No.663017

真恋姫†夢想 弓史に一生 特別編(バレンタイン編)

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

書いていて思いましたが、特別編の方が書きやすい……。

本編よりもやりたいように出来る分流石に書きやすいと感じますね…。

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2014-02-14 00:08:02 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1575   閲覧ユーザー数:1484

 

特別編   「バレンタイン大作戦」

 

 

 

 

 

 

 

 

*時間的には、反董卓連合戦が始まる少し前と考えてください。

*片方は激甘、片方は微甘と言うところです。

*多少表現が過激な所が存在します。嫌いな人は読み飛ばしてください。R-18タグは入れておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、とある世界の恋に悩む乙女達の2月14日の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~橙里&雅side~

 

 

 

広陵の一室にて、机に向かいうんうんと頭を悩ます乙女が居た。

 

彼女の名は諸葛瑾、真名は橙里。

 

徳種軍の文官であり、軍師ーズの一人である。

 

彼女が今悩んでいるのは、自分の机に積まれている書簡に関してだけではない。

 

彼女が悩んでいるのは、彼女の仕えている主君、徳種聖についてである。

 

 

「はぁ………。最近、先生成分が充実していないのです……。」

 

 

机に両肘を突いて顎を支えるようにしながら溜息を吐く。

 

静寂に包まれた部屋の中にその溜息は大きく響き渡るが、それに対して何か言うものは誰も居ない。

 

それもそのはず、彼女は今私室で一人で書類の整理をしている。

 

冬特有の寒々とした気温は、その冷たさを持って孤独感を増長し人恋しくするものであるが、まさに橙里はその状態になっているといってもいい。

 

部屋で一人、物書きに更けながらも思い人の事を想いて途方に暮れる美少女…と言えば、平安時代なら詩になっていてもおかしくない情景ではあるのだが、彼女のある部分の影響で、男が詠う詩は全く別なものになりそうである。

 

因みに橙里が両肘を突くと、机と腕に囲まれた空間にどどんとその豊かな胸が協調されるような格好になり、男にとっては目の離せない魔のトライアングルになると言うことで言いたいことは分かって欲しい。

 

だが、当の橙里はそんなことを知る由も無い。

 

 

「はぁ……どうすれば良いのでしょう……。」

 

 

あれこれと思案してみるが、あまり上手く行きそうなものはない。

 

それもそのはずで、橙里が考えているのは聖を独占する計画な訳で、彼の近くには必ず誰かがいるわけなのだから、上手く行くわけが無いのだが……。

 

 

「…………早く自分の番になって欲しいのです……。」

 

 

因みに分かっていて欲しいのだが、聖と関係を持った乙女は全部で5人であり、5日毎に各々の番が来るように当番表が定まっている。

 

前に橙里が聖と一緒に過ごしたのは三日前で、次に一緒に過ごせるのは明後日である。

 

そんな少しの時間も待てないほど聖に没頭している橙里なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふんふふ~ん♪」

 

 

鼻歌交じりに、雅は籠を抱えたまま調理場へと足を踏み入れた。

 

台の上に籠を置き、その中から目当ての物を取り出すと、雅は満面の笑みでその物を見つめた。

 

 

「ふふ…ふふふ……まさか、この時代でカカオ豆が手に入るなんてね~……。」

 

 

南方から来る商人と話していた時にたまたま話題に出た事がきっかけで存在を知ったこれ。

 

商人はこの物の使い方を知らないというので、雅はただで譲ってもらっていたのだった。

 

 

「これを使えばチョコレートを作ることが出来るし、なんといっても今日は2月14日だし!!!!!」

 

 

この時代の人には馴染みの無い風習であるバレンタインデーだが、元天帝である雅に限ってはその枠にとらわれない。

 

天帝時代には、現代の様子を見てはこの日にかける少女達の頑張りに心ときめき、応援していたものだ。

 

そして、何時か私も…と夢を抱いていた訳である。

 

 

「でも………ただチョコを渡しただけだとひ~ちゃんへのアピールが足りないよね~…。」

 

 

う~んと頭を悩ます。

 

