No.664903

島津一刀と猫耳軍師 2週目 第18話

黒天さん

今回で対馬騰戦は終わりになります。

2014-02-21 00:58:42 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:7598   閲覧ユーザー数:5531

「それが一刀様の考えなんですね」

 

現在俺が居るのは牢屋。何をしてるかといえば、朱里と問答をしている。

 

とはいっても朱里から難題が出てくるわけではなく、ある状況を提示し、その時どのように行動するか、を回答していく。というもの

 

どちらかと言えば思想を問う物に近いため正解は無い。

 

過去に俺が経験した状況も幾つか問として出てきていた。

 

なんで牢屋かっていうと、朱里が出ようとしないため。

 

手が回らない時に仕事を手伝ってもらったりしたこともあり、月に交渉して外に出れるようにはしてあるんだけど本人がそれを良しとしなかった。

 

時々時間を見つけては話しをしに来ているのだが、そのたびにこうした問答が繰り返されている。

 

あと朱里には真名で呼んでいいと言ってある。

 

「朱里、そんなことをして何になるというのだ?」

 

愛紗は朱里が俺の手伝いをしたり、一刀様と呼んだりするあたりをずいぶん咎めていたが、諦めたらしくもう言わなくなっている。

 

「まだ分からないですか? これだけ一刀様の話しを聞いてみても」

 

「何を言っている?」

「愛紗さんも時々仰ってたじゃないですか、鈴々ちゃんも。劉備様が、夢の中のご主人様のようであればいいのに、って

 

私が一刀様に出した問の答えを聞いても、わかりませんか?

 

私は、真贋を判断できるだけの材料は提示したつもりです。

 

私は一刀様に下ります。劉備様より以前から、忠誠を誓っている一刀様に。

 

一刀様は、私を傍に置いてくださいますか?」

 

頷いて牢の鍵を開ければ、朱里はゆっくりと牢から出てくる。

 

つまり、朱里が必要以外に牢屋から出なかったのはこの問答を愛紗に聞かせるため。

 

俺が夢の中に出てきた北郷一刀と同一人物かどうか判断するために。

 

多分、朱里の腹は俺に会った時からある程度決まってたんだろうな。

 

そうでなければ手伝いなんかしてくれないだろうし

 

「私は、私は……」

 

「よく考えてみてください、劉備様についていくことが本当に弱き庶人のためになるかどうか」

 

「島津様、報告があります」

 

現れたのは忍者隊の男、確か……張燕の監視に付けた男だ。

 

それが息を切らせて現れたということは、おそらく……。

 

「わかった、すぐ行く。朱里、いきなりで悪いけど、仕事だよ」

 

「はい」

 

朱里は嬉しそうに笑い、俺の後をついてきてくれた。

───────────────────────

 

報告を聞けば、馬騰に張燕が逆襲されたらしい。

 

まぁそろそろ逆襲してくる頃だとは思ってた。予想より早かったけど。

 

「馬騰軍が国境を超えて来たというのは本当ですか?」

 

急ぎ、月に主要メンバーを招集してもらい、軍議を開く。

 

「そろそろ、怒る頃合いだとは思っていました」

 

軍議が始まって月の開口一発がこれだった。

 

「え?」

 

「少し、私を侮りすぎです。北部の盗賊を討伐に行って以来、兵糧や武具が不自然に入ってきている事。

 

それに、馬騰軍の軍備が進まずに停滞しているという情報も聞いています。

 

なら盗賊を抱き込んで馬騰軍から略奪を行っている、というぐらいは想像がつきます」

 

あちゃー……、バレてたか。

 

「うん、俺の独断だよ。ごめん」

 

「いえ……、本来その判断をしなければいけなかったのは私ですから……。

 

それ以前から馬騰さんの所へ出した使者は門前払いにされていましたし、衝突は避けられない感じになってました。

 

そのままの状態で戦えば、相当な苦戦が、最悪敗北が待っていたかもしれません……。

 

少しでも有利に事を運べるようにしてくれた一刀さんに感謝します。

 

……状況の説明をお願いします」

 

月が忍者隊の者に水を向ける。

情報を整理すると次の通り。

 

