さすがソウ先輩!よく見つけましたね」

「へへ、こう見えて物を探すのは得意なんだよね!」

「じゃ、解体はわたしに任せてください!」

ナタリアは爆弾の解除作業に移る。

35階・レストラン街では…。

「こちらジョニー!厄介なところに爆弾がありますぜ!!」

ジョナサン・ボーイングが発見した爆弾は、事もあろうに配電盤のすぐ近くである。

もしこの爆弾を止められなければ電力の供給ができなくなり、営業に支障が出るだろう。

爆発の威力によっては、電気・複合火災が起きる可能性も懸念された。

「よし、よく見せてみろ。…くっ…ダメだ!手が届かない!!」

久遠・ココノエは爆弾を取り外そうとするが、あと一歩というところでクオンの身体は隙間には入らない。

 

すると、ベルタ・カシイ・アインリヒトがクオンのもとへ歩み寄り言った。

「隊長!あたしにまかせて!!」

「ベルタ…」

「そうか、ベルタの体格なら入れるはずだ!」

「ベルタ。爆弾の解除方法は署長から聞いているね?」

「うん!まかしといて隊長!ジョニーのあんちゃん!」

ベルタは小さな隙間にもぐりこんでいくと、そのまま手早く爆弾のタイマーを解除していった。

こうしている間にも各階では爆弾の捜索・発見が続き、発見しだい次々に解除されていく…。

だが、ここで問題が起きていた。残り20分の段階で解除できた爆弾は15個中11個。

残る4個の所在がつかめないのだ。

 

「なんだって!?まだ見つからないのか!!」

クオンは通信越しにひたすら声を上げる。

『さっきから探しちゃいるんですけど…ダミーが多くて…』

と、通信の向こうではミウの声。

『くそー!またニセモンや!』

テムナの叫びが、一筋縄ではいかない状況を克明に表していた。

 

『こちらヴァイス!またニセモノよ!!』

『こちらイシス!45階もダミーです!』

「くそっ…犯人め、考えたな!!」

歯を食いしばりながら走るクオン、ジョニー、ベルタ。

1分、また1分、時間は無情にも過ぎ去っていく。気がつけば残り時間は8分をきっていた。

 

「…もうダメか…このまま爆発するのを待つしかないのか!!」

と、床に拳を叩きつけるソウを、ナタリアが必死に励ます。

「あきらめないでソウ君!まだダメって決まったわけじゃ…!」

「そうだな…最後の最後まで探し出してみせなきゃ…」

 

しかし、探せども探せども爆弾は見つからない。

そうしているうちにいよいよ、残り時間は5分を切ってしまった!

「…これまでか!?冗談じゃない…こんなところで!!」

と、クオンが絶望しかけたそのときだった。

ビルの全館のスピーカーから、一人の男の声が響き渡った。

「はっはっはっは…警察諸君、ご機嫌はいかがですかな?」

それは誰もが聞き覚えのある声。特に警察官であれば一度は耳にしたであろうあの男の声だ。

その声に真っ先に反応したのは…。

 

「か、怪盗ノワール!?何しに来たのよ!姿を見せなさいよ!!」

…ヴァイスだった。その声に、ノワールの声がさらに響く。

「おやおや、これはヴァイス警視正…残念ながらそれはムリです。私が姿を現せばあなた方諸共吹き飛んでしまうじゃありませんか」

どうやら、館内にあるすべてのマイクが入っているらしく、ノワールにヴァイスの声は聞こえていたようだ。

クオンがノワールに向かって吼える。

「ノワール!一体何しに来たんだ!もう爆発まで5分を過ぎてるんだぞ!?どこにいるのかはわからないがこのビルから離れろ!!」

「ええ、ですがその前にひとつ確認しておきたい。爆発までの残り時間はあと2分30秒。動いている爆弾の数は4つ。間違いありませんね」

「何を…何故お前が爆弾のタイムリミットと個数を知って…」

「それでしたらクオンさん、あなたの目の前に窓があるはずです…ラミナ川のほうをご覧ください。あと45…44…43…」

ノワールが秒読みを始める。

 