何かもっとインパクトがあって、思わず襲い掛かってしまうような、そんなものは無いだろうか……。

 

 

「……おやっ?? 雅ではないですか。こんなところで何をしてるのです??」

 

 

突然かけられた声にビックリして振り向くと、その様子に怪訝な顔をした橙里が立っていた。

 

 

「えっ? あっ…ははっ。別に何も………。」

 

「………。まぁ、良いのですけど。その後ろの物はなんなのです??」

 

「これっ!!!? これは……その……市場に珍しいものが売ってたからちょっと買いたくなって……。橙里こそどうしたの??」

 

「……私は、ちょっと料理でもしに……。」

 

 

言い難そうに顔を背ける橙里を見て、誰のために料理を作るのか思い当たる雅。

 

 

「…ははぁ~ん。さては、ひ~ちゃんの為か…。」

 

「っ!!?? そ…そんなわけ無いのです!!! 自分の分なのです!!!!」

 

 

隠したいことを図星で当てられ動揺する橙里を見て可愛いと思うと同時に、自分が今まで見てきた少女たちを思い出して息が詰まる。

 

私は、この少女のような想い人の為に頑張る少女達を応援してきて、彼女たちのようになりたいと願ったのに、それなのに自分は自分しか知らないような物を使って……なんともずるいではないか…。

 

 

「………公平じゃないよね。」

 

「えっ!? 何か言ったのですか??」

 

 

せめて目の前の少女とは対等な立場でいなければならない。

 

そう思った雅は、橙里に今日がどんな日で何を作ろうとしているのか、全てを話すことにした。

 

残りの人たちに関してはきっと………何か欲しくてたまらない彼が教えることだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

「これがチョコレート。これを型に入れて冷ませば、色んな形のチョコが出来るんだよ!!」

 

「おぉ~…。これが天界で有名な猪口冷糖と呼ばれるものなのですか!!??」

 

「そうだよ。ちょっと舐めてみる??」

 

「良いのですか!!??」

 

 

作ってる最中からよだれを飲み込む音が止まなかった橙里に対して、雅は少し舐めてみるかと提案する。

 

許可をもらった橙里は、よだれを拭うと荒い息を整えながら満面の笑みに目を輝かせてチョコレートを少しすくって舐める。

 

 

「う~ん………おいしいのです♪」

 

 

橙里のお尻の辺りから尻尾が生えてぶんぶんと振っているようなそんな錯覚が見えるくらい彼女の顔には恍惚の表情が浮かんでいる。

 

そんな彼女の顔を見てると教えてよかったと思うと共に、しかしこれではやはり何の工夫も無いチョコレートになってしまうなと思う。

 

現代のバレンタインを知っている聖にだからこそ、何か特別なものをあげなければ……。

 

 

「あっ……。橙里、胸の所にチョコが垂れてるよ。」

 

「ふわぁ!!? ま…まずいのです!!!! 染みになっちゃうのですよ!!!!」

 

「ちょっと落ち着いて…。今拭いてあげるから…。」

 

 

まったく、この娘は気楽なもので……。

 

濡れた布巾を持ってきて彼女の染みを拭いてあげる。

 

こんなに大きい胸をしているから、チョコが垂れていても気づかないのだ。

 

…………まったく…なんて常識外れの反則的なものを持っているのだろうか…。

 

こんなに柔らかくて、暖かくて、触り心地が良いものを持っていれば、それはそれは男は簡単に虜になるだろう。

 

……………羨ましい…。

 

 

「地肌のとこにも垂れてるから拭くね。」

 

「お願いするのですよ……。」

 

 

どうやったらこんなとこにチョコを零すのだか………。

 

ぶつくさと文句を言いながらそのチョコを拭こうとしたところで、その時雅に電流が走った。

 

 

「こ………これだ!!!!!!」

 

「何っ!? 何なのですか!!??」

 

「ふふっ……これなら、ひ~ちゃんでも………。」

 

「??????」

 

 

調理場には、雅の不気味な笑い声が響くのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

*ここからは聖視点で物語を進めます。

 

 

 

時間は経って夜。

 

 

俺はその日の仕事を終わらせて風呂に入った後、部屋で明日の仕事の準備をしていた。

 

 

コンコン!!!!