1.馬騰軍は騎馬隊を主力とする5万を投入してきている。 2.黒山賊は半数がいわゆる捨て奸-すてかまり-となり生死不明。残りの兵力は1万

 

3.黒山賊は砦に立てこもり時間稼ぎをする構えを取っている 4.華琳軍と連絡を取った形跡は無い、同調して攻め上ってくる可能性は低い

 

5.黒山賊の兵糧の蓄えは十分にあり籠城は可能 6.馬騰が軍備をすすめていた国境近くの街の残りの兵力は1万程度

 

「一刀様と、しばらく行動を共にしていたあなたに聞きます……。

 

黒山賊の頭目、張燕とはどんな人物でしたか?」

 

「根っからの悪人には見えなかったよ。多分、生まれが違っていたら立派な将になっていたとおもう」

 

忍者隊の者からの報告としても同じ、部下からの信頼も厚く、好感の持てる人物だと。

 

くわえて黒山賊は、大なり小なり張燕に恩義があり、ついていっている者達だ、とも。

 

「では、助けに向かいましょう。詠ちゃん、どうするのがいいと思う?」

 

「動かせる兵力は兵糧と相談して4万。無理をさせるのならもう少し出せるわ。

 

3万と1万に分けて1万を、霞、星、桂花の3人に率いてもらう。騎兵中心の快速隊を編成して背後の街を強襲してもらう。

 

この時途中で輜重隊を見つけたら潰して。

 

一刀、天泣、天梁、紫青、華雄の5人で残りの3万を率いて砦へ救援へ向かってもらう。残りは洛陽の防衛よ」

「私もいきます」

 

月の言葉に、それぞれが驚愕を顔に貼り付けてそちらを凝視する。

 

一番酷いのは詠だな、うん。

 

「この軍の顔である私が一人安全な所にいるなんて、できやしないです。

 

役に立たないかもしれないですけど、私は前線に行って見届けたいんです」

 

あれ……。それって俺も似たような事言ってた覚えが……。

 

それから我に返った詠が猛反対したものの、月は頑として折れず、恋を護衛に付ける事で決着がついた。

 

「それで、すっかり忘れてたけどあんたは何でここにいるのかしら?」

 

詠が視線を向ける先にいるのは朱里。

 

「私がここにいる理由は一つしかありません。私は一刀様に下る事にしました。

 

軍師としてお供させていただきます。真名は朱里です。ここにいる皆さんに真名を預けます。

 

これをもって忠誠の証とさせていただきたいです」

 

「わかりました、よろしくお願いします。朱里さん。」

 

月が、朱里をどうするかは俺に一任する、と言ったので、俺と同じく黒山賊の救援の組となり、

 

洛陽の防衛は詠と冬華の2人で行う事になった。

───────────────────────

 

ねぐらとして砦を持っている事を想定していなかった馬騰軍は攻城戦の準備をしておらず、攻撃は遅々として進んでいなかった。

 

黒山賊は昼はきっちりと扉を締めて城内にこもりきり、城壁の上から弓矢による迎撃を行うのみ、行動を始めたのは夜……。

 

「さぁ、馬騰には安心して眠れる夜は来ないと教えてやろうかねぇ……。野郎ども! 突撃だ!」

 

時刻は真夜中、部下に松明を掲げさせ、城門を開いて一歩外に出て、菖蒲が大声を張り上げる。

 

夜中のその声に慌てふためいた馬騰軍が迎撃体勢を取ると、即座に軍を引いて扉を閉める。

 

一日のうちにそれを何度か繰り返す。

 

翌日には兵は寝不足で士気は上がらず、その夜も同じ事を繰り返した。

 

その日の夜にはハッタリだと高をくくり、迎撃しようとしなくなり、更に翌日には起きて来すらしなくなった。

 

そこにきて菖蒲は本当に深夜に襲撃を仕掛け、対応の遅れた馬騰軍は大きな被害を被った。

 

その時、白兎の隊が突撃する菖蒲の隊を隠れ蓑にして潜入し、繋がれた馬を離してその馬に火を付けた。

 

あたりは火をかけられて暴走する馬と寝込みを襲われた兵士達でさながら地獄絵図と化した。

───────────────────────

 

「なんだかすごく疲れてるように見えますね……」

 