「ちょっとアンタ!こんなときに秒読みなんかしてる場合じゃないわよ!!」

「せやせや!アンタも吹っ飛んでまうかも知れへんのに…アホか!?」

ヴァイスが、テムナが吼える。

「まさか、爆弾を仕掛けたのは…」

「それは違うな。ノワールはそんなことをする男じゃない」

「でも、だとしても…自分まで吹っ飛ぶかもしれないのに何をのんきなことを…!!」

動揺する警官隊の言葉をよそに秒読みは続く。

「3…2…1…ゼロ」

ノワールが、ついに最後のカウントを終えたそのときだった。

…強烈な爆音とともに、ラミナ川の上に巨大な水柱が上がる。

「な…!?」

クオンは突然の出来事に目を疑わずにいられなかった。

「…おい!おい!みんな無事か!?」

『こちらヴァイス。何でかしらないけど爆発は起きてないわ』

『こちらイシス。建物内部の爆弾の反応がすべて消えているとの報告が…』

『こちらミウ!一体何がどうなっちゃってるの!?』

 

すると、ラミナ川にかかる高速道路橋の支柱の上に、ノワールの姿があった。

「…諸君。この怪盗ノワールの鮮やかなる魔術はごらんになりましたかな?」

「ま、まさか…!?」

「そうです。諸君らが探していた残りの爆弾はすべて私が発見し、ラミナ川という安全な場所に隔離しておいたのです」

 

息を呑む警官一同。ノワールはさらに続ける。

「じつに厄介な事件ですよ…この爆弾を仕掛けた連中は、あのブラッドファミリーと密約を交わしていた建設会社でした。しかもあの爆弾は諸君らが見つけたものよりも数段威力が高い。つまり…」

その言葉に、ソウとミライが思わず声を上げる。

「…わざと発見しにくい場所に本命を仕掛けてたってことか…それにたった4個であの威力…」

「い、今計算してみたけど…9 to 10Ⅱのビルを崩すには十分すぎる破壊力だよ!?ってことは、奴らの目的は…」

 

その言葉を受けてノワールが答える。

「このビルを爆破し、跡地にファミリーの資金源となるカジノを建設する計画だったのでしょう」

「そんな!あんまりだわ!!」

ソラが眼に涙を溜めながら叫ぶ。

「…やれやれ。結局のところ、またアンタにおいしいとこ取られちゃったってワケね」

と、ヴァイスはため息をつく。

「おや、お気に召しませんでしたかなヴァイスさん」

「うーるーさーいー!助けてもらったことには感謝するけど、あんたはぜーったい逮捕してやるんだから!いつか覚えてなさいよ!!」

「おっと。生憎ですが早々簡単には捕まりませんよ…では、これにて。アデュー!」

「あ、待ちなさいよー!ノワールゥゥゥ!!」

かくして、9 to 10Ⅱのピンチを救った怪盗ノワールは、どこへともなく飛び去っていった。

…ただひとつ、ヴァイスの心に執念だけを残して。

 

…後日、爆弾を仕掛けた犯行グループに対し、ラミナ警察署は強制捜査を敢行。

事件にかかわった人物のほとんどは、次々に逮捕と相成った。

さて、9 to 10Ⅱは事件のあった翌日から全館で営業を再開。

まるで昨日の事件などなかったかの様に、人並みで溢れかえっていたのだった。

 

…地下1階・カチャーシー。

「ふぅー。ご馳走様でした蘭さん、お代ここに置いときますね」

と、支払いを済ませようとするクオンに、蘭は話しかける。

「ああ、そのお代なんだけどね…」

「ん?」

「あんた達はこの9 to 10Ⅱを救ってくれたからね。今日は半額でいいよ」

「え、でも…」

「いいんだよ。ほんのお礼さね!」

そのやり取りを見ていた常連客からも、次々に声が上がる。

 

「そうそう!クオンさんたちの活躍がなかったら、俺たちもう二度とここの料理が食えなくなるとこだったんだから!」

「9 to 10Ⅱの救世主に乾杯!」

「かんぱーい!」

「いやぁ、照れるなあ…」

…クオンの頬はいつしか、誰が見てもはっきりわかるほどに紅潮していたのだった…。


 
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