 

 

「ん?? 誰だ??」

 

「は~い!!!! 雅で~す!!!!」

 

 

ノックの音に続いて元気な雅の声が聞こえる。

 

そう言えば、今日は雅が訪ねてくる日か……。

 

 

「雅か。今開けるよ。」

 

「は~い!!!!」

 

 

部屋の扉を開けると、満面の笑みで雅が入ってくる。

 

その足取りは軽く、スキップするような調子なので何か良いことでもあったのだろうか。

 

 

「やけに嬉しそうだな。」

 

「ふふふっ……。ちょ~っとね~……。」

 

「何だよ、気になるじゃないか…。」

 

 

子供のような無邪気な笑顔で笑う雅はやはり可愛い。

 

天帝の時の雅も可愛いと思ったが、今の雅もやはり可愛い。

 

他の娘には悪いが、笑顔が一番可愛いのは雅だと思う。

 

そんなこの娘が俺の傍にいてくれたことで、励まされることが多かった。

 

辛い時も苦しい時もその笑顔に救われた。

 

だからこそ、俺はこの娘に本当に感謝しなければいけない。

 

 

「実はね、ひ~ちゃん。今日はもう一人一緒に来てるの。」

 

「もう一人??」

 

「呼んでも良い??」

 

「あぁ……まぁ……。」

 

「おぉ~い!!!! 入ってきて~!!!!!」

 

 

雅が扉の方に声をかけると、扉を開いて橙里が入ってきた。

 

気のせいか、頬がピンク色に染まっている気がする。

 

 

「今日はね、橙里と一緒に来たんだ!!!!」

 

「へぇ~…。珍しいな、二人が一緒にいるのは…。」

 

「そんなこと無いのですよ…。前々から良く一緒に買い物に行くこともあったのです。」

 

「そうだよ。私たち仲良いんだ!!!!」

 

 

にかっと笑う雅に対して、先ほど以上に顔を紅くする橙里。

 

一体何があったのか……。

 

 

「さっ!! ひ~ちゃんはこっち!!!!」

 

 

雅に引っ張られて寝台の淵に座らされる。

 

 

「じゃあ橙里、早速よろしくね♪」

 

 

その声を聞いた橙里は、もじもじと何かを逡巡するような様子を示した後、意を決したように俺に近付いてきた。

 

 

「先生っ!!!!!」

 

「はいっ!!??」

 

 

その必死の剣幕に圧される俺。

 

その俺を前に呼吸を整えると、橙里は着ている物を脱ぎ始めた。

 

いきなりのことに呆気に取られる俺を尻目に、橙里は自身の体になにやら茶色い液体を垂らし始める。

 

辺りにたちこめる甘い匂いから、これがチョコレートであると認識した俺であったが、それ以上に頭が回らない。

 

それほどまでに俺に与えた衝撃は大きかったのだ。

 

 

 

全てのチョコレートを垂らし終えた橙里は、俺の傍にやってきて、真っ赤な顔して上目遣いで消え入りそうな声で囁いた。

 

 

「猪口冷糖は……い…いかが…なの…です……。」

 

 

一瞬全ての感情を無視して橙里に襲い掛かりたい気持ちになるがそれをぐっと堪えて正気に戻る。

 

 

「橙里。雅にやれって言われたからって、無理にやらなくても良いんだぞ??」

 

「そんなんじゃないのです!!! これは、私が先生の為にやりたいと言ったことなのです…。」

 

 

少し涙目がちに話す橙里を見てるとばつが悪い気持ちになり、助けを求めて雅を見るが、その雅も同じように裸にチョコレートを垂らしてこっちに迫ってきた。

 

 

「雅っ!!? お前まで……!!!」

 

「ひ~ちゃん……。今日は2月14日。バレンタインデーだよ…。」

 

 

そう言われて“それでか…。”と聖は理解した。

 

今日になった時点でそのことは頭にあったし、思い当たる節もある。

 