馬騰軍を見た紫青と朱里の最初の感想はこれだった。

 

確かに一刀にもどことなく動きがニブいと感じる。

 

その理由は夜襲を警戒して眠れない夜を過ごしていたせいなのだが、それはそれぞれの知る所ではなかった。

 

馬騰軍は砦から離れ、董卓軍に向かい合うと馬騰が前に進み出て口上を述べる。

 

その口上の中身は董卓への糾弾。皇帝をいいように利用し、さらには盗賊と結託して自分の領地を荒らしまわった云々。

 

それを聞いても董卓軍の兵達はどこ吹く風。馬騰の言う董卓による圧政がデタラメである事はよく知っているし、

 

戦の準備をして馬騰が洛陽を攻めようとしていたことは訓練時にそれぞれの隊長から聞かされてよく知っていたし、

 

それを黒山賊が必死に止めていてくれたことも、ここに来る道すがら、月がそれぞれの隊を周り、説明して回っていた。

 

馬騰は黒山賊が砦から出てこないか、出てきても逃走するだけか、そう考えているのだろうか。

 

ほんの一部の兵を除けば、砦に完全に背を向けて陣形を作っていた。

 

陣形は偃月。騎兵の力を発揮できるとされる陣形だ。

 

「おかしいですね。仲達さんはどう思います?」

 

「確かに、朱里さんの言う通り、おかしいですね。

 

いくら相手が盗賊とはいえ、馬騰ほどの人が完全に背を向けるでしょうか?

 

それにそもそも、背後の街を襲ってくれと言わんばかりに空にしたのも腑に落ちません」

 

「うーん……。罠の可能性もあるけど……」

両軍が対峙するのを菖蒲と白兎は城壁の上から見ていた。

 

「菖蒲! 援軍だよ!」

 

「見えてるから大きい声を出すんじゃないよ。旗は、十文字、糜が2枚、華、司馬、諸葛、呂……、へぇ、董卓本人も来てるのか。

 

ここに来てあの張遼と趙雲、荀彧が居ないということは……、3人は後方を襲撃しに行ったみたいだねぇ?

 

ま、いいさ。椿花-チュンファ-仕上げの準備にかかるよ」

 

「本気なの? このまま砦に篭ってた方が……」

 

「それじゃあ、まだ足りないのさ……。さぁ、行くよ」

 

「あいあい、全く、こんな時だけ真名で呼ぶんだから」

 

董卓軍の布陣は、全体としては方形陣を取った。

 

中央に華雄の重歩兵隊、両翼にそれぞれ一刀と天泣の隊。後曲に天梁と月、紫青が率いる弓兵隊が待ち構える。

 

朱里は一刀の隣で補佐役として控えている。

 

馬騰の騎兵隊の突撃を警戒して分厚い陣を敷いていた。

 

両軍が激突してまもなく、砦の扉が開き、黒山賊が討って出てくる。

 

「行くよ、野郎ども!」

 

「うおおおお!!」

 

猛然と突撃していくその様子を見て、一刀は首を傾げていた。

 

数は報告から更に減って5000ほどなのだが。陣形を組んでいないように見えたのだ。

 

「おかしいな、いつも何か陣形は組んでたと思うんだけど……」

 

「あれはおそらく、長蛇陣でしょう」

 

一刀の疑問に、朱里がすぐに返事を返す。

「兵を隊ごとに一直線に並べてしまう陣形で、正面への突破力はとても強い陣形と言われてます。

 

でも、横からの攻撃にはめっぽう弱いので、平地で使うような陣形じゃないです。谷等の特殊な地形でしか普通は使いません。

 

騎兵が相手ならなおのこと危険です。正気の沙汰じゃないですよ。

 

それこそ捨て身……。玉砕覚悟で突破を狙う、といった所でしょうか……」

 

「どうしてそんなことを……、砦で待っていてもらえばそれでよかったのに」

 

「……。張燕さんは、差別階級の出だと言っていたそうですね?」

 

「うん。確かそういってたよ」

 

「そして、一刀様は功績を上げれば配下にくわえてもいい、そう仰った」

 

「そうだよ」

 

「あの階級の人達は、本当にゴミのように扱われるのが当たり前になっていましたからね……。

 