しかし、この時代にチョコレートがあるとは思ってなかったし、そんな方法でくるとは思っていなかった。

 

 

「今日はね、女の子が勇気を振り絞って好きな男の人に全ての想いを伝える日。それが成功するか失敗するかは分からない。だから、チョコレートは甘くて苦いんだよ…。 ねぇ、私たちのこの思いは成功するのかな? 失敗するのかな?」

 

 

そう言って傍まで寄ってきた雅と橙里の二人に詰め寄られて、俺も決心する。

 

 

それぞれの体に垂れるチョコレートを舐めれば、やっぱり甘い。

 

この甘さは、彼女達の俺に対する想いと受け取って間違いは無さそうだ。

 

 

「どうですか、先生…。」

 

「甘いよ、とっても。二人の想いが十分に詰まってて甘すぎるくらいだ。」

 

「えへへっ…。嬉しいのです…。」

 

「勿論、まだまだチョコレートは残ってるんだから、全部食べてくれるよね?」

 

「そうだな………じゃあ、いただきます。」

 

「「どうぞ……召し上がれ…。」」

 

 

こうして三人は、甘い甘い夜に溶けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~芽衣&奏side~

 

 

「はい?? 申し訳ありませんが~もう一度仰ってもらっても良いですか~??」

 

「あぁ。あたいも何を言ってるのか理解できなかったからもう一回言ってくれるかい??」

 

「だから、今日はバレンタインデーだろ?? 聖の為になにか作るんじゃないのか?? 作るんなら少しくらいおすそ分けが欲しいなぁ~って言ったんだよ。」

 

 

城内の廊下ですれ違う一刀にそう言われて、頭の上にハテナが浮かぶ芽衣と奏。

 

この世界において2月14日はただの平日なのだ…。

 

 

「その“ばれんたいんでえ”と言うものはなんなのでしょうか~??」

 

「あたいに聞くなよ!!! そんな言葉初めて聞いた…。」

 

「そうか……流石にバレンタインはこの世界には存在しないのか。」

 

 

そう言って肩を落としてた一刀はその場を去ろうとする。

 

 

「「ちょっと待ってください~!!!!(ちょっと待ちな!!!!!)」

 

 

しかし、そこまで言われたのと聖に関することであることが彼女達の心を掴み、立ち去ろうとする一刀を二人の声が止めた。

 

そして、その声に見えないようににやっと一刀は笑うと、

 

 

「はい? 何でしょう??」

 

 

とあたかも何も知らないですよというアピールをする。

 

一刀はこうすれば二人は必ず食いつくと確信していただけに、思い通りになったことを心の中でほくそ笑んでいたのだった。

 

 

「あの~…さっき言っていたその“ばれんたいんでえ”と言うのは具体的には何をするものなのでしょうか??」

 

「あれ?興味あるの??」

 

「興味があるとかってわけじゃないけどよ……。ほらっ、そういう知らないから後で何か起こっても知りませんでしたっていうのは通らないじゃないか。だから、知らないことは知っておきたいというか…。」

 

「なるほどね……。流石は勉強熱心な二人なだけあるね。」

 

「「勿論です~(勿論だぜ!!)」」

 

「じゃあ、バレンタインについてだけど………ぼそぼそぼそ………。」

 

「……ふむふむ……はぁ~……へぇ~……。」

 

「…………なるほどね…。」

 

「という日なわけだ!!!」

 

「そっ……それなら~………私は少しやることを思い出しましたので、失礼します~…。」

 

「あっ!!? ちょっと待ちな!!!」

 

 

足早に去っていこうとする芽衣に先を越されまいと奏も後を追いかけ去っていった。

 

その後姿を目で追いながら一刀は一人ため息をつく。

 

 

「おこぼれでもらえないかな~……無理かな……。」

 

 

その呟きだけ残して、一刀も仕事へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと……芽衣さんと奏さんが揃って私の所を訪ねてくるなんて………私、何かやってしまったんでしょうか……。」

 

 

おどおどしながら不安な表情を浮かべる麗紗に対して、芽衣と奏は後ろに修羅でも見えそうなくらいの気迫で迫っていた。

 

 

「麗紗ちゃん。実はお願いがあるの~!!」

 

「お願い……ですか……??」

 

「あぁ、何も難しいお願いをしようってんじゃないよ…。」

 

「私に出来ることなら……喜んでお手伝いいたしますが………。」

 

 

麗紗のその発言を引き出すように会話をしていた芽衣と奏は、それを聞いてにやっと笑う。

 

それを見て、しまったと背中に嫌な汗をかく麗紗。

 

 

「それじゃ~悪いんですが~…。」

 

「あたいたち二人に。」

 

「「お菓子の作り方を教えてください!!!!!!!」」

 

 

二人揃って頭を下げる。

 

それを聞いて“なんだそんなことなら”と思った麗紗であったが、その予想は大きく裏切られることとなる…。

 

 

 

「ちょっ!!!? 奏さん!!!! 武器を振り回さないでください!!!!!」

 

「えぇっ!? この方が果物をバラバラにするんなら早いんだよ!!」

 

「細かくするんであって、粉々にしちゃったら駄目ですよ!!!!!! ちゃんと包丁を使ってください!!!!」

 

「…………は~い…。」

 

「芽衣さん!!!!!! それお塩です!!!!! 砂糖はこっち!!!!!!」

 

「あら~……?? こっちがお塩じゃなかったですか~??」

 

「それは小麦粉ですって!!!! 白い粉だからって一緒にしちゃ駄目ですよ!!!!!」

 

「う~ん………お菓子作りって難しいですね~……。」

 

「おわぁっ!?!?」

 

「奏さん!!!!??? 何してるんですか!!!!!?????」

 

「温度が低いからもっと上げようと……。」

 

「温度はそれで良いんです!!!! 温度の維持の為に薪は考えてくべてますから大丈夫です!!!!」

 

「高温の方が早く焼けるんじゃないのか??」

 

「あんまり高いと焦げちゃって美味しくなくなっちゃいますよ!!!!!」

 

「………何だかめんどくさいな…。」

 

 

調理場はまさに戦場と化していた。

 

いやっ……戦場の方が自分は指揮官として指示していれば良いだけマシであると麗紗はため息と一緒に思った。

 

 

まさか、この二人がこんなに不器用だとは思わなかった。

 

戦場であれだけのキレで動き回るこの二人であるので、手先が器用なことには代わりがないのだが、ことお菓子作りという面においては、二人の戦場でのキレは鈍るばかりである。

 

そもそも、料理に関しての知識が乏しい二人にお菓子作りは難度が高すぎる。

 

材料と調味料を合わせれば、適当量でもそれなりのものが出来る料理と違って、正確な量を正確な手順で行う必要のあるお菓子作りは素人にはとても出来るものではない。

 

何故この二人はいきなりお菓子作りなどに挑戦しようと思ったのであろうか…。

 

 

「………はぁ…。一旦休憩しましょう…。」

 

 

お茶を用意して、一旦休憩とする。

 

二人もなれない作業に疲れていたのか、素直に休憩に応じたのだった。

 

 

「それにしても……何故いきなりお菓子など作ろうと思ったのですか??」

 

 

お茶を飲みながら少し休憩するその間に、二人に何故お菓子作りをしようと思ったのか聞くことにした。

 

すると二人は、どこか顔を紅くして顔をそらした。

 

 

「…………言い辛いことなんですか??」

 

「………実はその~…今日という日が聖様の世界だと、感謝と愛情を込めて、女の方から男の人へお菓子を差し上げる日だと聞いたもので……。」

 

「あたいたちも下手くそなのは分かってるんだけどさ…。でも、日頃の感謝と愛情を込めてなんて言われたら……作らないわけにはいかないだろう…。」

 

「でも……いざ作って渡すとなると、何だか恥ずかしいです~…。」

 

「そもそも、男の人に贈り物したことがあたいたちには無くてね……。」

 

「そんな理由が………と言うか、今日ってそういう日だったんですか!!!?」

 

 

俯く二人に対して慌てる麗紗。

 