法を整備し、治安の維持向上に力を入れた領ではまだマシですが、酷い所では、畑の野菜を取られても、持ち物を盗まれても。

 

何をされても誰も助けてはくれない。

 

例えば、功績を横取りされたとしても……」

 

「!?」

 

「一刀様がそんなことを考えていないのは分かってます。でも、張燕さんはきっと不安でたまらないんです。

 

だから……。戦場で最もわかりやすい功績を挙げようとしてるんですよ」

 

「まさか……」

「敵将の首級です」

───────────────────────

 

「見つけた! アンタにゃ恨みは無いけど、その首もらうよ! ハァ───ッ!」

 

「この馬騰、盗賊風情にやられるほど、老いてはいないぞ!」

 

その姿を認めるなり、一気に距離を詰めて菖蒲は大上段から一気にその剣を振り下ろすが、馬騰も即座に剣を抜き、それを受け止める。

 

馬騰は貂蝉程ではないがそれでもガタイのいい男で、身長も高く、絵に描いたような武人、という風体。

 

「さぁて、そいつぁどうだろうねぇ? 次いくよ!」

 

素早い兵の運用で正史では飛燕とも呼ばれる菖蒲だが、本人はパワーファイター系だ。

 

大ぶりの曲刀を叩きつけるように振り回し、馬騰へ次の一撃を見舞う。

 

「ぬ!」

 

馬騰はそれを受け止め、弾き返すとその流れのまま、横薙ぎに剣を振り抜く。

 

菖蒲もそれに反応し、受けきる。

 

「流石に、簡単にはその首をくれそうもないねぇ……」

 

「まだまだ、ここで死ぬ気は無いからな!」

 

さらに一撃、二撃と剣を打ち合わせ、菖蒲はつばぜり合いへと持ち込む。力勝負では馬騰に分があるのか、菖蒲の方が押され気味だ。

 

「何であたしがわざわざつばぜり合いに持ち込んだと思う?」

 

「……」

 

背後に忍び寄っていた白兎……、椿花が飛び、その首めがけて、脇差しのような剣をふるう。

 

馬騰はその一撃をどうにか避けようとするが躱しきれず、その一撃を食らい、首から血が吹き出し、その膝をついた。

 

「……、この椿で首を落とし損ねたのは久しぶり。やるね。でも、致命傷はとれたからいいかな」

 

「何か言い残す事はあるかい?」

───────────────────────

 

その頃、華雄は前曲を任されていた翠と対峙していた。

 

「錦馬超か。我が名は華雄!」

 

「お、お前! 虎牢関に居た!」

 

「ふん、覚えていたか。だが、賊将と語る口は持たん! ハァ──ッ!!」

 

「賊将だと!? お前たちの方がよっぽど賊じゃんか!」

 

翠は振り下ろした戦斧を受け止め、それを弾き返す。

 

「輜重隊を襲わせたのもお前らだろ!?」

 

「隣国が戦の準備をしていると知りながらただ準備が整うのを待つなど、阿呆のすることだ。お前のようなな」

 

「ば、馬鹿にすんな!」

 

力任せに振り下ろされた槍を華雄は横に跳んで避ける。標的を見失った槍がたたきつけた地面はえぐれ、その威力を物語る。

 

「奉先の一撃に比べれば遅い、止まって見えるぞ? 錦馬超!」

 

「っしゃおらああ──!!」

 

「ぬるい!」

 

翠の攻撃を受け流し、あるいは避け、華雄はのらりくらりと勝負を引き伸ばす。

 

華雄は翠の殲滅力が脅威になり得る事をよく知っていたし、実力も高く評価していた。

 

だからこそ無理に勝ちにいかず、防御を重視して自分に釘付けにすることをまず目的にした。

 

華雄に挑発され、頭に血が登った翠は背後で起きている事に気づく様子も無い。

 

「こんな所で油を売っていて良いのか? 後ろを見てみろ、馬騰が討ち取られたようだぞ?」

 

「そんなわけあるか! 父上は私より強いんだからな!」

 

否定はするものの、動揺する兵の声は翠の耳に届く。

 

馬騰様がやられた! と。

 

「そんなわけ、そんなわけが……!」

 

「戦いの最中に他所事を考えている暇は無いぞ! ハァ───!!」

 