しかし、今回麗紗にスポットが当たることは無い…。

 

次回以降にお預けと言うことで………。

 

 

「理由は分かりました!!! 一緒に美味しいお菓子を作り上げましょう!!!!」

 

 

先ほどまでとはうって変わってやる気な麗紗に引っ張られるように、二人も必死に麗紗の言うとおりにお菓子作りを続ける。

 

そして、二人とも自作のお菓子が出来たところで日は既に沈み、辺りには夜の帳が落ちていた。

 

 

 

 

*ここからは聖視点でどうぞ

 

 

「あぁ~……疲れた……。」

 

 

今日の仕事を終わらせ、風呂場へと向かう俺。

 

やはり、疲れを取るには風呂にゆっくりと入ることだ……。

 

 

「聖様!!! あの!!!!」

 

「ん?? どうした??」

 

 

廊下をとぼとぼと歩いていると、芽衣に声をかけられる。

 

声に返事をして振り返ると、芽衣の隣には奏もいる。

 

何かあったのか??

 

 

「あの……その………。」

 

 

もじもじと中々話し出せない芽衣と奏。

 

二人の顔は真っ赤に染まり、そわそわと落ち着かない…。

 

 

「大丈夫か、二人とも??」

 

「…だ…大丈夫だよ…。」

 

「大丈夫です~…。」

 

 

そう言ってはにかむ笑顔はどこかぎこちない。

 

それに、先ほどから何かを体の後ろに隠している。

 

まぁ、何か言いたいことがあるなら此方から圧をかけても仕方ない…。

 

言い出すまで待ってあげるのが俺の役目だろう。

 

 

「すぅ~…はぁ~…聖様!!!! 二人で作りました!!! これを食べてください!!!!!」

 

 

意を決したように体の後ろから物を取り出す二人。

 

それを俺が受け取るのを確認すると、二人は物凄い勢いで廊下を駆けていった。

 

 

「…………なんなんだ…一体…。」

 

 

去っていく二人の姿を目で追った後、手元に残るものを見れば、綺麗に包装してあるお菓子であった。

 

 

「これは…………クッキーか……???」

 

 

バターの香りと大きさからその様に思うが、見た目は少し黒いし、それにやたらと硬い。

 

きっと焼きすぎたのであろうが……何故こんなものを……。

 

 

「あっ!! 今日はバレンタインデーだっけか……。まぁ、誰に聞いたかは明らかだけど……嬉しい事してくれるじゃないか。」

 

 

料理に関しては二人は確か素人だったはずだ。

 

そんな二人がお菓子作りとはとても大変だったことだろう…。

 

俺の為に、そんな苦労をしてまで作ってくれたんだな……。

 

 

袋の中から一つ取り出して口の中に放り込む。

 

 

「…………硬いし、苦いな………。でも、作り手の愛情を感じる………これはこれで、美味しいな…。」

 

 

にこりと笑いながら聖は風呂場へと再び歩き始めた。

 

その手に持った彼女達の愛情の証を食べながら…。

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

特別編でした。いかがだったでしょうか。

 

今回はアンケートの結果でこの二組で書いてます。

 

料理が得意な麗紗や蛍だとどんな展開にしようか、まだ聖と関係を持っていない人達だとどうしようかなどと色々と考えていましたが、無難な二組になって作者的にもほっとしています。

 

 

橙里と雅に関しては……まぁ…あんなものですかね…。

 

積極的な雅が絡めばアレぐらいが寧ろデフォルトなのかも…。

 

 

芽衣と奏はこんな感じにしようという構想が出来ていたため、この路線にしました。

 

一生懸命に好きな人の為にお菓子を作る女の子を作者は応援しますし、その恋が叶うことを願っています。

 

形や味など気にしたら駄目です。大事なのは、その人の為に世界に一つしかないものを作ること…。

 

そんなものをもらって嬉しくない男などいませんから…。

 

 

 

さて、本編は日曜日にあげるつもりでしたが…………今週は忙しすぎて書く時間が無かったので一週だけずらします。来週の日曜日にあげますのでご容赦ください…。

 

それでは~!!!!

 


 
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