その隙をつき、華雄が全力を込めて戦斧を横薙ぎに振りぬく。

 

それを慌てて受け止めようとするが、受け止めきれず、槍が弾き飛ばされた。

 

「勝負あり、だ。錦馬超」

 

その眼前に戦斧をつきつけられ、翠は力なくその場に座り込んだ。

───────────────────────

 

将がいなくなり、混乱状態に陥った馬騰軍を董卓軍は手際よく制圧していった。

 

馬騰、馬超がそれぞれ討ち死に、捕縛された事を知り、投降した兵の数も多い。

 

「あなたが張燕さんですね?」

 

戦いが終わると、菖蒲と椿花が月に呼ばれた。2人は呼び出しに応じ、月の前へと現れる。

 

「ああ、あたしが黒山賊の頭領、張燕さ。コッチは……副官になるかねぇ? 眭固白兎だ。

 

あんたが董卓かい?」

 

「はい。一刀さん……、島津さんからあなたの事は聞いています。

 

功績を上げれば正式に配下に迎えると約束したことも。

 

私は、あなた達は十分に功績を上げたと考えています。きっと、今回の戦で一番。

 

でも、あなた達に一つだけ聞きたいことがあるんです」

 

「何だい?」

 

「あなた達が盗賊として犯してきた罪は消えません。

 

それを償う気はありますか?」

 

張燕は黙りこむ、その問の真意をはかりかねている、そんな感じだ。

 

「何!? これだけ頑張ったのに菖蒲に死ねっていうの!?」

 

「よしな。……でも、あんたの真意はあたしにゃわからない。あたしらにどうしろっていうんだい?」

 

菖蒲が椿花を制止し、月へ問いかける。

 

「死んで償うのは最悪の方法です。もし償う気があるなら、考えてください。

 

私からあなた方に罰を下す事はしません。私も一緒に償います。

 

あなたのような境遇の人が多く出てしまったのは、領主の私の責任ですから、私の罪でもあります……。」

 

月の話しを聞いて2人はしばし言葉を失う。

 

「世の中があんたみたいなのばっかりなら、あたしも盗賊なんかにならなくて良かったかもね。

 

分かった、考えるよ」

 

菖蒲の返答を聞き、月は小さく笑った。

───────────────────────

 

馬騰が死んだ事により、その影響下にあった街は次々に董卓軍に下った。

 

時を同じくして星と霞、桂花が制圧した街の馬騰が過ごしていた部屋から馬騰の日記が発見された。

 

それにはこんなことが書かれていた。

 

反董卓連合前、既に馬騰は洛陽の状況について知っていた。

 

それを知りながら連合軍に加わったのは、前回俺達がやったように、月を助け、劉協が華琳達に利用されないよう手を回すためだった。

 

結果として霞と華雄、それに詠の策により連合軍が敗北したためその必要はなくなったわけだけど……。

 

そして今回、戦の準備をし、仕掛けてきたのは漢王朝に反乱軍を叩き潰すだけの力があるという風評を流したかったから。

 

つまり反董卓連合で負った、反乱軍という汚名を逆に利用しようとしたらしい。

 

皇帝、劉協のために。

 

戦の準備をすすめていることや、輜重隊のルートの割り出しが簡単だったのはわざとだったようだ。

 

張燕が仕掛けた策に引っかかった事や、白兎の一撃を受けたのも、もしかするとわざとかもしれない。

 

このやり方が正しかったのかどうかは俺には分からないけど、

 

馬騰は最期まで忠義を貫いたんじゃないかと思う。

 

張燕が馬騰に言い残す事はないか問うと、これでいい。そう言ったのだそうだ。

 

正直心苦しかったけど、この事実はごく一部の者の胸の内にだけ残され、

 

馬騰の首は反乱の首謀者として晒される事となった。馬騰の想いを無駄にしないためにも。

 

 

あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回で馬騰との戦いは終わりとなります。

 

眭固……椿花のいう『椿』、というのは馬騰に致命傷を食らわせた剣の銘です。

 

張燕の使った戦法は瞞天過海をイメージしてます。

 

馬騰さんは漢王朝への忠義の人、という風に書きたかったのですがうまくかけているかどうか……。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 


 
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